カテゴリ: 近況報告

手話を学び始めるとき、多くの方が、音声の五十音にあたる「指文字」があることを習います。
新しい外来語や固有名詞などの表現では、時に便利に使え、覚えておくと、コミュニケーションに役立ちます。

さて、指文字にはそれぞれ意味があって、「あ」はアルファベットの「a」をかたどったもの。「き」は影絵のキツネなど、わかりやすい由来があります。

以前、この指文字誕生についての 再現ドラマの手話コーディネートをさせていただきました。
現在の指文字の原型は、昭和のはじめ、大阪のとある聾学校から始まったのです。


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全国日テレ系「未来創造堂」コダワリのVTR2009
『 手話の未来を切り拓いた男 高橋潔 』
現在、皆さんが使っている指文字の始まりをドキュメント。
手話コーディネート 手話あいらんど/南瑠霞(手話通訳士)
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http://minamiruruka.seesaa.net/article/114772310.html


出てくる役者さんたちは、全て「手話のできる聴者の役者さん」と「ろうの子供達」です。当時、オーディションなども含め、多くの方々にご協力いただき、ありがとうございました。
制作の方と「手話の自然な会話と、多くの指文字を多用するこのドラマで、聴者の役者さんたちに1から手話指導して演じていただくことはあり得ない。全て本物の手話のできる方、ろうの子供達を採用してください。」と、話し合わせていただき、生き生きとしたストーリーになりました。ご理解いただいた制作の皆さんにも、感謝です。
私たちにとっても、これぞ手話コーディネート!と言える、誇りの持てる作品をともに作らせていただけるものとなりました。

当時はまだアナログ放送で、聞こえない方が字幕を見るには、それぞれの家庭で福祉の手続きをして許可を得、専用アダプターをテレビに取り付けることが必要でした。この番組を字幕付きで見られた方が多くなかったこともあり、数年後、ろうの方などが番組中のこのコーナーに字幕をつけて、YouTubeにアップしてくださっています。
現在、まだ見られるようです。
あなたも、指文字の歴史を、動画で見てみてください。





南瑠霞の手話日記より







    当たり前のことではありますが、エンタメであろうと、お笑いであろうと、手話をつけるからには「心あるものを」と願います。

    ろうの友人が、とあるyoutube動画をスマホで、私に見せてくれました。

    「これ、有名な方の後ろで、女優さんが、手話通役の役をしているんだけど、この手話、なんかおかしくてよくわからない。。。ヘタと言うのでなくて、位置関係とか文法とか、単語の表現とかが、ちょっとおかしな動き方をしてる。手話をしたいのはわかるけど、ちゃんとした表現になっていなくて、あまりに無表情で、ろう者をばかにして見える。これ、手話をつけてますっていうジョークなのかな? 以前、南アフリカの手話通役者が、本当は手を動かしていただけで、ちゃんとやってなかった・・・みたいな事件があったけど、これは、そういう風にしたかったわけでもないみたいなんだけど・・・どう思う?」

    「・・・・」

    どうやら、その人が調べてみると、指導者はおられるようで、その方のお手本動画を見て、役者さんが自分で真似て覚えた手話映像なんだとか。

    ろうの友人がいうには、「昔、お笑いタレントが、中国語や韓国語の、語調の真似をして笑いを取り、中国人や韓国人がすごく不快だったという話を聞いたけど、これを見たら、ちょっとその気持ちがわかった。」とのこと、胸が痛みました。


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    (先日 打ち合わせで立ちよった原宿のとあるビル)


    私たちが手話指導を承るときは・・・


    ◯ 最初に、手話に取り組む役者さんと、演出またはプロデューサーの方が、必ずろう者に会うこと。
    ◯ そのとき、通訳なしで、ろう者と どう通じ合えるかを、ご自分達で、筆談や身振りも交えながら、一生懸命話して、体験(体感)していただくこと。
    ◯ そのあと、自分たちの名前など簡単な手話も覚えて、手話を使うことを実感していただくこと。
    ◯ 聞こえない方の生活の様子や、手話の良いところなど楽しいお話もして・・・
    ◯ その後初めて、台本や歌詞に取りかかります。

    ◯また、台詞や歌詞は、一つ一つの日本語や文を、ご本人や監督がどういう意味合いで捉え どう表現したいかのニュアンスも相談しながら、翻訳。解釈ではもちろん、意見が食い違って、それを一致させるために、色々話し合って時間のかかることもあります。そのとき、役者さんが苦手そうな手の動きもチェックし、できれば、やりにくそうな表現は外して、別の手話に変えられないかも検討します。

