田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

2013年02月

インドネシアの株価指標であるジャカルタ総合指数(JCI)は、2月27日の終値が4716、28日は午前中に4760を超えました。これは、JCIが始まって以来の高値です。

ジャカルタ・ポスト紙によれば、JCIが4600を超えたのは2月15日でしたから、半月ほどの間に100ポイント上昇したことになります。

外国人投資家がジャカルタ市場につぎ込んだ資金は、2月27日だけで8000億ルピア以上、今年はじめから2月27日までの約3ヶ月の間に約16兆ルピアの買い越しになっていますが、この数字は、2012年1年間の外人買い越し額である15.9兆ルピアをすでに上回っています。

ルピア相場のほうも、2月に入ってからは対ドルで0.6%上昇しており、これはアジア通貨の中ではもっとも高い伸びであるとのことです。

http://www.thejakartapost.com/news/2013/02/28/jci-passes-4700-mark-inflow-foreign-funds.html
 

ジャカルタ・ポスト紙によると、インドネシアの経済指標のひとつである2013年1月のカディン・ロイ・モルガン消費者信頼感指数(Kadin-Roy Morgan Consumer Confidence)が、158.7と史上最高を記録しました。

同指数は、2009年はじめには117.4、2010年はじめに121.6、2011年はじめに138.9と上昇を続け、2012年1月に147をつけたあと同年2月に136.8と急降下しましたが、その後徐々に上昇を続け、2013年1月についに158.7にまでたどりついたというわけです。

インドネシアの経済状況を計る消費者信頼感指数には、カディン・ロイ・モルガンの指数のほかに、インドネシア銀行のものもありますが、こちらは、2012年1月に119.2の最高値をつけたあと2012年4月に102.5の底をつけ、その後上昇に転じていますが、2013年1月の値は116.2と、まだ2012年1月の値を破ってはいません。

2013年1月のカディン・ロイ・モルガン消費者信頼感指数は、インドネシア全土における14歳以上の男女2035人の対面調査の結果に基づいています。

この1月の調査では、93%の人が今後5年間のインドネシア経済は良好である(have good times)と考えています。63%の人は、大きな買い物をするのに今は良いときである、と考えています。国も、個人も、経済的には申し分のない状況であるということです。

http://www.thejakartapost.com/news/2013/02/26/analysis-new-record-confidence-sets-tone-2013.html

この状況を背景に、インドネシアの識者たちは、自国の経済成長の妨げとなっている燃料補助金を削減して、インフラの建設を促進すべきであるという見解を表明しています。誰が考えても、この見解は正論でしょうが、2014年の選挙を控えて、その実現は容易ではないでしょう。しかし、仮に、燃料補助金の削減とインフラ建設の促進が実現したら、ただでさえバラ色のインドネシア経済は、とんでもなく発展する可能性があります。バラ色よりずっと気持ちよさそうな色って、どんな色なのでしょうかね。

インドネシアの英字新聞を読んでいると、スクク(Sukuk)と称するイスラム・ボンドが記事に出てきます。

たとえば、2月26日のジャカルタ・グローブの記事には、インドネシア政府が、2月7日から2月2日の間に、約15兆ルピア(約15億ドル)相当のスククを国内で売りさばいて、財政赤字を補ったという記事が出ています。2013年の財政赤字は、153兆ルピアと予想されていますから、その1割程度がまかなえたことになります。

http://www.thejakartaglobe.com/economy/indonesian-government-raises-15-billion-from-sukuk-sale/573995

このススクのクーポン(配当)は、6%であったそうです。インドネシア政府の2013年通年でのインフレ・ターゲットは4.9%ですし、政府が発行する以上、国債と同様の信頼性があると思われますから(記事には信頼性に関する記述がないので断言はできませんが)、ローリスク・ローリターンの投資先ということになりましょう。このスククは、個人向け商品だそうですが、売れ行きは好調であったそうです。

wikipediaによると、スククは、イスラムのシャリア(イスラム法やイスラム社会の慣習を含むイスラムの掟の集合体)に従った形で発行される証券で、金利を禁じたシャリアのもとでもムスリムが投資することが可能であるとのことです。

http://en.wikipedia.org/wiki/Sukuk

日本でもREITのような証券化商品が市場で取引されていますが、スククもイメージとしてはこのような証券化商品と類似しているようで、一定の資産等から生じるキャッシュ・フローを証券という形に形成したもののようです。イスラムにおいては、「金が金を生む」という意味での「金利」は禁止されていますが、投資に対する配当は禁止されていないので、REITのような証券化商品は投資可能というわけです。

今回インドネシア政府が売り出したスククは、ルピア建てでしたが、今後はドル建てのスククも売り出す予定だそうです。


ジャカルタ・グローブ紙によると、急激な賃金上昇、ルピア相場への不安、2014年に控えた国政選挙への不安にもかかわらず、国際的な格付け機関であるフィッチ・レイティング(Fitch Ratings)は、インドネシア経済の将来を楽観する内容のレポートを発表したとのことです。

同レポートの中で、フィッチは、

「国際的な格付けを得ているインドネシア企業は、2013年を通して、消費者層の購買力拡大から利益を受けることになるだろう。賃金上昇によって利益率は減少するかもしれないが、企業が生み出すキャッシュ・フローの絶対額が減少したり、各種経営指標が悪化することはないだろう。」

「内需型企業の長期的な見通しについては、目下増大しつつある国内の消費者層の購買力と密接に関連しており、インドネシアにおける若年層の多い人口構造やミドル・クラスの成長を見れば、ポジティブな見通しを得ることになる。」

「賃金が上昇しているといっても、インドネシアの賃金は、東南アジアの新興諸国においては相対的に低いレベルにとどまっている。」

「賃金上昇のプラス面を見れば、国内消費者の可処分所得増大の影響を受ける種類の企業を潤すことになる。」

と述べています。

http://www.thejakartaglobe.com/markets/fitch-upbeat-despite-wages-rupiah-fears/573163

ジャカルタ・ポスト紙によると、外国人によるインドネシアの銀行株式持分(持ち株比率)は、25%ないし49%までに制限されることになる可能性があるとのことです。

インドネシア国有ネガラ銀行のヘッド・エコノミストであるリアン・キリアント氏は、2月20日、この持分制限が49%以下になるだろうと述べたとのことです。

他方で、インドネシア下院で金融・銀行行政を担当している委員会のハリー・アザル・アジズ副委員長は、この持分制限の上限値については、まだ決まっていない、と述べています。同副委員長は、「上限値が49%になるのか、25%になるのかは、これから決めることになる。委員会では、この上限値の所管がインドネシア銀行になるのか、それとも金融サービス庁になるのかさえ、いまだに合意に達していない。」と述べています。

マレーシアでは、この上限値は17%ですし、あのリベラルなオーストラリアも、この上限値は35%です。

http://www.thejakartapost.com/news/2013/02/20/govt-urged-limit-foreign-ownership-banking-sector.html


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