BL偏食日記

新旧関係なく、手に取って読んだBL本の雑読記録です。
新書・文庫、時にはコミックやCD・同人誌も……?

December 2008

接吻のナイフ  五百香ノエル シトラスノベルズ2008.12.175

「森がお前を呼んだんだ。お前は俺にさらわれたがっている」

モーダ・ゴルチア帝国神聖騎士の小姓リオンは、辺境の森でイァイエン族のユーナイフに助けられ、一夜の契りを結んだ。五年後、よそよそしい再会を果たした彼らは、辺境にひそむ策謀にいやおうなく巻き込まれてゆくのだった ――
ユーナイフは囚われたリオンの元に潜入し、二人は激しく求め合うが……。
謎多きモーダ・ゴルチア皇帝と、その側近三人の出自が明らかになる短編『血と紅蓮』も収録。


辺境に住む一族の青年×帝国聖帝騎士の小姓で、年上攻。
「海賊王子の虜囚」を始めとするKISSと海賊シリーズのスピンオフとも言える1冊です。シリーズ完結4冊目「海賊王国の永遠」の感想で、私はモーダ・ゴルチア皇帝に萌えよりも驚いてしまったと書きましたが、今回短編『血と紅蓮』を読み、ファルーカら聖帝騎士たちが何故そんなにも盲愛するのかわかったような気がします。
さて、表題作「接吻のナイフ」の受・リオンですが、ブロンドの髪・新緑のグリーンアイズ・薔薇色の唇と外見こそ天使のように美しいけれど、性格は帝国に仕える小姓だけあって意外と豪胆。主君のため、帝国のためであれば誰であれ利用することすら厭わない描写は、さすが五百香作品だと思います。その相手となる攻・ユーナイフは、五百香作品では定番になりつつある黒髪攻ですけど……傲慢でも俺様でもなく、一途に愛するリオンと己の一族との間で、どうしようと揺れに揺れまくってるという大型犬系。どんなにリオンから冷たくあしらわれてもお前が好きだとがんばってるのを見ると、可哀想という感情を通り越してしまいますね(笑)。うーん。これは現代設定で言うならストーカーになるのかな……それとも純愛?
そして、『血と紅蓮』で明らかとなった皇帝と聖帝騎士たちの出自ですが……聖帝騎士たちはともかく、モーダ・ゴルチアの出自と境遇にこれまたびっくり。いや、どこかの貴族の子息だというのは想像してましたけど、まさかそれから○○で宮廷入りしているとは思いませんでした。(未読の方のためにもあえて伏せ字にしてみました)だからというわけではありませんが、シリアスでファンタジー設定の五百香作品の常として、突き放したような、それこそ淡々とした描写でありながら、逆に行間から色香が濃く香ります。特に『血と紅蓮』では、行為に没頭しているだけではなく、そこに絡む心理や仕草にさえ密な空気がありました。そして、宮廷での水面下の駆け引きや陰謀に……また国が、皇帝が抱え込む秘密にも具体的なイメージがあるとは思ってもみませんでした。いや、言われて該当する場面を読み返してみれば、なるほどと納得してしまいましたけど(笑)。
うん。ホントに私は、五百香作品はアホエロでやられるよりも、このシリーズやキャラ文庫でのシリーズのようにシリアス路線が好きです。ご都合主義にラストはハッピーエンドに持っていくのではなく、登場キャラたちが悩んだり、苦しんだり、失うものを前にして立ちすくみ、それでも歩いていくのを、やや突き放したような地の文で語ってるところがやたらとツボにハマります。それに、現代のものでモデルがあったとしても、ファンタジーっぽく適度にかみ砕いて世界観を統一させてるのも、あっさりすんなり読めてしまう原因かもしれません。ファンタジーだから創作してしまえばいいと、一見すると何でもアリで書けそうなんですが、見極めが甘くなって、どこまでも許してしまうと世界が崩れてしまうことを、たぶんこの作品はわかった上で書かれてあるのではと思います。(あくまで私の想像ですが)
あとがきによると、機会が許せばまたモーダ・ゴルチア皇帝らの物語が書かれるかもとありました。ワンシーンだけでも個性的な面々でしたので、もしもふたたび読めるのであれば、とても嬉しいのですが……さて、どうなるのか。
ともあれ、ひさしぶりにBLとファンタジーが綺麗に融合された世界を読めて、私は非常に嬉しかったです。

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惑わない瞳  坂井朱生 ダリア文庫2008.04.203

「僕は、ここにいてもいいですか?」

繁華街にいくつもの店を抱える若き社長・太刀川篤典(たちかわあつのり)は、失脚させた男の『人形』を代わりに引き取れと要求された。そこで出会った、四朋つかさ(しほううつかさ) ―― ただ一人の主人のための『人形』として育てられた少年に、ひと目で心惹かれる。篤典は、彼の意思を尊重しようとするが、『人形』という存在であることを強制されてきたつかさは、その優しさと温もりに戸惑うばかりで…。


