ニホンミツバチが住める里山を育てる会資料 2
                                            

 ここでは、捕獲した分蜂蜂球を確実に巣箱に住み着かせる手順について説明します。いくつか質問がありましたので末尾に「追記」しました。

分蜂
     蜂トラップのザルに集合した分蜂群               


DSC00158捕獲ネット1
 蜂トラップ(中央下部にミツロウを塗ったザルをつり下げてある)と捕獲ネット(右側)


☆なぜ、ミツバチを捕獲して巣箱に移しても逃げてしまうのか?

 女王蜂は卵から羽化(誕生)まで15日かかります。多くの本を読んで既に知識を得ている皆様は、「分蜂は、羽化の1~2日前の風のない晴天の午前中に行われ、近くの木に分蜂蜂球が出来たら、それを捕獲して巣箱に入れればよい」と理解すると思います。

 上記の記述を鵜呑みにして対応したところ、
予想していた日に分蜂は起こらなかった。
 (実際は分蜂予想日の2~3日前にすでに 分蜂していたことが考えられます)
分蜂群は分蜂蜂球から探索蜂を四方八方に飛ばし、次の住処(すみか)を見つけようとするので、直ちに捕獲して巣箱に入れたのにかかわらず逃走してしまった。という経験をするはずです。
(本当は逃走したのではなく、分蜂群がすでに住処を決めていたので、単にその場所に移動しただけ=住処のリセットをせずに分蜂群を巣箱に入れたことが最大の逃走原因

  そこで、皆さんが分蜂群を逃がさず、確実に巣箱に取り込むことが出来るよう、生態観察結果の要点をポイントごとにまとめて伝授します。学術書などに書かれていることと少し違いますがあくまでも生態観察結果ですので誤りのないようにしてください(分蜂途中で女王蜂がツバメなどに捕食されたり、分蜂蜂球から女王蜂を取りそこねた場合は巣箱に入れても蜂群は当然逃走又は消滅します)


1    探索蜂の行動
  探索蜂は分蜂蜂球をつくる前から既に探索を開始しています。特に分蜂間近になると盛んに探索蜂を四方八方に飛ばし、新たな営巣場所を探しはじめます。王台の先端が塞がれる頃からは特に多くの探索蜂を飛ばします。その頃になると雄蜂も盛んに飛び回るようになります。そして、出来るだけ多くの場所を候補地として選定します。もちろん分蜂後も蜂球状態で探索を続けます。そして良い場所をいくつか見つけると、それらの場所に10匹、20匹と多くの蜂を飛ばして営巣場所としての善し悪しを入念に調べさせます。最適な営巣場所を決定するとあちこちに行かせていた探索蜂を一旦収容します。(「お~い帰ってこ~い」と言って探索蜂を収容するのは、巣の周りを飛び交っている蜂の一部です)収容すると一斉に新営巣場所に向けて飛び立ちます。分蜂蜂球が出来て飛び立つまで早ければ30分です。 
 しかし、まれにであるが、分蜂蜂球を作らずに、元住んでいた巣から新たな営巣場所へ直接飛んでいくこともあります。(分蜂群を追いかけていったら、ケヤキの木の古木に入ってしまった。仕掛けてあった待箱に入ってしまった。家の縁の下に入っていってしまった。土手を越え畑を超えて遙か彼方まで飛んでいってしまった。等など) このような場合には捕獲は出来ません。これらの原因はわかっていませんが分蜂群は必ず蜂球をつくるという古い観念に私たちは縛られすぎているのかもしてません。
                           ~探索蜂達お疲れ様~


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分蜂の始まり(巣門前に集合し、飛び立つ準備をしています)


2 分蜂群の確実な捕獲
分蜂時点ではすでに数カ所の新居候補地(営巣場所)を探り当てている可能性がある。

分蜂は1個の巣から複数回行われることもある。又、強群は夏にも再度分蜂することがある。特に2年目の女王は蜜源さえあれば強群を作る傾向があります。「蜂球は元の巣から30m以内、1回目は木の下の方に、2回目以降は高い枝に集まる」と言われているが、必ずそうはならない。分蜂時に適切な蜂球場所がなければ、1回目、2回目に関係なく高い杉の木の上部や畑を飛び越え数百メートル先の藪の中にも蜂球をつくる。通説はあくまでも通説です。100%信じていては、貴重な分蜂群を取り損なうことになる。教科書通りにはいかないことを良く覚えておいて欲しい。そのため、分蜂群を集合させるための蜂トラップを作成して設置することをお勧めします。
 蜂トラップの作成・設置方法については別項目で詳しく掲示しています。

