2006年3月に講談社の小説現代別冊「エソラvol.3」より発表された、絲山秋子の作品「みなみのしまのぶんたろう」を紹介します。

本作品は、全文で平仮名と片仮名のみを用いた児童向けの様な作品でありながら、純粋な文学の要素も混在しています。始めはこの文体が非常に読み難く感じるのですが、読み進むうちに慣れてきて徐々に読むスピードが上がってきます。大人の凝り固まった脳が、子供の柔らかい脳に戻っていくような不思議な感覚です。

作品中で、石原慎太郎や石原軍団を彷彿とさせるキャラクター達が出現します。文学人でもあり、政治家でもある主人公「しいはらぶんたろう」はまさに石原慎太郎その人を示しています。ぶんたろうは総理大臣の弁当を盗むという軽犯罪が発覚して「みなみのしま」に左遷されるのですが、そこで触れ合う自然のリアリズムに少しずつ心が洗われていく様子が描かれています。

ぶんたろうは、作品中で魚たちから島に住んでいる理由を問われて、弁当を盗んで食べたことを反省するためだと答えます。それを聞いた魚たちは、自分たちはいつも仲間から餌を盗みあっているのだから反省するようなことではないと返します。ぶんたろうはその返答を受けて「それじゃあおれもはんせいするのをやめよう」と言って気分が楽になります。
このくだりは、ぶんたろうへの救済とも取れるし、一方で懲りない人間への警鐘とも取れる興味深いシーンです。

作家の作品群の中では、異質な文体ですが「沖で待つ」と併せて読んでおきたい作品です。

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