田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

2013年01月

1月31日付のジャカルタ・グローブ紙は、クレディ・スイス銀行グループが行った市場調査の結果を報道しています。

この調査は、インドネシア全土の1531人から回答を得ていますが、その66%は都市生活者、34%は地方生活者です。


その回答によると、64%のインドネシア人が今後12ヶ月以内に収入の増加があると予想しています。クレディ・スイス・インドネシア証券の株式調査部長であるエラ・ヌサントロ氏は、「収入の増加分は、衣料品や携帯電話といった商品の選択に個人の嗜好が反映されやすい分野で消費されることになろう。」と述べています。


同氏によると、2012年に、インドネシア人によるファッション分野の支出は対前年比約25%増加しています。他方で、日常生活用品やインスタント麺への支出は減少しているそうです。


先の調査によれば、住宅と自動車に関する需要は増大しており、回答者の約30%は12ヶ月以内に新しい住宅か自動車を購入するつもりであるとしています。また、過半数の回答者は、携帯電話をスマートフォンに買い換えるつもりのようです。


エラ氏は、このような消費動向は、アストラ・インターナショナル(Astra International)社のような自動車会社や、自動車ディーラーであるミトラ・アディペルカサ(Mitra Adiperkasa)社、そして携帯電話販売のエラジャヤ・スワセムバダ(Erajaya Swasembada)社、更には自動車関係の金融に強いセントラル・アジア銀行(Bank Central Asia)に利益をもたらすであろうと述べています。

http://www.thejakartaglobe.com/business/rising-income-burning-a-hole-in-indonesias-pocket/568654#Scene_1


記事の概要は以上のようなものですが、「回答者の約30%は12ヶ月以内に新しい住宅か自動車を購入するつもりである」とは、どういうことでしょうか。


人口の3割もの人々が今後1年の間に家を建てるか、自動車を購入するとすると、人口2億4000万人のインドネシアでは、数千万軒の家と数千万台の車が今後1年で増えることになりますが、どう考えてもそんなことは不可能でしょう。少なくとも、車については走らせる道路が足りません。昨年の自動車販売台数が110万台であったということから見ても、回答者たちの回答は非現実的です。


他方で、今後1年間に収入の増加を見込んでいる人が64%ということは、残りの36%は収入の増加を見込んでいないということになりますが、最低賃金の引き上げで、インドネシア全土で平均3割前後の賃上げが今年中に見込まれている状況で、人口の3分の1以上が賃上げから取り残されるというのも考えにくいことです。


アンケート調査というものは、設問の書き方や対象者の絞り込み方で集計結果が大きく左右されるというのは常識ですが、もう少し現実的な集計結果が得られるように設問の方法等を工夫する必要があるのではないかと思います。

とくに、この市場調査は、インドネシアだけでなく、ブラジルやロシア、中国、インドなどの新興国で実施して、その結果を国際比較に使用しているようですから、精度向上の必要性はなおさら大きいと思われます。

ジャカルタ・ポスト紙によると、インドネシア政府は、2013年に約170兆ルピア(約1.6兆円)を製造業に投資する計画であるとのことです。

同紙は、単に「製造業(manufacturing)」「投資する(invest)」としか記載していないので、一体どのような基準で、どのような種類の製造業に、どのような方法で政府資金を投入する予定なのか、さっぱり分かりません。

「tax holiday incentives」という言葉も見えるので、税の優遇措置も「投資」に含まれるのだろうな、くらいの想像が出来るだけです。そうだとすると、「investment」を「投資」と訳すのが間違っているのかもしれません。長ったらしくなりますが、製造業に「政府資金で優遇措置を講じる」とでも訳したほうがよいのでしょう。


ともかくも、同紙のいうところの製造業について、政府は今年は7.1%の成長目標を設定しているので、昨年比9.68%増しの予算措置を講じるのだそうです。 

インドネシアに詳しい人であれば、このような大雑把な記事を読んでも記事の要点を正確に理解できるのでしょうか。


7.1%の成長目標(targets of expanding the industry by 7.1 percent)、といっても、売上高で計測するのか、生産量なのか、はたまた付加価値で計測するのか、どうもよく分かりません。


しかし、まあ、政府が製造業の育成のために国家予の面で優遇措置を講じる計画であり、その金額が約1.6兆円ほどにも達している、ということは私にも分かります。

私の理解が不十分なので、原文を下に添付しておきます。


「この記事はこう読むんだ」とご教示くださる方がいらっしゃれば、

tamuratetsutaro@gmail.com

にご一報下さい。別途、当ブログでご紹介させていただきます。


Govt to invest Rp 170t in manufacturing

The Jakarta Post, Jakarta | Business | Wed, January 30 2013, 5:55 AM

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The government wants to invest Rp 170 trillion (US$17.55 billion) in manufacturing this year, Industry Minister MS Hidayat says.

