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衛星劇場録画の鑑賞。
監督 長谷川和彦
脚本 レナード・シュナイダー、長谷川和彦
原案 レナード・シュナイダー
製作 山本又一朗
製作総指揮 伊地智啓
音楽 井上堯之、星勝
撮影 鈴木達夫
編集 鈴木晄
美術 横尾嘉良
録音 紅谷愃一
照明 熊谷秀夫
出演 沢田研二、菅原文太、池上季実子、北村和夫、神山繁、佐藤慶、伊藤雄之助、汐路章、市川好朗、石山雄大、森大河、江角英明、風間杜夫、草薙幸二郎、小松方正、水谷豊、西田敏行
147分
配給 東宝
公開日 1979年10月6日
1979年度キネマ旬報ベストテン第2位他各映画賞多数受賞

先日に書いた長谷川和彦監督の2作目にして日本映画史に残る傑作である。
『タクシー・ドライバー』を書いたポール・シュレイダーの兄のレナード・シュレイダーが原案と脚本を書いた。 

中学校教師が原爆をつくって日本政府を脅迫するという当時の日本映画としては破格のスケールの内容となっている。
その中学校教師・城戸を演じるのがジュリーこと沢田研二、爆弾犯人を追う警視庁警部・山下に菅原文太。
当時のチラシの写真にあるように沢田と菅原のホモセクシュアルな関係めいたものも感じられる映画だ。

城戸のキャラクターは、「親はもう殺してきた」というセリフがあり、『青春の殺人者』の水谷豊につながった人物のように思える。
城戸という人物の周辺の人物はいっさい描かれず、彼は大都会に生きる孤独な青年、没個性的な一般大衆として描かれている。

対する山下警部は、事件解決のためには自らの命を賭ける熱血漢であり、国家という権力のために己を捨てて生きる人間として描かれる。

城戸と山下の関係は、「大衆VS国家権力」という関係のようだ。
同時に孤独な城戸が男・山下に愛情みたいなものを感じてしまう妖しい関係としても描かれる。

プルトニウムさえ手に入れば、誰でも原爆がつくれてしまうという発想を考えたのがP・シュレイダーで、広島に原爆がおとされたとき母の胎内にいた長谷川和彦のために脚本を書いたという。

原爆をつかって日本政府を脅迫しながら、城戸は何を要求していいのかわからず、思いついたのがプロ野球のナイターの完全中継やローリングストーンズ日本公演だ。
当時、ナイター中継はたいがい試合途中で終わってしまうのが普通だったし、ローリングストーンズの予定されていた日本公演が中止になったという経緯もあった。

沢田研二は本作によりアイドルではなく俳優としての評価を確定した。彼は当時、スケジュールのびっしりつまった芸能界屈指の売れっ子タレントだったが、この映画出演のため3か月ものスケジュールを空けたという。そして、アクションにもできるかぎりスタントを使わず自身で行ったという。

公開当時、私的旅行で日本に来ていたマーティン・スコセッシが本作を観て、長谷川和彦との対談をしたそうだ。
ちなみに、映画の中には沢田が『タクシー・ドライバー』のロバート・デ・ニーロをオマージュしたシーンもあった。

<あらすじ>
東海村の原子力発電所が一人の賊に襲われた。警察庁長官の「盗難の事実は一切ない」という公式発表に山下警部(菅原文太)は疑問を抱いていた。その頃、中学の物理の教師、城戸誠(沢田研二)は、自分の部屋で、宇宙服スタイルで原爆を作っていた。城戸は完成した原爆の強大な力で、警察に「テレビのナイターを最後まで放映しろ」と要求、連絡相手を山下警部に指名した。何故なら、東海村襲撃の下見をかねて生徒たちと原発を見学した帰り、機関銃と手榴弾で武装した老人にバスジャックされたとき、生徒を救出し、弾を受けながら犯人を逮捕した男が山下で、教師に飽きた自分と比べ、仕事に命を張った山下に魅力を感じたのだ。その日のナイターは最後まで放映された。犯人の第二の要求は麻薬で入国許可の下りないローリングストーンズ日本公演だった。次に城戸は原爆を作るのにサラ金から借りた五十万円を返すために五億円を要求した。金の受け渡しに犯人と接触出来ると、山下は張り切った。金を受けとったとき、警察に包囲された城戸は、札束をデパートの屋上からばらまいた。路上はパニックと化し、そのドサクサに城戸は何とか逃げ出す。やがて、城戸は武道館の屋上で山下と再会、二人はとっくみ合ううち、路上に転落、山下は即死するが、城戸は原爆を抱いたまま木の枝にひっかかって命びろい。タイムスイッチのセットされた原爆を抱いて街を歩く城戸。そして城戸の腕の中で、強烈な光が……。


《 太陽を盗んだ男  予告編 》