青年実業家×『人形』として育てられた少年で年の差&年上攻。
この本の攻・太刀川は、名士たちの道楽と享楽の倶楽部『久遠会館』に呼び出され、太刀川が仕事上で失脚させた男・芝浦の代わりに引き取るよう、『人形』として連れてこられた受・つかさと引き合わされるのでしたが……。
さて……男前で金回りのいい攻が、肉親の縁が薄い、でも美形な受に一目惚れという流れは、BL全体に関らず坂井作品で何度も繰り返されてる超テンプレですが、飽きっぽい私にしては珍しくツボにハマった部分もあって、かなり遅れましたが取り上げてみました。
まずツボその1。太刀川が強面に反して面倒見のいい、しかし基本的に不器用なタイプであること。そしてツボその2。つかさは産まれたときから外界との接触を遮断されて育てられたため、年相応の人並みの感情が持てず、ある意味無菌状態であること。ツボその3は、そんな一般常識が欠けててうまく感情を表せない受を前にして、どう接していいのかわからない攻が、内心、激しく右往左往して焦っていることです。
それにつかさは、元々は主人になるはずだった芝浦の、歪んだ性的好みに合わせて作り上げられた『人形』なので、コレといって自分から主張するということがありません。ただ従順に、主人から望まれるままに身体を拓けと教育されているという、常識から外れた特殊設定。だからというわけじゃありませんが、この時点でつかさのキャラに疑問を持ったらアウト(笑)。(そもそも現代日本が舞台で、名士が集う怪しげな快楽を追及する倶楽部が秘密裏に存在するってだけで、私は苦笑いを押さえ切れませんでしたが……)しかしながら、つかさは作中で太刀川から「自分で考えろ」と言われ、戸惑いながらもすこしずつ努力して、手探りしながら変わっていこうとしているところは好感度高め。たとえその努力の根幹が、新しい主人である太刀川に気に入られたい、その手で触れて欲しい、いらないと捨てられて元居た場所に戻されたくないということであっても、です。自我など不必要だと教育され、命令されれば従うよう調整された自分が、どうして太刀川の傍にいたいと考えてしまうのか……ラスト近くまで、その意味さえ知らずに揺れているところが哀れで、健気受が好きな私には可愛く見えてしまいました。(すみません、お手軽なヤツで)特にラスト近く、消えたはずの芝浦がふたたび現れたシーンなんて、『人形』としての教育と、芽生え始めた自我との間で揺れてるところは描写が細かくて、結果はわかりきってても、どう返事をするかワクワクしちゃいました。
それに太刀川本人も、主人として命令して強引につかさを繋ぎ止めようとするのではなく、自らの意志で自分を選んでほしいと焦れてる不器用なところが、妙にハマっちゃったんですね……ホントに王道パターンなんだけど、キャラ設定が全部綺麗に決まれば、何度繰り返されても萌えるもんだなぁと。まあ毎度パターンでやられたら、さすがに飽きてイヤだけど……これでまたしばらく間を置かないと駄目かな。
……というわけで、テンプレ上等!で、強面・だけど世話焼き攻×無菌・天然可愛い子ちゃん受が好みであれば、安定してますしイケると思います。

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ケモノな小冊子《ケモノシリーズ番外編》  真崎ひかる 2008.125

プラチナ文庫「二匹のケモノと堕ちる夜」についていた帯+応募者負担金で申し込みできた小冊子です。
大きさは文庫サイズで、ブラウン一色刷り。18P。
巻末には、あとがきにもチラリと書かれてあった、大友三兄弟が住む家の間取り図が収録されてます。

本編では、秋穂が2人から「兄弟としてではなく好きだ」告白され、身も心も翻弄されちゃうわけですが……いったい2人はいつ秋穂を恋愛対象として意識していたのか。そんな読者の疑問(?)に答えたような小冊子でした。流れとしては、最初は受・秋穂視点で始まり、次に攻1・将一と攻2・慎二が上下で、それぞれの視点で同時進行。ラストは再び秋穂視点でオチがついてました。
私が詳細に語るとネタバレしかねないので、ウンと簡単にしちゃいますが、つまり将一も慎二も、自分と似たタイプの双方には競争心はあっても、秋穂に対するような愛情はないということでしょうか。いや男兄弟なら、互いに男としての成長を意識しあってるのは珍しくないし、憎しみ合ってるわけでもないし、ごく普通だと思います。でも、秋穂は2人と違っておっとりしたところと、なにより2人にはない家事能力があって、ふんわり微笑んで、時には称賛の眼差しさえ向けるとあっては……そりゃあ可愛いと感じてしまうのも無理ないかと。(まあ、今の段階では再婚した両親は海外で、子供たちがこんな状態なんて知らないわけですけど)
しかし……将一も慎二もケモノと言うより、秋穂に関してはちょっと過剰に反応して、その分余計に理性を手放してますね。無邪気に笑いかけられたり、日常レベルで触れられたりしただけで妙にドキドキしたり、秋穂の目が誰かに向けられただけで嫉妬にかられたりしてるし。特に秋穂が将一の名前を呼んだり、慎二をかまったりすると、それぞれの視線がバチバチと火花散らして絡んでますしね(笑)。

