2016年11月27日

カヌレ・ド・ボルドー

世界的に著名なボルドー銘菓です。意味は「畝模様」。焼き型の独特の形状からの命名と言われています。熱伝導の良い銅製の型に蜜蝋を塗り、生地を流し込んでしっかりと焼きあげるのが本式です。

その由来には諸説あるのですが、以下の話がもっとも説得力が高いと感じます。16世紀頃にボルドーの修道院で作られはじめた当初は棒状に焼いて切り分けたお菓子でしたが、仏革命で聖職者が追放されて作られなくなってしまいます。

その後19世紀前半になってから修道院で復活しますが、その間に力をつけた職業菓子店の職人の意見を取り入れ、英国のプディング型やマフィン型を参考にして現在の形になったのではないか、というものです。

卵黄と砂糖を多くしたクレープ生地にヴァニラの香りをたっぷりと利かせ、一晩寝かせてから焼くのが特徴です。香ばしくカリっと焼きあがった皮と、もちっとした中身という食感との組み合わせが印象的な、シンプルで美味しいお菓子です。

カヌレ

silflay at 11:30|Permalinkフランス菓子 

2016年11月20日

イシュケンベ・チョルバス

トルコ料理、羊や牛の胃袋などの内臓を煮込んだスープです。ペルシャ語のシェカム(胃、腹)が語源で、こってり濃厚なのですが、日本で言う「〆のラーメン」に相当する、お酒の後に飲む一品だそうです。

日本で入手しやすい、牛の第二胃(ハチノス)のみで作りました。下処理したハチノスを塩水でよく煮てから煮汁は濾して、ハチノスは一口大に切ります。ルー・ブランを煮汁でのばし、ハチノスを加えて煮込みます。

仕上げにトルコ料理でお馴染みの唐辛子バターソースでシーズニングして出来上がりです。レモン、ニンニク入りヴィネガー、オレガノ等で好みの味に調整していただきます。

動物系のラーメンのスープに近い味わいになります。現地では非常にクセがあることが多く、好き嫌いが分かれるようですが、内臓が好きな方には逆にクセになる、妖しい魅力を秘めたスープだと思います。

イシュケンベ

silflay at 11:00|Permalinkトルコ料理 

2016年11月13日

パスティッチョ・フェラレーゼ

イタリア伝統料理、フェラーラ風パスティッチョです。パスティッチョ・ディ・マッケローニ(マカロニ入りパスティッチョ)とも呼ばれます。パスティッチョは「ごちゃませ」「でたらめ」といった意味合いの言葉です(注)。

挽肉とマカロニと茸とベシャメルソースを混ぜ合わせた餡をドーム状に盛り、パイ生地で覆って焼いたものです。本来は甘いパイ生地を使うのですが、現在は塩味のパイ生地で覆うことが増えてきています。

フェラーラと言えばエステ家の本拠地として有名ですが、15世紀のエステ家の饗宴の記録にも出てくる料理だとか(したがって16世紀の有名なエステ家の料理人メッシスブーゴ以前の料理ということになります)。

そのため、18世紀にようやく使われるようになった新大陸由来のトマトは入れません(所謂ラグー・ビアンコということです)。ギリシャに伝わって、名前は同じなのですがパイ生地が消えた中身だけの料理になっています。

イタリア他地域でも、「挽肉・マカロニ・ベシャメルソース」のグラタンがパスティッチョと呼ばれることもありますが、なるほど中身だけでも十分美味しいです。もちろん原典通りにパイ生地で覆えば更に満足感を味わえる一品料理となります。

(注)音楽用語では特定テーマで複数の作曲家の作品をつなぎ合わせた曲のこと。

パスティッチョフェラレーゼ

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2016年11月06日

イヴズ・プディング

英国伝統菓子です。「禁断の果実」エピソードにちなんだ命名です(ちなみに禁断の果実をリンゴとしたのは西欧の解釈で、ユダヤでは小麦、スラヴでは葡萄としますが聖書作者の意図する果実は不明と言われています)。

耐熱容器にリンゴを敷き、その上をパウンドケーキ生地(「砂糖・小麦粉・卵・バター」を等量に混ぜる。ヴィクトリア女王の時代に作られるようになったためヴィクトリア・スポンジとも言います)で覆って焼いたものです。

19世紀はじめに登場したカンバーランド公風プディングが原型と言われています。カンバーランド公風は、「砂糖・パン粉・卵・牛脂(スエット)」で作る生地とリンゴを混ぜて、プディング型で焼きあげます。

