弁護士二宮仁のblog リーガルナビ(交通事故)

法律実務家として日々経験することを書いています。

前回の続きです。

第3、人身傷害保険

  1、訴訟基準差額説(1)

 (1)過失割合が50対50で6000万円の損害賠償額の場合、訴訟基準差額説によれば、被害者は加害者から3000万円、被害者の人身傷害保険会社から3000万円を取得する。 

 (2)人身傷害保険会社が被害者に対し3500万円を支払った後、被害者が加害者を相手に訴訟を起し、裁判所が総額6000万円を認定し、過失相殺が50対50となった。加害者は、3000万円から3500万円を差し引くべきだと主張した。

 (3)訴訟基準差額説によれば、人身傷害保険会社は被害者負担分3000万円を負担する。3000万円を超えた500万円については、人身傷害保険会社は被害者に代位して加害者に対する請求権を有することになる。加害者は、3000万円から500万円を引いた2500万円を被害者に支払うべきことになる。

 2、訴訟基準差額説(2)

 (1)上記1と類似事例で、人身傷害保険会社が先に700万円を被害者に支払い、代位により自賠責から700万円の求償を得ている場合、人身傷害保険会社は、3000万円-700万円=2300万円を支払えば足りるのかが問題となる。

 (2)加害者任意保険会社は、自賠責で700万円の支払をしたのだから、2300万円を支払えば足りると主張する。すると、被害者は、700万円を二重に評価されてしまうことになる。加害者自賠責保険会社が700万円を支払ったのであり、人身傷害保険会社は700万円を負担していない。

  (3)人身傷害保険会社の約款がどのように規定されているかが問題となるが、訴訟基準差額説を徹底すれば、人身傷害保険会社は3000万円を支払うべきである。人身傷害保険会社は、自己負担分の3000万円を超えて支払った場合に代位できるのであり、700万円しか払っていないのであれば、代位すべきではないと考えられる。

 3、訴訟基準差額説(3)

  (1)上記2の事例では、加害者任意保険会社は、3000万円を被害者に支払う。

  (2)加害者任意保険会社は、自賠責に700万円の支払を求める。その後、自賠責は人身傷害保険会社に700万円の返還を求めることになる。

  (3)被害者は、人身傷害保険会社から3000万円から700万円を引いて、2300万円の支払を受けることになる。


 おわり

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前回の続きです。

第2、自賠責保険

  1、自賠責請求には、加害者請求と被害者請求(16条請求)がある。両者の主な違いは、提出書類(意見書など)・自賠責保険金の入金である。

  2、提出書類

  (1)自賠責では、医師の診察はなく、書類審査しかされない。ただし、瘢痕の長さだけは、被害者が管轄の調査事務所まで行き、直接調査事務所担当者が計測する。

 (2)多く見られる事例である首・肩・足・腰に障害が残った被害者は、整形外科の医師に三枚セットの後遺障害診断書を書いてもらい、MRI所見の記載や神経学的所見の記載は必ずしてもらう。

 (3)加害者請求の場合、任意保険会社は自賠責に提出した書面を被害者に開示しないので、任意保険会社がどのような書類を自賠責に提出したかを確認できない。重要事項を落としてしまっているかもしれないが分らない。

 (4)加害者請求の場合、加害者の任意保険会社が、書類を自賠責に提出する際、被害者に不利な意見書を提出する可能性がある。被害者の意見書は提出されない。被害者請求は、被害者が主張したいことはすべて主張できる。証拠も提出できる。

  (5)被害者請求の場合には、被害者が提出書類を決めるので、何を提出したかは分る。自賠責の認定に不服であれば、提出した書類の何に不足があったのかを検討して、異議の申立をする。回数制限・期間制限はない。

  3、自賠責保険金

   加害者請求により、自賠責の等級認定がされた場合、まず任意保険会社が支払った治療費などに充当するので、被害者の手元には入金されない。自賠責保険金が残っている場合があるが、任意保険会社は被害者には教えない。被害者から委任された弁護士は、残っている自賠責保険金を回収すべきことになる。被害者請求をする場合には、被害者に自賠責保険金が入金される。

