「オフィスシオンFMしきたりアカデミー」では、家族葬専門葬儀社オフィスシオンが、しきたりや、葬にまつわる慣習やマナーをご紹介いたします。
今回のシリーズは、「家族葬の現場から」です。
オフィスシオンで働いている女性スタッフが、仕事を通じて日々感じたことをブログに書いています。その中から毎日1話ずつご紹介していきます。
「おばあちゃんに教えてもらったよ」
ご出棺前のお別れの儀の時に、娘さんが涙を流しながらおばあちゃんに話しかけていました。「おばあちゃん、どんな些細なことでも『ありがとう』って言っていたね。おばあちゃんから、それが大切だと教えてもらったよ。私もおばあちゃんみたいに『ありがとう』って言うよ」と仰っていました。
以前、お寺様の法話でも、衣食住が足りて生きていることが当たり前になったらもっともっとと、自分中心の欲が出て、欲が叶わないと怒りになるというお話がありました。『ありがとう』という言葉は、言うほう、言われるほう双方にとって素敵な言葉です。『ありがとう』と言われたい私は、一日に何回の『ありがとう』を言っているのでしょうか。
生きていること、衣食住に不足がないことに感謝することが大切なことは分かります。では、欲は?欲を全否定してしまうことは難しいでしょう。そんな形で欲を否定したら生身の人間ではいられない。死を以て欲を滅する形は人の道とは違います。
自分だけがよかったり、他人を貶めたりする私欲は結果的に自分に災いとしてかえってくるかもしれません。でも、自己の向上の欲求、ひいてはそれが
他の、社会の幸福へとつながるものならば、欲する方向へ邁進してゆくことは尊きことであり、感謝の念を忘れることもないと思います。
さて、先ほどのおばあちゃんのお話ですが、お葬儀のご縁のおかげで私も学ぶことができ本当に感謝しています。折り紙が好きだったおばあちゃん。未完成の作品を、あちらで仕上げられるように作りかけの作品と折り紙を納めました。最期は口から食べられなかったから、りんごを切って爪楊枝をさし、1人ずつ献果をしましたお化粧が大好きだったから、皆でもういちどパフをたたき、口紅をぬり、眉を整えました。オロナミンCが大好きだったから、末期の水はオロナミンCでした。亡くなる間際の苦しいお顔のお写真も見せて頂いておりましたので、綺麗に化粧をしてもらった安らかなお顔を見て、ほんとうにご親族がホッとしているのが伝わってまいりました。ほんとうに、じーんとくる、お式でした。
後ほどお家へお邪魔して、満中陰までの飾りをさせて貰いました。元気な時の写真であるご遺影の隣には、ご家族が描かれた病床のおばあちゃん、鼻にチューブをつけ目を閉じているおばあちゃんのスケッチが飾ってあります。