田村哲太郎のインドネシア経済・株ブログ

データの記載には人並みの注意を払っているつもりですが、一人で書いておりますし、人間のすることですから、間違いが全くないというわけはないと思います。間違いにお気づきになられた方は、 tamuratetsutaro@gmail.com にご一報いただければ幸甚に存じます。 なお、投資は自己責任でお願いします。当方では、当ブログの記載に基づくいかなる責任も負うことができません。

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121日のジャカルタ・グローブ紙は、インドネシアに対する国内外からの投資の総額が、2014年には、前年比15%増加して、456兆ルピア(約3.8兆円)になるだろう、というインドネシア投資調整庁マヘンドラ長官の見解を伝えています。

 

2013年について言えば、この数字は、399兆ルピア(約3.3兆円)で、対前年比27%増でした。

 

2013年に比較して、投資の増大ペースが鈍化する要因としてマヘンドラ長官は、「(ここ数年間)投資が大きく伸び続けたので、(今年あたり)増大ペースが鈍化するのは当たり前」と述べています。

 

また、同長官は、今年は、鉱産物やパームオイルに付加価値をつけるため投資を政府が行うことを予定しており、この投資に関して、投資調整庁が既に190兆ルピアの投資を承認済みである、とも述べています。

 

今年といえば、インドネシアでは選挙の年ですが、同長官は、投資家たちがインドネシアの政治状況に慣れてきたこともあって、選挙が投資家たちの投資意欲をくじくようなことはない、との見解も示しています。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/investment-at-record-in-2013-exceeding-govt-forecast-but-slowdown-expected-this-year/

インドネシアの通貨ルピアは、2013年年初から約20%下落し、通貨の下落幅としては東南アジア諸国通貨の中で最大を記録しています。

 

インドネシアでは、自国通貨の下落が国の投資格付けに影響するのではないか、と心配する人が少なくないのか、125日のジャカルタ・グローブ紙は、この疑問を格付け会社ムーディーズの幹部に投げかけたようです。

 

ムーディーズの答えは、「インドネシアの立ち直りの早い成長力と負債の少なさを考えると、通貨が下落したからというだけでは、格付けの見直しにつながるようなことはない。」というものでした。

 

ただし、同幹部は、民間部門の負債が増大すると、海外からの財政リスクに対する抵抗力が低下するという懸念を表明した、とのことです。

 

日本のように、円が値下がりするたびに外人による株式投資が増大している国においては、自国通貨の値下がりによる投資格付けの低下を懸念するという発想が湧いてきにくいのですが、よく考えてみると、これ自体が不思議なことです。

 

そもそも、外人さんたちは、通貨価値が下落する国の株式を何でよろこんで買うのでしょうか。もちろん、トヨタのように、円安で利益が急増する会社の株を買うというのは理解できます。しかし、値上がりしているのは輸出企業の株価だけではありません。彼らはドルやユーロ、ポンド等の通貨で生活しているのですから、買った日本株が値上がりしても、円が下落すれば手に入る外貨は減ってしまいます。

 

まあ、円の下落以上に株価の上昇があると見込んで日本の株を買っているのでしょうが、通貨の下落と投資格付けに一義的な関係のないことは、日本の例を見ても良く分かります。

 

ムーディーズの幹部は、インドネシアが、外国に対する債務の支払いに関して問題を生じたことが過去に一度もないことを強調しています。要するに、インドネシアは、外人にとって、信用に値する投資先である、ということです。同幹部は、インドネシア政府の債務マネジメント能力も高く評価しています。ギリシアとは違う、ということなのでしょう。

 

国も個人も、信用が肝心ですね。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/weakening-rupiah-not-a-threat-to-rating-moodys/

 

1023日にインドネシアの株価指数であるJCIは0.8%、翌24日は1.1%上昇しましたが、この背景には、同日公表されたインドネシア投資調整庁(BKPM)のレポートに記載された情報があるのではないかと思われます。

 

このレポートの内容については、ジャカルタ・グローブ紙が1023日に伝えています。それによると、2013年第3四半期において、インドネシアに投資された資金の総額は、対前年同期比で23%増加したとのことです。

 

この増加率は、2013年第2四半期の対前年同期比30%増には及ばないものの、5月のバーナンキ発言後の数字としては、決して悪いものではありません。

 

1月から9月までの9ヶ月間を通してみてみると、投資の総額は293兆ルピアと対前年同期比で28%増加しており、BKPM2013年の投資目標額である390兆ルピアの75%に達しています。この293兆ルピアのうちの199兆ルピアは海外からの投資であり、94兆ルピアは国内からの投資です。また、全体の40.7%が製造業への投資であり、43%がサービス業への投資です。これまでのような天然資源産業への投資から、付加価値型産業への投資に重点が移行してきていることが伺われます。

