今回の安倍総理のイラン訪問の目的と成果を考えたい。考えられる日本政府の目的は、イランとアメリカの緊張が戦争に発展する時、中東に石油を依存している日本がホルムズ海峡を通れなくなることを避ける為に、戦争に発展する前に両国の対談を実現させることだろう。対談実現はトランプ大統領の希望でも在った筈だ。

 

そこで、安倍首相はトランプ大統領のメッセンジャーとして、アメリカは戦争を望んでは居ないと言うことを言いに行ったと思える。アメリカは核合意から脱退したが、それでもイランには合意を守って欲しいと伝えたかどうかは知らない。

一方イラン側は、緊張を引き起こしたのはアメリカの経済封鎖なのだから先ず其れを撤回する事であり、イランから戦争を仕掛けることは無いが、アメリカから仕掛けられれば断固として戦うと言った。其れは安倍首相がトランプ大統領に伝える迄も無く、彼は知って居る。すると、何の為に彼は行ったのか?

 

日本とイランとは歴史的に親しい。従って、ロウハニ大統領もハメネイ最高指導者も日本の首相を歓迎はした。然し、対談の行われて居る最中に、日本と台湾のタンカーがホルムズ海峡で何者かに依って爆撃を受けた。イランが遣ったとしたら、安倍総理に対して“No”と言うことだ。

 

更に、タンカー爆撃はイランの仕業だ、とアメリカがイランを非難した直後にアメリカの誇る高性能の無人探査機を領海侵犯の疑いでイランが撃墜した。安倍首相のイラン訪問は、形の上ではイランも受け入れ歓迎はしたが、タンカー2隻の攻撃とアメリカ偵察機の撃墜と言う結果を招いた。

 

欧米歴訪と言い、イラン訪問と言い、日本の首相は何を遣って居るのだと思う。閣僚と与党は首相の行動にイニシアティブが取れないのだろうか?参院選を控えての点稼ぎとしか思えないでは無いか?

 

彼は北朝鮮にも行くと言った。其れは拉致問題の解決をトランプ大統領に頼んだ経緯から、北朝鮮が受け入れるだろうと踏んだ結果だろうが、金正恩委員長は「ずうずうしい」と撥ねつけたそうである。前提条件無しで会うと言った。その言葉が壊れた原因だ。会えば経済援助を仄めかし、言うこと(拉致被害者の奪還)を利かせ様との魂胆が見え透いて居る。

彼は外交での成果が上げたくて仕方が無いのだろう。その焦りが却って外交の拙さをさらけ出す結果と成って居る。

 

安倍首相はことあるごとにトランプ大統領との「個人的な信頼関係」を口にする。あろうことかノーベル財団にトランプ氏を平和賞候補として推薦した。向こうでは日本がそう思って居るのか、と驚いただろう。国民も、国会も、もしかしたら党員も知らなかった話だ。

首相の口から発表したのでは無い。トランプ氏が何かの拍子に喋って明らかに成った。個人的な信頼関係を築く為か知らないが、無責任な行動を執って欲しく無い。日本国民が世界から侮られる。ゴマ擂りも其処迄遣るかと小生は呆れた。

正直、嘗て無い程の難題を抱えて居るG20が世界の嗤いものに成らないことを願う。

 

第二次世界大戦で一時は世界の恨みを買ったかに見える日本だが、歴代政府と国民一人一人がその修復を図って努力して来た結果、昔から備わって居た日本人の品格が見直され、世界の信頼を勝ち得るまでになった。其れを一人の総理大臣のスタンド・プレイで台無しにして貰いたくは無いのだ。

 

日本に親近感を抱く国は多い。中でもアメリカが敵対感を募らせているイランの国民が日本に親近感を抱いて居るのは、一人の日本人、出光佐三氏の行動に依ると考えられる。

 

原油、天然ガスの豊富なイランは嘗てイギリスの半植民地の扱いで、英国資本の下で原油の開発が行われていたが、1951年石油施設の国有化を表明。激怒した英国は海上封鎖を行い、メジャーと共にイランを国際市場から締め出し、石油輸出に頼るイランはピンチに立たされる。

出光興産の出光佐三氏はイランに同情すると共に、メジャーが石油市場を牛耳って居る現況に反発し、自社のタンカー日章丸をイギリス軍の目を掻い潜りイランのアバダン港に付け、ガソリン、軽油を購入し、無事日本に持ち帰った。

 

この時の出光氏の作戦は周到を期し、道理に適ったものであったため何処からも文句を言わさないものだった。其れ以降石油は自由市場へと移ることに成ったのである。

1979年のイラン革命でアメリカはイランとの国交を断絶したが、日本は追従せず、石油を買い続けた。

日本はイギリス、アメリカにすら言いなりに成らない自主性のある国民だと評価されたのであろう。イラン国民は出光氏を救世主と思ったに違いない。

 

処が、北朝鮮のミサイル発射を受け、アメリカは制裁処置を日本や韓国他の国に求めた、と言うより強要した。当時の日本は安保体制を確たるものにする為に一も二も無く追従した。実りの無い制裁処置が続く中、韓国の文在寅大統領が北朝鮮との友好戦略を実行仕様とした時、安倍総理はアメリカに気兼ねし、只管制裁路線堅持を内外に示した。その結果は、文在寅大統領と金正恩朝鮮労働党委員とが劇的な板門店宣言を行うことに成った。あろうことか、トランプ大統領までが金正恩委員長と会談をするまでに発展した。其の時、安倍総理は蚊帳の外に置かれて居たのである。(続く)