直木賞特集に戻って山本兼一さんの『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』です。山本さんの本を読むのは『いっしん虎徹』に続いて2冊目。直接的な繋がりはないんだけど、虎徹の真贋鑑定をする場面なんかもあったんで、読んでて良かった。
山本さんは『弾正の鷹』が小説NON短編時代小説賞佳作を受賞しデビュー。その後『火天の城』が松本清張賞を受賞。また同作は角田光代『対岸の彼女』が受賞した第132回の直木賞の候補入り。という経歴の持ち主だそうです。時代小説をあんまり読まないってのもあるんだけど、小説NON短編時代小説賞ってのははじめて聞きました。


幕末、京都は三条木屋町に「御道具 とびきり屋」という店を構える真之介とその妻ゆず。実はゆずは京都でも指折りの老舗道具屋「からふね屋」のむすめであり、二番番頭だった真之介と二人、駆け落ち同然で飛び出して来たのでありました。
真之介の真面目な働きぶりと幼い頃から鍛えられたゆずの確かな見立てもあり、店は順調に軌道に乗っていきます。しかし、いつまでたってもゆずの両親には認められず、また店には何かと厄介事が転がり込み……。


真面目父ちゃん&肝っ玉母ちゃんの夫婦奮闘記なんですが、とびきり屋は手代、丁稚を入れれば結構な大所帯で、さながら昼のほのぼのホームドラマといった雰囲気です。ちょっと気まずくなりそうな夫婦の睦言を含めて、家族で楽しむのにはもってこいな作品。
そしてこの作品のすごい所というか笑っちゃうのは、とびきり屋に厄介事を持ち込む侍の顔触れです。幕末といえばな新選組の面々から始まり、高杉晋作、坂本龍馬、さらには人斬り以蔵や中村半次郎とオールスター状態ですよ。
近藤勇は虎徹を求め、龍馬は2階に間借りし、揚句の果てには夫婦揃って芹沢鴨と命懸けの勝負をする。ここまでくると完全にファンタジーですね。人によって好き嫌いが別れちゃうかも。

私の場合はこれはこれで嫌いじゃないんだけど、どうせやるならもっと徹底的にはじけさせてもいいんじゃないかなあとも思いました。ちょっと中途半端な気がします。
もしくは逆に道具の蘊蓄をもっとふんだんに盛り込んで、有名人については読み終わった後にもしかしてあの人?となる位がいいんじゃないかと。
結末といい、どうも全体的に中途半端な印象が拭えませんでした。続編を視野に入れてなのかなあ。


さて、この本は連作短編なんで、いつもならば続きにそれぞれの話の感想を書くところなのですが、時間の都合で割愛。『オチケン!』を読んで以降ぼちぼち落語を聞いているので『井戸の茶碗』を模した『皿ねぶり』が楽しかったです。O・ヘンリーの『賢者の贈り物』を彷彿とさせる『猿ヶ辻の鬼』も良かった。



千両花嫁―とびきり屋見立て帖