申し込み時には、ホントにこの申し込みで大丈夫なのかと、ちょっぴり不安に駆られましたが(コレといって宛名カードはなく帯の裏側余白に住所氏名を書いた)、当初の発送予定もてっきり年明け以降だと思ってただけに、無事に年内に届いたのには驚きました。
ネタはショートでしたが、シリーズを読んでた人には楽しく、特に私は攻視点の話を読むのがツボなので、2人の告白がやたらと甘くて楽しかったです。

SH〜シュガーハイ〜  オハル シャレード文庫2009.01.204

「俺は餌ですから」

眼前に並ぶ冷たい骸 ―― 柘植冬悟(つげとうご)は合成麻薬『SH』によって、すべてを奪われた。あれから六年、組織犯罪対策課に所属するキャリア崩れの刑事・柘植は姿を変えて広がりだした『SH』の捜査中、恐ろしく美人で勝ち気な麻薬取締官・早瀬馨(はやせかおる)とかち合う。警察対麻取。捜査の主導権を巡り交渉は決裂。ところが麻薬取締部の内通者がらみで取引がしたいと、早瀬は再び柘植に近づいてくる。だが捜査は、思いも寄らぬ方向へと進んでいき……。
『SH』を巡り、封印されたパンドラの箱が開く!


警部×麻取捜査官で年上攻。
私は初めて見かけるPNですが、これが初商業になるのかな?……ということで気になるので手にしてみました。
作中で扱われている題材は、一般ハードボイルドでもBLでも珍しくはない転落キャリアと麻取捜査官なので、果たしてどこまで独自の世界観を作ってくれるかなぁと思ってました。さて、題材が他でも使われてて珍しくないなら、BLでの場合、個性を出すのになんといっても重要なのは受と攻(笑)。
……で、攻・柘植は定番ではありますが、私の好みでした。いや、正確に言えば、柘植の設定そのものがハードボイルド小説では鉄板の『キレ者すぎてはみ出し、エリートコースから転落して所轄』だったせいでもあります。これで、肉親・知人を理不尽な理由で亡くした過去アリで、そんな彼を黙って部下として使っているクセ者な上司がいるとくれば、もう……(笑)。おまけに、作中で使われてるクスリが覚せい剤の成分を含みながらも、表向きはタブレット状で比較的お手軽な値段で買えるヤツですから、作家さんには悪いと思いつつも、どうしても私は某一般ハードボイルド小説シリーズをつい思い出してしまいました。
ただそれでも嫌悪感がなかったのは、やはり一般とBLとは別物ですし、普通の小説でホモ萌えしながら読むのとは違っているからです。(当然ですね)それに、あのシリーズの主人公と違い、所轄に流されても背負ってる重みが別次元なので、読んでるうちに気にならなくなったのも事実。その代わり、受・早瀬が置かれている立場がスリリングだったので、意識がそちらに持っていかれたのも、あっさり最後まで読めた理由だと思います。
ストーリーそのものは、『SH(シュガーハイ)』と呼ばれるクスリが過去・現在において出回り、2人はそれぞれの立場から、クスリを流している根源を突き止めようと動くことになります。当然ながら事件絡みになりますが、SHそのものが絡むというよりも、警察と麻取との水面下での探り合いが主体になっていて、その行く手にはどうしても1人の男が浮かび上がって……。(その男については、あえて未読の方のためにも省略)半分は、その男と柘植との勝負にも等しいんだと思います。そこに、早瀬も巻き込まれていくことになるのですけど……私はラストまで読んで、事件の結末そのものについては、なんとも微妙なもどかしいような印象が残りました。
その事件の一方で、ノンケだったはずの柘植がゲイの早瀬に、自分でも気づかないうちに入れ込み、堕ちていく過程はものすご〜く楽しかったです。飄々としているように見えて重いモノを抱えている柘植と、ツンツンしながらも人肌が恋しい早瀬の組み合わせは、ツボでした。特に、何度か柘植に膝蹴りを食らわせていた早瀬が、なし崩しのHで襲い受と化し二転三転して、最後には正直者になってたところはツボを突かれまくりました。
設定そのものは手垢が付いてることもあり、展開も、ハードボイルド好きなら先読みができる範囲で、特別コレといって惹かれるモノはないんですが……私の目には、柘植や早瀬、柘植の上司・那須、早瀬の上司・菅田などのキャラのおかげでサクサクッと読めました。でも、この1冊だけだと作風が読めないな(笑)。
次回作があるなら、また読んでみたいと思います。

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凶悪なラブリー〜もふもふしないで〜  真崎ひかる シャレード文庫2009.01.203