イヴズ・プディングも19世紀の間は「砂糖・パン粉・卵・牛脂(スエット)」で作る生地でしたが、リンゴは混ぜ込まずに下に敷くのが特徴です。カランツやスライスアーモンドを加えることもあります。

現代の配合のパウンド生地で覆ったイヴズ・プディングも素朴そのものというレシピですが、それだけに誤魔化しがききません。美味しいリンゴとバターを使って作りたいお菓子です。

イヴズプディング

silflay at 11:00|Permalink英国菓子 

2016年10月30日

ハロウィン・クッキー

旧ケルト文化圏ではキリスト教の侵入以前からの伝統行事が形を変えて残りました。むしろ、キリスト教側が巧みに伝統行事をキリスト教に当てはめることで布教の一助とした、と言った方が良いかもしれません。

春の訪れを祝う祭りにはイエスの復活祭を、逆算して冬至祭りにイエスの誕生日を、夏至祭りに聖ヨハネの誕生日を、そして収穫祭には万聖節を後付けで設定して抵抗無く祝えるようにしたのです(聖書にはイエスの誕生日等の記載はありません)。

万聖節は、さほど重要ではない聖人をまとめて祝うことにした「その他大勢聖人の日」です。ケルトの収穫祭(11/1)は前夜の真夜中に死者が戻って来るとされていましたので、死者を偲ぶ日に諸聖人を祝うということにしたのです。

やがて10/31が独立してハロウィン(諸聖人の日前夜=オール・ハロウズ・イヴの短縮形)になりました。本来はカブ類で灯篭を作りましたが、米国で新大陸原産のカボチャを使うようになり、今ではすっかりカボチャがハロウィンの顔となっています。

写真はイベント用に作ったハロウィン・クッキーのセットです。カボチャのチョコサンドクッキー、紫芋の猫クッキー、コウモリ&音符のキャラメルクッキー、薩摩芋に似せたクッキー、プレーン生地のお化けクッキーです。

ハロウィンクッキー

silflay at 09:58|Permalinkその他欧米菓子 

2016年10月23日

ムーミラークソン・ロヒラーティッコ

「ムーミンママのお料理の本」を参考にしました。「ムーミン谷風サーモンのラーティッコ」です。ラーティッコは直訳すると「箱」ですが、料理用語としてはフィンランド風のキャセロール(容器ごとオーブン焼き)のことです。

フィンランド全土で食べられていますが、もともとは西部の料理。様々な素材を使うのですが、マカロニ、レバーペースト(マクサ)、サーモン(ロヒ)などの魚を使ったり、根菜のラーティッコが定番だそうです。

特にニンジン(カラクッコ)、ジャガイモ(ペルナ)、ルタバガ(ラントゥ、蕪に似たセイヨウアブラナの一種の根)をマッシュする根菜のラーティッコは、フィンランドのクリスマス料理として欠かせないものです。

ロヒラーティッコはジャガイモと組み合わせるレシピが多いのですが、ジャガイモの代わりにお米を入れてミルク粥風にしているところが「ムーミン谷風」ということなのでしょう。秋から冬の夜におすすめです。

ロヒラーティッコ

silflay at 18:13|Permalinkその他欧米料理 

2016年10月16日

トラウベン・ザーネ・トルテ

ドイツやオーストリアで食べられている、生クリーム(ザーネ)を使った葡萄(トラウベ)のトルテです。伝統菓子ではなく、きっちりとレシピが決まっているトルテでもないのですが、概ね次のようなトルテであることが多いです。

スポンジ生地とヴァインクレーメ(生クリーム、白ワイン、砂糖、卵黄、卵白をメレンゲ状に混ぜてゼラチンで固める)を重ねたトルテの上に生の葡萄(マスカット種が多い)を並べ、側面にローストしたスライスアーモンドを貼り付けます。

写真のものは日本が開発したマスカット系の交雑育種であるシャイン・マスカット(甘くて皮ごと食べられます)を使い、土台のミュルベタイク(ビスケット生地)とビスクィートマッセ(スポンジ生地)の間には自家製ピオーネジャムを塗っています。

さっぱりと上品な味わいで、白・薄黄緑・薄茶の見た目も爽やかな一品です。現地では白ワインの風味を楽しみますが、アルコール分を飛ばせばお子様でも安心していただけます。

