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スターチャンネル録画の鑑賞。
監督 田中徳三
脚本 浅井昭三郎
企画 勝呂敦彦
音楽 渡辺宙明
撮影 今井ひろし
編集 山田弘
美術 太田誠一
録音 海原幸夫
照明 美間博
出演 本郷功次郎、小林直美、亀井光代、戸浦六宏、上野山功一、川崎あかね、丘夏子、毛利郁子、戸田皓久
82分
配給 大映
公開日 1969年12月20日

日本の怪談映画の十八番の一つ「化け猫」映画である。「化け猫」映画で有名な佐賀・鍋島の化け猫騒動を描いたものだ。

この映画が公開された1969年という年は、大映の看板スターだった市川雷蔵が亡くなり、スターシステムの中で映画をつくってきた大映にとっては大きな痛手となった年だ。
本来、夏に公開されるのが常識だった怪談映画、本作はなんと正月映画として公開されたのだった。
それも、松方弘樹主演の『眠狂四郎』の併映としてだ。
当時の大映がなりふりかまわず映画制作に走っていたことがうかがえる。

もう一つ、本作公開には別な話題が伴っていた。
本作でいわゆる”化け猫女優”となった毛利郁子が、本作が公開される直前に愛人刺殺事件の犯人として逮捕されるという衝撃的な事件が起こったのだ。
毛利郁子というのは三原葉子などと並んでグラマー女優として有名だった。
大映では『眠狂四郎』シリーズ、『座頭市』シリーズなど時代劇に欠かせない妖艶な女優だった。
そんな現役バリバリの女優が殺人事件の犯人として逮捕された。しかも、その本人が化け猫を演じた映画が公開された。
出演者が犯罪人、しかも殺人事件の犯人という事件、今の世の中だったら、おそらく公開見送りのお蔵入りとなったのではないか。
それが、この時代は普通に公開されたらしい。
この話題性によって映画は大ヒットとなったそうだ。

映画の内容は、化け猫映画のおいしいところを盛り込んだ出来になっている。
化け猫映画の十八番というと、行灯の油をなめているところを見られて「み~た~な~~」と言うところや、池の鯉をつかんで食べるところなどだ。本作はそのあたりをたっぷり楽しませてくれる。

映画の大部分が夜のシーンなので、ハイビジョンの画像でないとテレビでは見にくい。残念ながら4KはおろかHD画像さえないのはしかたないところか。

<あらすじ>
八代将軍吉宗の頃。佐賀三十七万石鍋島丹後守(上野山功一)は竜造寺又七郎(戸田皓久)の妹小夜(亀井光代)の美しさに心を奪われ、側室に差し出すよう強要した。それを知るや、家老矢淵刑部(戸浦六宏)は威信の失墜をおそれ妹お豊(小林直美)の方と共謀、又七郎は刑部の策に乗せられた丹後守に斬殺された。兄の悲業の死を悟った小夜は丹後守や刑部を呪い、復讐を愛猫に託し、自害した。小夜の血をなめたたまは眼をらんらんと輝かせ、空を飛びいずこかへ姿を消し去った。それ以来、夜毎の怪異に城中は怖れおびえ、小森半左衛門(本郷功次郎)に怪異探索が命じられた。たまの化身は中臈沢の井(毛利郁子)に姿を変え、その怪奇な様を目撃したお豊の方に迫った。間一髪、半左衛門に斬られた沢の井からぬけ出したたまの化身はお豊の方に乗り移った。そのことを聞き、身辺の危険を察した刑部は城を脱出せんとしたが、今は怪猫と化したお豊の方に行手を阻まれ、ノド笛をくいちぎられ死んだ。そして、丹後守を襲った怪猫と馳けつけた半左衛門は凄絶な格闘を展開。半左衛門の剣に怪猫は又七郎の死骸を埋めた古井戸に落ちた。すると、その中から、又七郎の亡霊が昇天してゆくのだった。


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