吾妻ひでお童話集ちくま文庫。これは、名作。吾妻ひでおのシュールな作風が非常によく出てます。
特に後半は、「エロくてカワイイつげ義春」とでも言えるほど、シュール。不条理極まりない。意味不明。意図不明。病的。夢日記的。吾妻先生らしい。
吾妻ひでおは、人間とは、男とはどういう生き物か。ということをよく理解している。それは、吾妻作品において「セックスと無気力」によって表現されている。これほど軽率で軽快で淡々としたセックスを描く漫画家は、ほかに唐澤なをきくらいしか思い浮かばないが、吾妻ひでおには唐澤なをきには全く足りていない「かわいい女の子を描く能力」があるので、これまたタチが悪・・・いや、良い。素晴らしいの一言。
人間の(というかたぶん吾妻先生の)生命の原動力である性衝動。吾妻作品にはこればかりが描かれている。淡々と、しかし確かなカタルシスを伴いながら、上質なギャグを引き連れて。吾妻作品に描かれるセックスは、常に無実であり、常にショーである。それは読者に快感と浄化以外の何物ももたらさない。
そして「無気力」。だめ人間を描かせたら天下一品。太宰が好きってだけある。人間とは元来無気力で、怠惰で、なんだかよくわからない。吾妻ひでおの無秩序で不条理な作風は、そのまんま人間の不安定さや不確かさ、デタラメさや一貫性のなさであり、ゆえに普遍性に満ちている。まさに「童話」と呼ぶに相応しい。