田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

2013年04月

インドネシア最大の自動車販売業者であるアストラ・インターナショナルの2013年第1四半期決算は、悲惨なものとなった模様です。

4月25日付ジャカルタ・グローブ紙によると、同社の第1四半期売り上げは、前年同期比1%増えて46.7兆ルピア(約4700億円)になったものの、純利益は同7%減少して4.3兆ルピア(約430億円)にとどまったとのことです。

同社の利益の半分を占める自動車販売部門の第1四半期純利益は、前年同期比10%減少して2.2兆ルピア(約220億円)となりました。

インドネシア全土における自動車販売は、この第1四半期は、前年同期比20%のびていますが、アストラは市場シェアが前年末の54%から52%へと低下したことにより、販売の伸びが抑え込まれた形となっています。

アストラのファイナンス部門の第1四半期は、純利益が23%増えて1兆ルピア(約100億円)に達しています。

同社の重機部門の第1四半期純利益は、主として石炭等の鉱業向け需要の低迷により、26%減少して約7000億ルピア(約70億円)となっています。

同社の農業部門の第1四半期純利益は、主としてパーム油の価格低下により6%減少して、約3000億ルピア(約30億円)となっています。

同社のインフラ部門と流通部門の第1四半期純利益は19%減少して1240億ルピア(約12億円)となっています。

結局、同社の第1四半期決算の足を最も強く引っ張ったのは、利益の半分を占める自動車販売部門の不振ですが、同社はその原因を競争の激化としています。実際、年率20%もの勢いで増える自動車販売には、誰も彼も参入したくなるのは当然で、競争激化は自然な流れです。

しかし、それが自然であればあるほど、アストラは、何か新しい手を打たない限り、シェア減少を食い止めることは困難なのではないでしょうか。

http://www.thejakartaglobe.com/business/astra-international-endures-a-horror-first-quarter/587903
 

4月23日付のジャカルタ・ポスト紙によると、インターナショナル・インドネシア銀行(BII、ティッカーはBNII)は、2012年決算において、配当をゼロとすることを株主総会で決定したとのことです。

2012年決算の同行の1株利益は21ルピア(純益全体では約1.2兆ルピア=約120億円)と2011年の数字からほぼ倍増しており、最近の株価が420ルピア前後であることを考えれば、そこそこ稼いでいるといえると思えますが、同行経営陣は、あえてこの利益を配当せず、クレジット事業を拡大していくために使用する方針であるとのことです。

更に、前年の純利益をつぎ込むだけではなお足りず、同行は、5月に1.5兆ルピア(約150億円)を新株発行により調達する計画も有しています。

クレジット事業を拡大するのになぜそんなにお金がかかるのかは素人の私には良く分かりませんが、あの生活の楽そうな楽天的で豊かな国で、人々にクレジット生活の癖がつけば、何でもかんでもクレジットで買うようになるのではないか、という気はします。

同行の名前には「インターナショナル」という言葉が入っていますが、目の付け所はずいぶんとドメスチックなのではないか、とも思われます。

無配の決定がなされたのは、4月22日の株主総会でしたが、同行の株価は、その日に少し上げた後、また少し下がっています。無配による事業拡張は、投資家にとって、想定の範囲内ということだったのでしょうか。

http://www.thejakartapost.com/news/2013/04/23/bii-retains-profits-credit-growth.html

4月22日付のジャカルタ・グローブ紙によると、インドネシアの2013年第1四半期は、投資が前年同期比31%増加して、93兆ルピア(約9300億円)に達したとのことです。

この93兆ルピアの内訳は、65.5兆ルピアが海外からの投資であり、残りの27.5兆ルピアが国内投資です。

海外からの投資は、前年同期比27%の増加、国内投資は40%の増加となっていて、国内投資の増加が顕著です。

道路や港湾等の社会インフラの整備不足が経済発展の最大の障害となっているインドネシアのことですから、国内投資が増大するのは海外からやってくる企業にとっても不可欠かつ重要なことです。日本人投資家にとっても、インドネシア政府には、せいぜいがんばってもらいたいものです。

2012年の実績では、インドネシアのGDPのうち、63%が内需、33%が投資でしたから、第1四半期だけとはいえ、その投資が3割も増えるというのは、2013年全体を通してのインドネシアの経済成長に明るい予測を展望させると思われます。

http://www.thejakartaglobe.com/corporatenews/indonesia-investment-rose-last-quarter-as-volkswagen-plans-entry/587326

原油や金といった資源の価格下落が続いているおかげで、かつては石油輸出国、今では石油輸入国となったインドネシアの経済が潤っています。

4月19日付のジャカルタ・グローブ紙によると、3月までの第1四半期には3.1%の損失を出した米ドル建てインドネシア債券は、4月には2.7%の利益を産み出しそうです。

2012年には約220億ドルもの財政支出を要したインドネシア政府の燃料補助金ですが、ブレント原油の価格がここ2ヶ月で16%値下がりしたため、2013年の燃料補助金用財政支出は、大幅に軽減されそうです。この見通しが、インドネシアにおける債券投資を有利にしています。

インドネシアの債券投資を有利にしているのは、資源価格だけではありません。黒田日銀が桁外れの新政策を実施し始めたため、新たに供給された資金の有利な運用を求めて、インドネシアのルピア建て債券にもその資金が流れ込んでいるそうです。

先週のルピア相場は1ドル=9722ルピアでしたが、2013年末には1ドル=9688ルピアまで値上がりするだろうというのがブルームバーグの集計した24の予想値の中央値です。

http://www.thejakartaglobe.com/economy/indonesia-bonds-go-from-worst-to-first-as-oil-declines-asean-credit/586756

日銀の新政策は、周囲の国々を窮乏化させる、という意見と、逆に、周囲の国々をも潤す、という意見が対立していますが、少なくともインドネシアに関しては、日銀が供給する資金がインドネシアの債券を買い上げ、ルピアの価値を引き上げ、インドネシアの原油輸入や燃料補助金に関する財政負担を緩和し、インドネシア経済全体に大きなプラス効果を与えているように見えます。

ジャカルタ・ポスト紙によると、インドネシアのガス販売企業であるプルサハーン・ガス・ネガラ(Perusahaan Gas Negara=PGN、ティッカーはPGAS)PGN、ティッカーはPGAS)は、2012年12月期の決算に関して、配当を1株203ルピアと53%増配することを株主総会で決定したとのことです。

同社の2012年の純利益は、2011年に比べて30.8%増加していますが、配当の増加がそれを上回るのは、当然ながら配当性向を高めた結果です。

同社の配当性向は、2011年でも十分に高かったのですが、2012年12月期決算においては、配当性向が59%に達しています。何と気前の良い会社でしょう。

この会社の過半数の株はインドネシア政府が所有しており、いわゆる国有企業ということになりますが、中国の国有企業が株主無視の低配当なのに比較すると、実に可愛気のあることです。

配当が支払われるのは5月末頃だそうですが、株主はうれしいでしょうね。どうせ株を持つなら、増収増益プラス大増配のこんな株でしょう。

なお、この記事は、主として同社のガス・パイプラインの延長計画を取り上げたもので、増配情報はおまけのように文末に記載されていますが、私としては、パイプラインの延長計画よりも増配の方が重要な情報と思えたので、パイプラインの延長計画については割愛させていただきます。興味のある方は、原文をご参照ください。

http://www.thejakartapost.com/news/2013/04/18/trans-sumatra-java-bali-pipeline-ready-2021.html

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