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ヒューマックス成田シネマ1にて鑑賞。
監督・脚本 三谷幸喜
製作 石原隆、市川南
音楽 荻野清子
撮影 山本英夫
編集 上野聡一
美術 あべ木陽次
録音 瀬川徹夫
衣装 宇都宮いく子
照明 小野晃
出演 中井貴一、ディーン・フジオカ、小池栄子、草刈正雄、石田ゆり子、佐藤浩市、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊、山口崇、田中圭、梶原善、寺島進、藤本隆宏、迫田孝也、ROLLY、後藤淳平、宮澤エマ、濱田龍臣、小林隆、有働由美子
127分
配給 東宝
公開日 2019年9月13日

三谷幸喜監督8本目の映画作品。『ギャラクシー街道』以来4年ぶりの作品である。

題名にある「記憶にございません!」は、かつて田中角栄首相当時に問題となった「ロッキード事件」の折、関係者の国会答弁で使われ流行語にまでなった言葉だ。「記憶にない」というのは事実を灰色にしてしまう都合のよい言葉だ。ところが、本作の主人公は本当に記憶をなくしてしまった総理大臣が主人公の物語である。

国民の支持率が史上最低という憲政史上最低の総理大臣が記憶をなくしてしまって普通の人になってしまったら、というありそうでありえないコメディだ。
この総理を演じるのが中井貴一。
予告編やTVスポットで流される中井貴一の「記憶にねえんだよー!」というセリフに乗せられて観てしまったのが本作だ。

とにかくこの映画は予告編がおもしろい。
では、本編がおもしろくないかというと決してそうではない。声を出して笑えるシーンはかなりある。
それでも本編は予告で期待していたものとは違った。
何が違っていたか。

この映画のポイントは「史上最低の総理」が「普通の人」になってしまうというところ。
中井貴一の演じるこのダメダメぶり、不人気ぶりを見たかったのだがそれがなかった。
映画で見られたのはひたすら普通の人、むしろ「いい人間」の総理だけだった。
これはこれで中井貴一の演技で楽しく見られたのだが、やはり期待したのは悪役としての中井貴一だったので少しあてが外れた。

中井貴一はじめ佐藤浩市などベテラン俳優たちの演技が楽しい。
とくに草刈正雄がそのとぼけた持ち味を発揮し、この映画の中で唯一の悪役といっていいキャラクターを演じ切っていた。草刈は三谷脚本の大河ドラマ『真田丸』に出演して、三谷がそのコメディアンとしての才能を買ったのだろう。

三谷作品に初出演のディーン・フジオカはただ一人シリアスな役柄を演じていた。D・フジオカが三谷の演出でどんなコメディの才能を見せてくれるか楽しみにしていたが、これも残念なことの一つだった。ただし、彼のシリアスな存在があったからこそ他の面々のコミカルな演技が光ったえよう。

近頃珍しいオープニングのクレジット・タイトルで「山口崇」の名前が見えた。昔、テレビのホームドラマの常連だった人だが、まさかなと思い、かってに「山中崇」と勘違いしてしまった。
ところがやはり「山口崇」は出ていたのである。映画出演は実に34年ぶりだ。重要な役どころで出ていたのだが、まったくわからなかった。

本作は政治風刺というよりも「人は変わることができるか」というテーマに焦点があてられている。三谷作品らしいハッピーエンドな結末が心温まる。

<あらすじ>
ある時、男(中井貴一)は病院のベッドという場所で目覚めたのだが、あろうことか事の一切の記憶を失っていた。こっそり病院を抜け出し、テレビを観た瞬間、そこに自分が映っていることに気づく。国会での演説の最中、傍聴していた一般人から投石を受けてしまい、病院に直行する自分がこの国の内閣総理大臣であることに衝撃を受ける。しかも相当な嫌われ者の総理大臣であるという更なる衝撃が待っていた。記憶を失ってしまった男は秘書官(ディーン・フジオカ、小池栄子)を名乗る者たちに官邸に連れ戻され、男が内閣総理大臣であること、国民に嫌われている総理であること、そして記憶を失っていることは最高機密であると告げられる。一切の記憶を失ってしまったが故に、男は進めていたであろう政策や国会議事堂の場所、果ては自分の息子の名前すら思い出せなくなっていた。しかも最愛の妻(石田ゆり子)は他の男といい関係にあるらしく、息子(濱田龍臣)もあらぬ方向に進んでしまっているような雰囲気を漂わせている。そんな混乱の最中になんとアメリカ大統領(木村佳乃)が来日することになる。周りの人間すべてを巻き込んで、男の一発逆転のドラマが始まる。


《記憶にございません!  予告編》