「さきみっくす、そのに!!」寄稿しましたので、その前日端的なSSです。

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コミックマーケット C92
当日は2日目東ツ-56b末端恐怖症さまのスペースにて委託販売しております。
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お手にとって読んでいただけると幸いです。











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春の暖かな陽気が段々と夏の蒸し暑さに変わりつつある初夏の朝は、どんな季節よりも心地のいいものである。

それが梅雨入り前となればなおさら。

今日後輩のみんなは県大会の決勝で戦う。

なので応援に行こうと思っていたところだ。

だけど琉音先輩は単位がやばいっていうし、蘭先輩はバイトだっていうし。

結局私と、しおで行くことになった。

一年前の今日も、二年前の今日も、私は出る側だった。

だけど今年からは観る側となる。

変な気持ちだな、と思いつつ集合場所でしおを待つ。

九時に駅で待ち合わせって言ったのはしおなのに、三十分経った今も来ない。

LINEも未読だしどうしようもない。

試合はもう始まっているらしく、携帯で試合の映像を見る。

「わー、もう始まってるじゃん」

ちょうど学校名と選手の名前がコールされたところだ。

内心ドキドキする。けどそれよりも、しおが来ないことが心配でもあり、悩みどころでもある。

「電話かけても出ないし……家行くか」

そうと決まれば、自転車に跨がりしおの家へと急ぐ。

試合はまだ先鋒戦。

今から行っても関係者パスを持ってる先生は中にいるし、菫ちゃんは次鋒だからそんなことで負担は掛けれないから中にはは入れないしで、結局ビューイングで見ることになるからいいんだけど。

それにしても、やっぱり変な感じだ。

後輩たちが全国の舞台をかけて戦っている。

それを私は応援しかできない。

無力感はないけど、緊張が出た時の倍では済まない。

何十倍、下手したら何百倍の緊張から手が震える。

この変な緊張を紛らわすためにも、ペダルを全力で漕ぐ事で紛らわす。

「なんで緊張してんだ私……。うあああああああああああああああああ」

大声出して落ち着いたけど……、普通に近所迷惑だな。恥ずかしい。

ピンポーーーン

しおの家の呼び鈴を押すと、本人が眠気まなこで出てきた。

「んー、なっちゃんどうしたの?」

「どうしたの、じゃなくて照ちゃんの応援」

数秒の沈黙の後、まるでこの世の終わりを聞いたかのような表情で顔が青ざめていく。

「忘れてたああああああああああああああああああああああああ」

「だろうね」

「どうしよ、どうしよ、とりあえず中上がって」

「お邪魔しますー」

しおの割と綺麗に整頓されてるなー、という第一印象を受けた。

って言っても初めて来たわけじゃないけど。

しかも何回かは私が片付けてるし。

「えー、どうしよ。早起きして誠子ちゃんにパイ作ってこうと思ったのに!」

「と、言われましても」

「目覚まし鳴らなかった? あー! 電池切れてる!!」

「騒がしいな」

「どうしよ、今から作る? 作るか!」

「がんばれー」

そういいつつ、勝手に冷蔵庫からお茶を取り出して、コップに注ぎソファに座って飲む。

携帯でずっと見てるのはパケット料とか心配だし、テレビをこれまた勝手につけて見る。

地区大会はローカルだけしかやってないかと思ったが、注目の大会ということで同じ試合をN○Kでもやっていた。

「まあ、ローカルでいっか」

しおは画面を見て、試合が始まってることに気づいたのか、また騒がしく……。

「わぁー! 試合始まっちゃってる!!」

「うん」

「急いで作らなきゃ!」

「ゆっくりでいいよー」

台所で慌ただしくしているしおを横目に、試合を見る。

「やっぱり照ちゃんすごいな」

照ちゃんの戦う姿を見て、またさっきの緊張が体の中を走る。

コップを持つ手が震え、テーブルに置く音が

ゴン!!!

