現実世界では採用されているけど咲-Saki-で描写が見られないルールの一つに「ウマ」が挙げられます。今回はこの「ウマ」に関しての考察です。

ウマとは簡単にいうと半荘戦(東風戦)終了ごとに3位から2位、4位から1位へと支払われる順位点のこと。支払い額は一般的には10-20(ワンツー)が多く、この場合には3位から2位に1万点、4位から1位に2万点が支払われます。他にも10-30(ワンスリー:1万点・3万点のやりとり)や5-10(ゴットー:5千点・1万点のやりとり)などがありますが基本は同じです。
※以下では主にウマを10-20として扱います

麻雀にはオカがあるため元々トップに大きなポイントが入りますが2~4着にはそれほど大きな差はありません。しかしウマが加わると、仮に同点だったとしても2着と3着では20ポイントも差がついてしまうため順位に大きな意味が出てきます。トップはより大きく潤い、ラスは大きく凹むため半荘ごとに勝ちと負けが明確になります。具体例を挙げてみます。
+23
優希 +2
 ±0
京太郎-25
上の表は原作1巻の初めての麻雀の結果です。この結果だけ見ると和は勝ち、京太郎は負け、優希と咲は勝ちでも負けでもないような点数に見えます。しかしこれにウマが加わると結果は次のようになります。
+43
優希+12
-10
京太郎-45
和と優希が勝ちで、咲と京太郎の負けという構図がより色濃く出ていることがわかります。


咲-Saki-の世界ではこのウマが採用された描写がほとんどありません。
そもそもストーリーのメインである団体戦ルールでは半荘ごとの点数の精算がなく、最終的な結果も得点差に関係なく純粋に順位で決まります。そのためか団体戦ではウマは採用されていません。
また1巻の部長の発言から清澄高校の部内ルールでもウマを採用していないことが伺えます。 
 saki 01_052
他にもアニメで描写された個人戦でも途中結果からウマが採用されていないことが読み取れます。
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トップにはオカ(+20)が加わりますがこれにウマ(+20)も加わると+40ポイント以上となります。しかし個人戦の途中結果では+20ポイント台のトップが出ているためウマはありません(一応オカがないという超例外的な可能性もあるにはありますが・・・)。

咲-Saki-内でおそらく唯一ウマありの描写があるとすると9巻の末原先輩のこのセリフ。
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この順位点がウマのことと思われます。 姫松の部内ルールにはウマがあるようです。
これ以外にウマが取り上げられた描写がないため 咲-Saki-のルールではウマは採用されていないものだ思っていました。

しかし本当にそうなのでしょうか?

きっかけは前記事【考察】咲-Saki-槓ドラをめくるタイミングはいつか? -追加記事-で4校合同合宿のこのシーンを考えたときのことです。
saki 08_032
咲の成績が隠れていますが、簡単に計算できるので全体を載せてみます。
Baidu IME_2013-3-1_21-52-39
この結果を見て私は長らく疑問を抱きませんでした。精々の感想としてムロがトップ取っててスゲー、とか咲が±0取ってる、とか和の+66は大トップだなぁ、等がある程度。ですがそれは私がウマありのルールに慣れてるからで、ウマなしのルールの視点で見るとこの結果はかなり違ったものになってきます。

違和感をわかりやすくするため上記の結果を25000点の30000点返し・ウマなしの場合の半荘終了時の持ち点数に換算したものが下の表です。
Baidu IME_2013-3-1_21-59-55
色々と疑問が出てきそうな結果に見えます。簡単にツッコミどころを挙げると
・マホは3連続トビかよ。しかも3回目は-13000って親っパネか子の倍満に振込みかー
・ムロの51000も大トップだけど和の持ち点数76000は異常すぎる
・1回戦2回戦は4万点持ってても2着か
等があります。たった3半荘なのにえらく起伏に富んだ結果ですね。

同じようなことは7巻の冷やし透華のシーンでも言えます。
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このシーンも点数が簡単に計算できます。
※席順から表の3人目を咲、4人目を藤田プロにしていますが確証はありません。悪しからず。
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これ単独ではやはり特に違和感はありませんが、ウマなしオカありの持ち点数にすると違和感バリバリの結果となります。
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透華のトップが毎回高すぎる、どの半荘も2位の点が高すぎる、逆に3位4位は低すぎる、このメンツで2回もトビラスが出ている、等がツッコミどころ。


