2017年02月19日

クーゲリ・パステーテ

スイスの人気観光地、ルツェルンの郷土料理です。意味は「球状パイ」。半球ドーム状に焼き上げたパイ生地の中に、細切れにした仔牛肉や茸類のクリーム煮込みを詰めたものです。

ルツェルンの老舗ホテルのレストラン「ブルガーシュトゥーベ」の名物メニューなのですが、人気を博したために他のレストランでも出されるようになり、近年では家庭でも作られるようになっています。

チューリッヒ料理のゲシュネッツェルツ(薄切り仔牛肉のクリーム煮込みロースティ添え)の同類で、ともに牧夫料理が元になっています。お腹いっぱいにするためにクリーム煮込みをパイやロースティと組み合わせた、という次第です。

土台のパイ生地の上にクッキングシートを丸めて乗せ、パイ生地をドーム状に被せて焼き、クッキングシートを取り出せば中空のパイ生地の「型」が出来ます。このやり方は他の料理やデザートでも応用が利きそうです。

お味の方は、材料からして解説の必要はないでしょう。安心してどなたにもお薦めできます。ただし現地ではかなりボリューミーな一品になっているようです。

クーゲリパステーテ

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2017年02月12日

バカリャウ・ア・ブラース

ポルトガル料理、バカリャウとフライドポテトの卵とじです。ポルトガルの数あるバカリャウ料理の中でも定番で、家庭でもレストランでも必ずと言って良いほどメニューにのぼる一品です。

リスボンの歓楽街バイロ・アルト地区のとある酒場の主人ブラース氏が考案してお店に出したところ評判を呼び、あっという間にポルトガルじゅうに広まったと言う「伝説」があります。

現地ではバカリャウですが、日本では生鱈で美味しく作れます(生鱈を使う場合は塩を振って一晩寝かせる)。千切りジャガイモを揚げておきます(ポルトガルでは市販品を使うのが一般的だそうです)。

オリーブ油で薄切りにした玉葱を炒め、好みの大きさに裂いた鱈を加えて更に炒め、塩胡椒で味付けをします。溶き卵とフライドポテトを加えて軽く炒め、パセリと黒オリーブで飾れば出来上がりです。

生クリームを加えるレシピもありますのでお好みで。鱈の風味が適度に残りながら、卵のお陰でマイルドな口当たりになります。フライドポテトの食感も丁度良いアクセントになっており、どなたにも食べ易いお料理だと思います。

バカリャウ・ア・ブラース

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2017年02月05日

ブラックベリー・フール

スノウ、シラバブ、トライフルなどとともに古くから英国で食べられている冷製デザート(コールド・プディング)の一種です。ベリー類をピュレ状にして、ホイップした砂糖入り生クリームと混ぜて冷やしたものです。

フランス語のフールfoule(押し潰した)が語源とされているのですが、実際にはフールfoolの意味そのまま(お馬鹿さんでも作れるくらいに簡単)だったのに、後付けでフランス語起源説が出てきたようです。

もともとはグーズベリー(セイヨウスグリ)を甘く煮て卵と混ぜてエルダーフラワー(ニワトコ)の風味を付けたものでしたが、生クリームが加わり、卵が抜け、生クリームをホイップするようになって18世紀頃に現在のレシピになりました。

フルーツも、ルバーブやブラックベリーやラズベリーなどバリエーションが増えて、風味付けもバラ水やオレンジ水やヴァニラなど様々なものが使われるようになりました(グーズベリーとエルダーフラワーは定番の組合せです)。

「とびきりおいしいデザート」(E.ジェンキンズ著)のブラックベリー・フールのレシピを参考にしています。1710年、1810年、1910年、2010年の四つの家族がそれぞれの時代のやり方でフールを作る様が描かれる絵本です。

道具や作る人が変わっても美味しさは変わらず(服装などは時代考証がなされているようです)、また「最後のお楽しみ」はいつの時代でも変わらないことを教えてくれる楽しい作品です。

フール

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2017年01月29日

ニプスン・パルハート・リハプッラ

「ムーミンママのお料理の本」の「スニフの最高のミートボール」(ニプスン(スニフの)・パルハート(最上の)・リハプッラ(肉団子))を参考に作りました。フィンランド風肉団子のアレンジです。

