田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

2013年09月

9月26日にご紹介した化粧品市場ほどではありませんが、インドネシアでは、生命保険市場も、かなりなブルーオーシャンのようです。

 

928日のジャカルタ・グローブ紙によりますと、2013年上半期のインドネシアの生命保険業界の収入は、前年同期比23%上昇して72兆ルピア(約6200億円)になったとのことです。

 

増えたとは言っても、人口2.4億人のインドネシアにおいて、生命保険がかけられている個人の人口は、全体の5.3%に過ぎません。この数字は、マレーシアの40%、タイの30%と比較しても格段に小さく、今後の発展の余地が相当に大きいことを示唆しています。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/new-policies-a-23-boost-for-life-insurance-companies/

 

単純に、上半期の収入72兆ルピアを年間の数字にするために2倍して、144兆ルピア。これをインドネシアの名目GDP9250兆ルピア(約80兆円)で割ると、約1.6%です。

 

他方、日本では、平成24年度のデータで、保険料収入の合計額は37兆円ですから、名目GDP480兆円に占める割合は、7.7%です。

 
生命保険市場は、化粧品市場とは異なり、宗教による特殊要因は少ないと思われますから、無理なく成長しやすいという点では、化粧品よりも生命保険のほうが有利かもしれません。

 

926日のジャカルタ・グローブ紙によると、925日現在における外国人のインドネシア国債への投資額は289兆ルピア(約2.5兆円)となり、8月末の数字を5.23兆ルピア(約45億円)上回ったとのことです。

 

外国人は、5月におけるFRBバーナンキ議長のQE(量的緩和)収束計画発言の後、インドネシアから投資を引き上げにかかりましたが、それでもインドネシア政府が負っている主な負債の30%以上は、外国人がその債権者のままです。

 

9月において、インドネシア財務省は、24兆ルピア(約2000億円)の国債を売却しましたが、24日に売却された11年物国債の金利は、加重平均値で8.05%にのぼります。これは、相当な高金利であり、投資家にとって魅力的なようです。

 

いくら金利が高くても、インフレ率がもっと高ければ値打ちはありませんが、燃料補助金削減による燃料価格高騰で火がついたインフレも、9月以降は次第に沈静化すると政府は予想しているとのことです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/foreign-investors-return-to-indonesian-bonds-after-fed-taper-delay/

 

925日のジャカルタ・グローブ紙の記事によりますと、インドネシアの都市部の家庭で化粧品を使用しているのは43.2%、非都市部ではわずか30.8%とのことです。

 

2013年上半期におけるインドネシア都市部の化粧品消費額は6060億ルピア(約53億円)、非都市部では820億ルピア(約7億円)とのことですが、対前年同期比での伸び率を見ると、都市部は9.4%の伸びであるのに対して、非都市部では28%も伸びているそうです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/rural-divergence-tale-in-cosmetics-growth/

 

伸び率はすごいものの、都市部と非都市部を合計しても、インドネシア全体の化粧品消費額はわずか60億円です。人口を2.5億人とし、この半分の1.25億人が女性、そのうちの68%(8500万人)が生産年齢人口と仮定しますと、生産年齢の女性1人当たりの化粧品消費額は今年上半期で70.5円、2013年全体を通じてもせいぜい150円程度と推定されます。

 

生産年齢の女性のうち、化粧品を購入しているのが35%と仮定した場合の平均消費額ですら年間500円未満です。

 

1年間に500円でいったい何が買えるのでしょうか?

 

1台数十万円から数百万円の自動車が道路を埋め尽くしている国において、化粧品の消費額がこんなに小さいのは、おそらくはイスラム教の影響が大きいのでしょうが、仮に将来、生産年齢にある全てのインドネシア女性が化粧をするようになって、その一人当たりの消費額が年間で15000円に達するとすれば、インドネシアにおける化粧品の消費額は現在の100倍に達します。

 

化粧は文化と密接な関係がありますから、自動車のような実用品とは同列に扱うわけにいかないでしょうが、それにしてもこんな広大なブルーオーシャンがインドネシアに残されていたとは驚きました。

 

インドネシア株価の指標であるジャカルタ総合指数(JCI)は、9月24日、2.3%下落しました。この下落幅は、827日以来では最大の大きさです。

 

24日のジャカルタ・グローブ紙は、この下落の背景として、インドネシア中央銀行による再度の金利引き上げが懸念されていることを指摘しています。

 

この利上げの動機となりそうなのが、通貨ルピアの下落防止です。ルピアは20094月以降最低の水準に下落しています。これ以上のルピア下落を防ぐには、金利引き上げが不可避であろうというのが、市場の見立てです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/jakarta-stocks-erase-gains-since-fed-decision-on-rate-concern/

 

インドネシア株式の株価水準は、予想利益の13.5倍の水準にあり、これは新興国全体のMSCIの水準である10.6倍に比較すると割高ということになるのでしょうが、それは新興国全体の株価水準が低すぎるから、とも言えます。今年520日のインドネシアのこの数値は、15.9倍でした。

9月23日のジャカルタ・グローブ紙によると、インドネシア政府は、石炭を輸出するために使用できる港湾を制限するかもしれない、とのことです。

インドネシア石炭協会の推計によると、インドネシアにおいては、年間5600万トンもの石炭が「確認できない(can’t be verified)」状況にあるそうです。これによる政府の減収は5.5兆ルピア(約490億円)にも及んでいるとのことです。

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesia-weighs-limit-on-coal-export-terminals-official-says/

確認できないものの分量をどのようにして推計したのか、良く分かりませんが、密輸出するにも船や積み込み施設が必要なわけで、船や積み込み施設の分量には限度があるでしょうから、密輸出の分量もある程度は分かるのかもしれません。

石炭バラ積み船であるパナマックス・サイズの積載量は8万トン前後ですから、5600万トンを密輸出しようとすれば、延べ700隻のパナックス・サイズ密輸船が必要となります。

8万トンの船(全長は200メートル以上)では目立つから、と、一回り小さい2万トン前後のハンディ・サイズの船だと、延べ2800隻前後の船が必要となります。

ハンディ・サイズの船は、通常は、海外への石炭運搬に使うには最も小さいサイズでしょうが、それでも全長100メートル前後はあるでしょうから、そんな大きな船が年間2800回も出入りしていれば、目立ってしょうがない気がするのですが、目立たないほど小さな船で密輸出しているのでしょうか。でも、それでは効率が悪くて儲けにならないような気がします。

まあ、密輸出業者の儲けの心配までしてやる必要はないのでしょうが、密輸出摘発を成功報酬ベースで民間に委託すれば、政府の収入が激増しそうな気がします。

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