女王蜂は分蜂蜂球が出来はじめてから大体12分位までには蜂球に入ってくる。 しかし、約25分かかって蜂球に入ってきた女王蜂もあった。女王蜂が蜂球に到着すると多くの蜂球は平たい集まりから丸く集合し、蜂の動きも静かになってくる。分蜂時、すでに新しい営巣場所を決めている蜂群は、分蜂蜂球が完全に出来てから30分後には新居に向けて飛び立つものもある。
以上のことから蜂の捕獲の適切な時(時間)は、蜂球が出来てから約12分後から30分を経過する前に捕獲するのが望ましい。
分蜂蜂球がすでに出来ているのを発見した場合は、直ちに(飛び立たれる前に)捕獲する。

捕獲ネットを使って蜂群を取込む。捕獲ネットは入口を閉じて、蜂球から1~5m位の日陰に逆さにつり下げる。
 捕獲ネットの作成・取込要領については別項目で詳しく説明します。

女王蜂が入っていれば、蜂球が丸くなり、ネット内の蜂はおとなしくなる。さらに取残した蜂がネットの周りに集ってネットにとまってくる。女王蜂が入っていなければ、ネット内の蜂球は丸くならず、又は丸くなっていてもネット内の蜂が興奮したり落ち着きなく、ネット内をブンブン飛び交う。そのような場合は、女王蜂を取り残したか、女王蜂が途中でツバメ などに捕食されてしまったことが考えられる。

分蜂集合場所(集合板など)に、取り残しの蜂が集まりさらに蜂球が出来るようであればそこに女王蜂がいる可能性があるので、再度捕獲ネットを使って蜂を取込む。取残しの蜂は全て捕獲せずに、そのままにしてけば、夕方には元の巣に帰って行き、2回目の分蜂時に分蜂群をその場所に誘導してくる可能性が非常に高い。事実、2回目以降も多くの蜂群は同じ場所に集合する。

  ※分蜂時に寿命を迎えようとしている女王蜂の場合は、分蜂せずに巣箱内で女王蜂が
   交代することもあります。弱小群や異常のある群は分蜂しなかったり、遅れて季節
   外れに分蜂する場合もある。

3 分蜂群のリセット化と確実に巣箱に入れる方法
①  捕獲した蜂群を直ちに巣箱に入れると逃走してしまう場合が多くある。それは、蜂群がすでに 新しい住処を決定しているからです。その記憶をリセット(つまりチャラにする)することなく巣箱に、(捕獲した喜びから)直ちに入れてしまうからです。夕方になるまで待ってから巣箱に入れることがリセット化になります。 

②  夏の暑い日等の分蜂や一旦逃走した蜂群は蜂の体温が高く、興奮状態が続いているため体温が下がるのを待って巣箱に取込みます。体温が下がらない内に取込むと再び逃走し、分蜂蜂球を作ります。繰り返すごとに少しづつ蜂数が減少し弱体化してしまいます。 落ち着くまで(羽音が静かになる次の日の夕方まで待ってから。それでもブンブンする等、興奮 が収まらない場合は翌々日の夕方)待ってから巣箱にそっと入れます。
  ※暑いときに数日間ネットに入れたままにしておくと大量に死んでしまうことがある、
   霧吹きなどで水をかけて体温を下げることも必要です

 逃走した原因が解わからない場合、その原因を知ることなく逃げ出した巣箱に入れると再び逃走することが多い。スムシや巣箱製作時に油(特にチェーンソー使用時には要注意)が付着している場合は新しい巣箱を用意してそっと蜂を入れてあげましょう。
 
3 夏の分蜂はいつ行われるか
 概ね6月中旬から7月下旬~まれに5月中旬から起こり9月に入っても起こる場合があります。夏の分蜂は、春の分蜂からおおよそ60日~75日(季節の早い時期に分蜂した2年目の女王蜂の強群は春の分蜂から40日前後で再度分蜂することも多い。)経過すると強群は再度分蜂(夏分蜂)する場合がある。分蜂しても夏の花が無い時期の場合、蜂群がなかなか大きくならず、さらにスムシの被害が加わると蜂群が弱体して消滅することがあるので出来るだけ早く群れを強くしておく必要があります。それには給餌することが望ましい。この時期は雄蜂が少なく、せっかく分蜂しても女王蜂が未交尾になる可能性が高く、そのため消滅することもあるので、最初に分蜂した旧女王の群は必ず捕獲することが望ましい。
     ※過去の経験で、8月から10月に分蜂した蜂群は、巣が秋の終わりまでに十分成長
    出来ずに冬を越せなかったり、交尾不良などで多くが消滅しています。
   しかし、交尾が完全であれば、給餌(砂糖水と花粉)と保温を行うことで、生き残
  れば次の年に分蜂しますのであきらめないで下さい。

