あの銀座随一の鮨屋の名店『鮨 水谷』の水谷八郎が内々に引退を発表した。
春頃から銀座界隈でその噂が囁かれていたが、この度、今年の10/29(土)に閉店することがわかった。
水谷の引退には、3つのキッカケがあった。
1つ目は自身の病気。
2012年、水谷は腎臓がんを患った。
「病院で言われたことを全く覚えていないほど頭が真っ白になった」と回想するほど、ショックが大きかったという。
手術は成功したものの、それを機に人生の残り時間に思いを馳せることが多くなったらしい。
2つ目は日刊ゲンダイによる外国人予約拒否報道。
常連客は必死に擁護し、日刊ゲンダイの報道に異を唱える者は多かったものの、それでも店が受けた傷の大きさは計り知れなかった。
そして3つ目は築地市場の移転だ。
築地に長年通い、築地を愛していた水谷は、どうしても豊洲に通う気にはなれなかったという。
これら3つのファクターが重なったことで、水谷は自身のキャリアにピリオドを打つことを決意した。

僕は、今年の1月に『鮨 水谷』を訪れた。
訪問記を読めばわかると思うが、かなり期待していた反面、その場での満足感はさほど高くはなかった。
ただし、文末にこう書いた。
鮨屋巡りを始めたばかりの今の僕には、世間でいわれているほどの感動を味わうことができなかった。
しかし、来年の今頃来訪したら、感じる味は違っているのかもしれない。
それくらい、自己主張の強いシャリや熟成されたヒラメの旨さ、儚くも美しいサヨリのフォルム、握りのなかで左手の親指を利かせてシャリを持ち上げるテクニック、そしてなにより、鮨を握る際のあの真剣な表情が僕の心から剥がれない。
鮨 水谷』で、僕は鮨の奥深さを感じた気がした。
あれから7か月の時が流れ、その間、僕は50軒の鮨屋を食べ歩いた。
そして、今だからこそ感じることがある。
水谷八郎は、やっぱりスゴかった。
特に卓越していたのは、シャリの旨さ、シンプルながら洗練された魚への仕事、そして表面的ではない隠れたサービスだ。
なかでも、最後のサービスが印象的だ。
水谷は、決して一見客に愛想良く振る舞うようなタイプの職人ではないし、僕が行った時も店は静寂に包まれていた。
しかし、それは水谷が客一人一人の一挙手一投足に気を配っているからでもあった。
それを感じたのは、お茶の差し替えの時だった。
僕は水谷ほどドンピシャのタイミングでお茶を差し替えてくれた大将を他に知らない。
決してジロジロと見ているわけではないのだが、絶対に間接視野で把握されていた。
素晴らしいサービスだと改めて思う。
そもそも、一見頑固そうな水谷だが、その面倒見の良さもあって慕う鮨職人は多い。
さわ田』の澤田幸治は、デビュー当時に水谷に修業の総仕上げをさせてもらった。
彼のマグロの握りには、水谷イズムが息づいている。
『鮨 青木』の青木利勝は、水谷の銀座進出の際、先輩のために物件を探しまわった。
新橋鶴八分店』の五十嵐寛和は、自身のInstagramに水谷への感謝のコメントを投稿した(以下引用)。
私が尊敬する親方、神田鶴八の先代の師岡親方新橋鶴八石丸親方新橋しみづの兄弟子清水親方。
まぁ、ここまでは一門なのですが、もう1人鮨水谷さんの親方も尊敬する人物です。