リハプッラは、スウェーデン風肉団子のチェットブッラと同様に「焼いただけ」でリンゴンベリー等のソースに付けていただくことが多いのですが、クリームソースやブラウンソースを掛けることもあります。

こちらのレシピでは、肉団子のつなぎのパン粉を生クリームと水でのばして挽肉と混ぜ、バターで焼き目を付けてから、焼き汁とカッテージとトマトで作ったソースをかけ、オーブン焼きにしています。隠し味にはバジルとそして何と醤油です。

北欧の肉団子はシンプルで肉肉しいタイプが多いのですが、このレシピはふんわりとした食感でコクもあり、なるほどスニフのような我侭な子供でも大喜びしてくれそうです。ソースも大変に美味でパスタソースとしてもお薦めです。

※「スニフ」はスウェーデン語とそれを基にした英語版からの翻訳で、フィンランド語では「ニプス」です。

ニプスン・リハプッラ

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2017年01月22日

ペリメニ

ロシアの水餃子です。ペリメニの語源はフィン・ウゴル系先住民のペリニャニ(耳のような小麦生地)とされており(テュルク系のペリマンという説もあります)、多数派のロシア人が食べるようになったのは16世紀頃と言われています。

中国起源でモンゴルが広めたと主張する向きもありますが、最古の実物の出土は7世紀の中央アジア(テュルク系民族の故地)で、「麦粉の生地で何かを包む料理」に限ればメソポタミアで数千年の歴史があります。

餃子はユーラシア大陸で広く見られますが、茹でる水餃子タイプの西端はドイツのマウルタッシェでイベリア半島では見掛けません。ロシアでの広まり方から見てもテュルク系の民族の食べ物だったのではないかと思います。

ロシア料理としてのペリメニは、挽肉に玉葱と塩胡椒を混ぜる程度のシンプルな餡を包み、熱湯やブイヨンで茹でます。甘い餡を詰めることはありません。先住民はそのままか酢を掛けますが、ロシア人はバターやスメタナで食べるのを好みます。

生地の一部にビーツを混ぜて、紅白のペリメニにしてみました。バターで揚げ焼きにすることもあるのですが、日本人にはその方が馴染みのある焼き餃子に近くなって、より美味しくいただけるかもしれません。

ペリメニ

silflay at 01:30|Permalinkロシア料理 

2017年01月15日

スイッツユースツ・スップ

バルト三国の中で最北に位置するエストニアの料理、スモークチーズのスープです。スイッツが煙でユーストがチーズです。バルト三国と一纏めに扱われることが多いですが、文化的にはエストニアと他の二国(ラトビア、リトアニア)で大きく異なります。

大雑把に言ってエストニアは北のフィンランドとの結びつきが強く、ラトビア、リトアニアは南のドイツとの結びつきが強いのです(もっとも三国とも20世紀の歴史を反映してロシアの影響もかなりあります)。

エストニアはレイブ(ライ麦パン)をよく食べますがより伝統的なカーシャ(麦粥)やカマ(はったい粉)も健在で、ハプコール(サワークリーム)やケフィール(発酵ミルク)などの酪農製品もよく利用します。

ローストしたり煮込んだりした肉料理にカルトゥル(ジャガイモ)、ハプカプサス(ザウアークラウト)を付け合せるのが典型的なスタイルです(魚介類はバルト三国の中でもっとも少量しか食べません)。

スイッツユースツ・スップも他国ではみかけないエストニアらしいお料理です。バターでみじん玉葱を炒め、ブイヨンとチーズを加えてチーズが溶けるまで煮込み、クルトンを浮かべていただくのが基本的なスタイルです。

ケフィール(発酵ミルク)や牛乳で伸ばしたり、ジャガイモやカボチャを加えたり、などのバリエーションもあります。スモークの独特な風味が味に奥行きを与えてくれます。見た目はシンプルですが、おすすめのスープです。

スイッツユースツスップ

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2017年01月08日

ポルサルダ

バスク料理、リーキを主体とした野菜出汁のスープです。ポルがリーキ(仏語のポワローと似ていますね)、サルダが出汁です。本来は野菜だけのスープでしたが、近年は鱈などのお魚を加えることが増えました。

