シグマベイスキャピタル株式会社          日経225オプションと先物取引を用いた実践的トレーディング手法
株が下がってボラティリティも上がってそろそろ始まんないかなゴールドマンのシンセティックCDO販売などについてのNY Timesの記事

2009年12月31日

証券化とデリバティブについて:不完備な市場の衝撃としての金融危機

今年は、様々な方と証券化やデリバティブ、とくにクレジット関連の話をする機会があった。その中で個人的に主張しているのが、デリバティブ商品の持つ性質の違いです。
少し昔話をする。僕は1987年、「ブラックマンデー、公定歩合2.5%で10年国債の利回りと同じ」なんてことで大騒ぎをしていた時代に、為替のオプション取引からデリバティブの世界に入った。初めて読んだまともなデリバティブの論文は、当然ブラック・ショールズのもので、大学出たての生意気な社会人1年生にとっては、「(後で勉強すると、素晴らしさがわかるんだけど)経済学ってこんなもので論文になるんですね」などと言っていた。
1987年のブラックマンデーは、ポートフォリオ・インシュランスの影響が大きいといわれていて、デリバティブ理論が引き起こした初めての大きな市場変動だったと思う。このときは、保有資産の下落を防ぐヘッジを先物で行うことが、市場の下落スパイラルを引き起こしたけど、問題になった株の世界は、現物のヘッジを先物で行うという、とてもシンプルな世界だった。
株や為替のオプションは、現物、安全資産の金利、フォワードが無裁定という条件で動的な複製による作られる。ブラックショールズ式の条件は、とてもあり得ないことが多く入っている(たとえばマルコフ性)けど、それを譲れば、オプションはヘッジ可能な商品としてプライシングが出来る。

翻ってクレジットデリバティブの世界はどうだろうか?
僕はアクチュアリー会にも準会員として属しているので、よく年金や生命保険のアクチュアリーの方々と話をするが、CDSはまさに保険である。そして、保険は完備な市場ではない。動的な複製が不可能な商品なのである。だから、死亡率やら脱退率やらに基づいて、期待値を取ることになる。そのうえで、大数の法則を使うことになる。
CDSは、格付け機関が、非常にラフな(かなりいいかげんな)見積もりにより、格付けごとの倒産率やら債権回収率をデリバティブのプライシングに入れる。これは、まさに非完備な市場の保険契約と同じである。そして、そのヘッジは大数の法則が全く効かない。もともと理屈として僕には理解できない世界だ。実際15年ほど前に僕は、クレジットデリバティブのトレーダーとしての転職の話があった時、「完備市場でないこのデリバティブがうまくいくとは思えない」という理由でお断りしたこともある。

そういった世界でのリーマンショックは、とてつもなくインパクトがある。
確か、リーマンは倒産する少し前までいわゆる「A-」のレーティングだったと記憶している。とすれば、おそらく格付け機関が見込んでいた「債権回収率」は40%ぐらいであろう(このへんは僕はクレジットの専門家ではないので、誤りがあったらご指摘ください)。
その中で、ISDAが出したCDSの清算値は8.625%だった。そんな馬鹿なって感じで、そもそも非完備なクレジットマーケットは「なにも信用できなくなった」。僕が思うに、このインパクトが金融システミックリスクを大きくした最も大きな理由ではないだろうか。

保険の世界では、大数の法則を効かした上で、資本を十分に積ませている。それが一般的にソルベンシー比率というものだけど、AIG FPは保険会社の子会社だ。彼らにとってCDSは、所要資本が要求されない保険ビジネス的な要素が強かったのではないだろうか。そういった観点からの議論があってもいいと思う。また金融規制についても以上の論点は大事なことだと考える。

そのうち、ABSについても考えてみたい。
来年も良い年にしましょう。

猪田

sigmabase at 11:29│Comments(0)TrackBack(0) 金融 

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