『知彼知己、百戰不殆』と言う言葉が孫子に在る。孫子とは孫武が著したと伝えられる中国春秋時代の法書だから「百戦殆(危)うからず」と成るのだが、戦に限らず「知彼知己」は社会の中で当て嵌まることは多い。

 

今ラグビー世界選手権大会が国内で開かれて居て激戦が展開しているが、選手も監督も己の力量を弁え、敵の作戦を読み、何処に活路を開くか研究して居る。その戦略次第で番狂わせも起こり得るので観客も熱が入ると言う訳だ。

 

事業を遣るにも、商売をするにも、会社員、或は公務員として勤めに出ても、自分が知らなければ為らない「」は数限り無く居る。

自分が遣りたい仕事を選んで精進するのは誰しも遣るだろうが、往々にして独り善がりに陥り、成果が現れないことがあるのは第三者である「」を知ろうとしないからだ。

又「」を知らなければ、どんな仕事が好きなのか、好きな其の仕事に向いて居るかどうか、才能が有るか否かの判断を誤る。この場合でも好成績は上げられない。

自分の仕事が中々巧く行かないことを、社会の所為にしたり、時流を嘆いたりするのは本末転倒で、抑々「知彼知己」を怠ったのが原因である。

 

多くの人は大学を出て、良さそうな会社に就職したいと思う。良さそうな、とは皆さんが判断されれば好い。その場合、給料、厚生施設、知名度、会社の規模等は熱心に研究するのだが、実際の仕事の内容、社内の空気等を知ろうとすることは少ない。是では「知彼」には成らない。

 

処が企業の方では成績順に採用を決める処も在るかも知れないが、大方は将来図と社内の空気とが有って、其れに相応しい人物かどうかを面接で判断する。日本の場合、技量、労働力を買うと言うより、将来の可能性に掛ける処が大きい様だ。其れを見極めるのに短い時間での面接が何処まで有効かは疑問の残る所であるが、企業の「知彼」への意欲は並々ならぬものがある。中には社長面接まで有るが、其れも大企業だから、中・小企業だからの差は無い。

 

知彼知己」は個人に限らず、例えば国家に就いても言える。日本は今こそ己を知り、彼を知らなければ為らない。
小生が言う「彼」とは中国である。マスコミを通じてしか国民は中国のことを知らない。観光旅行で中国へ行ったとしても、庶民の暮し振りが表面的に分かるのが精々である。中国に進出した企業の社員なら多少は向こうの経済事情などに通じては居るだろうが、その情報は自社の枠内に留まり、一般に知られることは無い。

 

マスコミに登場する中国の情報は全てアメリカが絡んで居る。何も中国に限らず、日本人が知り得る世界中の情報がアメリカ経由であり、アメリカに都合の良い情報しか伝わって来ない。

例えば香港のデモに就いても、何故あそこ迄過激で長期に及ぶのか、香港政庁が頑な態度を崩さないのは損では無いかと思うのだが、日本の記者は暴動の内容を伝えるだけで、香港政庁の考えを取材しない。精々行政長官の記者会見だけだ。

 

小生が中国のことを知りたいと思うのは、彼の国の目覚ましい発展だ。最近北京に巨大な新空港が開港したと聞く。完成すれば年間一億人の乗客が捌けると言う。2015年に建設が始まって4年間でオープンに漕ぎ付けた。

 

鄧小平が「改革開放」を掲げたのが1978年。同年、日中平和友好条約の批准書交換の為来日した際には、新幹線に乗りその速さに驚き、新日鉄君津製鉄所、日産自動車工場、松下電器の工場を夫々具に見学、科学技術と其の為の教育の再建に取り組む決意を固めた。

翌年には米中国交の成立に伴い訪米し、此処でも工業地帯を訪れロケットや航空機、自動車、通信技術産業を見て回った。それから40年後の中国の発展は日本を抜いてアメリカにまで迫る勢いである。

 

鎖国から一転して近代国家となった明治の日本を髣髴とさせるでは無いか!

戦後の日本は、廃墟の中から立ち上がり、僅か20年かそこいらで時計、カメラ、自動車、鉄鋼、繊維、家電、造船、半導体と、メイド・イン・ジャパン製品で世界を席巻した時期が在った。何れも其れ迄西洋の独壇場で有った製品である。

鄧小平は恐らく日本の発展を目標にしたに違いないのだ。

 

その日本に今やメイド・イン・チャイナ製品が溢れている。否、インドネシアやタイ、ヴェトナムの製品すら見掛ける。

フォードが自動車の大衆化を図り、自動車王国となったアメリカが、今では日本車を輸入し、牛肉やトオモロコシを売りたがっているとは信じられない。

 

これからの日本の脅威は中国である。中国は資源と労働力が有るだけに日本より元来有利なのだ。

其れ故に中国の実態を、アメリカを通さず我々はもっと知りたい。処がアメリカは日本と中国とが手を結ぶことを喜ばない。従って、日本は風の便りに中国の今を知るだけで、直に中国首脳と接触する機会がない。日中友好団体は数多くあるが・・・・。

北京大興国際空港のことを小生が知ったのは、その開港式典に習近平主席が出席したと言うネットのニュースに接したからで、日本のマスコミは着工から開港までの情報を流して来たのだろうか?

日本の政治家とマスコミに言いたい。『知彼知己、百戰不殆』だと言うことを!