Hana-TajimaUstadz-Yusuf-Mansurs
































インドネシアの新聞を読んでいると、
ムスリムの女性が着用するヒジャブ(Hijab)と呼ばれる衣服に関する問題が眼を引きます。

 

中東イスラム諸国の街中の映像を見ると、女性たちが真っ黒い布を頭からかぶって、場合によっては、顔まで隠れる布で顔も隠して、狭い隙間から目だけ出して歩いている姿を眼にしますが、どうもあの布をヒジャブと呼ぶようです。

 

あの布は、黒くなくてはならないのか、柄が入っていてはいけないのか、丈は頭から足までで全身を隠さないといけないのか、等々については、イスラム法の専門家の間でも必ずしも一致した意見があるわけではないようですが、どうも「ヒジャブで我が身を隠せば隠すほど信心深い」「ヒジャブは黒くなくてはならず、柄が入っていることも許されない」「全身をしっかりと隠さないヒジャブは不信心の表れである」「ましてヒジャブを着用しないのは不信仰の表れであり死後は地獄に落ちる」というような考えのムスリム(ここでは便宜上「保守派ムスリム」と呼ぶことにします。)も少なくないようです。

 

他方で、添付した写真の女性たちを見てください。伝統的なヒジャブとはずいぶんイメージが違いますね。

 

この写真は、ジャカルタ・グローブ紙から引用したものです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/blogs/hijab-between-faith-and-fashion/

 

(著作権法は、引用の目的上正当な範囲内であれば、著作物を著作者の許諾なく引用することを許可してくれています。)

 

私自身はムスリムではないので、ヒジャブのあるべき色彩や形態、ヒジャブで隠すべき肉体の部分や面積等については、何も分かりません。

 

ただ、上のような非伝統的なヒジャブを着用する女性の一人が述べたという次の言葉は印象的です。

 

「美しく彩られた花たちや青く澄んだ大空を創造されたアラーが、ピンク色のヒジャブを身に着けた私を拒むとは思えません」

 

彩り豊かなヒジャブは、世に出てきてまだ間がないものと思われます。しかし、美しく我が身を飾ることを生来こよなく愛する多くの女性たちの心情から見て、保守派ムスリムの主張がいつまで社会を支配できるのか、かなり疑問です。

 

いつか、非伝統的ヒジャブをイスラム社会が広く受け入れるようになれば、イスラム社会におけるファッション産業の成長力は、先進諸国におけるファッション産業よりも力強いものになる可能性があります。なぜなら、これまでは、多くのムスリムの女性たちが同じような形態の黒一色の衣服しか身に着けていなかったわけですから。

 

ムスリム・ファッション産業の市場規模は、ジャカルタ・グローブ紙によれば960億ドルと見積もられていますが(http://www.thejakartaglobe.com/blogs/the-rise-of-the-muslim-fashion-industry-in-indonesia/)、これは伝統的ファッション意識に支えられたこれまでの産業規模であって、色彩の爆発が起これば、話は全く違ったものになるはずです。

 

インドネシア政府は、2020年までに、自国をムスリム・ファッションのfashion capitalにすることを目指しているそうです。この目標が、具体的にどのようなことを意味するのか良く分かりませんが、宗教と着衣が密接な関係にあるだけに、非ムスリムがムスリム・ファッションをリードしていくことは実際上困難でしょうから、ムスリムのデザイナーが市場をリードする可能性が高いと思われます。

 

世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアが、新しい流れを生み出す能力を持つデザイナーたちを本気で守り育てていけば、ムスリム・ファッション市場のブルー・オーシャンをリードしていくことは不可能でないと思います。