 

BKPMの幹部は、2014年の投資額を正確に予測できる段階ではないものの、総額で450兆ルピアを達成することは容易である、と発言しています。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesia-investment-up-28-in-a-year-bkpm/

 

1023日のインドネシア株式市場は、このような情報を好感したのではないでしょうか。

インドネシア政府は、823日、輸入を減少させ、投資を促進するための新政策を発表しました。

 

この日、ジャカルタ・グローブ紙に掲載されたロイターの記事には、公表された新政策の詳細は記載されていません。

 

記載されているのは、関税の税率を高めることによって、高級な輸入車や燃料の輸入を減らすこと、農業と鉱業に関する投資を促進するために税制上のインセンティブを新たに導入することくらいです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/indonesia-announces-moves-to-reduce-imports-lift-investment/

 

仮に、新政策の中身が、上に記載された事項にとどまるとすれば、この程度のことで、経常収支等に大きな変動がもたらされるのかどうか、私には疑問です。ルピアや株価が下落しているので、何か対策を打ち出さないと政府として格好がつかないと考えたのかもしれませんが、燃料補助金の削減という正攻法の一大改革を既に成し遂げたのですから、一時的な市場の混乱は無視しておいても良いような気がします。

 

燃料補助金削減によって燃料価格は大幅に上昇したのですから、燃料の輸入には減少圧力が既にかかり始めているはずです。

 

インフレ対策で引き上げた金利は、ルピア防衛に有利に作用するはずです。

 

現在の外為市場や株式市場の混乱は、ほうっておいたらそのうち治ってしまう風邪みたいなものでしょう。下手に薬を飲むと、薬の副作用の方が体に毒になる場合があるかもしれません。

64日のジャカルタ・グローブ紙によると、インドネシア投資調整庁(BKPM)のチャティブ長官は、2014年にインドネシアにおいて実施される投資の総額は、石油ガス・セクターへの投資を除外しても、504兆ルピア(約5兆円)に上るであろう、と述べたそうです。

 

2013年に、この数字は390兆ルピア(約3.9兆円)でしたから、1年で29%、約3割増大することになります。

 

BKPMに投資の申請をしてから実際に投資が開始されるまでの経過プロセスにある投資案件の総額は、2012年末で860兆ルピア(約8.6兆円)であり、これに2013年第1四半期に増加した分を加えると、約1000兆ルピア(約10兆円)になるだろう。一般論だが、投資が実施に移されるには、申請から23年かかるものだ。」とも同氏は述べたそうです。

 

来年に予定されている投資の75%から77%は、海外からの投資だそうです。海外からの投資で第1位を占めるのがシンガポールからの投資、第2位が日本からで、第3位が韓国からだそうですが、韓国は日本を猛烈に追い上げていて、第2位と第3位が入れ替わる可能性もあるそうです。

 

投資先としては、消費財セクターが大半であり、鉱業セクターはコモディティ価格下落によって投資先としての魅力を失いつつあるそうです。

 

http://www.thejakartaglobe.com/business/actual-investment-to-grow-to-51b-in-2014-chatib/

 

さて、ジャカルタ・グローブ紙は、504兆ルピアという投資金額を「史上最高額」であるとして、大変な金額のように報道していますが、インドネシアのGDP2012年で約9000億ドル=約90兆円)の中の割合としては6%にも満たない額であり、石油ガス・セクターへの投資を除いた金額であるとしても驚くような数字ではありません。

 

1年で3割増えるだろう、といっても、元の数字がインドネシアの国力から見て異様に小さいのですから、まだまだ増え方が足りないともいえます。

 

少子高齢化が指摘され、何かというと国力の衰退が取り沙汰される日本ですら、民間企業の設備投資はGDP13%(約63兆円)あるわけですから、人口構成が若く、日の出の勢いのインドネシアでは、もっと投資が行われてしかるべきでしょう。

インドネシアにおける近年の年率6%以上の経済成長は、目覚しい成長と見る人が多いし、それは別に間違ってはいないのですが、高度経済成長期の日本の成長率は年率10%を超えていました。かつては、中国の成長率も10%前後の頃がありました。人口構成や天然資源に恵まれたインドネシアが本気を出せば、6%台の成長率で収まるとはとても思えません。

もっとも、それは、私なんぞに言われなくとも、インドネシアの指導層にはとっくに分かりきったことなのでしょう。わかっていてもノンビリと進んでいくのがインドネシア流なのかもしれません。

大急ぎで金持ち国になるほうが、ノンビリと時間をかけて金持ち国になるよりも幸福な道だという保証もないことですし。




 

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