2016年07月24日

カルテ・グルケンズッペ

ドイツ圏の夏の新定番、胡瓜(グルケン)の冷製(カルテ)スープです。伝統料理ではなく、トルコ移民が食べているジャジュック(胡瓜とヨーグルトのスープ)がアレンジされて定着したものです。

皮を剥いて薄切りにした胡瓜を茹でて(生の場合も)冷水でしめて水気を絞り、サワークリームや牛乳やヨーグルト等とブイヨンと一緒に軽くミキサーにかけたものを濾して(濾さないことも)出来上がりです。

トルコのジャジュックは細切りにした生の胡瓜入りの「ヨーグルトスープ」(或いはディップとして前菜として食べる)ですが、ドイツ版では乳製品で伸ばした「胡瓜スープ」になっています(東欧圏にもトルコ由来の同様のスープがあります)。

胡瓜の輪切りやクルトンを浮かべたり、胡瓜だけでなくアボカドや玉葱などを足したりしても美味しくいただけます。乳製品は入りますが、さっぱりとした後味ですので、暑い夏の時期にピッタリの美味しいスープになります。

グルケンズッペ

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2016年07月17日

チャー・カー

ベトナム風のさつま揚げです。北部ニャチャンの郷土料理として知られていますが、現在では広い地域で食べられています。白身の海産魚が使われますが、特にサワラ(カー・トゥ)が好まれるようです。

大きめの小判型でつなぎを使わないのが基本です。魚だけでも良いですし豚脂身を足すこともあります。タイ風のさつま揚げ(トード・マン・プラー)はコブミカンの葉を加えますが、チャー・カーはディルです。

また、味付けもヌック・マムと塩胡椒が基本でカレーペーストもココナツミルクも入れませんので、さっぱりとした仕上がりになります。おかずとして食べる他に、麺の具(ブン・チャー・カー)としても人気だそうです。

尚、川魚のターメリック風味の炒め焼きがチャー・カーと呼ばれることもあります。フランス統治時代に、独立の志を秘めて太公望(呂尚:ベトナム読みでラヴォン)の像を飾っていたお店の名物料理で、チャー・カー・ラヴォン(ラヴォン風チャー・カー)とも言います。

チャー・カー

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2016年07月10日

バッテンバーグ・ケーキ

プレーンとピンクの2色の四角柱のパウンドケーキを、アプリコットジャムで接着して市松模様に組み合わせ、マジパンで包み込んだ英国菓子です。現地では専用の焼き型(4つに仕切ってある)が売られています。

もともと「ドミノケーキ」「ナポリ風ケーキ」「教会の窓ケーキ」等の名前だったのですが、1884年と1885年に続いたドイツのヘッセン大公家庶系とイギリス王家の二組の婚礼(注)に因み、バッテンバーグ・ケーキと呼ばれるようになったと言われています。

当初は3×3の市松模様でしたが、現在では2×2になっています。可愛らしい切り口が注目され勝ちですが、アプリコットジャムの酸味とマジパンの甘味と香りの相性は抜群でお味の方も決して引けをとりません。

アフタヌーン・ティーのセット菓子の定番の一つですが、英国伝統菓子の中でもおすすめの一品だと思います。近年は様々な配色でも作られるようになっていますので、抹茶やチョコなど様々に工夫してみても面白いですね。

尚、英国の緊急車両の塗装は市松模様なのですが(例えば警察は「青と黄」など)、この模様はバッテンバーグ・ケーキに因んでバッテンバーグ・マーキングと呼ばれています。

(注)1884年にヘッセン大公家庶系バッテンベルク家の長男ルードヴィヒと、ヘッセン大公家本家に嫁いだヴィクトリア女王の次女アリスの長女ヴィクトリアが結婚(二人は幼馴染)。そしてその結婚式に出席していたバッテンベルク家三男ハインリッヒと、ヴィクトリア女王の五女ベアトリスが翌1885年に結婚。彼らはイギリスで暮らし、第一次大戦時に対独感情の悪化を慮ってマウントバッテン家と改称した。

バッテンバーグケーキ

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2016年07月03日

ガスパチョ

スペイン南部アンダルシア地方の代表的な料理の一つで、料理としてはかなりの変遷を経ていますが、現在ではトマトを主体とした冷たい野菜のスープを指すことが多いですね。

イベリア半島の料理はムスリムが支配していた時代に起源を持つことが多いのですが(アンダルシアもアラブ語のアル・アンダルス=ムスリム進出以前に住んでいたヴァンダル人の土地、という意味)、ガスパチョは異説が多いです。