お肉は入れません。ベーコンなどの獣肉で出汁をとったらアラギサルダ、鶏肉で出汁をとったらオイロサルダになります。スープストックで作る場合でも、野菜出汁を使わないとポルサルダではなくなってしまいます。

鍋にオリーブ油を熱してみじん切りニンニクを炒め、香りが出たら一口大に切ったリーキ(長葱で代用)・人参・ジャガイモを入れて火を通します。水を注いでしばらく煮込み、バカリャオ(甘塩鱈で代用)を加えて煮て、味を調えて出来上がりです。

葱の甘味と鱈の旨味が効いた、「これこそ典型的な飽きない味!」という優しい味わいが堪能できるスープです。鱈の美味しい季節に一度は作りたい、日本人におすすめのバスク料理です。

ポルサルダ

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2017年01月01日

お節

明けましておめでとうございます。まだまだ世界には美味しい食べ物がたくさんありますので、本年も少しずつ更新していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

お節料理はたくさん作りませんし、大して変わったことはしていませんが、黒豆はヴァニラ風味です。また、田作りは、平野レミさんのレシピを参考にして、甘味は加えずグリュイエールをまぶして塩味にしています。栗きんとんは、栗無しの薩摩芋のみでサフラン風味です。

17お節

silflay at 18:42|Permalink東アジア料理 

2016年12月25日

クバ

チェコのボヘミア地方の料理、全粒穀物(クロウピー)を使った温前菜です。茸を加えることが多いので、ホウボビー(ホウバが茸)・クバとも言います。基本的には大麦ですがお米で作ることもあり、その場合はリゾビー・クバになります。

クリスマス・イヴに食べるお料理です。伝統的にはイヴにはお肉を食べない風習がありますが、「鯉のフライとポテトサラダ」とともに12月24日にいただく定番のチェコ料理です。日本で言うと御節の黒豆料理でしょうか。

押し麦を使いました。鍋にラードを溶かし、みじん玉葱とクミン・シードを炒め、戻しておいたマッシュルームを炒め合わせます。みじんニンニク、塩胡椒、マジョラムで味を調え、押し麦を加えて混ぜます。

シートを敷いた耐熱容器に広げ、表面にラードを塗ってアルミシートで覆い、オーブンで焼いて出来上がりです。今回はサワークリームとタイムを乗せましたが、オニオンフライが振られていることも多いです。

ラードの旨味を吸った大麦と茸は適度にコクがあります。チェコ料理は日本人には重いものが多いのですが、こちらは手軽に作れて食べ易い、おすすめのチェコ料理だと思います。

クバ

silflay at 12:30|Permalinkその他欧米料理 

2016年12月18日

「糖質制限食が健康に良いという「お墨付き」はありません」

「糖質制限食」は、一部の専門資格者を巻き込みつつ、すっかり人口に膾炙した言葉になってしまったようです。たしかに炭水化物の割合を大きく減らせば短期的には体重が減少するでしょうが(注1)、いわゆる糖質制限食では高タンパク食になることが多いようですので、長期的には健康に悪影響を与える可能性が十分にあります。

わたしたちは、タンパク質・脂質・炭水化物(以下、ここでは糖質)からエネルギーを摂るしかありません。三つとも重要ですが、敢えて言えば重要度は記載順となり、タンパク質と脂質の摂取量を決めて、残りを糖質から摂取するという考え方をしますが、これは決して糖質をないがしろにして良いという意味ではありません。

三種の栄養源には適切なバランスというものがあります。日本人の食事摂取基準2015年版(以下2015年版)では、健康な成人で、タンパク質13〜20%・脂質20〜30%・糖質が50〜65%です。次々と発表される研究結果を採り入れて2005年版、2010年版と少しずつ変更されてきましたので、今後も変わる可能性はあるでしょう。

しかし、今後摂取割合が変更される場合は、脂質の推奨量は増えるかもしれませんが、タンパク質についてはむしろ上限を設定することになると思います。2015年版で「現時点では、たんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分には見当たらない。そこで、耐容上限量は設定しないこととした」(注2)とあるからです。