少し大きくなってしまった。

「何!? びっくりした」

「ごめんごめん」

「なんか、緊張してる?」

「そうみたい」

「試合出るときはあんまり緊張しなかったのにね」

「うん」

そういってから、コップに入ったお茶を一気に飲み干す。

「二年連続で優勝したんだよね」

「そうだよー」

「三年連続がかかってるって、すごいプレッシャーだろうなぁ」

「そうだね」

「がんばってほしい」

「そう、だね」

試合はちょうど、先鋒の前半戦が終わったところだ。


「お昼ご飯どうしよっか」

「ウチにあるものでいいなら」

「じゃあ、それで」

なんだかんだでパイ作りに時間がかかっているなぁ。

お昼頃には会場にいたかったんだけど。

「パイはどうなの?」

「今焼きに入れたから、焼きあがったら完成だよー。生地作りに時間かかっちゃって。今スパゲティ作るね」

「はーい」

パスタを茹でながらソースを作るしおの料理上手っぷりは感心する。

私はがんばっても、一個ずつしか処理しきれない。

画面ではちょうど中堅戦が終わったくらいだった。

「今年もいい感じだねー」

「でも、油断はできないよ」

そんな他愛もないことを言いながら試合を見れるのも"観る側"の特権だろうか。

南二局くらいになるとめちゃくちゃ緊張するけど。

ピピピピピというタイマーの音と共に、パスタが茹で上がる。

「はい、どうぞー」

出てきたのは、カルボナーラ。

しおはとりあえずカルボナーラを作ったりする。楽なのかな? まあうまいからいいけど。

「よく寝起きで料理作れるね」

「うん、まあ、女だし?」

「いいお嫁さんになるよ」

「えー、なっちゃんだってそうだよ」

「そういうお世辞はいいです」

そういいながら、フォークに目一杯麺を巻きつけて口に頬張る。

「食べっぷりいいよね。作りがいがあるよ」

「そう?」

「うん。食べっぷりがいいと、作りがいがあるんだぁ」

「二回言ったね」

「大事なことだからね」

「それはそうと、なんか焦げ臭いんだけど、パイ大丈夫?」

そういうと、しおは慌てて台所へ駆け戻る。

「あーーーー、焦げちゃったぁ。どうしよ」

数秒待ってから、一度スパゲティを食べ、焦げたパイをかじる。

「うん、途中で買っていこう」

「初めからそうしたらよかったんじゃ……」

「そうともいう」

「そうとしかいわんわ」

「じゃあ食べ終わったら行こうか」

「そうだね」

しおの天然さには、自然に笑みがこぼれる。

そこで自分の顔が、まだ緊張してることに気づいた。

「これじゃ、応援に行ってもプレッシャー増やすだけだな。リラックス、笑顔笑顔」

「なんか言った?」

「ううん、何も」

これじゃ、私が応援されてるみたいじゃん。

今度は私が応援する番なんだから。

「私、ドーナッツが食べたくなっちゃったな」

「じゃあ、一緒に買って持ってこうか」

ちょうど副将戦終了の合図が鳴った瞬間にテレビを消し、出発する。



今、白糸台高校の真価が問われる――――










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あとがき
 と、いうことです。
 いざ、本当に本が出るとなるとちょっと緊張します。
 この話を読んでから本編読んでもいいし、本編読んでからこっち読んでもいいし、ってな感じで。
 まあ、こっちはあまり深い内容ではないので、裏でこんなことありましたよ的な感じなので、あの、期待感を膨らませて頂ければ(自らハードルをあげる)
 とは言っても、自分史上かなり上位に食い込むんじゃないかってくらいしっかり作ったので、できるだけ多くのみなさんが読んでくれたらいいなと思います。
 VRIさんの絵も、かなり素晴らしいものなので、是非見て欲しいですね。
 特に、あのいt……。おっと、ここでは言えませんよ。
 いやー、発売前にめっちゃ見てるのは役得だなー。
 優勝めざしてがんばるぞ!(だからそういう企画じゃない)
 そんな感じで、お願いします。