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Danas je lep dan.さんの[咲-Saki-][虹]断絶の前の誠実さ――物語における「格付け」要素についての私見という記事にこんな記述がありました。

初級シャーロキアンはドイル作品の穴をつつくけど上級シャーロキアンはその穴をいかに矛盾のないように合理的に解消するかに血道をあげるものと決まっているわけで。もちろんこれは好みの問題であって別にひたすら作品の穴をつつくだけのファン考察も当然有り得るだろうとは思うけれども,個人的には上級シャーロキアン的な,つまり上級ストパニアンとか上級咲ストでありたいと思うわけです,ええ。

なるほど、確かに私も作中の矛盾点に対してそれっぽい理屈を付けて矛盾が無いかのように結論づけたことがあります(【考察】絶対安全圏は実は配牌を4向聴以下にしている?)。このような考察の姿勢が初級か上級かはわかりませんが、作品の矛盾点を指摘するだけより矛盾がないように理屈づけるほうがより建設的な考察であることについては異論がありません。というわけでしばし作中の矛盾点として挙げられる「サイドA準決勝中堅戦前半のたかみスロットが7つだったこと」についてあれこれ理屈をつけて合理的に解消してみたいと思います。 

まずは矛盾点の説明から。
渋谷尭深のハーベストタイムでは渋谷尭深が第一打で捨てた牌がオーラスの配牌に戻ってきます。半荘戦では連荘がなければオーラスまでの局数は最短で7局ですので渋谷尭深の配牌に戻る牌=たかみスロットの最低数は7です。これは作中でも言及されています。
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そして中堅戦の前半ではオーラスの描写は省略されていましたがたかみスロットは7つだったことが淡によって言及されています。
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このようにたかみスロットが7つとなるためには親の連荘が一度もないことが条件となります。しかし実際の中堅戦前半では江口セーラによる親のツモ和了りが発生しています。
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連荘が1度発生するとたかみスロットの最低数は8となるため淡のセリフとの整合がとれません。これがたかみスロットが7つであることの矛盾点です。この矛盾点、単なる誤植とも思われますが阿知賀編5巻の第2版以降でも修正されておりません。同じ5巻でも83ページで白水哩が鳴いている牌が4索から3索になっている、等の修正はあるにもかかわらずです。アニメ化に際しても修正がされていなかったので単なる誤植とも考えづらいところではあります。

ではこの矛盾点を合理的に解釈してみましょう。
まずもっとも簡単な解釈は「淡がオーラスまでの局数を勘違いしていた」というもの。これならば確かに矛盾は生じませんが、弘世菫や宮永照が間違いを指摘しない点に多少の違和感が残ります。そもそも何故わざわざ淡に間違ったセリフを言わせたのか、という点が疑問として残るため解釈としてはイマイチです。


対する私の解釈はこうです。それは「中堅戦前半で渋谷尭深が第一打を打つ前に終了した局が発生していた」です。連荘が発生しているのにたかみスロットが7なのはおかしい、という考えは「オーラスまでの局数=渋谷尭深が第一打を捨てた回数」という前提があってこその矛盾点となります。ですが現実にはその等式は必ずしも成立しません。最もわかりやすい例は天和・地和が発生した時です。この場合は誰も第一打を捨てていませんが局としては成立します。ただ流石に天和や地和が出たのに和了描写を省略するのは不自然すぎますし点数的にも矛盾が生じてしまいますので今回の例とは合致しません。人和の場合はルールによりますが、それでもわざわざ省略するのは不自然でしょう。

続いて考えられるのは途中流局。渋谷尭深の第一ツモの前に誰かが九種九牌で流せば局数と渋谷尭深の第一打の回数は合致しなくなります(「九種九牌流局の場合は親流れ」というルールがあることが前提条件)。ただこれもルールに九種九牌が明言されていない以上、描写もなく発生したとなると不自然です。途中流局には四槓散了や三家和もありますが、渋谷尭深の第一打の前にこれらが成立したとなると九種九牌以上に不自然です。