「……愛してるよ、子犬ちゃん」

クールな美貌と無愛想な態度で他人を寄せつけない孝太郎(こうたろう)と、人懐っこく社内でも人気者の相馬東吾(そうまとうご)。部署も違えば性格も正反対の相手だが、隣に引っ越してきて以来、なぜか相馬に「コタロー」呼ばわりで懐かれ、何かとかまわれる日々。しかし、孝太郎には誰にも言えない秘密があった。それは、満月の夜にのみ生える ―― ふさふさの尻尾! しかも発情のオプションつき…。なのに相馬にキスされ予定日でもないのに尻尾が出現してしまい、あろうことか敏感なソレを思う様撫で回されて……。


製薬会社営業マン×製薬会社研究員で同期同士。
あらすじを見てもわかるように、イロモノです(笑)。
この本の受・孝太郎は、育ててくれた祖母が亡くなったあとは、満月の夜になると尻尾が生えてしまう秘密をひとり抱えていたのですが……。
うーん……(笑)。私の目から見ると、ちょっと攻・相馬の性格が電波っぽいかな。良い表現をすれば、前向きで明るいし人見知りもないし、営業としては優秀だという設定なんだけど……比較的マイペースで好奇心旺盛。それにガサツ。逆に孝太郎は、尻尾が生える秘密を抱えてるせいか、ガードが固くて真面目。ここまで正反対だと、合う合わないを通り越してるといいますか。普通、尻尾が生えてるのを見たら驚くか、驚愕して逃げて、誰彼問わず言って回るかになっちゃいますよね。でも相馬は驚くどころか逆に尻尾を握り、ふさふさして可愛い、飼っていた愛犬・コタローみたいだとご満悦なんですから、やっぱり相当変わってると思いましたね。
BLのウリでもあるHは、相馬から仕掛けられたり、満月の夜とか……とにかく孝太郎の尻尾が出てしまったら、普段の生真面目さはどこへやら。エロモードにスイッチ切り替わって、あんあんだめぇと腰振って自らおねだりですから、それなりにたっぷり入ってます。でも、イロモノだからか、萌え心を擽ってくれるようなエロじゃなかったのは残念でした。(イロモノで求めるなって)どうしてなんだろうと自分なりに考えてみたんですが、孝太郎が満月で簡単にエロ切り替えスイッチになっちゃうところと、相馬のキャラが電波っぽかったのが敗因かと。特に孝太郎、エロモードになったとしても、なし崩しにあんあん喘ぐより、恥じらいというか、理性や自我を残して、無駄でもいいから多少は抵抗して欲しかったかも。快楽に弱すぎて、押さえ込まれたらおしまい。そのまま突っ込まれてましたからね……。コメディ仕立てなんだけど、私が読んだ印象としては、どうしても相馬が面白半分に孝太郎へ手を出してるみたいに見えるシーンがあるので、楽しいとは思えなくて。
不可抗力とはいえ、思いがけず孝太郎があっさりと相馬とHしちゃって、そこからはズルズル関係が続いてるのが物足りない。私は恥じらいや初々しさと共に、男を感じさせる部分がある受が好きなので、余計に物足りなく感じてしまうのかもしれませんが。どうせ孝太郎に恋人ができるなら、まだ当て馬(?)の、同じ研究室にいる堂本の方が、性格がヒネてそうで好みだったなぁ(笑)。全体的に設定としては好きなんだけど、主役キャラが好みに合わないとソコが不協和音みたいに感じて、どうしても評価が低めになっちゃいました。ごめんなさい。

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王子様には秘密がある  高遠琉加 ビーボーイノベルズ2008.12.204

「あの人が星嶺の“王子様”なんだって」

愛らしい仕草、にこやかな笑顔に星嶺学院大学の誰もが魅了される、超御曹司・御園生美貴(みそのおよしたか)。キラキラ憧れの綺麗な王子様だけど、オトナの包容力をもつ年下の和廣(かずひろ)にだけは、とっても小(!?)悪魔…。わがままだけど可愛くて、毒舌だけど上品で……そんな美貴を和廣はずっと独り占めしたくなって……!?
超最強のエリートツンデレも登場!! 一冊まるごとツンデレ純真萌えラブ。