“We will see the realization of a lot of big projects this year, including those that have applied for tax holiday incentives,” Hidayat told reporters at the ministry on Tuesday. The manufacturing investment for 2013, which would be up 9.68 percent from last year, would help the government meet targets of expanding the industry by 7.1 percent.

Last year, overall investment touched a new record of Rp 313.2 trillion, and was higher than an initial target of Rp 283.5 trillion, according to the Investment Coordinating Board (BKPM).

http://www.thejakartapost.com/news/2013/01/30/govt-invest-rp-170t-manufacturing.html



ジャカルタ・グローブ紙によると、1月初旬に起きた洪水の影響で、インドネシアの1月のインフレ率は1.1%(前年同月比では4.6%)と、前月(2012年12月)の0.5%(同4.3%)から上昇したとインドネシア銀行が公表したそうです。


Bank Central Asia関係者によると、特に、値上がりが目立つものとして、牛肉は、1月中に20%値上がりして平均的な牛肉では1kgあたり約86,000ルピア(約800円)に、タマネギは同57%上昇して1kgあたり約20,000ルピア(約190円)に達したとのことです。同関係者は、1月の対前年同月インフレ率を4.68%と見込んでいます。


シンガポールに拠点を置くOCBC Bank関係者は、この見通しに賛同し、1月の対前年同月インフレ率を4.6%と予想しました。


インドネシア政府の2013年通年でのインフレ・ターゲットは4.9%です。他方、インドネシア銀行は、3.5%ないし5.5%という2013年通年でのインフレ・ターゲットを今のところは変更しない模様です。


ジャカルタ・ポスト紙によると、インドネシア最大のセメント・メーカーであるセメン・インドネシア社(Semen Indonesia 株式コードはSMGR)は、同国東部地域におけるセメント重要の増大に対応するために、2013年中にセメント・パッキング・プラントの増設を計画しているとのことです。

同社は、その20番目のパッキング・プラントを先週25日にパプア州ソロンで開業しました。建設費は1600億ルピア(約1700万ドル)とのことです。そのプラントは、1時間当たり120トンのセメントを2200袋にパッキング可能であり、1万トンの貨物船が接岸可能な港も併設しているそうです。

同社は、更に3つのパッキング・プラントを今年中に完成予定で、各プラントの建設費は、1000億ルピアないし1500億ルピアと見積もられています。これら3プラントを含め、同社は、2015年までにパッキング・プラントの総数を28にまで増やす予定です。同社は、現在、年間2600万トンのセメント生産能力があり、2012年中に国内市場で販売したセメントは、前々年から15%増大して2248万トンに達しています。

インドネシア・セメント協会によると、2012年の同国のセメント需要は約5500万トンで、前々年から14.5%増大しています。需要量の過半はジャワの需要(3038万トン)であり、同国東部における需要はまだ全体から見れば少ないといえますが、その伸び率は顕著であり、マルクとパプアの需要量は、前々年から約55%も増大して122万トンに達していますし、カリマンタンでは、同21.3%増大して408万トンに達しています。


ところで、年間5500万トンのセメント消費量というと、2010年の日本におけるセメント消費量が4200万トンですから、それよりやや多い水準ですが、国民一人当たりの消費量はというと、現在の日本の7割弱(約0.23トン)ということになります。1990年ころの日本は、現在の2倍程度のセメントを消費していましたから、そのころの日本人は、一人当たりで、現在のインドネシアの3倍ほどのセメントを消費していたことになります。

これを中国と比較すると、2010年の中国におけるセメント生産量(消費量のデータが手元にないので生産量を消費量とほぼ等しいと仮定します)は約19億トンですから、人口一人当たりにすれば約1.4トン、インドネシアの6倍ほども消費しています。

道路や港湾などの社会インフラが未整備な状況を改善しようとすれば、インドネシアは、少なめに見ても一人当たり年間1トン前後のセメント消費が必要なはずです。逆に言うと、インドネシアのセメント・メーカーは、当面の間は洋々たる国内市場を抱えているといえると思います。

1月26日のジャカルタ・グローブ紙によると、今週、IMFが世界全体の2013年の経済成長見通しを0.1%引き下げて3.5%とし、インドネシアを含む新興諸国の成長率も0.1%引き下げて5.5%と改訂したたにもかかわらず、インドネシア財務省のバムバン財政政策局長は、2013年のインドネシアの経済成長率は、6.6%から6.8%の間になるだろうとの強気の見通しを示しました。

同局長の見通しが当たるとすれば、1996年以降、インドネシアの経済成長率が最高であったのは2011年の6.5%ですから、2013年はそれを上回る極めて高い成長が実現されることになります。

同局長は、インドネシア経済は、海外からの直接投資(FDI)の増大をテコに力強く継続するという見解を有しています。2012年、同国のFDIは前年比25%増大して313兆ルピアに達しましたが、同国の投資調整委員会(BKPM)は、2013年のFDIは更に38%増大して390兆ルピアになると見ています。

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