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スターチャンネル録画の鑑賞。
監督 ロー・ウェイ、ブルース・リー
脚本 ロー・ウェイ、ニー・クァン
製作 レイモンド・チョウ、ロー・ウェイ
製作総指揮 レネード・K・C・ホー
音楽 ジョセフ・クー
撮影 チェン・チンチュー
編集 チャン・ヤオチュン
武術指導 ハン・インチェ
美術 チェン・シン
衣装 チュウ・シンヒ
出演 ブルース・リー、ノラ・ミャオ、ティエン・フォン、橋本力、ボブ・ベイカー、勝村淳、ジェームス・ティエン、ロー・ウェイ
106分(オリジナル・ノーカット版)
製作国 英国領香港
配給 ゴールデン・ハーベスト=東和
香港公開 1972年3月22日
日本公開 1974年7月20日
1974年度キネマ旬報ベストテン第

ブルース・リー主演の香港映画では第2作目、日本公開では3作目にあたる。

香港公開時には、公開2週間で興行収入記録を塗り替える大ヒットとなり、その後、アジア各国で公開され大ヒットとなった。
日本で公開されなかったのは、おそらく日本人が悪役となっていたためではないだろうか。

本作では、リーの怪鳥音とヌンチャクがはじめて使われる。
ヌンチャクの使用は日本刀を相手にするためだが、ヌンチャクのアイデアを考えたのはリー自身だが、プラスティック製のヌンチャクをリーに贈呈したのは日本人俳優の倉田保昭だったらしい。
また、怪鳥音はリハーサルで偶然にリーが声を出したのを聞いたロー監督がこれを取り入れたそうだ。

本作で悪役の日本人武術家とその用心棒は日本人俳優が演じている。
この二人は、勝新太郎の勝プロ所属の俳優で、リー自身がわざわざ日本まで出向き、勝プロを訪問して依頼したそうだ。
この映画の撮影当時は、リーはテレビドラマ『グリーン・ホーネット』のカトウ役の俳優として知る人ぞ知るという程度だった。
それよりも、勝新太郎はリーの熱意にうたれて、橋本と勝村という二人の弟子の出演を了承したらしい。
橋本力は『大魔神』の大魔神役で知られる俳優で、勝村は殺陣師だった。

本作は、B・リーが唯一演じたキスシーンもあることでも有名である。

さらに、スタントマンとして若き日のジャッキー・チェンも出演している。
リーが橋本に投げ飛ばされ、障子を突き破って宙を飛ぶシーンのスタントはJ・チェンだという。

リーが悪辣な日本人をやっつけるという内容で、世界中のファンの間では、本作をB・リーの最高傑作とする人が多いということだ。
しかし、日本では『燃えよドラゴン』の公開が一番先であり、この時のリーの衝撃に比べて、本作の衝撃度が低いこと、また日本人が悪役であることなどから、本作についてはそれほど評価は高くない。

確かに、リーと悪のボスとの対決シーンが終わった後でさらに話が続くなど、脚本の構成でどうかなと思うところはある。
ラストシーンは日本人はじめ諸外国の軍隊が銃を構えるところに向ってリーが空中蹴りをするストップモーションで終わる。これは、20世紀初頭、中国を支配していた諸外国に対する中国人の怒りを象徴したもので、このシーンがファンには喜ばれたのだろうと思う。

日本初公開時は東和の配給だったが、当初、ゴールデン・ハーベスト・プロは格安の価格で東映に売り込んだ。しかし、試写を観た社長の岡田茂が「これなら千葉真一でいける」ということで、即断で本作の購入はやめ、千葉真一主演の『激突!殺人拳』を製作した。G・H・プロも東映も似たような製作体制をもっていたようだ。

<あらすじ>
非情可烈な日本軍国主義の嵐が中国大陸を吹き荒れる一九〇八年。その動乱のさなか上海の街に一人の中国人青年がやってきた。名をチェン・チェン(B・リー)といい、秀れた拳法の使い手だった。チェンの目的は、彼の武術の師であるチン・ウー道場の創始者ホ・ユアン・チアの葬儀に参列するためだった。道場はこの偉大な武道家の不可解な死に打ちひしがれさらにそれに追い討ちをかけるように数日後、同じこの上海で一派をかまえる日本武術協会から〈極東の病める国〉と記した看板が届けられた。明らかにチン・ウー道場、ひいては中国人全体に対する許しがたい侮辱であり、挑戦でもあった。チェンは憤激し、日本武術協会に乗り込んで会長のニン・ムウに挑んだが、ムウは三日以内にチン・ウー道場を明け渡すように要求した。チェンはこのとき以来、師は何者かに殺されたのではないかという疑問を抱き、その真相を確かめるべく上海にとどまることにした。手始めにムウの用心棒を捕えて問いつめ、地獄に送り込んで反応を待った。案の定、ムウは絶大な権力で警察を動かし、チェンを逮捕させようとした。警察に追われる身となったチェンを安じたユアンの娘のリー・エー(N・ミャオ)は町中を捜し廻ったが、見つからなかった。それを見計らったようにムウの命令を受けた日本武術協会の部下たちは手薄のチン・ウー道場を急襲した。その頃チェンも日本武術協会に殴り込み、多勢の高弟たちを次々と打ち倒していった。そして最後に残った会長ニン・ムウと彼のロシア人の用心棒との激突は、遂にチェンの勝利で終止符が打たれた。かくして偉大なる師ホ・ユアン・チアの仇は見事に討たれ、チェンの疑惑通り、ウー道場乗っ取りのためにニン・ムウがホ・ユアン・チアを毒殺した事実も明るみにでた。すべてが終わり、チェンは愛するリーと共に上海を逃れようと決意した。だが、それも束の間、ことは意外な方向へ進んだ。チン・ウー道場の門弟たちと日本武術協会との壮絶な闘いのあとに、チェンが駈けつけると、そこには日本領事と警察が待ち受けていた。権力をカサに着る領事は、チェンが自首しない限りチン・ウー道場を閉鎖し、門弟たちの命さえ保証せぬと脅迫していた。そのとき、道場の二階からチェンが突然姿を現わした。チェンは自分の命と引きかえに、リ・ウーたちを助けようと自首を申し出、階下に身を躍らせたが、その一瞬、凄まじい拳銃の音が耳をつんざいた。秘かに待ちうけていた警察隊の一斉射撃--チェンの肉体は絶叫を残して大地に伏した。


《 ドラゴン怒りの鉄拳  抜粋 》