トラウベンザーネ

silflay at 10:00|Permalink独・墺菓子 

2016年10月09日

「コーヒーは安全な飲みもの?むしろ健康に良いのかも?」

2016年6月、IARC(国際がん研究機関)の発がんリスク一覧が更新され、グループ2B(発がん性があるかもしれない)に分類されていた「コーヒー」の発がんリスク(膀胱がん)がグループ3(データ不足で分類不能)に変更され、同じ更新で新たに「非常に熱い(65度以上)飲料」がグループ2A(発がん性がある可能性が高い)に入りました。

従来、「熱いマテ茶」のみが2Aに分類されていましたが、マテ茶もグループ3(注1)になりました。すなわちコーヒーと同様に、飲料の成分ではなく、温度だけを問題としたのです(熱さで粘膜を繰り返し傷つけることが食道がんのリスクを高める)。もちろん、紅茶やハーブ茶や焙じ茶など他の飲料でも65度以上では要注意ということです(注2)。

コーヒーは飲食店などでは65度〜80度くらいで提供されることが多いようです。また、個人の好みの差も大きいと思いますので、一度ご家庭で普段飲む飲料の温度を測って確認してみても良いかもしれませんね。尚、今回は「熱い食物」には言及されませんでしたが、食道がんの発生機序からすると同様のリスクがあると考えられます。

ただし、心配し過ぎる必要はありません。以前にも触れましたが、IARCのカテゴリー分けはリスクの大きさについては語っていないからです。喫煙や飲酒も確実に食道がんを増やします(注3)。喫煙と飲酒という二大原因に加えて、65度以上の熱い飲み物(恐らく食べ物も)が食道がんの原因に加わった、と考えれば良いでしょう。

以上のように、コーヒーの発がん性については「膀胱がんのリスクがあるかもしれない」から、「熱いと食道がんのリスクを高めるだろう」に変わりましたが、コーヒーに含まれるカフェインは、多量に摂取すると興奮、動悸、不整脈、血圧上昇などを起こすことが分かっています。コーヒーを多量に飲むことは推奨されていません。

日本では推奨値を設けていないのですが、「短時間(1杯を数分で飲む)で200mg(コーヒー2〜3杯)以下、一日では400mg以下」「妊婦・授乳中はこの半分、小児は一日2〜3mg/体重kg」というのが国際的な「相場」です(注4)。もちろんカフェインはエナジードリンクやチョコレート等からの摂取も加算されますので要注意です。

一方で、コーヒーを一日に3杯程度飲む人は、全く飲まない人や大量に飲む人に比べて総死亡等のリスクが低いという研究がいくつも発表されています(注5)。昨年秋に発表されたこちらのメタアナリシスでは、カフェインの多寡に関係なく、また喫煙の影響を排除してみると死亡リスクがより低くなる、という結果になっています。

※医療関係者対象の3つのコホート研究の解析(合計約20万人、21〜28年追跡)。コーヒー一日1杯未満で5%、1〜3杯で9%、3〜5杯で7%総死亡率が低かった。5杯以上は有意差なし。コーヒー愛好家には喫煙者が多かったので、非喫煙者だけで解析したところ、1杯未満で6%、1〜3杯で8%、3〜5杯で15%、5杯以上でも12%低かった。

医療関係者の集団ですので、もともと健康に気を使っている人が多いことに注意する必要があります(コーヒー習慣以外の他の要因のために死亡率が低かったのかもしれないということです)。また、死亡率の低下は大きいとは言えませんので、コーヒーを飲まない人に飲むことを薦めるほどではありません。

尚、日本人はコーヒーというとブラックコーヒーを思い浮かべますが、欧米では砂糖や乳製品を加えることがかなり多いです(上記のIARCの発表を受けたメディア記事でも、ミルクや生クリームを入れれば65度以下になるから大丈夫!と解説していたりします)。適度な乳製品や、ひょっとしたら砂糖を同時に摂ることが良かったという可能性さえあります。

また、「適量ならむしろ健康に良い」という「Jカーブ効果」は、かつてアルコール摂取でも言われていましたが、何度もご紹介した通り現在ではほぼ否定されています。コーヒーの効果についても、今後の研究が進むと否定されることになる事態は十分にあり得ますので、その点は注意しておく必要があるでしょう。

コーヒーはあくまでも嗜好品に過ぎません。熱すぎない温度で、一日4杯程度以下という上限を守り(他の飲料からのカフェイン摂取分には注意する必要があります)、「健康に良いから」などと余計な理由付けは考えずに、「美味しいから」「好きだから」と思って楽しめる人だけが飲めば良いものなのです。