外部入学の大学生×エスカレート組・御曹司で年下攻の表題作の他、エリートツンデレ美園生兄・貴史が主役の「王子様はいつも不機嫌」を書き下ろしで収録。
えーっと、つまり……兄弟でツンデレ王子様'Sです。もちろんタイプは若干異なりますけど、何故かどっちも受(笑)。いや、おもしろいからいいけど。
さてストーリーは、ごくごく平凡な容姿の攻・和廣が、思いがけず受・美貴の本性を目撃してしまうところから、平和な大学生活がだんだんネジれてきます。美貴は、表向きは家柄も血筋も超上級の、キラキラ綺麗な皆の憧れの王子様だけど……本音は意外と毒舌でワガママ。でも実家で、歳の離れた妹・弟たちの面倒を親に代わって見ていた和廣にしてみれば、美貴が言う毒舌もワガママも可愛いと受け流してしまえるんですな。そんな和廣は、これまで美貴の周囲にはいないタイプ。それどころか、ありのままの性格を見せても態度も変えないし、美味しいご飯も作ってくれたりして、年下のクセに包容力抜群で……。いうなれば、美形は美形なりにしてきた苦労を、何故か和廣の前ではしなくていいし、とっても居心地がいい。そんな気持ちが、美貴の中で恋に変わったのはいいんですけど……。
簡単に言えば、美貴って、周囲から思われてるような華々しい王子様だけではないんですね。他の学生たちと同様に悩みもあるし、幼稚舎からの持ち上がりで親同士の横の繋がりが濃密な学園内では、美園生家の人間としては無様なところは見せられない。それに加え、美貴は美貴なりに自分の存在としがらみに、どこか醒めてる部分もあったりして……お兄ちゃん気質の和廣じゃありませんが、読んでるとちょっと精神的に不安定なところが庇護欲をそそります。最初は裏表ある小悪魔な受かと思ってましたが、読んでいくと意外にも脆い部分を抱えた可愛い性格でした。あと、和廣は私の萌えツボのひとつである「餌付け」を満たしてくれましたし、何かと世話焼きなお兄ちゃん気質が素敵。偶然とはいえ、兄に暴力的な言葉を投げられた美貴を見てしまったときも、正論で兄を打ち負かしてるところが男前でした。もっと美貴を甘やかしてるのが見たかったな。
そして、その弟の素行に口うるさく出しゃばってきた兄・貴史ですが……書き下ろしでは弟編で感じたイメージとは逆転。真面目で不器用で、内面は案外デリケート。母親に溺愛されている弟・美貴に対してコンプレックスがあり、上手くコミュニケーション取れてないんですよね〜。(1度兄弟で腹割って話し合った方がいいと思うなぁ)そんなツンツン貴史に、柔らかな物腰で構ってくるのが幼馴染・光輝。初等科の頃は細くて小さくてぽわぽわヒヨコ頭。トロくて周囲からいじめに合いかねなかったひ弱さで、貴史が庇っていなければいけないほどだったのに、成長するにつれ、背が伸び、手足が長くなり、どんどん「男」になっていき……。
いいですね〜、幼馴染で下克上ってのがツボです。貴史を強引に搦め捕るんじゃなくて、柔らかな物腰で囲い込むみたいにして、お願いしている態度を取りつつ問答無用で堕としてる光輝のタラシぶりが妙にハマりました。初等科の頃からの初恋ってところが甘酸っぱくて、イイ。弟編も嫌いじゃありませんが、それよりもこの兄編の方が萌えました。好きです。
贅沢言わせてもらうなら、1冊に詰め込むんじゃなくて、弟編・兄編で1冊ずつ読みたかったなぁ。くっついた後のラブラブが気になる。特に兄編が(笑)。しかし兄弟揃って受か……美園生家、分家から跡取り確保しないと確実に滅びるな。

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穢れなき虜囚  牧山とも プリズム文庫2009.01.234

「束縛、してくれない、の…?」

禁忌の関係の果てに生まれてきた漣(れん)は、二十年以上もの間、監禁生活を強いられ、性的虐待を受けてきた。そんな彼は祖父の死をきっかけに外の世界へ出られることとなり、弁護士である直純(なおずみ)のもとで暮すようになる。
しかし、直純が漣の面倒をみるのは、仕事の便宜上でも善意からでもなかった。すべては漣の祖父に対する復習計画を実行に移すためで ――


