1月31日付のジャカルタ・グローブ紙は、クレディ・スイス銀行グループが行った市場調査の結果を報道しています。
この調査は、インドネシア全土の1531人から回答を得ていますが、その66%は都市生活者、34%は地方生活者です。
その回答によると、64%のインドネシア人が今後12ヶ月以内に収入の増加があると予想しています。クレディ・スイス・インドネシア証券の株式調査部長であるエラ・ヌサントロ氏は、「収入の増加分は、衣料品や携帯電話といった商品の選択に個人の嗜好が反映されやすい分野で消費されることになろう。」と述べています。
同氏によると、2012年に、インドネシア人によるファッション分野の支出は対前年比約25%増加しています。他方で、日常生活用品やインスタント麺への支出は減少しているそうです。
先の調査によれば、住宅と自動車に関する需要は増大しており、回答者の約30%は12ヶ月以内に新しい住宅か自動車を購入するつもりであるとしています。また、過半数の回答者は、携帯電話をスマートフォンに買い換えるつもりのようです。
エラ氏は、このような消費動向は、アストラ・インターナショナル(Astra International)社のような自動車会社や、自動車ディーラーであるミトラ・アディペルカサ(Mitra Adiperkasa)社、そして携帯電話販売のエラジャヤ・スワセムバダ(Erajaya Swasembada)社、更には自動車関係の金融に強いセントラル・アジア銀行(Bank Central Asia)に利益をもたらすであろうと述べています。
http://www.thejakartaglobe.com/business/rising-income-burning-a-hole-in-indonesias-pocket/568654#Scene_1
記事の概要は以上のようなものですが、「回答者の約30%は12ヶ月以内に新しい住宅か自動車を購入するつもりである」とは、どういうことでしょうか。
人口の3割もの人々が今後1年の間に家を建てるか、自動車を購入するとすると、人口2億4000万人のインドネシアでは、数千万軒の家と数千万台の車が今後1年で増えることになりますが、どう考えてもそんなことは不可能でしょう。少なくとも、車については走らせる道路が足りません。昨年の自動車販売台数が110万台であったということから見ても、回答者たちの回答は非現実的です。
他方で、今後1年間に収入の増加を見込んでいる人が64%ということは、残りの36%は収入の増加を見込んでいないということになりますが、最低賃金の引き上げで、インドネシア全土で平均3割前後の賃上げが今年中に見込まれている状況で、人口の3分の1以上が賃上げから取り残されるというのも考えにくいことです。
アンケート調査というものは、設問の書き方や対象者の絞り込み方で集計結果が大きく左右されるというのは常識ですが、もう少し現実的な集計結果が得られるように設問の方法等を工夫する必要があるのではないかと思います。
とくに、この市場調査は、インドネシアだけでなく、ブラジルやロシア、中国、インドなどの新興国で実施して、その結果を国際比較に使用しているようですから、精度向上の必要性はなおさら大きいと思われます。