ローマ時代のパン入りスープが元祖とする説(ラテン語のカスパ(かけら)が語源だとする)、中世ユダヤ人のパン入りスープが元祖とする説(ヘブライ語のガザス(ちぎる)が語源だとする)などがあります。

いずれにせよ19世紀にトマトが入るようになって別物になりました。トマトなどの野菜、固くなったパン、ヴィネガー・オリーブ油・ニンニクを混ぜ合わせて擂り潰せば出来上がり。暑い時期に最適の、爽やかな野菜スープです。

ガスパチョ

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2016年06月26日

ブラザート・ディ・ヴィテッロ・アル・ヴィノロッソ

ピエモンテ郷土料理、牛肉の赤ワイン煮込みです。レストランでは、バローロという高級赤ワインで煮込むのが定番ですので、ブラザート・アル・バローロというメニュー名になっていることが多いでしょうか。

ブラザートは煮込み料理の一種ですが、ブラーチェbrace(炭)が語源で「炭火煮」です。野菜類と赤ワインで一晩マリネした牛肉にバターで焼き色を付け、マリネ液ごと一緒に煮込むのが特徴で、茸のソテーとポレンタを添えます。

お隣のロンバルディアにはストゥファート(ストーファstufa=ストーブが語源)という煮込み料理がありますが、ストゥファートは野菜と一緒に煮込みません。もっとも近年では明確な違いは無くなってきているようです。

尚、ラグーも煮込みの一種ですが、こちらはフランス語のラグー(Ragouter=風味を重ねるが語源)がナポレオン時代以降にイタリアに入ってきた言葉で、現在は肉入りパスタソースを指すことが多いですね。

野菜と赤ワインの風味が染みこんだ牛肉は、しっかりと焼き色を付けるために適度な歯応えが残ります。日本ではホロリと崩れる煮込み肉が持て囃される傾向がありますが、肉の存在感を楽しみたい方お薦めの煮込み料理です。

ブラザート

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2016年06月19日

ザレッティ

ヴェネト州の郷土菓子、ポレンタ粉(コーンミール)のビスコッティです。ジャレッティ(黄色い小さなもの、ジャレットが黄色)のヴェネト方言で、表記は一定しておらずZalettiからLが抜けたりTが一つになったりします。

かつてイタリアの主食はパンでも勿論パスタでもなく麦粥(プルス)でしたが、北イタリア山岳地帯は小麦の栽培に適さないため、黍や蕎麦や栗の粉のプルスでした。美味で生産性も高いトウコロコシが伝わると忽ち材料が置き換わりました。

現在では麦粥はほとんど食べられなくなりましたがトウモロコシ粉のプルスは生き残り、ポレンタ(トウモロコシ粉も、それを使った料理もポレンタ)となり、北イタリア料理の付け合せとしてお馴染みですね。ザレッティはそのお菓子版です。

材料は小麦粉とポレンタ粉が半々で、卵黄と砂糖を加え、レーズンと松の実を混ぜてレモン風味になっていることが多いです。名前だけでなく形も様々で、円形、四角形、楕円形、菱形、S字形のザレッティが店頭に並びます。

ポレンタ粉が入るのでサクサクというよりザラっとした独特の食感になります。現地ではかなり甘いことが多いようですが、砂糖の量を調節すればかなり美味しいビスコッティになります。

ザレッティ

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2016年06月12日

カバック・ムチヴェル

トルコ料理、ズッキーニのフリッターです。カバックはズッキーニで(南瓜もカバック)、ムチヴェルはこの料理を指す言葉のようです。「トルコ風おやき」「トルコ風掻き揚げ」と紹介されていることがありますね。

摩り下ろしたズッキーニと玉葱(細切りやみじん切りでも)を炒め、小麦粉・フェタチーズ・卵・ハーブ・塩胡椒を混ぜて種を作ります。油を熱したフライパンにお玉やスプーンで種を落とし入れて両面を揚げ焼きにすれば出来上がりです。

ハーブはディル、フラットパセリ、ミント等を混ぜることもありますが、ディルのみにしました。ジャジュック(トルコではニンニク風味のヨーグルトソース)に付けていただきます。もちっとした食感が日本人好みだと思います。

尚、トルコでは南瓜もズッキーニもカバックです。南瓜はデザート用(又は種を食べる)・ズッキーニは料理用と使い分けることが殆どで、用途が違うことから混乱しないのだそうです。

