9月5日、京急電鉄の車両が踏切内で立ち往生して居た大型トラックと衝突した。ニュースを聞き思ったのは、京急で是迄こうした事故が少なかった(確証は無いが)のが不思議だったのだ。何故なら、京急は住宅密集地で見通しの悪い処を線路が走り、広軌だからかスピードを出す。踏切の数は多い。京急に乗ると冷や冷やしたものだったからである。

 

事故現場の踏切は良く言われる「開かずの踏切」の一つで、ピーク時には48分待ちだそうだ。踏切には幅2mの色分けされた歩道があるが、歩行者や自転車は平気で車道に食み出している。やっと開いた遮断機を待ち切れず人混みを争って踏切を早く渡りたいと思う気持ちが分からないでは無い。

 

事故の原因を作ったのは大型トラックの運転手に違いは無い。今となっては、何故彼が線路脇の狭い道から踏切に入ろうとしたかである。踏切とトラックやバスとは元々相性が悪い。踏切は道路より高く成って居ることが多く、腹を擦ることが有るからだ。“大型車両進入禁止”の踏切があるのはそうした理由である。彼の場合でも、踏切と直角に走る道路から入って居ればすんなり通れた。狭い脇道から無理矢理右折して踏切に入ろうとした所に無理があった。

 

彼にはその無理が分かって居たのだろう。最初は左折して出直そうと思ったに違いない。現に左折を試み、折から休憩中で現場に居合わせた二人の京急乗務員に誘導(後方確認)を頼んだらしい。然し、右折よりも左折の方が大型車両には広いスペースが必要だ。其処で運転手は二人に左折を諦める旨を伝え、二人は現場を離れようとし、トラックが右折して尚も踏切に入ろうとするので、遮断機の警報が鳴った時点で踏切の非常ボタンを押した。

 

踏切の異常を感知するセンサーが運転手に危険を知らせる赤信号を点灯したのと、非常ボタンとどちらが先だったかは分からない。いずれにせよ、京急電鉄はセンサーの信号で自動ブレーキが掛かるシステムを持って居なかった。飽く迄、赤信号を認めた運転手の判断でブレーキを掛けることに成って居て、今回運転手がどの時点で急ブレーキを掛けたかは調査中と言うことで未だ報道はされて居ないので分からない。

ネットで探した情報では、先頭車両の乗客は、「急ブレーキをかけているんでしょうけど、速度が落ちているようには感じませんでした」と話して居る。

 

赤信号点灯で直ちに急ブレーキを掛けて居れば、踏切迄600mの距離があり、手前で停車することが出来たとも言う。踏切迄は直線で、目視も出来たと思われるが、運転手は前方だけを凝視して居る訳では無く、一瞬の遅れも在っただろう。こうした場合、運転手の能力をカバーするのが自動ブレーキなのだが、それを装備して居なかった京急電鉄も責任が在ろう。

 

運転手は5回、右折を試み、1、2回は遮断機が下り始めたりして断念。3、4回目は踏切前で前進、後退を繰り返すも曲がり切れず、5回目にやっと踏切内には入ったが、曲がり切れず停車、其処で遮断機が下り始め、荷台に接触。前方の遮断機は降りたが、緊急時には遮断機を車が押せば斜め上に上がる様に成るのも有るので、トラックは直進して脱出仕様としている内に電車とぶつかった。

 

是がテレビの報道に合わせ、ネットで各社の報道を検索し、自分なりに解析した事故の粗筋である。勿論警察は調査中で、分かって居ない所も在るし、何しろトラックの運転手は不幸にも亡くなって居て証言が得られない。

 

小生は67歳だったと言うこの運転手が不憫で為らない。配送ルートを間違えたと分った時点で、何とか仕様と必死だった筈だ。監視カメラの映像か、テレビで、トラックが右往左往して居る踏切の状況を見ると、運転手がハンドルを切り返したり、前進、後退を試みて居るのに、歩行者や自転車が自分の方が先だと言わんばかり、トラックの前後左右を悠々と移動する。歩行者優先意識である。

運転手は窓から手を振って、彼等に此方は止まって居るから早く渡ってと合図している。歩行者等は次から次へと来る。中には子供を乗せた自転車も有った。

 

運転手としては、トラックを動かしたい処だが、歩行者や自転車に怪我はさせられないと思っただろう。彼等は小回りが利く。見通しも良い。その二つが全く効かない大型トラックを優先させ様とは思わなかったのだろうか?

彼等は其の踏切が開かずの踏切と言うことを知って居る。遮断機の開いて居る短い間に渡ろうと思えば、邪魔ものであるトラックを先に行かせた方が却って早く済むのが道理なのだが、其の判断が出来ない。
彼等が歩道から食み出ることなく整然と渉って居れば、トラックの運転手も未だ遣り様が在った筈だ。だが、彼等は神出鬼没である。中には踏切内で反対側の歩道に渡ろうとするものも居た。自分の判断ミスからこんなことに成ったと悔みながら窓から手を振る運転手の心境を思うと堪らない。彼にも家族、孫も居たに違いないからだ。

 

現場に居合わせた鉄道の乗務員ならば、機転を利かし、歩行者等を誘導して遣れなかったのだろうか?

火事場、災害時などでは、全体を見渡し、最善の処置を判断出来る指導者が居ることで、多くの人が救われる。警官だから、消防士だから、駅員だからでは無く、たまたま現場に居合わせた一般の人の中にも居る筈だ。

 

力の強い者が弱い者に譲るのが道徳である。普段なら速度の速い車が、遅い歩行者や自転車に譲って当然なのだが、今回は其れが逆転して居る。図体はでかくとも、トラックは歩行者よりも弱者に成り下がって居るのだ。

 

「運転手に『強引にでも曲がれ!』と言って遣れば良かった」と言った近隣住民が居たそうである。
小生は、今回の事故の原因が、心無い歩行者、自転車に在ると言いたい。