    ◯ そこではじめて、役者さんのしっかりしたレッスンがはじまります。
    ◯ それで、ようやく登場するのが、「復習用」に、お手本映像を撮って、ご本人や監督達にお渡しするという作業。(お手本映像は、あくまで予習用ではなく、復習用です。よくわからない言葉を、自分だけで見て、勘違いして覚えて違和感のあるくせを身につけてしまうと後からでは なかなか治せません。)
    ◯ そのあと、必ず最低でも、1~2回レッスンのお時間をいただいて
    ◯ 本番にも立ち会います。(本番で一緒に手話をチェックする人がいないと、うっかり間違えたり、反対の手が違った風に動いて知らない間に意味が変わってしまうこともあり、誰も気づかず、それが最終映像に使われてしまうことがあり、もっとも注意すべきことの一つなのです。)


    何も、そこまで!!と思う方もおられるかもしれません。

    ここまでやれば、手間も時間も 間違いなくかかります。
    忙しい現場では、「急いでいるんだから、とにかく手話の映像だけください。そうしたら、自分たちが必ず、役者さんに正しく伝えます。ご本人も少し手話経験がありますから、なんとかします。」とおっしゃるチームがいるのも事実です。
    でも、それ、本当にできるのでしょうか?汗

    私達も、こうした場合、手話通役者同士で、相談のため、録画を送り合い、それで調整することはあります。でもそれは、相手も手話の文法や意味合い、文の句読点や、位置関係などがキチンとわかっていて、手話自体を「もとの意図どおり 読み取れる」ことが前提です。

    私には、1~2分を超えて通訳し続けるという 手話通役の役で、役者さんが、映像だけを見て手話を真似、本番をすることは、むずかしいように思われます。
    それは、英語でいえば、ネイティブの人の録音と、元の日本語原稿だけを渡され、本番までに間違いなく覚えてこい!!と言われているのと同じように感じられるからです。
    (『日本手話』というろう者の伝統的表現は、日本語とは文法も違うので、上の状況は、「このネイティブな英語のセリフが入った録音は翻訳されたものであり、もとの日本語で言うとこんな意味になってます。」と言う資料を渡されただけ。ということになります。また、声に合わせて単語を出していく 『音声対応手話』であっても、手話には位置関係や動かす方向、見るべき目の向きなどがあり、手の形だけを覚えて単語を連打しただけでは、手話文にはなりません。涙 それを見ただけで真似るのは、はっきり言って、例えば今まで、まあ小中高と体育の経験はあるけど、、という人が、いきなり「さあ、棒高跳の試合に出て一発で入賞を目指せ!」と言われている並に まさにハードルが高い!!・・・ように思います・・汗笑)

    今このブログを読んでくださっている、ほとんどの方は、私も含め、おそらく小中学校の時から英語を習い、最低でも高校卒業まで、毎週2~3度は英語の授業を受け、短い人でも6年程度、いまの若い人なら20歳になるまでに、8~9年英語の経験のある人は多いと思います。
    そのあなたに尋ねます!
    あなたには、英語の経験があります。
    あなたは、「英語のネイティブの人の録音と、もとの日本語原稿だけを渡されれば、4~5日で長ゼリフを覚え、人前で話せるようになりますか?」大汗

    答えは、相当の確率で「NO」だ!と思うのは私だけでしょうか?

    自分の母語でない言葉をそれらしく、またある程度間違いなく話すのは、とてもむずかしい。単語一つ一つももちろん大切ですが、それ以上に単語の並びによっては音便もかかって発音(手話なら動き)や表現の長さも変わったり、区切りや抑揚も意味をあらわす重要なポイントになります。それを、役者さんが、録音や映像だけ見て、短期間で本番に耐えられるまでの状態にするのは、ちょっとムズカシク感じられます。

    それをやってしまったら、結果が残念な状況になる確率は・・・おそらく・・とーっても!高い・・・!!
    わたしはそう思います。本当にごめんなさい。

    英語であれ、手話であれ、その言語を、役者さんが、いきなり録音や映像だけで それなりの状態にまで学習するのは、ちょっと難しく、適切な指導と勉強時間、また何より、それに向けての「スタッフの皆さんの理解」が、必要です。

    この場合、語学的基準でいえば、日本語なまりのある英語、英語なまりのある日本語、もともと関東標準の日本語の方がチャレンジした関西弁や東北弁。汗笑 
    と言うものとも、意味が違います。
    むしろ、そこまでできていたら、友人のろう者も、わざわざ私に動画を見せにはこなかったと思われます。

    わたしは、見せてもらった映像に対して、ろうの友人が言っていることは、自然で素直な意見のように思いました。
    ここから、ますます、手話を、エンターテイメントに取り入れたいと考える方は増えてくると思います。
    どうぞ、心ある手話を!

