弁護士二宮仁のblog リーガルナビ(交通事故)

法律実務家として日々経験することを書いています。

第1.MRI

1.交通事故で病院に通院した場合、多くの病院ではXP(レントゲン)しか撮りません。

2.しかし、レントゲンには骨しか写りません。人体には、骨以外の組織がたくさんあります。通院の途中で、痛みがひかない、治らないと思ったら、必ずMRI(1.5テスラ以上)を撮ってください。

3.また、MRIが撮られた場合でも、詳細な部分の見落としがかなりあります。縦断面像の損傷箇所の輝度の変化を見落としたり、横断像を見ていないと思われる場合があります。

4.あやしいと思ったら、放射線専門医に鑑定してもらうことになります。保険で弁護士費用特約に加入されている場合には、ご自身の保険会社が鑑定費用を負担してくれる可能性があります。

5.そもそも、MRIを分析しないと、なぜ患部が痛むのかが理解できません。


第2.後遺障害の事前認定

1.加害者の保険会社から「本件は12級程度の後遺障害が認められると思われますので、治療を終了にして、後遺障害の事前認定手続をしましょう」と言われることがあります。

2.しかし、これに応じてはいけません。必ず、被害者の方で自賠責請求(16条請求)をしましょう。自賠責に提出する書類については、加害者保険会社に任せた場合、何を提出されるか分かりません。加害者保険会社は、自賠責にどんな書類を提出したかについて回答しません。

3.後に、自賠責で後遺障害非該当になってしまった場合、酷い怪我をしているのになぜ何の等級もつかないのかが理解できません。被害者はどうしたらよいのか途方に暮れることになります。

4.また、加害者保険会社による事前認定で得られた自賠責金は、加害者保険会社への支払に充てられ、被害者の手元には来ません。被害者請求をすれば、等級が認定された場合、自賠責金は被害者口座に入金されます。


第3.示談の提案

1.自賠責で後遺障害等級が認定されたり、非該当になったりすると、加害者保険会社から損害賠償金の提案がなされます。

2.しかし、これに応じてはいけません。この金額は、ほとんの場合低額です。休業損害・慰謝料・逸失利益の額が少ないことが多いように思います。

3.金額が提示されたら、必ず弁護士に相談してください。特別な事情がない限り、増額する可能性が高いです。


第4.飛び出し

1.被害者が死亡したり、高次脳機能障害になり事故当時のことを覚えていない場合、加害者は「被害者が道路に飛び出してきた」と言って、自分には過失がないと主張してくることが多いです。

2.しかし、車が走行している道路に飛び込む人はいないと思います。加害者は、被害者が死亡したり、覚えていないことを利用して、勝手な主張をしている場合があります。

3.刑事事件の実況見分調書の現場見取図等を取り寄せて、自動車の進行方向、被害者の進行方向、自動車の傷跡、被害者の怪我をした部分、現場に残っている血痕、スリップ痕、タイヤ痕等を検討することになります。

4.上記3を検討して疑問を感じた場合には、交通事故鑑定人に事故分析を依頼することが考えられます。交通事故鑑定人とは、現場に残された物的証拠を手がかりとして、事故態様をシミュレーションすることのできる専門家です。


第5.ドライブレコーダー

1.最近の車には、ドライブレコーダーが付いていることがあり、ドライブレコーダーの画像は重要な証拠となります。しかし、これが怪しい。

2.ドライブレコーダーは、事故前後の一定時間が録画されているはずですが、実際には30秒程しか開示されない場合があります。また、室内や後部を写した画像もある可能性がありますが、これらが開示されないこともあります。

3.何がいけないのかと言うと、開示された加害車両のドライブレコーダーは、その前方に写っている被害者の様子は分かっても、運転手がどのように運転していたのかがはっきりしないのです。

4.ドライブレコーダーの前方画像だけでは、運転手が正常な運転をしていたかどうかは分かりません。ドライブレコーダーの画像を解析しなくてはならないのです。

5.ドライブレコーダーの画像を細かく切り取って、画像分析をすることが考えられます。これを専門とする交通事故鑑定人に依頼することになります。

6.その結果、ドライブレコーダーの画像では、運転手が正常な運転をしていたように見えても、実はセンターラインオーバーをしている等、運転に問題があると強く疑われる場合もあるのです。


