田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

2013年03月

3月28日のジャカルタ・グローブ紙は、燃料補助金に関する新政策のせいで、インドネシアの債券と通貨ルピアが下落しているとの見方を伝えています。

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesian-bonds-complete-worst-quarter-in-2-years-rupiah-drops/582521

この記事によりますと、2013年2月には8.43兆ルピアのインドネシア債券を投資家たちは購入したのに、3月は、26日までの間にたったの0.16兆ルピアしか債券が買われていないとのことです。

債券の下落幅は、過去2年間で最大であり、ルピアは下落が7四半期目にはいり、1998年以来最長期間の下落局面にあるとのことです。

その背景として同紙が取り上げているのが、近々に実施が予想されている燃料補助金に関する新政策です。

この新政策の具体的内容は、いまだ明らかになっていませんが、国家財政に過重な負担となっている燃料補助金を削減するために何らかの新しい仕組みが採用されると予想されています。そうなれば、燃料価格の上昇は避けられません。

この新政策がいまだ実施されていないにもかかわらず、2013年2月の物価上昇率は5.31%と過去20ヶ月で最高の値を記録していますから、それが実施されれば、インフレに拍車がかかるのは間違いないと見る投資家が多いようです。

インフレ・リスクが高まれば、債券や通貨が下落するのは自然なことです。それを嫌ってこれまでの燃料補助金政策を継続すれば、財政赤字は膨れ上がり、インフラ建設資金は燃料補助金に蝕まれ、貿易赤字も拡大するという何としても回避したい弊害が待っています。

ここは、一定の限度でインフレを受け入れてでも燃料補助金は削減していかねばならないでしょう。問題は、その削減の速度と方法です。インドネシア政府の手腕が試されているようです。




インドネシア株式市場は、3月末になっても史上最高値を更新し続けていますが、3月27日のジャカルタ・グローブ紙は、それを現財務大臣アグス・マルトワルドジョ氏の次期中央銀行総裁就任可能性増大と結びつけています。


http://www.thejakartaglobe.com/markets/indonesian-shares-hit-record-high-with-agus-approval-for-bi/582305


アグス氏のインドネシア銀行総裁就任は、まだ決まったわけではありませんが、国会における承認手続きは前進しています。そのことを受けて、株式市場が高騰を続けているというのが同紙の見立てのようです。


その見立てにどれほどの真実性があるのか、私にはよくわかりませんが、日本でも日本銀行の黒田新総裁就任と株価上昇との関係を因果律で結びつける人はいるでしょう。


日本とインドネシアで状況が大きく異なるのは、日本では、黒田氏が中央銀行総裁に就任するまでの歴代の日銀総裁たちが、永年にわたってデフレ政策を継続するという大きな過ちを犯し続けてきたことでしょう。


インドネシアに限らず、世界中どこの中央銀行も、白川総裁までの日本銀行が犯したような明白で重大な過ちを犯したことはありません。そのことは、世界の主要国の中で、日本だけがこの20年間にわたってデフレから脱却できなかったという事実が証明しています。論より証拠、というべきです。


日本では、バブルが崩壊し、デフレ経済が発生した20世紀末以来、自殺者の数が年間3万人を超えています。バブル崩壊以前の自殺者の数と比較すると、年間1万人以上がデフレ経済のせいで殺されてきたとも考えられます。


自殺者の増大だけではありません。デフレ経済下での企業による非正規労働者増大策も、若者たちの就職難も、その全ての責任は、デフレを放置してきた歴代の日銀総裁にあると考えることは、行き過ぎとは言えないでしょう。


しかし、白川日銀は終わりました。元が最悪だったのですから、日銀が普通の中央銀行になっただけでも、これからの日本には輝かしい可能性があります。


日本の若者たちは希望を持つことができるはずです。


インドネシア上場企業の中でも特に時価総額の大きいユニリーバ・インドネシア社(Unilever Indonesia :スティッカーはUNVR)の2012年決算は、売り上げも純益も対前年比16%の増加となりました。

売り上げは、23.4兆ルピア(約2300億円)から27.3兆ルピア(約2700億円)に増大、純益は4.16兆ルピア(約410億円)から4.84兆ルピア(約480億円)に増大しました。

しかし、同社の株価は、2012年9月14日に28500ルピアをつけたあと、12月中旬には20000ルピア近くに暴落し、その後は22000ルピア前後を低迷する状況が続いており、最近のインドネシア株高騰の波には乗っていません。

