直木賞特集の途中ですがやっぱり我慢できませんでした。
奥田英朗さんの伊良部先生シリーズ最新作、ようやく出番でございます。

今回の患者さんは


田辺満雄さん 78歳
大日本新聞代表取締役会長
東京グレート・パワーズオーナー
発行部数日本一を誇る新聞社の会長であると同時に、日本を代表する名門球団のオーナー。
その強烈なキャラクターとワンマンぶりや歯に衣きせぬ発言から、賛否両論ながらお茶の間の人気者。
愛称はナベマン。


安保貴明さん 32歳
ライブファスト社長
日本のIT革命の波に乗り一気に成長した新興企業の社長。会社は積極的な企業買収から規模を拡大。
ベンチャーの旗手、時代の寵児として今最も注目を受ける人間の一人。
愛称はアンポンマン。


白木カオルさん 44歳
女優
東京歌劇団出身の女優。
年齢を感じさせない美貌とプロポーション。それでいて時に飾らなく奔放なイメージでカリスマとして同世代の女性達の人気を集める。


他一名。

あれ?どこかで耳にしたことあるような、そんな方々ばかりでいらっしゃいます。
断っておきますがもちろんフィクション、実在する人物、団体とは一切関係ありません。

しかし…………
伊良部先生とお会いしてからかれこれ3冊目。伊良部先生が名医に見えてしまうのは私の錯覚でしょうか。
いやこれは登場する御三方があまりにリアリティに溢れ過ぎていて、かつ実に強烈な個性の持ち主ばかりなので、さすがの伊良部先生の威光も霞み気味になっていらっしゃるのかも。
おまけに今回は伊良部先生よりもセクシー看護婦マユミちゃんの活躍の方が目立っているじやありませんか。
伊良部ファンとしてはちょっと物足りなく歯痒い思いでページを捲っておりました。

そうしたらなんと最後に現われた表題作『町長選挙』では伊良部先生がお父様の意向で伊豆諸島、千寿島に二ヵ月の短期派遣。
まさかとうとう追い出されたかと大笑い、いや心配いたしましたよ私。
ところがどっこいそんなことはある訳もなく、それどころか久々に見事な腹黒っぷりを遺憾なく披露された伊良部先生。
やっぱり貴方は最高でございます。

どうかその愛しきお姿のままでいらっしゃって下さい。


町長選挙

いやはやこらしかしですねえ、某きょ○ん軍のここ最近の低迷やここの前社長の転落劇に、旬という意味じゃ黒は黒でも黒田さんの最近の人気を見てると何とも物悲しい本じゃありませんか。
今作は実在の人物に似せた事で奥田さんからのちょっとしたご提案みたいな面もあるだけに尚更です。
しかもその人物の状況には皮肉がこもってても、人物自身には愛情がたっぷりの描写ですからね。

またシリーズ物は回を重ねると勢いが落ちてくるのがやりきれませんです。
今回は伊良部よりも患者のキャラを立たせることで趣を変えているんですけどね。
『町長選挙』も最後は『サウスバウンド』みたいなほのぼのな終わり方になっちゃってたし。

やっぱり空中ブランコで飛んじゃったり、大井一丁目を天丼一丁目に書き替えたり、余所の病院に石を投げ付けるバカっぷりをワシャまだまだ見たかとねん。