2007年02月16日

太平洋戦争と西部劇

先に硫黄島での日米間でのすさまじい戦争について、5回に分けて連載いたしました。その又追加として、この稿をつなげたいと考えます。もういい加減してくれとおっしゃるかもしれませんが、やはりやむにやまれぬところがあります。

 私が子供時代には、アメリカ映画が津波のようになだれ込んできておりました。今でも相変わらずですが、戦後の貧しい時代には、アメリカ映画を見ることが生きる糧になっているといえるぐらいのものでした。そのなかでも、西部劇は老幼を問わず当時の人の心を捉えて離しませんでした。

 皆さんご記憶でしょうか「シエーン」という西部劇。悪辣強引な牧場主が自分の牧場を拡張したいために、周囲に住む、牧場主に嫌がらせを行いおいだしを図ります。当然、それには反発も抵抗も生じます。簡単には動きません。それどころかグループを組んで対抗してきます。これではなんともならないと、一計を案じた悪玉の牧場主は、西部きっての無頼の早撃ちガンマンを雇い入れます。そこで何をしたのかということですが、早うちガンマンが酒場にやってきた人のよい牧場主を、揶揄し侮辱し、かんかんに怒らせます。西部の男としては生きていけない侮辱を受けたその牧場主は、西欧の伝統でもある決闘を余儀なくさせられます。もちろん仕掛けた方のガンマンは、いいたいだけ言って、反応を待ちます。当然、侮辱されたほうの牧場主の手がためらいながらも、腰の拳銃に伸びます。それを待っていたガンマンは、抜く手も見せずという手練の早業で、相手を撃ち倒します。明らかな殺人なのですが、先に牧場主のほうが拳銃に手をかけたということで、ガンマンにとっては正当防衛が成り立ちます。従って法律的には、お咎めなしという結果になります。こうなれば後はどうなるかは火を見るより明らか。他の中小牧場主の結束は分解して、命が惜しければ、悪玉牧場主にいいようにされるしかないということになります。ここで映画では「シエーン」という流れ者の正義のガンマンが登場いたします。結果はめでたしめでたしとなるのはハリウッド映画の定石ですね。

 そこで注目してほしいのは、悪徳牧場主の手口です。太平洋戦争の始まりはアメリカ政府が日本に突きつけた、ハルノートと言う外交文書ですが、これは、すべての占領地区からの撤退を要求する内容のもので、当時の外交の世界ではありえない非常識な侮辱的な要求を突きつけている内容でした。ここで日本は余儀なく、勝ち負けを問わず、開戦を決意せざるを得なくなるよう追い込まれました。侮辱された弱小牧場主の立場の日本が思わず腰に手を伸ばしてしまったのです。その結果、圧倒的な力をもつアメリカは待ってましたと抜く手も見せず日本を打ち倒してしまったわけです。

 しかし、この西部劇程度の謀略にやすやすと乗ってしまうほうもだらしない話なのです。最近では、イラクのフセイン大統領ですね。アメリカが大量破壊兵器を差し出せと命令したときが分岐点でした。必ず何かのきっかけを作ります。それが、一種の罠ですね。日本も、イラクもやすやすそれに乗せられてしまったのです。日本の場合、もし、幕末の戦乱時代を生き抜いてきた人達が政権の中枢にがんばっていたならこの程度の謀略にはまることはなかったと思います。幕末の動乱のなか生き残ってきた彼らこそ、謀略のかぎりをつくしてようやく相手を倒してきた経歴の持ち主ばかりです。しかし残念ながら、昭和の16年ごろには、何の苦労もなく、純粋培養されたエリートたちが権力を握り、自らは安全なところに位置して、指揮を取るという無責任体制に堕落していた。つまり、体を張っていなかった。しかも政治も外交も、2.26事件以後ろくに機能していないという体たらく。それに引き換え、現在の北朝鮮のしたたかさは目を見張るものがありますね。だからといって、北朝鮮を賛美するなどまったくありませんが、金正日以下北朝鮮権力者たちは体を張っている。こう書けばこのあと書くことはありませんね。おそらく維新の志士たちが健在であれば、このような瀬戸際まで行かないとしても、かなりタフな交渉で、切り抜けたと思います。

shuzui at 09:19│Comments(0)TrackBack(0)

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