上記2つの結果を見るにどうにもウマなしルールとしては奇妙とも思える点が多々見られました。
冒頭でも述べましたがウマなしルールでは点数は比較的団子になりがちです。ですがこの合宿の半荘7回はどれもそのような傾向は見られず、順位ごとに得点域が住み分けされているように感じられます。これは半荘ごとの各順位の点数をグラフ化してみるとはっきりとわかります。
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(便宜上冷やし透華戦を1戦目~4戦目、マホ戦を5戦目~7戦目としています)

差分をわかりやすくするため一つ下の順位との差額をグラフ化したものが次のグラフです。
Baidu IME_2013-3-2_0-5-31
1位と2位の差、3位と4位の差が全て1万点以上、2位と3位の差は全て2万点以上離れていることが見て取れます。ウマ10-20では1位と2位、3位と4位では1万点離れ、2位と3位は2万点以上離れますのでグラフの結果と合致します。また1位と2位で差が2万点以下のこともあるのでウマが10-30ではないことは断定できます。
これらを鑑みるに合宿中の半荘ではおそらく10-20のウマが採用されていたのでしょう。 
試しに先ほどの表からウマ10-20分の点数を差し引いてみますと次のようになります。
 Baidu IME_2013-3-2_0-14-13
点数的にもキャラクターの強さの描写としても特に不自然を感じるような結果ではないと思います。
ウマが採用されたことへの根拠はありませんが、採用されたことを否定する証拠もありません。ですが状況証拠的に見て10-20のウマが採用されていたことはほぼ間違いないでしょう。


ウマの分の点を差し引いて合宿の結果を見るといろいろなことが見えてきます。
いくつかありますがざっと思いついたことを箇条書きしておきます。
・冷やし透華は4連勝だけど点数的には思っていたほど無双していたわけではない?
・衣は冷やし透華相手にも結構善戦していた模様
・咲と藤田プロはラス争いが多いけど結構僅差だった
・マホは全ラスだけどトブほどには負けなかった
・ムロのトップは結構ギリギリ
・最終戦の和のトップは大トップだけどまだまだ常識の範囲内


ちょっと話がそれましたが、ここまでで咲-Saki-ではウマがほとんど採用されていなかったこと、にもかかわらず4校合同合宿ではウマが採用されていたことがわかりました。では何故4校合同合宿ではウマが採用されたのでしょうか?推測になりますが3つの可能性を考えてみました。

①合同合宿参加の他校のルールに合わせた
②全国個人戦はウマありのルールなのでその練習
③藤田プロの思惑絡み

このうち①は合宿の主催が清澄高校であることと、合宿自体が清澄の壮行試合的な意味合いが強いことから説としてはちょっと弱い気がします。一応他の3校がウマありルールだったなら多数決的な意味合いでありかもしれせんが。
②も可能性としてはありかもしれませんが個人戦よりも団体戦に出る人数の方が多いのでちょっと考えづらいです。そもそも個人戦県予選でウマは採用されてないのに全国では採用されているというのも変な話です。
というわけで理由としては③が有力でしょう。全国大会編終了後に何かしらの動きがあることを期待しています。何年後になるかわかりませんけどね。


最後に何故咲-Saki-の世界でウマが採用されなかったのかをメタな視点で考えたいと思います。
ウマがあることによって大きく変わることは±0の成立条件です。ウマなしならば「順位が2位以下でかつ29600点以上30500点以下」で済みますがウマがあることによって「2位で19600点以上20500点以下、3位で39600点以上40500点以下」という非常に厳しい条件に変わります。
「2位で19600点以上20500点以下」となるとトップ者が4万点以上になるように稼がせつつ、3着目4着目を自分よりも下の点数にする必要があります。さらに点数を削るために咲が和了ると今度は咲自身が19600点~20500点に収まらなくなりますので必然的にトップ目が3着目4着目から和了るように調整しなければなりません。そんなことを狙ってできるとなるともはや人知を超えています。
「3位で39600点以上40500点以下」も同様に厳しく3人がかりでラス目をトバさないよう削る必要があり、やはりトップ目2着目の点数や和了りを調整しなければなりません。
ウマがなければ咲自身の点数調整のみで達成できた±0がウマがあるだけで他家までコントロールする必要が出てくるのです。

±0の成立条件を緩め、かつ読者が納得できる程度の能力に収める、という点でウマをなくすという改変は実に効果的でした。これが咲-Saki-でウマが採用されなかった理由なのではないのでしょうか。