築地に仕入れを行くようになった20年前から気にかけて頂いていました。
当時、名店親方衆は40代のバリバリでした😁。
中には、挨拶しても顔を合わせない位の親方もいらっしゃいました😢。
しかし、水谷さん、当時は横浜次郎さんですが、朝会えば必ず声をかけて頂いていました🙇。
ガラスのハート♥の私には、それがとても心強く感じていました。 
親方として技術も大切ですが、鮨屋は対面商売です。
人当たりや気配りの出来る親方をお手本にしたいです。
客には決して見せようとしないが、陰で粋な計らいをしている。
水谷はそういう職人だ。
そして、訪問記では書かなかったが、僕は『鮨 水谷』に関して忘れられないことがもう一つある。
僕が店を出て行くときに、水谷が微笑んでくれたことだ。
終始唇を一文字に結んで仕事をしていた水谷だったが、僕が「ごちそうさまでした」と言うと、水谷は「ありがとうございました」と微笑んでくれた。
あの日の水谷の笑顔もまた、僕の心から剥がれない。

10月から、僕はこれまでの訪問した鮨屋のなかでもとりわけ良かった店に行く。
だが、『鮨 水谷』には・・・多分行かない。
行っても辛くなるだけだからだ。
水谷には、僕の胸のなかで美しい思い出であってほしい。
いつまでも輝いていてほしい。
だから僕は、『鮨 水谷』には行かない。
ただ、『鮨 水谷』にまだ行ったことのない人は10月の席を狙って行ってみてほしい。
9/1(木)から予約が開始される。
これがラストチャンスなだけに、熾烈なテレフォンゲームが繰り広げられるだろうが、健闘を祈っている。

最後に・・・。
水谷親方、あと2か月ほど残っていますが、54年間お疲れ様でした。
『Heartache 〜Dear Mr. Mizutani〜』
作詞:Taka/Arnold Lanni/Shuto Saito
訳詞:Shuto Saito
作曲:Taka/Arnold Lanni



So they say that time takes away the pain
時が痛みを忘れさせてくれるって言うけど

But I’m still the same
僕はあの時と同じ痛みを抱えたまま

And they say that I will find another you
君の代わりの鮨屋が見つかるなんて言うけど

That can’t be true
そんなわけもない


Why didn’t I realize?
どうして気づけなかったんだろう?

Why didn’t I eat a lot?
どうしていっぱい食べなかったんだろう?

Yeah I wish that I could do it again
叶うことなら、もう一度君と一緒に

Turnin’ back the time back when I was there
時よ、戻れ 僕が鮨 水谷を訪れた時に

Oh god
どうか…

 
So this is heartache? 
So this is heartache?
なんでこんなに、こんなにも心が痛いんだろう?

拾い集めた後悔は
涙へとかわりoh baby

So this is heartache?
So this is heartache?
なんでこんなに、こんなにも心が痛いんだろう?

あの日の君の笑顔は思い出に変わる

I miss you
君が恋しいよ


僕の味覚を唯一満たして
去ってゆくシャリが

僕のアガリ
唯一差し替える事ができた君は 

Oh baby もういないよ もう何もないよ

Yeah I wish that I could do it again
叶うことなら、もう一度君と一緒に

Turnin’ back the time back when I was there
時よ、戻れ 僕が鮨 水谷を訪れた時に

Oh god
どうか…


So this is heartache? 
So this is heartache?
なんでこんなに、こんなにも心が痛いんだろう?

拾い集めた後悔は
涙へとかわりoh baby

So this is heartache?
So this is heartache?
なんでこんなに、こんなにも心が痛いんだろう?

あの日の君の笑顔は思い出に変わる

I miss you
君が恋しいよ


It’s so hard to forget
忘れることなんてできないよ

固く結んだその唇は

Yeah so hard to forget
やっぱり、忘れられないんだよ
 
強く効かせた親指も
 
You and all the regret
君の存在と全ての後悔が

解けなくなって離れなくなった

今は辛いよ それが辛いよ
すぐ忘れたいよ 水谷八郎きみ
 
 
So this is heartache? 
So this is heartache?
なんでこんなに、こんなにも心が痛いんだろう?

拾い集めた後悔は
涙へとかわりoh baby

So this is heartache?
So this is heartache?
なんでこんなに、こんなにも心が痛いんだろう?

あの日の君の笑顔は思い出に変わる

I miss you
君が恋しいよ

I miss you
君が恋しいよ

I miss you
君が恋しいよ