カバック・ムチヴェル

silflay at 06:00|Permalinkトルコ料理 

2016年06月05日

ウィーン風ワッフル

日本のワッフルは、ベルギーのリエージュ風(円形でパールシュガー入りの甘い生地、何も付けず食べるのが基本)か、アメリカ風ワッフル(ベーキング粉で膨らませたふんわりとした生地)に近いものですが他にも様々なワッフルがあります。

同じベルギーでもブリュッセル風は四角い淡白な生地で生クリームやチョコ、フルーツと一緒に食べます。オランダ風は薄く硬い生地の間にシロップ(=ストロープ)を塗って焼いたものです。

そしてあまり知られていませんが、ウィーン風ワッフルもあります。アーモンド粉入りのサクサクとした生地にクリームやジャムをはさんだものです。実際にはウィーンのカフェ等で目にすることはまずありません。

スイスのヴェルンリ社やオーストリアのマナー社の既製品としてお馴染みのお菓子です。近年は家庭で作られるようにもなっています。しかし伝統菓子と言ってもよい素材の組み合わせですので、普段使いにお薦めの一品です。

ヴィーナー・ワッフル



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2016年05月29日

ラグー・ド・トリップ

フランス料理、牛胃の煮込みです。フランスでは他の欧州各国と同様に内臓も利用しますが、牛舌が昔から珍重されて「領主だけが食べられる」という法律ができたこともあったのに対して、牛胃は最も安価な庶民用の臓物でした。

昔も今も、食べ方は新大陸由来のトマトが加わったくらいで基本的には同じような煮込みです。第一胃(ミノ)でも構いませんが、軟らかく火が通りやすい第二胃(ハチノス)で作りました。

下処理をしたハチノスを煮込んで一口大に切ります。鍋に油を熱し、みじん玉葱・ニンジン・セロリを炒め、更にハチノスとトマトを加えて炒め、白ワインとヴィネガーを加えて沸騰させ、ブイヨンを加えて軟らかくなるまで煮込みます。

ここから、「田代和久のフランス料理」を参考にして、炒めたみじんキャベツと白隠元豆も加えて煮込み、仕上げにニンニク油でシーズニングして、パルメジャーノとパン粉を振ってオーブンで焼きました。

まろやかな酸味で重くなりがちの内臓料理も食べやすくなります。レシピではペルノー(アニスリキュール)を使うので、甘苦い香りが加わります。「ラ・ブランシュ」のランチの定番メニューの一つですが、最近は意外と登場しないのが残念です。

ラグー・ド・トリップ

silflay at 05:30|Permalinkフランス料理 

2016年05月22日

「和食は健康に良いという証拠が提示された!?〜ただし現代の日本食です」

とかく日本では公的機関も民間も「和食は素晴らしい!健康的!」と口先で言うばかりで、なかなかエビデンスが示されませんでしたが、近頃ようやく大規模な疫学研究の結果が発表されました。あまりニュースで取り上げられることもなかったようですので、拙ブログでもご紹介したいと思います。

農水省の「食事バランスガイド」に近い食事をしているかどうか(7項目70点満点)で、45〜74歳の健康な(がん、循環器疾患、肝疾患の履歴がない)日本人男女約8万人を4グループに分けて、15年追跡して(1995年または1998年からそれぞれ15年)その死亡リスクを比較した研究です。食事内容はアンケート調査です。

「食事バランスガイド」は、栄養成分単位(たんぱく質が何gで脂質が何gあるいは何%等)ではなく、食材のカテゴリー毎に料理単位で分かりやすくバランスの取れた食事を目指そうというガイドラインで、アメリカで提唱された「5 A DAY」運動(「野菜・果物を一日に5サービング(≒皿)以上食べよう!」)が元になっています。

主食(穀物)は5〜7単位(炭水化物40g相当、おにぎり1個・食パン1枚が1単位)、副菜(野菜、芋、大豆を除く豆、茸)は5〜6単位(70gで1単位)、主菜(肉、魚、卵、大豆)は3〜5単位(たんぱく質6g相当、納豆・目玉焼きが1単位・魚料理1〜2単位・肉料理2〜3単位)、乳製品は2単位(Ca100mg相当、瓶牛乳が1単位)、果物は2単位(100gで1単位)が基本です(注1)。

約8万人全体の単純平均は47.4点・調整後53.0点でしたが、30点台・40点台・50点台・60点台の4グループに分けて比較したところ、10点高くなる毎に、総死亡リスクが約7%・循環器疾患死亡リスクが約7%・脳血管疾患死亡リスクが約11%低下しましたが、がん死亡と心疾患死亡のリスクに有意差はありませんでした。