    手話は、聞こえない方の大事な言葉。
    それを一緒に大事にしながら、素敵な作品づくりを 多くの方とともに させていただければと願っています。
    特に、演出・制作チームの方々には、ご一考をお願いしたいです。
    そこにつけた「手話が下手」なのと、「手話への取り組みがぞんざい」なのとは違うし、愛情も違ってくるように思います。
    (これは、真面目一辺倒に言っているわけでもないし、お笑いにも手話はたくさんあっていい!!そう思う立場からの発言です。誤解のないよう!念のため。汗笑)


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    (先日いただいた 楽しい秋のおやつ!)


    とはいうものの、以前と比べ、そうした方は 極たんに減り、多くのチームが、愛情を持って、私達の元に相談にきてくださっていることは、大きな変化と事実として、皆さんにはお伝えしておきますね。うれしいことです。
    多くの方が、短い手話シーンであっても、きちんと ろう者と面談し取材し、改めて会話レッスンに通い、ドラマや映画、作品づくりに取り組んでくださっていること。また、「本番の立ちあいも、かならずお願いします。間違いをチェックする人がいませんから。」と言ってくださること。
    そう言った方々の思いと姿勢には、多くの感動もいただいています。
    ありがとうございます。

    手話は、日本語や英語と同じように、それを母語とし、大事に思い、自分の心そのものとして使っておられる方がいる。
    だからそれを見れば、心打たれるし、思いが伝わってくるのだと、毎回手話の仕事をさせてもらいながら、気持ちを暖かくさせていただいています。
    もちろん、私たちも、偉そうなことをいう前に、そうした言葉への心を大事に忘れず、聞こえない方々と共に、頑張っていければと 今回のことは「大きな課題の一つ」にさせていただきたいと思います。

    本当に、ありがとうございます。


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    (事務所の目の前、2019.10.13 昼の世田谷は青空です。)

    連休中は、大きな台風もありました。
    被災された皆様へ、心からお見舞い申し上げます。寒さがこないうちに、それぞれの町の復旧が進みますように。



    ※ この記事のシェア・転載は自由です。ただし、出典をあきらかにしてください。
    南瑠霞の手話日記より


    ときどき、学校の先生が、「ちょっと手話を覚えてこどもたちに教えてあげたい。まずは、子供たちに手話で自分の名前を覚えさせたいんです。」
    と、相談に見えます。

    ところが・・・
    実は、手話の名前は、数年学んだ手話のベテランでないと、教えてあげられないことがたくさんあります。
    手話の名前は、単に音を表す指文字などから できているのでなく、いろんな手話単語の組み合わせや、その短縮形や、歴史に由来のあるものなど、手話の要素が凝縮されている表現にあふれているからです。

    「佐々木」や「斎藤」は、日本の歴史的人物「佐々木小次郎」や「斎藤道三」から。
    「藤」は藤棚に垂れ下がる花。
    「井」や「田」は漢字の形から。
    「島」は島の陸地と周辺の海面の組み合わせ。
    「佐藤」は、「砂糖」のダジャレから。
    「寺」や「村」など、そこで使う器具の特徴から表現するものもあります。

    人の名前は千差万別。実は、人の名前を教えることこそが、とても難しく、手話をちょっとかじっただけの初心者の学校の先生には、教えてあげられないものが、たくさんあります。
    手話の歌もしかり、手話単語を並べるだけでは、手話文や意味の通った歌詞にはならず、各小中学校では、手話経験のない、または浅い経験しかない先生方だけで頑張れば、多くの間違いを広めてしまいかねない事態に陥ります。「子供たちに手話を教えたい」と願う先生方には、ぜひ、地元のろうの方や通訳者の方をお呼びいただき、「本当に通じ合える良き手話」の指導に取り組んでいただきたいものです。


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    さて、南の通う保育士の卵たちの短大でも、秋の手話指導が始まっています。2回目の今週は、学生たち全員の名前を、みんなで覚えました。
    地域独特の手話ネームもあれば、小林・高橋・山本・鈴木など、全国でも最も多いといわれる名前の人もいます。
    互いが、手話で名前を覚えあい、様々な表現も身に着け、特に盛りだくさんの指導の1日となりました。

    ちなみに私の名前「南」は、「うちわ」をパタパタあおぐしぐさが語源です。「うちわ」「暑い」「あおぐ」「夏」「南」は、すべて同じ表現ですので、一度覚えると、いろんな場面で使えます。笑