以上に挙げた例はどれも「可能性としてはありうるが不自然な解釈」です。どこかこじつけた感が拭えません。しかし「じゃあたかみスロットが7つだったのは矛盾なんじゃないの?」と思うのは早計です。渋谷尭深が第一打を捨てる前に局が終了する可能性はまだあります。 それは「誰かが鳴いて渋谷尭深の第一ツモを飛ばしてから和了った」場合です。例えばこんな状況を想定してみましょう。

親:江崎仁美 南家:新子憧 西家:江口セーラ 北家:渋谷尭深
新子憧の配牌:二萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国七筒:麻雀王国九筒:麻雀王国一索:麻雀王国一索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国西:麻雀王国北:麻雀王国中:麻雀王国中:麻雀王国  ドラ:一索:麻雀王国
この配牌で親の第一打が八筒:麻雀王国ならばチーして打北はわりと普通です。第一ツモの前に鳴くことに抵抗がある方もいるかもしれませんが新子憧は鳴きを駆使する打ち手なので特に違和感のある打ち方というわけでもありません。
その後下家の江口セーラが打中:麻雀王国をしてこれをポン。
二萬:麻雀王国三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国一索:麻雀王国一索:麻雀王国七索:麻雀王国八索:麻雀王国 中:麻雀王国中:麻雀王国中横:麻雀王国 八筒横:麻雀王国七筒:麻雀王国九筒:麻雀王国
江口セーラが続けて九索:麻雀王国を打てば自然な手順で局が終了します。この場合渋谷尭深は第一打を捨てていませんが局としては成立しています。和了自体もただの3900点ですので天和や地和のような派手な和了りではく、描写が省略されたとしても不自然さは感じないと思います。点数的にはどうかと思い咲-Saki-グラフさんを見てみると南2局1本場にセーラから5200の1本場を和了っていれば矛盾なく説明がつくようです。
参考-またそんな大きいの…っ!!

その場合の牌姿はこんな感じでしょうか?
三萬:麻雀王国四萬:麻雀王国一索:麻雀王国一索:麻雀王国中:麻雀王国中:麻雀王国中:麻雀王国 八筒横:麻雀王国七筒:麻雀王国九筒:麻雀王国 九索:麻雀王国九索:麻雀王国九索横:麻雀王国 ドラ:一索:麻雀王国 ロン:二萬:麻雀王国
上家の江崎仁美が親の江口セーラの第一打をポンして打八筒:麻雀王国。これを新子憧がチー。続く江口セーラの九索:麻雀王国をポン。さらに江口セーラの二萬:麻雀王国でロン。中ドラドラ5200の1本場で5500。特に不自然なところはないでしょう。


というわけでたかみスロットが7つだった理由は「南2局1本場に新子憧が初手から鳴いて渋谷尭深の第一ツモ前に和了した」と解釈すれば矛盾なく説明することができます。当然ですが憧以外に江口セーラや江崎仁美が和了った可能性もありますが、鳴き麻雀を駆使するという点から考えると憧が和了したと考えるのが最も納得のいく解釈でしょう。

このような解釈をすると新たな観点も見えてきます。渋谷尭深の第一打の前に局が成立する、というある種例外的な事象が発生しても淡はたかみスロットを8つではなく7つと言っています。このことから淡はたかみスロットについて実に正確に把握していることがわかります。渋谷尭深の能力を十分理解していて、「第一打を捨てる前に局が終了した場合はたかみスロットは増えない」という例外を熟知していなければとっさに「たかみスロットが7つ」だとは言えないでしょう。おそらく渋谷尭深の能力の発動条件や例外処理については照の照魔鏡で調べられてチームメイトに周知されていたのはないでしょうか。


以上から今回の結論は次の2つとなります。

①サイドA準決勝中堅戦前半で南2局1本場に新子憧が初手から鳴いて渋谷尭深の第一ツモ前に和了した可能性が高い
②白糸台の選手の能力は照の照魔鏡で調べられていて、かつそれがチームメイトに周知されている可能性が高い