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SILVER 徒然草
ビビデバビデブー高木。
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で、原作小説である本書を67ページまで読んだが、映画は今のところほぼ原作のストーリーをなぞっているようだ。作者の分身らしきジェームズという男が自動車事故を起こし相手の男を死なせる。その瞬間、相手の車に乗っていたその妻と目が合い、性的衝動を感じたことから、入院中もジェームズは自動車事故による性的エクスタシーを絶えず妄想するようになる。見舞いにくる妻(既に通常のセックスで飽き足らず、互いに不貞を公認しつつセックス中に不貞相手の名を呼ぶ、ジェームズの秘書の女と妻のレスビアン場面を想像するといった倒錯プレイを楽しまざるを得なくなっている)や看護婦などにも同様の妄想をめぐらせる。また、病院内で事故相手の妻(顔に大きな手術の傷痕がある)とすれ違い、性的妄想にふける。やがてジェームズは退院し仕事に復帰するや、自動車を借り、自らの新たな性的妄想を追究し始める。娼婦を相手に車内プレイにふけっていると、自動車に同様の性的妄想を抱くヴォーンという男が居合わせる、というところまで。
上記の通り、宮崎勤や奈良の犯人も裸足で逃げ出すキチガイ、変態ぶりである。ちなみにヴォーンは念願かない、何度もシミュレートした挙げ句理想の自動車事故を起こし死亡することが冒頭で既に明かされている。ということは恐らく後半も映画とほぼ同じストーリーなんだろう。多分今日読み終わりそうである。
バラードは妻キャサリンもまじえて、ヴォーンやその仲間、事故相手の妻などを交え、理想の交通事故をあれこれと模索妄想しつつ、車内で同性愛を含む乱交セックスにふける。ヴォーンの理想はエリザベス・テイラーの車と衝突し観念上の性交を成就しながら死ぬことであったが、乱交仲間の男がテイラーの扮装をし理想の事故死を遂げたことで先を越され、絶望して一線を踏み越える。以後彼は情緒不安定となり、妄念の機械と化し、更に理想の事故死を模索して様々なシミュレーション行動をとり始め、警察にマークされるようになる。バラードは彼を慰めようとして車内で肛門性交してやるが、これが契機となってヴォーンは一気に死へと突っ走ることになる。ヴォーンの妄念の当て馬として利用されていた妻キャサリンがヴォーンにつけ回されるようになるが、結局シミュレーションのための当て馬に利用されたに過ぎなかった。ある日、ヴォーンはバラードの車を盗み、エリザベス・テイラーの乗った自動車に衝突しようとして失敗し事故死する。バラードは、絶えず発生する自動車事故で次々と死んでゆく人々に妄念をめぐらせつつ、自らの事故死のプランを練り始める……というストーリー。ちなみに映画版では、確かバラードが実際に妻と事故を起こし車外に放り出されてエクスタシーに浸るというラストシーンがあったような気がする。
このストーリーだけみると、単なるキチガイだが、テーマ、基本構図は「ハイライズ」と同じだ。テクノロジーが人間の妄念、情欲の産物、媒体として機能し、人間の自己破壊衝動発散の媒体となって死に導く、という構図。3部作の第1作である本作は、自動車というテクノロジーの権化が、性欲という人間の情欲の先鋒と結合して人類を死に導くという最も明瞭な図式となっている上に、現実に社会問題となっている交通戦争といわれるほどの交通事故多発問題に対する集合無意識的解釈ともなっている点が秀逸である。現に、自動車を性的シンボルとみなし、車内性交を趣味とする人々はごく普通に存在することからも、このバラードの心理学的解釈が全く的を射ていないとまではいえまい。
そして、文体も相変わらず凄い。ひたすら車内乱交セックス、交通事故、負傷した/奇形の肉体や死体、分泌物が即物的かつ観念的に描写され、人体と機械の境界線が曖昧になるかのような錯覚に陥るほどだ。ラストにおいては、旅客機もまた、性欲の媒体、運送機として利用されている。最後に至るまで全く救いがないほど恐ろしく、人類はテクノロジー
とともに自らの本能に従ってまっしぐらに死に向かっているという諦念に満ちている。交通戦争が激化し、性的解放も進んでいる今だからこそ、本書の世界はますますリアリティを持って迫って来る気がする。
テーマ性 ★★★★★
奇想性 ★★★★★
物語性 ★
一般性 ★
平均 3点
文体 ★★★★★
意外な結末 ★
感情移入力 ─
主観評価 ★★1/2 (28/50点)