これは、12月に大株主のユニリーバ社(オランダとイギリスに本拠を置く多国籍企業)が、UNVRに対するロイヤリティの徴収率を引き上げたのが原因です。

ロイヤリティ引き上げによって利益率の悪化を予想した株主たちが売りに走り、その後も人気が出ないのです。

金の卵を産む鶏に、1年間に何個の卵を産ませるか、産ませれば産ませるだけ飼い主は儲かりますが、産ませすぎれば鶏の健康を損ねます。

同社は、2012年までのところは屈指の有望企業であったのでしょうが、少数株主の意向を無視した大株主の行動が目に余るようになれば、その評価に異論が生じる可能性が高くなると思われます。




かつては、石油の輸出国であったインドネシアは、国内における石油消費増大により、2004年に石油の純輸入国となりました。それ以降、同国は、輸入石油のために膨大な費用を石油輸出国に支払ってきています。

この石油輸入費用を抑制するには、石油に代わる国産のエネルギー源を活用することが必要です。国産のエネルギー源として、もっとも豊富にあるのは石炭ですし、インドネシアは一般炭の輸出量において世界一の地位にあります。

しかし、悲しいかな、石炭では発電はできますが、車を走らせることはできません。

では、天然ガスはというと、天然ガスなら、燃料コンバーターを車に設置すれば、車を走らせることが可能です。

インドネシアは、天然ガスも豊富に存在しますが、その輸送は容易ではありません。何しろ、気体のままではかさばりすぎます。パイプラインがあれば、気体のままでもどんどん輸送できるのですが、エネルギー消費の中心地であるジャカルタと天然ガスの産出場所は遠く離れているため、その間をパイプでつなぐことは現実的でないのです。

だとすれば、天然ガスを液化して体積を大幅に小さくして運べばよいのですが(液化すれば、堆積は約600分の1になります)、そのためには、液化天然ガスの生産、積み込み、荷揚げのための設備が必要となります。何せ、氷点下162度まで冷却しなければ気体の天然ガスは液体にならないので、設備に金がかかるのです。

これらの設備がなかなかできないので、同国では天然ガスの利用が十分に進んでいないのが実情です。

しかし、石油輸入に使用される財源は、もはや無視できない規模になっているため、動きの遅い同国政府も、さすがにガス利用促進策を講じつつあります。

その代表が、政府によってジャカルタに設置が進められている自動車用天然ガス・ステーション(SPBG)です。市内数十箇所にすでに設置され、2013年には更に33箇所の増設が計画されています。

供給設備だけでは利用促進はできないので、インドネシア政府は、公共交通機関が石油系燃料に変えて天然ガスを使用できるような措置も講じつつあります。

このような政策が進展していけば、ガス・ステーションに天然ガスを供給するPGN(プルサハン・ガス・ネガラ=Perusahaan Gas Negara :株式コード=PGAS)の売り上げも更に拡大することでしょう。

ただし、インフラ建設の必要性や多大なメリットを理解してはいても、実際に建設する作業はもどかしいほど遅いのがインドネシアの常ですので、この件もどの程度実際にはかどるのかは、楽観できません。

PGN(プルサハン・ガス・ネガラ=Perusahaan Gas Negara :株式コード=PGAS)は、インドネシアでガスの流通業を営む国有企業です。

国の持ち株比率は53%で、残りの47%をインドネシア政府以外の株主が保有しており、かつ、そのうちの外人持分比率は8割程度あります。

同社の2012年の売り上げは約25.8億ドルで、前年の22.3億ドルから16%増加しています。

純利益のほうは、2012年が8.91億ドルと2011年の6.81億ドルから31%増大しています。

同社の2008年の売り上げは約13.2億ドル、純利益は約0.65億ドルでしたから、過去4年間で売り上げは約2倍、利益は約14倍に伸びていることになります。

そもそも、売上高純利益率が35%もあるというのは、何としたことでしょうか。国有の公益事業がこんなに儲かってよいものでしょうか。

とはいえ、2011年の実績で、配当性向は55%ありますから、たっぷり儲けて気前よく配当しているわけで、大株主であるインドネシア政府としては、悪い話ではありません。

外人株主も同様に潤っているように見えますが、同社の株価は1株5500ルピア(3月22日終値)と結構高いので、今から株を買ったのでは、1株135ルピアの配当(2011年実績)と株価の2.45%にしかなりません。

2012年は利益が増えているので、3割程度の増配となる可能性があり、仮にそうなった場合には、配当は3%強ということになりそうです。


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