    奥深い手話の名前を、歴史なども紐解きながら覚えあう授業は、もとても楽しく。みんな「へえ!!」「そういう意味でこの表現なのかあ。」「私の名前は、『鈴』を振って『木』の幹を表現するのかあ」なんて、一つ一つ感動しながら、あっという間のひと時でした。
    もちろん、このすべて1コマの1時間半は、声を使わず絵や身振りいっぱいに、皆さんに指導させていただいています。


    中庭の秋のもみじは、まだ、濃い緑色です。

    南瑠霞の手話日記より



    今年も!秋から!!
    神奈川県の短大の、もみじの様子をレポートしていきます。
    お楽しみに。

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    これは、先週のもみじ。まだ元気な緑です。
    強い日差しを避けるため、この下に逃げ込めば、ちょっと涼しく嬉しい感じ。
    周辺の芝生を、業者の方がきちんとカットしてくださっていました。

    この日は、後期の授業の最初の日。
    みんなが初めて手話に触れる日でしたが、私の授業は、もちろん、1時間半音声なし。

    耳を使わなくても伝え合える便利な言葉「手話」を そのまま体感してもらうため。
    そして、全国にいる耳の聞こえない学生たちが、目で一生懸命授業を見て、受けている姿を想像し、週に1時間半だけ、そのことに、思いを馳せてもらいたいという願いから。
    「手話」という言葉を通して、「聞こえない」ってどんなことなのか、学生たちに感じてもらえればいいなあと思い、毎年この授業をお引き受けしています。

    今回は、ちょっと嬉しいことがありました。
    ちょうどその最初の授業の終わりに、教務課の方が、用事があって、教室に入ってこられました。
    それは、私が、ちょうど「来週は、◯◯と、××をするからね。お楽しみに。」と手話で話している時でした。
    みんなも、「はーい」と手を挙げ、「また来週お会いしましょう~~!」と挨拶して、解散したあとのこと!!

    講師控え室にきた、その方が、
    「南先生、たった1時間で、みんなあの手話が読めて、挨拶できるようになったんですか? 僕だけ、なんか、全然わからなかったんですが・・・」と、おっしゃったのです。

    その時私は、ああ!!そうかそうか!!そうだった!
    と思い出しました。

    毎年やっていることだったので、私もなんとも思っていませんでしたが、声なしの身振りで、私が1時間半話し続けると、学生たちがすっかり目で見ることに頭がシフトして、手話を読もうと思わなくても、意味が目から入ってくるようになるんです。
    これが!!!「声なし」授業の キモであり、とても大切で、素敵なところ。
    「頭じゃなくて、感覚で体感して、手話を覚える」ってことなんです。

    「先生の授業、すごいですねえ。」と、教務の方に言っていただいて、改めて嬉しく思った授業初日でした。

    声なし授業とは、心に語りかける授業のこと。
    伝えたい、見たい、知りたい、そんな学生たちの気持ちにいっぱい飛び込みながら、今年度も手話の授業を進めたいと思います。
    感謝。

    南瑠霞の手話日記より


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    先日、とある政治家の方からの依頼を受け、街頭演説の手話通訳を承りました。
    写真では、この方を一応目隠ししていますが(笑)この方ご自身は、もちろん顔出しOK!笑 
    「いつでもどこでも自分がいたことは、公開してくれ!」とおっしゃっていますが、今日は、手話の話なので、一応OFF ということで。笑
    ・・といっても、これがどなたかは、ほとんどの方にはわかるとも思うのですが・・・笑笑

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    この時の手話通訳は、私ともう一人のベテラン手話通訳士の方と二人で組んで15分交代で行いました。また、この写真は私ですが、みなさんが、いろんなSNSなどで「手話通訳士の勢いがすごかった。」「ご本人のYさんとおなじだった。」「力強かった」などとレポートしてくださっています。私だけでなく、もう一人の方も、大きくはっきりした手話で、集まった皆さん大ぜいに届くよう手話通訳をしました。
    これは、どいうことだったのか・・・
    ということについて、ちょっとお話します。

    私たち手話通訳士(者)は、通訳の際には、話の内容の正しさだけでなく、話し手ご本人の口調・語調や雰囲気、勢いごと通訳してお伝えしたいと考えています。ですから、力強く話す方なら力強い手話で、細々と話される方ではおとなしい手話で、楽しい話では笑顔なども大切に、通訳をさせてもらっています。

