田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

2013年10月

1031日のジャカルタ・グローブ紙によると、インドネシアの不動産開発企業であるブミ・スルポン・ダマイ(Bumi Serpong Damai=BSD)の2013年第3四半期までの9ヶ月間の純利益は、2.15兆ルピア(約190億円)と、前年同期比で約2.4倍に拡大したとのことです。

 

売上については、前年同期比60%増の4.22兆ルピア(約370億円)とのことですが、この数字が正しいとすれば、売上高純利益率は何と51%ということになります。日本のゲームソフト企業もびっくりの驚異的利益率です。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/bsd-income-more-than-doubles-due-to-solid-demand/

 

2013年の第3四半期までの決算については、インドネシア企業は、インドフードのような食品関連の増収企業においてさえ、ルピア安等によるコスト上昇が原因で減益をもたらしていますが、銀行の多くは増益を確保しているようですし、BSDのような不動産開発企業の増収増益傾向には眼を見張るものがあります。

 

あんまり利益率が高くて、これはバブルなのではないか、と心配になるほどです。

インドネシアでは、天然ガス事業に関して、大きな制度改革が進みつつあります。それが、天然ガスパイプラインの開放政策です。

 

1029日のジャカルタ・グローブ紙は、同政策によって、エネルギー市場に強大な力を持つプルタミナ社と、これと競合するプルサハーン・ガス・ネガラ(PGN)社の競争関係が強化される状況であると報じています。

 

同政策によって、プルタミナのガス流通子会社であるプルタガス社とPGNは、それぞれが保有するガスパイプラインを開放し、そのパイプラインを通じて天然ガスを顧客に販売しようとする事業者に使用させる義務を負うこととなります。

 

もちろん、パイプライン保有者は、その使用に際して、使用者から、適正な額の使用料を徴収することは出来ます。

 

PGNは、この新政策によって、自社の顧客がプルタミナに奪われるのではないか、と懸念しています。また、PGNは、販売する天然ガスの4割をプルタミナから購入していますので、プルタミナがこの売買契約の更新を拒否して、自社でPGNのパイプラインを使ってガスを直販するのではないか、とも懸念しています。

 

逆に、PGNがプルタミナから顧客を奪うことは容易ではないようです。というのは、PGNの顧客が比較的規模の小さい顧客であるのに対して、プルタミナの顧客は、電力会社のような大口の顧客が多いため、プルタミナ以外の事業者が大量の天然ガスを安定供給することが困難であるからです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/pgn-wary-of-pertamina-threat/

1028日のジャカルタ・グローブ紙によると、インドネシアの10月の対前月比インフレ率は、0.4%以下の見通しであるとチャティブ財務相が述べたとのことです。

 

9月のインフレ率は、対前月比でマイナス0.35%でした。

 

同財務相は、また、2014年のGDP成長率について、5.5%から6%との見通しを示しました。この見通しは、インドネシア中央銀行の目標である5.8%から6.2%を下回るものです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesia-financial-minister-sees-october-inflation-at-less-than-0-4/

1023日のジャカルタ・グローブ紙によると、2005年以来最も強力な緊縮政策が推し進められているインドネシアでは、経済成長のスピードはかつての見通しよりも鈍ってきてはいるものの、住宅市場に関しては、バブル化対策を講じなければならないほど熱くなっているそうです。

 

インドネシアでは、住宅の購入は外国人に認められていませんので、ご近所のシンガポールのように、中国の富裕層の投資による住宅価格高騰といった状況は生じていません。

 

それでも、2013年第3四半期における住宅価格は、前年同期比で14.6%上昇している模様ですし、2013年全体での住宅の売上高は、対前年で50%も増加するとインドネシア不動産協会は推測しています。

 

このインドネシア住宅市場の熱さの要因は、同国の若々しい人口構造とインフレ環境にあります。

 

インドネシアの人口は東南アジア最大であり、全人口の26%が15歳以下という若さです。ボストン・コンサルティング・グループによると、同国のミドル・クラスの人口は、2012年の1.16億人から、2020年には1.85億人へと、平均で年間1000万人近く増加し続けます。

 

インドネシア中央銀行によると、2013年末には、年間のインフレ率が9%から9.8%に達するという見通しです。これに対して、住宅ローン金利は11%以下という水準であり、住宅価格の上昇は、場所によっては年間で20%から30%にも達します。他方で、銀行預金金利はマンディリ銀行の2年定期で5.25%に過ぎず、インドネシア国債10年物の金利は7.3%です。

 

これでは、住宅に投資するなというほうが無理な注文でしょう。

 

このような状況下では、住宅バブルの発生が懸念されるため、インドネシア中央銀行は、住宅購入に際して、ローンの割合を1軒目の住宅については60%以下、2軒目以降の住宅については50%以下にする規制を930日以降実施しています。

 

このような冷却措置とともに、高金利政策やルピア下落によって、2014年のインドネシア住宅市場は正常化する、と予想する業界関係者もいるようです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesia-property-prices-rise-as-demand-bucks-higher-rates/

 

1023日にインドネシアの株価指数であるJCIは0.8%、翌24日は1.1%上昇しましたが、この背景には、同日公表されたインドネシア投資調整庁(BKPM)のレポートに記載された情報があるのではないかと思われます。

 

このレポートの内容については、ジャカルタ・グローブ紙が1023日に伝えています。それによると、2013年第3四半期において、インドネシアに投資された資金の総額は、対前年同期比で23%増加したとのことです。

 

この増加率は、2013年第2四半期の対前年同期比30%増には及ばないものの、5月のバーナンキ発言後の数字としては、決して悪いものではありません。

 

1月から9月までの9ヶ月間を通してみてみると、投資の総額は293兆ルピアと対前年同期比で28%増加しており、BKPM2013年の投資目標額である390兆ルピアの75%に達しています。この293兆ルピアのうちの199兆ルピアは海外からの投資であり、94兆ルピアは国内からの投資です。また、全体の40.7%が製造業への投資であり、43%がサービス業への投資です。これまでのような天然資源産業への投資から、付加価値型産業への投資に重点が移行してきていることが伺われます。

 

BKPMの幹部は、2014年の投資額を正確に予測できる段階ではないものの、総額で450兆ルピアを達成することは容易である、と発言しています。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesia-investment-up-28-in-a-year-bkpm/

 

1023日のインドネシア株式市場は、このような情報を好感したのではないでしょうか。

↑このページのトップヘ