今年の幕開けは、昨年経済界を揺るがせた日産元会長でレバノン人カルロス・ゴーン氏(フランス・ブラジル国籍も持つ)のレバノン脱出劇だった。大方の興味は、海外のマスコミも含め、脱出の経緯だったのだが、ベイルートで行われた記者会見では明らかにせず、専ら日本の司法制度と日産のクーデターとの批判を繰り返した。

司法への非難に関し、森法相は直ちに反撃し、世界に対し法治国家としての尊厳が崩れない様手を打ったかに見えたが・・・・。


斯の脱出劇は、改めて金が有れば不可能は無いと言う見本となり、同氏の挙動にやっかみとも反感とも取れる反応が在ったのは不思議では無い。一説には組織を動かし、各方面に根回しをし、プライベート・ジェット機を飛ばすには22憶円は掛ったろうとも言われる。

 

ゴーン氏は日本でお雇い社長ではあったが、数ある同類社長の中では最初に年間所得が数百万ドルを超えた最高経営責任者であり、日本の企業体質を変えた男でもある。小生は企業トップの並外れた高給を日本に植え付けたことには批判的である。企業を創立し、大企業に育て上げたオーナー社長ならいざ知らず、日産の経営建て直しの内情は工場の閉鎖、首切りとルノーとの合併でしかない。

 

小生がそう言う根拠は、日本の巨大経営者、渋沢栄一を筆頭に、ソニーの井深大・盛田昭夫、松下幸之助、安宅弥吉、石橋正二郎、出光佐三、根津喜一郎、大原孫三郎、本田宗一郎、片倉兼太郎、小林一三、豊田喜一郎、早川徳次、安田善次郎等は事業に成功してもその利益を独り占めに仕様とは考えなかった。小生は嘗ての日本の起業家は事業を拡大することで、社員と其の家族の生活の安定を望み、製品を造るだけで無く、適当な日本語が無いが、サービス業(奉仕する意味ではなく、一次産業、二次産業以外の非製造業を指す)を起こし、社会貢献にも携わって来た。日本にはそうした素地が有ったらばこそ、独特の経済発展を遂げることが出来たと思って居る。だから、ゴーン氏の様な経営者を一時的にせよ日本人が持て囃したことには嫌悪感を持って居た。

 

ゴーン氏の逃亡事件に関心を持つ世界中の人に、日本人が自己中心的なタイプの人間は日本に居て欲しくないと感じて居ること迄汲み取って貰いたいものだ。

あの種の人間とは肌が合わないのだ。此れからの人達がゴーン氏の様な経営者を見習って、手っ取り早い不正な手段で金儲けを目指す様に成っては日本の将来は無い。日本には渋沢栄一と言うお手本が有る。彼の生き方に多くの人の関心が集まることを願って居る。

 

唯、日本も彼を雇ったと言う点で反省すべきことが見付かった筈だ。と同時に、日本人とは肌合いの異なる人の指摘にも耳を貸さないのは片手落ちだろう。
其れは森法相が信じて止まない日本の司法制度が、海外の人には受け入れがたい点があると言うことだ。何かと言えば、新聞・テレビで殺人事件が報道されると、決まって「死体遺棄」で起訴、と言う。犯人が殺人をしたことが明白でもだ。誰が考えたって、「死体遺棄」ではなく、もっと重要な「殺人罪」で起訴しないのは何故かと疑問に思う筈だ。小生も今回のゴーン氏逮捕に至るまで、違和感は有るものの疑問のまま放置して来た。

 

だが、今回の事件で分かった。日本の警察なのか検察なのか、将又裁判所なのかは分からないが、犯人逮捕後公判迄に、犯行の事実、動機等全て明らかにして居ないと公判を維持出来ないそうで、其の為に欠かせないのが犯人本人の自白なのだそうだ。これは殺人など刑事事件のみならず、ゴーン氏の様な金融商品取引法違反、特別背任などでも同様らしい。検察は罪状を小出しにする目的で、「死体遺棄」を持って来るのだ。

 

犯人は誰しも刑罰を逃れたいと思うものである。従って証拠を握られて居ても尚何処かに無罪か、減刑の手段は無いものかと弁護士を頼って色々画策するのだろう。況してやこちらから自白等言語道断である。そんなお人好しならば犯罪そのものを起こそうとは考えない。
大体悪事を働く様な者は相手に非が有る、自分は正しいと思い込んで居るものだ。だから簡単に自白を引き出せないこと位警察も検察も解っている。だから証拠を次々と出して自白に追い込むのだ。それには証拠集めも含め時間が掛かる。

 

その辺りは一般市民としてはテレビの裁判番組での知識に頼るしかない。逮捕から警察署に勾留され刑事から尋問を受ける。その際弁護士の同席は認められないらしい。外国の映画だと、弁護士を呼ぶ権利は有る様なので、日本独特の決まりなのだろう。

方やプロ中のプロである刑事、片や警察に捕まるのも初めてで、此れから如何事態が運ぶかも判らず動揺している逮捕者にとってみれば恐怖のどん底だろう。

 

留置所で外界とは完全に遮断され、家族、友人とも会えず、弁護士も居ないとあれば相談出来る味方は一人も居ない。全て其の場の自分の判断だけで供述書が作られて行く。刑事は何れも歴戦の強者で、警察と言う権威を一身に脅しを掛け、人権を蹂躙し、心理作戦も心得ているが、此方は言われたことに反論、質問は出来ず、イエスかノウでしか答えられない。その中間は受け付けて貰えないのだ。

刑事(検察官?)は巧みな心理作戦で被疑者を追い詰め、その状態から逃れたいとの思いだけで自白する様に仕向ける。

 

其処迄心理的に追い詰めるには、毎日長時間に及ぶ尋問に嫌気が差すのが狙いなのだ。其の勾留は逮捕から23日間に及ぶ。法律では其処迄しか認められて居ないのだが、其処で終わらないのが日本独特の法律らしい。勾留期限が切れる頃には、別の容疑、例えば「殺人罪」を持って来て「追起訴」をする。そうして再逮捕、再勾留、再尋問が延々と続くことになる。ゴーン氏の場合には保釈に至る迄其れが108日間にも及んだ。

 

被疑者勾留の勾留期間は、原則として10日間なのだが、其れが10倍に引き延ばされたのである。是を外国からは日本の「人質司法」と言われ、人権侵害であると糾弾されたのである。

法務大臣が如何弁解仕様と、小生は憲法第34条違反だと言わざるを得ない。(法律には疎い故、独断が在るかも知れない)
(続く)