2010年02月

2010年02月19日

バレンタインな一日

 


チョコなんてさ普通に友達づきあいしてりゃ、何個かは貰えるものだろ?
母親とか姉ちゃん妹を抜きにしても。
まあ・・・・俺甘いもの嫌いだし、飽きるし、
お返しとかめんどくさいばっかりだし要らないけどな。

だから、毎年何ももらえないやつって、本人にどこか問題があるんじゃないの?
ふだんから目立たないとか、嫌われてるとか。
そういうやつって年賀状とかも自分はやたら書くけど戻ってくるのは半分以下とかな。
まあ、かわいそうなやつだよ。はははは。
ん?俺?・・・だから俺は焦ってないからさ。まあ、誰かしらくれるだろ。
 

 
さて朝飯も食ったし、そろそろ学校でも行くか。
別にとりわけ何かを期待してるわけじゃないけど、携帯100%充電完了っと。
メールが来たり、電話掛かってくるかもしれないしな。備えあれば憂いなし。
鏡も覗いて髪形もチェックする。よし寝グセもついてない。
15分ほど歩き、登校中のみんなの群に混ざって校門から玄関へ入っていく。 

下駄箱の前で軽く立つ。手にしたカバンを今日は下におろし右手で扉の取っ手を引く。
今時、下駄箱にしのばせるとか机の中にいれておくとかそんなことする奴はいないよな。
でもなんとなく丁寧に下駄箱の扉をあけて中をのぞく。

OK。何も入ってない。
 
 
別に失望したわけじゃないんだ。
まああれだ、いきなり差出人のわからないチョコとか気持ち悪いだけだし。
俺は言葉を添えて直接もらうのが好きなんだよ。
女子がハニカミながら「これ、欲しいならあげるよ?」とかな。
「欲しいわけじゃねえけど、お前から貰うのはうれしいよ」とか俺も言ってみたりな。
 
急ぐでもなくゆっくりでもなく。
おれは普段通りの足取りで教室に入った。そしてカバンを机の横にかけて着席する。
机の中に手を軽くいれてみると、何かが手に触れるのを感じた。
おっと・・・。だが探っているのをほかのやつらに勘付かれるとまずい。
必死なやつと思われるのは心外だ。そう、俺は必死な奴とは違うんだ。
 
俺はちらっ、ちらっと周りを一瞥する。よし誰も俺に気を払ってない。
何気ない風を装って、机の中に腕を入れて、中にあるものを確かめてみる。

OK。置き勉してある教科書とプリントだ。
 
 
いつもどおりのだるい授業が始まった。
国語の女の先生なのだが、今日はいつもにましてテンションが高い。
今日はバレンタインデーですねーとか、学校であげるのは禁止ですよーとか喚いている。
いい年しやがって落ち着けよ、俺は上目づかいにぎらりと睨みつけた。
そもそも学校でもらわなかったらいつもらうんだよ。学校でもらうと死ぬのかよ?
 
 国語の先生は言いたいことを言い、チャイムが鳴り、そして出て行った。
やっと一時間目が終わったわけだが、今日はこれをあと5回やらないといけないのか?
俺の精神と肉体はこの試練に耐えられるのか?まったくやれやれだ。
  
 休み時間になると、他のクラスの女子が数人やってきて、廊下からうちの女子を呼んだ。
呼ばれた方の女子(うちのクラスの女子)がドアのあたりから声高く叫んだ。
「ねえ、杉本。あんたに用事があるって!ちょっと廊下来てよ」
他のクラスの女子の中で、ちょっと大人しい感じのかわいい子が耳まで真っ赤にしている。
 
きっと、チョコを渡すだけのつもりが、周りの友達に煽られて大きい事になったんだろう。
そういう控え目な女の子の一途な想いって俺は嫌いじゃない。むしろ好みだ。

OK。俺の名前は本間だ。 
  

なんとなくそわそわしながら俺は休憩時間を過ごした。
いつ背中から声をかけられてもいいようになんとなく姿勢もよくしておく。
まあ、一時間目の休憩時間からいきなり渡すようなせわしない子はちょっとな。
  
あとのことはいま一つ覚えてない。とにかくあっという間に昼休みになり、
そしてそのまま5時間目も6時間目も終わった。

OK。事件になるようなことは何も起こらなかった。今日も日本は平和だ。 
 
 
終わりの学活の時に、他の男子をぐるっと見渡してみる。みんな普通だ。
間違っても、落ち込んだり不満そうな顔をしてるやつはいない。
だから俺も同じように装った。
  
学活が終わって、みんなゾロゾロと教室から出ていく。
俺は部活には入っていない。だからもうあとは帰るだけだ。
「ふう、そろそろ帰るかぁ・・・」
俺は独り言をつぶやいたつもりだったが、思ったよりも教室に声が響いた。
クラスに残っていた女子たちが顔を見合わせてくすっと笑ったように見えた。
 
OK。俺は何も見てない聞いてない。
  
 
よし決めた。もう誰も信じない。
そうだ、チョコなんかをもらって女の奴隷になるくらいなら、
俺は自由なる孤独を愛そう。

そう決めて、肩で風を切って教室を出て下駄箱に向かった。
誰も俺のことなんか好きじゃない。誰も俺を気にかけてない。
頭のなかでそんな言葉だけがぐるぐるしていた。
視界が滲んでうまくまっすぐ歩けない。
早く家に帰って寝てしまおう。おれはそれだけを考えていた。


sisi4400 at 08:20|PermalinkComments(0)