2009年10月05日

半島に吹く風の中で。

20090921稜線の彩

知床の縦走路。
強烈な風。止め処なく降り注ぐ霧雨。
悪天候の中、先に進む人は、自分以外に誰もいない。

山を独占しているような気分に嬉しさを感じて
ゆっくりと、藪を漕ぎながら進んでいく。
単独行は慣れている。何の問題もないはずだった。

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2009年05月13日

帰り道の読書。

090513チェーホフの文庫

ちょっと疲れた帰りの電車の中で、
「チェーホフが胃にもたれるな、漫画が読みたいな」
と思ったときは、伊坂幸太郎を駅の本屋で買って読めばいい。
夢中になって帰途が短くなる。

ただし、この時脳裏の片隅で、
自分の文体との比較や、言葉の配置の差異を探すなど
書き手の思考を歩かせてはいけない。
そうしたら、また頭が重くなるかも知れないからだ。

とにかく、毎週コミックを買うよりも経済的ではある。


2009年01月24日

マングローブ。

20080509ウダラマンギ1

広大なマングローブ。
小さな支流に沿って、静かな森に分け入って伸びる道を歩いていく。
海から遡った豊かな水に揺られて、ひっそりと息づいている木々。
無数に張り巡らされた気根の合間から、
密やかな命の息づかいが感じられる。

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2008年12月31日

一年の終わり。

まもなく、この一年も終わる。
遠征は僅かに一回。
僕のルーツともいえる島を数年振りに
訪れることができたのは、いいことだった。
しかし、他に何処にもいけなかった。
今年も停滞の一年だったと言わざるを得ない。

でもそんな中に、少しずつだが動き始めたものがいくつかある。
生活の場所を変え、戸惑いと疲労の中に
貴重な出会いを見つけることができた。
写真をよく撮るようになって、
狭く、そして細に入る景色の感じ方を覚え始めた。
言葉を綴る方法にも、少しずつ変化が見えてきている。
翌年は、もう少し前に進める一年にしたい。
決断が要る。
何より覚悟というものが必要なのかもかも知れない。

今年出会った人々や静物に、ありがとうという言葉を贈りたい。

来年を、よき一歳にできますように。


2008年12月20日

実現が遠い旅。

頭の中で、装備を確認していく。
テント、シュラフ、コッヘル…。
北の遠征だ。防寒具はいつもより多めに。
食料は多めに持っていく。
時間が許す限り、森の中で過ごしたい。
ウェアに不足はないか、ナイフは研いでいるか。

生きていくための道具がそろえば、次は旅の玩具だ。
カメラはボディが二台。レンズは、どれくらい必要だろう。
目的とするものに出会えるか。
季節の食性と、地形を付き合わせる。
出会えたとするならば、その状況を想定して道具を選ぶ。
魚を捕らえる川沿いか、木の実のなる稜線の彼方か。
望遠は、300で足りるか。
体力に自信は無い。装備は20kg以内に抑えたい。
400mmは重過ぎるのだ。

来年は実現できるだろうか。
そう思いながら、
足りない装備を少しずつ買い揃えている。

僕は時々こんな風に、慌しい日常の中
意識だけの旅をしている。




2008年12月16日

美の中心。

美しい景色を見たとき、感情はどう動くか。
歓喜か。高揚か。

それは美に置いては
表皮に触れた時に感じる感覚なのではあるまいか。
僕は美しいものを数えるほどしか知らない。
しかし、その美しさを感じ得たと確信する時、
僕の心は必ずといっていいほど哀切に支配される。

青い海も、夕焼けの石畳の道も
深遠なる森の素顔を垣間見た時も
それは同じだ。
その場所が併せ持つ歴史が関係するのではない。
ただ純粋に、深く美しいと感じた時、
人は泣く。
笑うこともあるのかも知れない。
しかし美に打たれたその笑顔には、
必ずと言っていいほど哀切が滲むのだ。

切なさや哀しみこそ、
美しさの本質なのではあるまいかと
僕は思う。

美しきものを目の前にして
歓声をあげる者は、きっと幸せだ。
嘆息を漏らす者は不幸であるのかも知れないが
おそらく前者より深い美を感じ得る世界を知っている。

哀切こそが美の中心にある。
と、僕は思うのだ。



2008年11月14日

森の惨状と島の悲鳴。

080509森の惨状1

森が、悲鳴を上げている。
島が、かつてない惨状にその身をさらしていた。

昨年の台風がもたらした塩害は
深い爪跡を今も島の表皮に残している。

知らなければならない。
陸の孤島は既に死んだ。

島を楽しんできたという人々の
無邪気な声を聴くたびに
心がじんわりと黒く染まっていくのを
抑えることが僕にはできないみたいだ。

彼等は、いったい何を見て
何を持ち帰ってくるのだろう。

こんな風に嘆くことしか僕には出来ないのだろうか。
伝えなければいけないことがある。

観光客ではない。
僅かな兆しに目を留める
旅人の視点を忘れてはならない。