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  弁護士 二 宮   仁  

前回の続きです。

第3、人身傷害保険

  1、訴訟基準差額説(1)

 (1)過失割合が50対50で6000万円の損害賠償額の場合、訴訟基準差額説によれば、被害者は加害者から3000万円、被害者の人身傷害保険会社から3000万円を取得する。 

 (2)人身傷害保険会社が被害者に対し3500万円を支払った後、被害者が加害者を相手に訴訟を起し、裁判所が総額6000万円を認定し、過失相殺が50対50となった。加害者は、3000万円から3500万円を差し引くべきだと主張した。

 (3)訴訟基準差額説によれば、人身傷害保険会社は被害者負担分3000万円を負担する。3000万円を超えた500万円については、人身傷害保険会社は被害者に代位して加害者に対する請求権を有することになる。加害者は、3000万円から500万円を引いた2500万円を被害者に支払うべきことになる。

 2、訴訟基準差額説(2)

 (1)上記1と類似事例で、人身傷害保険会社が先に700万円を被害者に支払い、代位により自賠責から700万円の求償を得ている場合、人身傷害保険会社は、3000万円-700万円=2300万円を支払えば足りるのかが問題となる。

 (2)加害者任意保険会社は、自賠責で700万円の支払をしたのだから、2300万円を支払えば足りると主張する。すると、被害者は、700万円を二重に評価されてしまうことになる。加害者自賠責保険会社が700万円を支払ったのであり、人身傷害保険会社は700万円を負担していない。

  (3)人身傷害保険会社の約款がどのように規定されているかが問題となるが、訴訟基準差額説を徹底すれば、人身傷害保険会社は3000万円を支払うべきである。人身傷害保険会社は、自己負担分の3000万円を超えて支払った場合に代位できるのであり、700万円しか払っていないのであれば、代位すべきではないと考えられる。

 3、訴訟基準差額説(3)

  (1)上記2の事例では、加害者任意保険会社は、3000万円を被害者に支払う。

  (2)加害者任意保険会社は、自賠責に700万円の支払を求める。その後、自賠責は人身傷害保険会社に700万円の返還を求めることになる。

  (3)被害者は、人身傷害保険会社から3000万円から700万円を引いて、2300万円の支払を受けることになる。


 おわり

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前回の続きです。

第2、自賠責保険

  1、自賠責請求には、加害者請求と被害者請求(16条請求)がある。両者の主な違いは、提出書類(意見書など)・自賠責保険金の入金である。

  2、提出書類

  (1)自賠責では、医師の診察はなく、書類審査しかされない。ただし、瘢痕の長さだけは、被害者が管轄の調査事務所まで行き、直接調査事務所担当者が計測する。

 (2)多く見られる事例である首・肩・足・腰に障害が残った被害者は、整形外科の医師に三枚セットの後遺障害診断書を書いてもらい、MRI所見の記載や神経学的所見の記載は必ずしてもらう。

 (3)加害者請求の場合、任意保険会社は自賠責に提出した書面を被害者に開示しないので、任意保険会社がどのような書類を自賠責に提出したかを確認できない。重要事項を落としてしまっているかもしれないが分らない。

 (4)加害者請求の場合、加害者の任意保険会社が、書類を自賠責に提出する際、被害者に不利な意見書を提出する可能性がある。被害者の意見書は提出されない。被害者請求は、被害者が主張したいことはすべて主張できる。証拠も提出できる。

  (5)被害者請求の場合には、被害者が提出書類を決めるので、何を提出したかは分る。自賠責の認定に不服であれば、提出した書類の何に不足があったのかを検討して、異議の申立をする。回数制限・期間制限はない。

  3、自賠責保険金

   加害者請求により、自賠責の等級認定がされた場合、まず任意保険会社が支払った治療費などに充当するので、被害者の手元には入金されない。自賠責保険金が残っている場合があるが、任意保険会社は被害者には教えない。被害者から委任された弁護士は、残っている自賠責保険金を回収すべきことになる。被害者請求をする場合には、被害者に自賠責保険金が入金される。

  4、消滅時効

     症状固定時から3年で時効消滅する。

                                                                つづく

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