マテ茶(注1)マテ茶は南米や中東の一部で好まれているハーブ茶です。紅茶を好む地域、緑茶を好む地域に比べると食道がんの発生率が高いため、マテ茶そのものにも発がん性リスクがあるとされてきましたが、今回の更新では一応否定される形になりました。マテ茶は、伝統的には茶葉が入った容器に煮沸したお湯を注いですぐに金属製のストローで飲むために火傷しやすいこと、この地域は喫煙率も飲酒率も高いことが、リスクの推定を難しくしてきたのでしょう。尚、マテ茶のカフェイン量は100mℓあたり10mg程度です。写真は筆者がシリア料理店でいただいたマテ茶です。

(注2)熱い飲料と食道がんのリスク 系統的レビューの一例

(注3)日本人対象の報告例 喫煙と食道がん飲酒と喫煙と食道がん

(注4)カフェインのファクトシート(各国規制値)。尚、カフェインのIARC分類はグループ3、致死量は5〜10g。

(注5)日本人対象の報告例 コーヒー摂取と死亡リスク


silflay at 10:00|Permalink「食の安全」 

2016年10月02日

ソム・タム・タイ

日本でもお馴染みのタイ料理、生パパイヤのサラダです。ソム=酸っぱい、タム=搗(つ)く。もともとはタイ東北部(イサーン)の料理で、イサーンではタム・マークン(マラコー(パパイヤ)のイサーン方言)と呼ばれています。

タム・マークンは激辛で生の沢蟹を入れることが多いのですが、バンコクでもそのままでは受け入れ難かったため、辛さを抑えて干し海老に換えてナッツやトマトを加えて一般化したレシピがソム・タム・タイです。

以前は生のパパイヤが入手し難かったため、日本ではキュウリやニンジンで代用するレシピが紹介されることが多かったのですが(タイでもキュウリで作ることがあります)、最近は都内のスーパーで手に入るようになりました。

千切りにした生パパイヤを臼で搗いて軟らかくするのがポイント。味付けは唐辛子、ニンニク、ナム・プラー、砂糖、マナオ(スダチの原種)。マナオはレモンやライムで代用されることが多いのですが、スダチが最も近いです(ライムで代用する場合は小型のキーライムが近いです)。

生パパイヤ自体は淡白ですから、「唐辛子の辛味、マナオの酸味・ナム・プラーの塩味・砂糖の甘味」というタイ料理の基本味がよくわかる一品です。ぜひ、生パパイヤで作ってみてください。

ソムタム

silflay at 10:00|Permalinkタイ料理 

2016年09月25日

サリー・ムルギー

インド・ムンバイのゾロアスター教徒(パールスィー)の料理です。サリーはポテトストロー、ムルギーは鶏肉です(羊肉で作ればサリー・ボティ)、またアプリコットを入れることも多く、その場合はサリー・ジャルダルーとなります。

パールスィーは「ペルシャ人」という意味。ササン朝(ゾロアスター教を国教とした最後のペルシャ帝国)が7世紀に滅亡した後、ゾロアスター教徒はムスリム支配下で迫害されたため、インドに集団移住した人々の末裔です。

17世紀の英国インド進出の際、英国の東インド会社は極少数派パールスィーを敢えて優遇し、パールスィーは経済力・政治力を高めて現在に至ります(タタ財閥はパールスィー、インディラ・ガンジーの夫もパールスィー)。

父親が信徒でなければゾロアスター教徒にはなれないこともあり、いまや信者数はインドとイランを中心に10数万人しかいませんが、パールスィーは商いを生業としてきただけあって宗教行事以外は伝統に固執するばかりではありませんでした。

パールスィーの食生活は、インド風のスパイスを使い、トマトやジャガイモなど新大陸産の素材も交易を通じて馴染みがあったために早くから取り入れ、ペルシャ時代とは全く異なるものになっています。

サリー・ムルギーもそんな多文化を融合したパールスィーらしい料理のひとつです。炒め玉葱・トマト・スパイス類をミキサーにかけてグレイビー状にしたソースで鶏肉を煮込みます。アプリコットを入れない場合は砂糖を少し加えます。

何と言っても特徴的なのはポテトストローを乗せて食べることでしょう。細く切ったポテトはカレーソースと混ぜてもパリパリとした食感が残り、想像以上の美味しさです。油っぽさも意外と感じません。

普通の日本のカレーの場合でも、ジャガイモは一緒に煮込むだけではなく、ポテトストローにして混ぜ込んでみるというバリエーションを試してみるのも面白いのではないかと思います。

サリ・ムルギ

silflay at 09:30|Permalink南アジア料理