  4、消滅時効

     症状固定時から3年で時効消滅する。

                                                                つづく

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はじめに

  1、交通事故被害者弁護団の団員の中で、労災保険と自賠責保険の違いや関連、人身傷害保険との関連につき、どういうところに注意したらよいのかとの質問がなされました。

 2、そこで、平成30年4月2日、交通事故事件を担当するに当たって、注意すべき事柄を拾い上げて、重要と思われる点につき、説明致しました。

     3回にわけて説明します。

 

第1、労災保険

 1、労災手続

     (1)労働基準監督署に障害給付支給請求書を提出する。この支給請求書には、事業主からの証明をもらう必要があるが、事業主からの証明をもらえない場合でも、労働基準監督署は、申請を受理したうえで、事業主に証明拒否理由書の提出を求め、労災の認定をするかどうかを判断する。

  (2)原則として、医師の面談審査がなされる。医師は、書面では分らない被害者の症状をその場で検査するなどして、被害者の症状を正確に把握しようとする。そのことが、提出書面の内容を補完することになる。その際、労働基準監督署職員も立ち会い、医師の様子を見て、写真などを撮り報告書を作成することもある。その結果、等級認定がより実態に適合したものとなる。なお、提出診断書等の書面の内容がきちんと記載されている場合には、労働基準監督署職員からの質問に答えるだけで足りる場合もある。

  (3)労災での等級認定に不服がある場合には、通知を受けた日から3か月以内に、労働保険審査官に対し、審査請求をすることができる。さらに不服がある場合には、決定から2か月以内に労働保険審査会に対し、再審査請求をすることができる。審査請求でも認められない場合には、再審査請求を経なくても、6か月以内に裁判所に取消訴訟を提起することができる。

  (4)労災に対する後遺障害の申請は、症状固定時から5年で時効にかかる。療養給付・休業給付・介護給付・葬祭料・休業特別支給金は2年の短期時効がある。 

  2、主な支給内容

    (1)障害給付金

      ① 給付基礎日額×日数

      ② 給付基礎日額は、事故前3か月の賃金総額÷90~92

      ③ 日数は、等級により決まっている。

     1級313日、2級277日、3級245日、4級213日、5級184日、6級156日、7級131日、8級503日、9級391日、10級302日、11級223日、12級156日、13級101日、14級56日。

    (2)障害特別金

       ①算定基礎日額×日数

       ②算定基礎日額は、事故前1年間の特別給与総額÷365

      ③日数は、上記2(1)③と同じ。

       ④そのため、特別給与(賞与)をもらっていない人には、支給されない。

    (3)障害特別支給金

       ①金額は、等級により決まっている。

       ②1級342万円、2級320万円、3級300万円

         4級264万円、5級225万円、6級192万円

         7級159万円、8級 65万円、9級 50万円

         10級39万円、11級29万円、12級20万円

         13級14万円、14級 8万円

     (4)注意点

             ①障害給付金と障害特別金とは、7級以上の場合には、毎年2か月毎に年金の形で給付され、8級以下の場合には、一時金で給付される。障害特別支給金は一時金で支給される。

     ②障害給付金は、逸失利益に相当するものであるから、損益相殺の対象になる(ただし、事実審の口頭弁論終結時迄に支払われたもの)。障害給付金に慰謝料は含まれていない。被害者本人は、会社から労災を貰ったから、支払はもう終わりだと言われて、誤解していることがある。慰謝料は別途請求できる旨を必ず説明する必要がある。

     ③障害特別金と障害特別支給金とは、労災福祉事業の一環であり、損益相殺の対象にならない。自賠責や加害者任意保険に請求するだけではなく、労災を申請する意味がここにある。

      ④被害者が病院に通院し加害者の任意保険会社が治療費を支払っている場合には、第三者行為災害として、労災は支払われない。加害者の保険会社が加害者に過失はないとして支払わない場合には、労災の申請をして、治療費を支払ってもらうことになる。

             ⑤症状固定後は、自賠責・任意保険とも、治療費の支払がなされない。労災の場合には、脊髄損傷・脳の器質性障害・RSDなど20傷病に該当する場合には、症状固定後も診察・検査などを受けることができる。

     ⑥労災保険の給付がなされた後、労災が自賠責の請求をし、被害者が16条請求をして、請求が競合した場合、被害者の請求が優先される(最高裁平成20年2月19日)。
                                                          つづく

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