この記述をもって「高タンパク食は安全!」などと主張する向きがあるようですが、もちろん違います。根拠となる報告は「現時点では十分には」見当たらないだけで、タンパク質の過剰摂取で糖尿病・心血管疾患・がんの発症リスクや肥満を増やしたり骨量を減少させたりするかも、とする報告は簡単に見つかります。2015年版には、次のような記述もあります。

「成人においては各種代謝変化に好ましくない影響を与えない摂取量、高齢者においては高窒素血症の発症を予防する観点などにより、成人、特に高齢者においては 2.0g/kg体重/日未満に留めるのが適当ではないかとする考えもある」 「たんぱく質エネルギー比率が20%を超えた場合の安全性は確認できない」(注3)

身体活動度「普通」の成人男性にタンパク質摂取量2.0g/体重kg/日を当てはめると、エネルギー比は19〜22%となります。今後、よほど明らかなエビデンスが出ない限り、タンパク質の比率上限は20%のままでしょう。一方で、脂質に関しては前々回でも取り上げたように、2015版の「20〜30%」から「上限35%」に増える可能性はあります。

仮にタンパク質13〜20%・脂質25〜35%になったとしても、糖質は45〜60%にしか減りません(ちなみにこれは欧米先進国の推奨割合とほぼ同じで、全体として彼らと同じ食生活になるということです)。2015年版でタンパク質の推奨量は成人男性で60gなのですが、私たちの実際の摂取量はどのくらいでしょうか?

国民健康・栄養調査H27年版(アンケート調査ですので実態とはやや異なる可能性もあります)では、成人のタンパク摂取量の推計は69.8gでエネルギー比は14.8%です。ちなみに脂質は26.4%、糖質は58.8%ですので、平均的な食生活を送っている日本人は、タンパク質・脂質・糖質の摂取バランスは推奨範囲内にあるということになります。

タンパク質20%・脂質30%・糖質50%の食事なら概ね問題はおきないでしょう(タンパク質を約95g摂取することになります)。乱暴に言ってしまえば、平均的な食生活では一日三食のうち「一食は穀類なしにして肉・魚・豆を増やす」くらいのイメージでしょうか。この程度の「推奨範囲内の糖質の軽い制限」でしたら試してみても構わないと思います。

実行する際には日本米を食べる量を減らす方が多いと思いますが、実は日本人の健康「だけ」を考えればその方が良いくらいです。作物も産地もなるべく分散した方が食のリスクが減るからです(日本米を減らせば、ヒ素とカドミウムの暴露が減ります(注4))。ただし社会的な影響を考えればトータルでベネフィットがあるかどうかは議論の分かれるところでしょう。

ところで糖質制限食を推す人は、よく「人類はもともと糖質をほとんど摂取していなかった!本来の食性に戻すべき!」という主張をされているように感じます。これに対しては「人類に限らず野生の状態での食性が健康に良いとは限らない」「そもそも化石人類の食性は十分に解明されていない」という反論でお終いになると思います。

人類の食性ということに関しては拙ブログでも何回か取り上げてきましたが、人類学という分野も相当の日進月歩であり(数体しか見つかっていない種類も多いので、新しい人骨が見つかるだけで変わる)、過去の記載とは異なることも増えてきました。個人的な興味もありますので、備忘録を兼ねて次回にまとめてみようと思います。

(注1)もちろん、タンパク質や脂質の割合も、大きく減らせば短期的には体重が減ります。また、言うまでもないことですが、体重が減ることで、より健康になるとは限りません。

(注2)タンパク質に耐容上限量を設けるべきという意見も少なからずあったが今回は見送った、と読むのが常識的な解釈ですね。

(注3)2015年版には、「炭水化物が直接ある特定の健康障害の原因となるとの報告は、生活習慣病の一種としての糖尿病を除けば、理論的にも疫学的にも乏しい」という記述もあります。

(注4)日本の土壌にはヒ素やカドミウムが比較的多く含まれています。ヒ素は肺がんや皮膚病や神経疾患や糖尿病のリスクを少し高め、カドミウムは子宮体がんや腎障害のリクスを少し高めます。


silflay at 12:00|Permalink「食の安全」