復讐を企む弁護士×幽閉されていた青年で年上攻。
この本の受・漣は、禁忌の関係から生まれたために血族から忌み嫌われ、実の祖父からは幽閉・監禁生活を強いられた挙げ句の果て、道具を使った性的虐待を受けながらもかろうじて生き永らえていました。そこへ祖父が亡くなったという知らせと共に、弁護士だと名乗る直純らが現れて……。
まずストーリーを通じて印象的なのは、漣の臆病さと寂しさ。そして、無償の愛情に対する飢え。そんな漣を利用しようと近づいたのに、健気で一途な姿を見ているうちにほだされ、傾いていくのを必死に律しようとしている攻・直純です。彼が漣の祖父に復讐心を燃やすのは、ある理由があるからですが(その詳細については、あえて未読の方のためにも伏せます)哀れな漣を利用してまで取り憑かれてしまうところは、彼もまたある意味で虜囚と言えるかもしれません。
……で、私はあらすじをチェックして、即買い(笑)。漣のような、痛々しいくらい健気で、場合によっては自己犠牲も厭わないような受にはめちゃくちゃ弱い。しかもトラウマ持ち。でも、直純にだけはぎこちない笑みを見せたりして不器用なんですもん。直純みたいな攻が、一途に慕ってくる小動物みたいな受に骨抜きにされていくのも大好物! しかも直純自身も、自分の感情をうまく伝えられない不器用さがあって……そう。直純は、自分だけを見て、与えられる温もりに擦り寄ってきて、罪はないとはいえ無意識に男心を煽る漣に、ボランティアだと手を付けたが最後でズブズブ溺れていくんですな。はっはっはー!!
いや、ホント、漣の血族たちが揃いも揃って鬼畜でロクデナシだけに、漣の怯えと生命力の薄さが際立ってますよ。でも、血族たちが直に出てきて暴れてるわけではないので、血で血を洗うようなドロドロさとは別物です。主に直純の内心の葛藤と漣の戸惑いがメインになってますから、まるでその姿は、慣れない小動物を飼い馴らしていってるのと似てるような……?(笑) あと、漣は年齢の割には幼く感じてしまいますが、コレも設定からすれば無理ない範囲なので私的にはOK。
まあプリズムですし、いくら漣が年齢の割にウブでも、相手の直純は経験豊富な設定みたいですので、エロはめいっぱいサービスされてます。なにしろ漣は道具で性的虐待は受けていても、生身でいたずらされてたわけではないので、まともに抱き合うのは直純が初めて。でも、直純は漣のことを(性的虐待を受けていたと知っているので)てっきり経験アリだと思い込んで……。ふふふ……いやぁ美味しいです。漣が、無意識の媚態でイヤと抵抗しているところと、行為の途中で実は漣が未経験だと知って驚いてる直純が可愛いと思ってしまった私は変態です。おまけに、2人が関係を重ねるにつれ、どんどんしつこくエロになっていくのを喜んで読んでるんですから、おしまいですな。直純は漣の想いを知ってて、その好意を逆手に取り、自分に抗えないのをわかってエロやってる節もあるので、イジワルで焦らしたプレイで散々泣かせてたりします。もちろんHで、直純だけと縋ってしまうのも可愛いけれど、不器用なりに彼の役に立とうと慣れない手つきで洗濯物を畳んでみたり、彼の帰りを玄関先で愛犬のように座ってジッと待ってる漣も、健気受好きな私にはたまりません。
まあ、だからというわけではありませんが、直純が漣への気持ちがだんだん大きくなっていってる時点で、最後は予測できたような、できなかったような……いや、マジなことを言えば、途中までは直純が、自分の気持ちにどう決着付けるのか想像できませんでした。だけどBLで、漣との幸せが当然だとしたら、やっぱりそうするしかないだろうなと。前向きなのが1番だよね〜。
……というわけで、ベタ展開だけどツボを押されたせいか、私は最後まで楽しく読めました。執着攻×健気受が好きなら、どうぞという感じです。

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太陽の貴公子  円屋榎英 キャラコミックス2008.12.013

「私はもう迷わない」

旅行会社で働く光(ひかる)が、ある晩公園で拾ったのは行き倒れの金髪の異邦人!! 高価なスーツを身につけた、ワケありげな美貌の青年・レオを光は居候させることに…。けれど彼は礼ひとつ言わず、年下なのに態度は尊大。命令口調で超ワガママ。そのうえ「私のものになれ」と抱いてきて…!? 異国の御曹司との灼熱の恋。


異国の王子様×旅行会社勤務のリーマンで年下攻。
何冊か作家さんの本は読んだことがありますが、丸々1冊シリーズで、(これまでに描かれた作品比で)頻繁にHシーンありというのは(失礼ながら)初ではないでしょうか。偶然雑誌で1話分だけ読んだこともあり、ちょうど単行本にまとまっていたので手に取ってみました。
まず目を引くのは、攻・レオが身につけているアクセサリーの数々。話が、場面展開が変わるたびに細かく異なったデザインが描かれているので、レオの豪奢な美貌も相まって、画面がキラキラです(笑)。あと、目に付くのは、コレといって真っ白なコマがひとつもないこと。どのページも背景や小道具、もちろんキャラの造詣に至るまでしっかり描き込まれてあるため、そういう意味では好感度高いです。
ただ、私の好みからズレているのか、それとも別に理由があるかはわかりませんが、どういうわけか綺麗さっぱり萌えはないんですね。不思議と。ああ、描き込んであるな〜綺麗だなぁ〜と思うんですが、レオにも、受である光にもコレといって感情移入するわけでもなく。もう、単純にページをめくり、もくもくと読んでいただけでした。なんでなんだろう?(笑)
前に読んだ「お望みのままに」で感じたような物足りなさとは、また別物って言いましょうか。たしかにBLに入れて欲しい要素は揃ってます。攻も受も、ましてストーリーも設定も、もちろんHだってしっかり入ってますし、ある意味「鉄板」ともいうくらい完璧です。でも、それだけが萌えとは違うんです。ホント、精密に作られた食品サンプルを眺めてるのに似てます。美味しそうだけど、食べられないというアレです。
うーん……これはもう、私にとってはこういうふうにしか読めないんだと、達観して考えた方が良さそうです(笑)。それでもひとつ気になるのは、冒頭でレオが公園で行き倒れていた理由ですね。単に日本で見たいものがあって、警護をつけずに無断でホテルを出たのか、それとも何か目的があって(この場合は成人式を迎える前に束の間の自由が欲しかったからとか)独りで行動し、世間知らずが仇になって空腹で倒れちゃったとか。そのあたりの説明が何もなかったので、想像するしかありませんでしたが……。(ホントのところはどうなの?)1番の謎は、レオの国だよなぁ(笑)。いったい地球上のどういう位置に想定してて、どんな国なのかがさっぱり。小さな国土だということと、これまでコレといった外交がなかったところを見ても、いったいどんなしきたりやタブーがあるのやら。作中ではホントに大雑把にしか触れられてなかったからなぁ。自分でも細かいところを突いてると思うけれど、気になるのは気になるんですよね……マンガだから、小説と違ってそこまでページが取れないと知りつつも(笑)。
おかげさまで、画面は申し分ないくらい美麗なんだけど……欲しいところに説明が足りないようにも思えるし、行きずりに近い形でレオに手を出されて、そのままズルズルと関係を受け入れてしまえた光が(悪いけど)私にはあまり理解できないし……これで架空の王国じゃなくて、米とか英、伊とか具体的な国で設定してたらどうなってたんだろうなぁと、つい意地悪なことを考えてしまっていました。
うん。これといって崩れたところもない華がある絵だけど、私の目にはストーリーでは何かが一味足りない気がします。うまく言えないけど。
唯一、ちょっと考えさせられたのは、作中で光が、箱入りで世間知らずなレオを叱る場面の数々ですね。正論なんだけど私には耳に痛い言葉が多い(笑)。
人から寄せられた好意に素直に「ありがとう」と感謝をすること。身分や立場ではなく、その人の本質を見て毅然として振る舞うこと。目の前にあるハードルを、卑屈に思わず、自分がやれる範囲で努力して乗り越えること。言葉では簡単だけど、それを実践することがいかに難しいか。そして、どんなに遠くに離れていても、気がつけば心の奥底にいる愛しい人の存在は、普通だったらちょっと説教じみてる描写だけど……この2人の設定だったら違和感なく生きてたと思います。……とまあ、描かれてあるのは王道路線なんですが、私は不思議と萌えがない。何故だ!? キャラの性格その他諸々がお綺麗すぎるからか!? 毒が欲しいのか!?
でも、人の好みは十人十色と言いますし、当然ながら何の違和感もなく萌えて楽しめる人もいると思うので、あえてココは単純に私の好みの問題だと言い訳しておきます。すみません。