    この方は、当日、本当に力強く大きな声で、そこに集まった皆さん全員に届けたいという思いと口調で、また、会場の皆さんの反応も見ながら、みなさんがどよめけば、それを待ち、どなたかが「そうだ!」といえば、そこに目を向けながら話しておられたので、通訳者である私たちも、それをある程度再現できるよう努力して通訳しています。この方は、話もまとまっており、言い方がはっきりしておられた面もあり、それも手話通訳では、単語選びや表現の強さやメリハリに影響していると思います。
    つまり、この日、私ともう一人の通訳の方の手話が「激しかった(笑)」のは、話しておられるご本人が、強く燃えていたからで、私たちが勝手にノリノリで、そのように手話を付けたわけではありません。笑

    出回っている映像について、その辺も、理解しながら見ていただけると、さらに手話の見方も変わるかもしれません。ご参考にされてください。

    また、私も、もう一人の方も、他の政治家の方やそのほか様々な方からのご依頼で、いろんな場面に、通訳に出向いています。
    ほぼ、全国の通訳者の方は、政党などにも偏ることなく「通訳が必要だ」と意思表示された方のところに、平等に伺っているかと思います。
    また、聞こえない方の要望に応じ、依頼された政党通訳に行っている方もおられます。
    ですから、ほとんどの場合、皆さんが見ている政治の手話通訳者は「政党付きの通訳者」ではありません。

    政治の通訳は専門性や、きちんとした政治・社会・国際情勢への理解も必要であり、誰でもができるものでなく、少し手話を学んだだけで対応できる内容ではありません。ですから、そうした通訳がきちんとできる資格や能力のある方が、呼ばれてその場に伺っています。それは何より、聞こえない方々に、その政見や動向を知るチャンスを広げるためでもあります。
    ちなみに、現在、総理官邸、官房長官の横で通訳をしている方々は、厚生労働大臣公認手話通訳士の資格を持ち、東京都の手話通訳者として登録されている方々です。


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    (WOWOWドラマ「トップリーグ」より)

    話は、ちょっと変わって、私自身のことですが、私は、厚生労働大臣公認手話通訳士の資格を持つ、手話パフォーマーであり、女優です。

    最近、手話通訳士役を求めるドラマや番組も増え、政治などがテーマのドラマで、内容がずばり政治そのものであり、官房長官や総理の話を通訳する役をお願いしたいと、うちの事務所に依頼をいただくことも多くなってきました。そうした場面で、いきなり手話指導をして、ゼロから手話を覚えられる役者さんは 一般にいらっしゃらないからです。
    上にご紹介しているのは、そんなドラマの一場面。
    これは、官房長官付きの手話通訳の役ですので、私も、きちんと真面目な口調(手や表情の動かし方。ふさわしい単語を選んで)通訳をしております。笑
    最初の、街頭演説 の通訳とは、明らかに雰囲気が違うのがお分かりになると思います。


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    (NHK紅白歌合戦~ゴジラ渋谷来襲 より)

    以前出演させていただいた NHK紅白歌合戦~ゴジラ渋谷来襲!の時も、同様に、官房長官付きにふさわしい、官房長官と同調した表情と表現に心がけています。


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    (やわらかいイメージが求められた 公的通訳)

    一方こちらは、流れる音声も手話も「優しくわかりやすい解説女性」のイメージが求められた公的な通訳。


    そして、下は、皆さんにいつも「大好き」「面白い」といっていただく「NHK~LIFE 人生に捧げるコント」の、宇宙人総理の手話通訳士の役です。これは、いるはずのない架空の宇宙人総理のあり得ない話の、電波による光線攻撃シーンですので、当然、手話通訳士としても、総理の光線を手話で通訳しております。笑

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    (「NHK~LIFE 人生に捧げるコント」の、宇宙人総理手話通訳士 より)


    なお、いずれも、全ての手話は、内容はきちんと通訳しており、どれを見ても意味は正確にお伝えしています。
    なんちゃって通訳をしているわけではありませんので、念のため。笑


    私は、役者の1人でもありますが、基本的に手話通訳は、ご本人の口調や雰囲気ごと伝えられることが、大切なポイントの一つであると思います。
    陰気な話し方の人につけた手話通訳が、元気でにこやかだったり、声も高々にお話しされているのに、手話通訳が大人しすぎたりしては、その内容は伝わりづらくなるように思います。
    手話通訳も、言語通訳も、とても難しいことで、どれもこれも、全てうまくできるわけではないですし、どれが正解かも、その場によりその時代により変わりつつあります。私もその度色々迷いながら、工夫しながら、通訳に努力を重ねています。
    ちょっとそんなことにも目を向けてみると、取り組みも興味深く、見る方の関心も深まるのではないかと思い、今日の記事を書きました。

    私の意見は、手話通訳論の全てではないとも思いますが、参考にしてみてください。
    本当に、ありがとうございます。
     
    南瑠霞の手話日記より

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