日本が地震国であることは国民皆が承知して居る。又台風に毎年見舞われることも了解だ。更に火山が多く、噴火に因る災害もある。海岸線が長く、遠く離れた国で発生した津波も受ける。歴史上の大飢饉も天災だろう。詰まり我が国は好むと好まざるに拘わらず天災大国である。

 

関西淡路大地震の時は、復興は不可能かとさえ思った。だが、今神戸を訪れても保存された遺跡を見ない限り、高速道路が崩れる程の大地震と大火災に見舞われた街であることは分からない。
放射能の所為で遅れている土地があるとは言え、東北大震災の復興も着々と進んで居る。災害の度に国民は黙々と、小さな努力を積み重ね是を乗り越えて来た。

 

今回の台風19号に因る千曲川等の氾濫でも大自然の力を見せつけられた。対抗手段として濁流に抵抗出来るような堤防を凡ゆる河川に作ることは不可能である。更に南海トラフ地震と東海地震では震度6以上、津波の高さは数メートルから30mを超すことも考えられると言うから、海岸線に沿って防波堤を貼り巡らせることなど不可能であるばかりか、無意味である。何故無意味かと言うと、陸に降った雨は海に流れるのであって、防波堤が有れば川の水の逃げ場が無くなる。そう為れば被害は更に甚大と為るからだ。津波は河口から上流へ押し寄せ、その圧力は東北大震災で嫌という程見せつけられた。

 

考えてみれば被害が起きてからその復興を図ることには甚大な労力と金と時間が掛かる。かと言って土砂崩れなどは何時何処で発生するか分かったものでは無い。日本に住む以上起きた災害にその都度対応して行くしか無いのだろうか?海を埋め立て、其処に高層ビルが立ち並ぶのを見るに付け「俺ぁ知らないよ!」と言いたく為る。国土交通省はその辺りをどう考えて居るのだろう?

 

台風に因る被害が報道されている今だからこそ、水害に就いて考えてみよう。

日本は国土の殆どを急峻な山々が占めて居て、周りを海に囲まれ、暖流と寒流がぶつかり合って水蒸気を発生する。雨雲は風に流されて山にぶつかり、上空に舞い上がり、其処で冷やされて雨を降らせる。降った雨水は山々に阻まれ、谷を縫って低い方、低い方へと流れて行き、流れ同士が集まって水量と水圧を増して行く。その力は岩を砕き、石を押し流し、下流では川砂と為って滞留する。川の高低差は緩やかとなるが、川幅は広くなる。従って普段の水深は浅い。其の穏やかな流れが集中豪雨と為ると支流と言う支流から水が大量に流れ込み、一気に水嵩を増し、川の湾曲部で早い流れと為って堤防を崩し、堤防より低い土地に捌け口を求めた水が流れ出す。其れが洪水である。

今回の千曲川の決壊場所は穂保地区の左岸で、2007年に堤防の幅を7mから17mに拡げてあったにも拘わらず決壊したと言うから、幾ら堤防を強固にしても水圧には勝てないのだ。

 

ではどうすれば事前に洪水を無くす、或は被害を小さく出来るかを考えなければ為らない。その一つがダムである。多くの人がダムは水力発電の為と理解して居て、確かに黒部ダムなどは関西地方の電力不足解消のために計画された。今ではダムを見る為に観光客が押し寄せる。
だが、ダムの効用はそれ以外に農業の灌漑用水、及び飲料水、工業用水の確保があり、そして一番の効用が洪水の防止なのだ。

 

「八ッ場ダム」と書いて「やんばダム」と読む。何故かは知らないが、このダムの名前を聞いたことがある人は多いだろう。戦後キャスリーン台風で利根川、荒川の堤防が決壊し、埼玉、東京が洪水で甚大な被害を受けたのを受け、昭和27年に利根川上流ダム群計画が始まった。八ッ場ダムもその中に在ったが、首都圏の住民の為に地元住民が犠牲に成ることに反発した反対運動が激化した。されど水資源は依然として不足しており、東京都では地下水利用が水質汚染、地盤低下により利用出来なくなることを受け、これらのダムの建設は政府、自治体とも粘り強く進めて平成15年にやっと着工に漕ぎ着ける。

 

処が21年の政権交代により前原国土交通大臣が国の大型直轄事業全面見直しを掲げ、鳩山首相も建設中止を決定。費やした事業費が無駄に為る処だったが、報道に在る様に、近年ではダムの渇水が屡問題となり、取水制限が行われる現状に、埼玉県知事上田清司氏等の懸命な説得努力により、23年工事再開となり、試験湛水が始まり、今回の台風でほぼ満杯近くまで流入し、下流の洪水被害を防いだ。八ッ場ダムが無かったら、今回利根川は危なかったのである。政治家は国民の生命を守ると言いながら、無責任極まりない。

 

「後は野となれ山となれ」という言葉が有るが、是を英語で“after me,deluge”と言うそうだ。
“deluge”
とは大洪水のことである。言うなれば「私が死んだ後なら大洪水が起こっても構わない」で、将に「後は野となれ山となれ」の無責任そのものでは無いか?

 

地球の表面の3分の2は水で覆われて居て、水に不自由は無い様にも思えるが、実際には海水が殆どで、淡水は2.5%しか無く、其れも氷山や氷河が多くを占め、僅かに0.8%が地下水、河川、湖沼として存在するに過ぎない。然も更にその大部分は地下水で、人類が利用出来るのは更に0.01%しか無い。日本の年間降水量は約1800mmで、蒸発量は600mmと言うから、淡水は非常に貴重に為って来る。

 

その雨水は川と為って海に注ぎ、途端に塩分3.4%の海水と為って、農業、工業、飲料用水としては使えなくなる。従って、海に流れ込む以前に利用出来なければ雨が無駄に成るのだ。

処が日本は地形的に細長く、急峻な山塊の為水は急流と為って短時間で海に流れ込む。是を日本の縮図の様な沖縄で見ると、ダムの数は11か所あって、懸命に水を確保仕様として居る。ダムが無ければ、陸地に降った雨はあっと言う間に海に流れ込むからだ。

 

今上天皇陛下が水資源のご研究を為さっている。小生はその姿勢を日本国民は見習わなければ為らないと考える。のほほんとしては居られないのだ。

然も、水資源は地球全体の問題である。2017年日本には1668mmの降雨量が有ったが、エジプトでは何と18mmしか降らなかった。陛下は地球規模でこの水問題に取り組んで居られるのである。(続く)