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サミア  須和雪里 シトラスノベルズ2008.12.175

「好きだよ、私の特別な人……」

ごく普通の高校生・友則(とものり)が出会った謎の美形外国人は、なんと宇宙からやってきたエイリアン。しかも、友則に「殺してくれ」と頼んできて……。困惑しつつも彼に“サミア”と名付けて一緒に暮らすうちに、サミアを好きになってしまう友則だが ―― 。『サミア』『いつか地球が海になる日』『ミルク』ほか、書き下ろし『ミルクの後で』を収録。


ごく普通の高校生とエイリアンの会合を描いた表題作『サミア』の他、自分のことを変態だと思う高校生の恋愛『いつか地球が海になる日』、気がついたら同級生が飼うハムスターに同化していた!?という奇抜な話『ミルク』を文庫から再録した作品集。新書化にあたっての書き下ろしは『ミルクの後で』を収録。
以下、簡単ですが感想を書きます。
【サミア】
読み終わってみると、なんとも不思議な雰囲気の話でした。友則を待っていたというサミアの告白が重く、胸に痛いです。でも、恋愛未満で不思議テイストなストーリーは、今のBLからすると、新規での出版そのものが難しいだろうなぁと思います。私はこういう不可思議な感じは嫌いではありません。……というか、この雰囲気は、好きな人にはたまらないだろうな〜。透明感がいいです。
【いつか地球が海になる日】
冒頭から、主人公・七宮(ななみや)の「俺は変態である」という一文にギョッとなりますけど、読み進めていくうちに七宮独特の感性に引きずり込まれてしまいました。そして、てっきり変態アホアホ路線に突っ走ると覚悟してたのに、意外なところでストーリーがねじ曲げられ(!?)、そのまま胸きゅんのシリアスに行くとは、私はこれっぽっちも思っていなくて……。
いや、まいりました。まさかそうくるとは思わなかったというのが正直な感想です。でも、納まるところにハマってしまえば、それが正しい形なんだと思えてくるから不思議ですね。
【ミルク】【ミルクの後で】
主人公・宮城(みやぎ)が、気がつけば同級生が飼うハムスター・ミルクに意識が入り込んでるというのが、意表を突かれてしまって……。小さな体で、考えてる以上に自由がなくて人間の言葉を喋れない、なによりミルクの飼い主・滝叉(たきまた)とは異種格闘技(?)という壁が立ちはだかってるところが実におもしろい。
なんといいますか、嫌いだった相手・滝叉の意外な一面を見てしまって、慌てたり焦ったり、ジタバタしているうちに好きになって……という流れが自然でした。特に、ミルクの体の宮城と、人語を解すハムスターにちょっと怯えてる滝叉が、文字を書いた紙でコミュニケーション取れたあたりになると、切なさとおもしろさが渾然一体になって、ラストまで駆け足で読んじゃいました。
しかし、『俺様語録』最高(笑)。私がそんな言葉を言われたら、恥ずかしさといたたまれなさで、グルグル回っちゃってるかもしれませんが。

