2005年9月に文學会より発表された、絲山秋子の作品「沖で待つ」を紹介します。
第134回 芥川賞受賞作品です。

本作品は、作家自身が住宅設備機器メーカーで勤務した経験をバックボーンに描かれている様です。入社してからすぐに地方へと配属され、男女雇用機会均等法の施行から間もない女性総合職という立場ながら様々な苦境を乗り越えて職務をこなす傍らで、同期入社の太っちゃんと特別な親交を温めていきます。
決して恋愛感情に発展することは無いのですが、同じ土俵で切磋琢磨する同僚として、他では得難い信頼と友情で結ばれていきます。

この作品は、働く社会人の共感を存分に得られる要素が盛り沢山となっていて、激動する職場環境に身を晒されながらも生き抜く強さが表現されています。現代版のプロレタリア文学の様でもあるし、さらに進化したそれと言えるかもしれません。作品自体も現在と回想が織り交ぜられた物語としての面白さに加えて、読みやすい文体も手伝ってどんどん読み進むことが出来ます。


後半、太っちゃんの遺したポエム帳を見るシーンでようやく初めて本作品のタイトルに関連した文章が出てきます。「俺は沖で待つ」という一文が、<私>の心を確実に捉えます。作品中で明確に示されていませんが、沖とは死後の世界を指しているように思います。実際これを書いていた太っちゃんは、自身の死が近づいているとは夢にも思っていない訳ですが、「沖で待つ」という一文は死後の世界で待つという意味を連想せざるを得ません。淡々とした労働者文学の中で、この異次元な雰囲気を巧みに仕込んでいる点が、この作品の最大の特徴になっていると思います。

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