※分蜂は1日1回以上はしないとよく言われていますが、そんなことはありません。数時間の間を置いて行われる場合もありますが同時に2群分蜂した経験もいくつかあります。ただその場合は2群分蜂したのか、たまたま2群に分かれてしまった(この方がはるかに多い)のかをよく見極めなければなりません。
                                                     
(追記)よくある質問 

1  捕獲した分蜂群を巣箱にいてれ捕獲場所付近に置いたところ、いつの間にか(1~3日)逃走してしまった。

(回答)
 常識と思って下さい。捕獲場所付近に置くと逃走の確率が高まります。探索蜂が活動していれば夕方に巣箱に入れても「リセット」されないことがあります。蜂たちにとってはいまだ分蜂蜂球の状態なのです。状況によっては数群に1群は逃走するものと思ってください。

(なぜ)
 探索蜂は分蜂蜂球の中の女王蜂のもとに帰ってきます。分蜂蜂球を捕獲してネットに入れて捕獲場所の近くにつるしておくと捕獲しそこねた蜂は女王蜂のフェロモンに誘われてネットにへばりついてきます。探索蜂も女王蜂のフェロモンに誘われ、巣箱が分蜂蜂球の場所であると勘違いし、探索をやめません。そして、良い住処が見つかればそこに移動(逃走)します。

(対策)
 捕獲した分蜂蜂球をネットに入れてどのくらい離れれば捕獲しそこなった蜂が寄ってこないのでしょうか。そこがフェロモン到達の限界点です。それより離れた場所なら安全でしょう。10m離れても寄って来る場合が多くあります。その距離は蜂によってマチマチです。反対に5m位の距離でも逃走しないことも多いです。友人の中には50m以上離している人もいます。私は20mは離すように心掛けています。どうしてもその場所に設置したいのであれば一旦2km以上の場所に移して2週間くらいおいてから戻す方法がよいでしょうが、実際なかなかそのような余裕も場所もありません。そこで逃走を防止するため女王蜂が確実に捕獲できた場合(取りそこなった蜂がネットに張り付くことで判断してください。)には、

① 
箱入れまで出来るだけ捕獲場所から遠いところに置いて、探索蜂が活動しない夜間(どうしても仕事の都合で夜間に入れられない場合には次の日の早朝か夕方)に巣箱に入れることをお勧めします。

② 
また、夕方一旦巣箱に入れて入り口を金網などで塞いでおいて翌朝2km以上の場所に移した場合にはよほどのことがないと逃走しません。完全に「リセット」されているからです。

一つの場所に巣箱を集中させすぎると分蜂群はどうしても逃走が多くなります。自然の秩序と思ってください。

※ニホンミツバチは気難しくて気まぐれです。逃走は巣箱やリセットがよくなかったというだけではありません。出て行ってしまったらチョッピリ悔しくてもあたたかく送り出してあげてください。


2 分蜂は必ず晴れた日の風のない午前中なのですか。

(回答)
 それはあくまでも教科書通りにいけばのことです。
 経験では風のない暖かな晴れた日の午前9時ごろから午後1時ごろが多いと思います。しかし早朝でも夕方でも,強風下でも分蜂は起こります。特に午後3時ごろもよくおこります、下の写真は2017年5月15日午前6時30分の分蜂です。
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3 分蜂蜂球は太い木の幹の下側と言われていますが西洋ミツバチのような枝葉の部分には集まらないのでしょうか。

(回答)
 分蜂蜂球はそのほとんどが太い木の幹の下側などの暗いところに集まります。西洋ミツバチのような枝葉の中には集まりませんが、適切な集合場所がなければどのような場所でも集合します。たとえば、「巣箱の置台の下側」や「巣箱の日よけの下側」、「ツゲの細かい枝の中」などです。次の写真は、梅の木の枝葉の中の分蜂蜂球です。
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