コレといって派手ではないと思いますが、繊細なストーリー展開が独特で、どこか温かでノスタルジックな気持ちにさせてくれます。私は文庫は未読で、今回初読みでしたが……不思議な雰囲気の作風って、今のBLには足りないかなぁと感じたのも事実。こうして『サミア』を読むと、発表年代に関わらずいい作品は新装版で復刊してほしいし、読んで見たいなと思いました。

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親友と恋人と  椎崎夕 SHYノベルズ2005.10.135

「中司さん、好きな人がいるんだって」

お人好しな佑一(ゆういち)と無愛想だけど女にもてる中司(なかつかさ)。学部も違えば、外見も性格も異なるふたりだが、周囲からは親友同士と認められていたし、お互い隣にいるのが当たり前になっていた。けれど、佑一が中司への気持ちを意識したときから、ふたりの間には見えないズレが生じた。あいつのこと、なんでも知っているつもりだったのに…なにも知らなかった…!? 意識した瞬間、すべてが変わる ―― 親友同士のすれ違いラブ・ストーリー。


大学生で親友同士。学部は違うけれど共に天文部という設定です。
ストーリーそのものは、佑一の視点で進行していきますが、冒頭のあたりで既に佑一のお人好しな部分と、どちらかといえばはっきりした性格の中司の対比が見事です。そして、そんな2人の性格の違いは、大学生活におけるクラブ活動・講義の出席取りやノートなどのやり取りで、一層くっきりと浮かび上がり……。
うーん……あまりうまくは言えませんが、佑一のお人好しさを読んでると、中司や佑一の妹・彩乃、天文部副部長・八城が横から思わず口出ししたくなる気持ちがよ〜くわかります。本人の中には、とりあえず「受ける・受けない」の基準があるみたいですが、それでも無防備にも程がある!って感じ。優しく接している佑一を見ていると、誰にでもそうなのかも……なんて、つい誤解されても仕方ないと思うくらいには防御能力が低そう。だからこそ、中司の鉄壁ガードが功を奏しているんですけど……それすらも「親友だから」と佑一は思っていたに違いないんです。布団の上で、眠っている中司に抱き寄せられてしまうまでは(笑)。
いやぁ……本編を通じて、私が1番好きなシーンでしたね。眠っている中司が佑一を腕の中に抱き込んで、大事そうにしっかり抱え込んでる場面が。まだ佑一は、自分の気持ちを意識すらしていない頃なので、タバコの匂いがする中司の体臭に焦ってドキドキしてるところは、初々しいのです。あと、なんのかんのと言いつつ、妹に弱い兄の顔もあったりして、そこもらしくていい。まあ、ちょっと八方美人っぽい性格なのがナンだけど……逆にそんなお人好しな佑一だから、人によっては癒し系になってるのかなとも。(でも佑一は、従来の私の好みからは若干外れるかな?)
……んで、佑一とは逆パターンで、中司のキャラは私の萌えツボにヒット(笑)。こういう表向き強面扱いされてて、堅物・真面目・でも意外と恋人に対してはエロエロという攻は大好きです。良くも悪くもグレーゾーンがないといいましょうか……真当な人にはキチンと対応し、礼儀がなってないヤツには容赦なし!というパキパキしたヤツが、好きな相手を前にしちゃうと途端に余裕もへったくれもなくて、焦るあまり「0」か「100」かの選択しか選べてないあたりが微笑ましい。まあ、その中司の性格知ってるおかげで佑一は、ストーリー中盤あたりで「嫌われたんだ」とヨレヨレになっちゃうんですけどね。そして、ただでさえ紆余曲折している2人の恋路に、より複雑な影響を及ぼしちゃうのが、妹・彩乃だったり、同期の深見だったりするわけで……。特に深見、最初はちゃらんぽらんしたヤツかと思ったら、意外にも男前な性格してて、ラストは評価がガラリと変わりました。
……とまあ、これといって派手なところはなく、あらすじを見ても比較的普通の大学生活を送っているストーリーですが、佑一と中司を中心にして、どこにでもいそうな……でもクセのある脇キャラを周囲に配し、地味なエピや揺れる心理描写を積み重ね、ラストに向けて2人の恋愛模様を織り上げていくあたりは上手いと思いました。某キャラの何気ない台詞にドキッとすることもありましたし、自分自身のことと重ね合わせてみて、ちょっと考えさせられてしまうところも。おかげで、途中で何度か泣きそうになった場面もチラホラ。なんか、こんなにお手軽にメソメソ泣いてて自分、大丈夫か?と思わなくもないです。地味なんだけど、派手な設定も何もないんだけど……これといって特徴もない、ごく普通の子たちなんだけど……なんでこんなに愛しくなるんだろう(笑)。
椎崎作品を読むと、私、なんか毎回イイ意味で打ちのめされてる気が。完敗です。

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