この研究の注意点としては、まず有意に差が付きましたが大きな差ではなかったということがひとつ。更に「食事バランスガイド」は伝統的和食ではなく、現代の日本食です。そして「魚を毎日1皿以上食べる」等という項目は無く、他の先進諸国と同様に肉と魚は区別していません(もっとも平均的な日本人の食生活では自然と魚を多く摂取することになります)。

日本独自といえる基準は「野菜に芋類を含み大豆類を含まない」ことです(欧米では野菜に芋類を含まず豆類を全て含むことが多い、ただし豆類はいくら食べても1単位とみなす(注2))。また、野菜・果物ジュースの扱いも日本では「半分量で計算」ですが、欧米では「150ml以上で1単位、それ以上飲んでも1単位」が多い等の違いがあります(注3)。

サービングによる食事ガイドラインは、各国の基準にある程度違いが見られますが基本的には科学的根拠に基づいています。今回の結果も現在までに積み上げられてきたデータと矛盾していません。どの先進諸国でも、自国の公的機関が推奨するガイドラインに沿った食生活が健康によいという結果が出ることでしょう。

ところで、今回の研究の調整前のデータをみていくと「和食が良い・悪い」以前の問題が浮かび上がってきます。母集団が健康な中高年男女でしたので、最高点数のグループも最低点数のグループもBMI・身体活動度・糖尿病・高血圧・コーヒー習慣(一日一杯以上)の割合がほぼ同じだったのですが、以下のような差が出た項目もありました。

最低グループは、男性84.0%、喫煙率24.3%、飲酒率(週1日以上)53.4%、摂取エネルギー1872kcal/日、緑茶48.4%、脂質異常3.8%だったのに対し、
最高グループは、男性10.2%、喫煙率10.5%、飲酒率(週1日以上)22.7%、摂取エネルギー2144kcal/日、緑茶69.6%、脂質異常5.5%だったのです。

中高年男性は食生活が乱れやすく、喫煙・飲酒は食生活の乱れに結びつきやすく、そして喫煙・飲酒して食生活も乱れている中高年男性は予想通り死亡リスクが高い、という身も蓋もない結論が導かれそうですね(もちろん因果関係と相関関係の違いには要注意です)。緑茶習慣の良否は、絶対量が不明ですので何とも言えません。

最低グループは圧倒的に男性が多いのに、摂取エネルギーが少なくて脂質異常の割合も少ないのは、「食生活のバランス」だけで疾患・死亡リスクに差が出たのではなく、調査開始時点では健康と判定されていても実際には「未診断でも既に病気があった」「もともと病気になりやすかった」等の要因があることを示唆するものでしょう。

「禁酒・禁煙して食事バランスガイドに沿っていれば健康的」という結果は、当たり前過ぎてニューズバリューに乏しいかもしれません。しかし、何度も強調してきましたが、「健康」や「長寿」を達成するためには、遺伝的な素因はあるにせよ、魔法のように簡便な方法や特別な食物は存在しません。「当たり前のことを実践する」という地道な方法しかないのです。

そして、これも何度も強調してきましたが、伝統的な日本型食生活には、高塩分・不潔・低脂肪・飲酒に甘すぎる・食材の偏り等々、様々な欠点があります(もちろん世界中の伝統食が失格です)。現代日本の食生活はけして「欧米化した」のではなく、「近代化に成功した」ために私たちは長寿と健康を謳歌できるようになったのです。

(原著論文)
Quality of diet and mortality among Japanese men and women

(日本語解説)
食事バランスガイド遵守と死亡との関連について

(注1)一日2200±200kcalの場合
尚、「運動をすること」「菓子・嗜好飲料は一日200kcal内にすること」「毎日完璧でなくても数日〜一週間でバランスを取ること」も明記。一方で、塩分摂取量は無視、米食に偏って推奨している、お酒に甘い、日本人の食事摂取基準2015年版に対応していない(2016年5月現在)、などの問題点もある。

(注2)大豆と芋の扱いの違い
日本では大豆だけで約1単位食べる(欧米では豆類全部合わせても1/3〜1/2単位程度)、欧米では芋だけで約2〜3単位食べる(日本では芋は約1単位)。欧米で芋を野菜に含めると明らかに野菜の摂取量が減ってしまうので芋を野菜に含めず、豆は上限を設けた上で野菜に入れるのは合理的だが、日本の基準は中途半端と感じる。

(注3)その他の違いとして、例えば副菜(≒野菜類)は日本のガイドでは70gで1単位だが75gの国もあるし、果物は日本のガイドでは「剥いた状態」で」100gで1単位だが「皮・殻付きで」150gで1単位の国もある。




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