2009年02月01日
ゲイムーヴィー。/『WALL・E』
私は「Wall・E」をゲイ映画として楽しんだしこれからも楽しみます、という話。///
水曜日木曜日と二日かけて映画を4本見ました。
そろそろ終わってしまうので駆け足で。
水曜日はJグレイ監督の新作と、『悪夢探偵2』の2本。
木曜日はSFはしご見、という感じで『地球が静止する日』と『WALL・E』の2本。
「地球が〜」のほう、チケット買うときに何をトチ狂ったか私ったら
「『世界が燃えつきる日』1枚!」などと言ってしまいました(笑)
もちろんチケ売りのお姉さんは平然と「はい、『地球が静止する日』ですね」
って言って売ってくださいましたけどね…笑
よく分かってくれましたね…(ぶるぶる笑)
もー我ながら、何考えてんだろ…どっかネジが外れてる?!って気分でした。
恥ずかしいを通り越して、自分に疑問が出たっす(笑)
『世界が燃えつきる日』っていう映画もあるんですよ…いちおうね。
『地球の静止する日』(←今回の映画のリメイク元の白黒映画。未見)よりは
新しい、カラー映画で…。ジャンマイケルビンセントがバイクに乗ってる映画じゃ
なかったっけか。
まあそれはいいとして、本題はWall・Eです。
___
もとから、この正月映画の本命は『Wall・E』でした。
12月は原稿に集中するため、見るのをオアズケしていたのです。
1月に入る頃には「字幕版」の上映回数が少なくなってしまってて…
それに合わせるために四苦八苦しすぎてこんなにギリギリに見まして。
見る前から分かっていたこと。
1:見たら絶対泣く
2:あの白いロボに惚れるかも
3:なにはともあれ期待を裏切らない名作になってるという確信(前評判良すぎ)
1と3は当たってました。いや、2も大当たりだから全部当たりです。
白いあのロボ…口もないのに口のある所とおぼしき場所に手をあてて笑ってる表情を
作ってるあのこ…
デザインで既に、がきょーん。
見たらいよいよ、ばびょーん。
ばびーん。
どぎゃーん。
ばぎゅーーーん!
擬音語は偉大なり…(笑)。
恋に落ちた瞬間は、たぶんあのこが音速の壁を越えたあのときです。笑
___
さて、珍しくそういうわけでパンフを買ったんですが、嫌な予感が当たって、
どーしてもWall・Eは「彼」と表現されてしまっているし、
あの白いのは「彼女」と呼ばれちゃってるんです。
ゲイ大国(と私が勝手に思っている)英国の映画誌2種を引っ張り出して読んでみても、
やはり「彼」と「彼女」呼ばわりされてしまっている。
なんだよ、いくら子供向けでもそれはないだろ…
確かに名前もいけない。EVEという名前。実はWall・Eもそうですが
2体とも略字であって、E.V.E.とW.A.L.L.・E.なんですな。
エクストラ・テレストリアル(地球外)
ヴェジテイション(植物)
イヴァリュエイター(判定機)
…の略字でイー・ヴィー・イー。イーヴ(EVE)。
片や、
ウェイスト(ゴミ)
アラケイション(配置)
ロード(積載)
リフター(運搬機)
・
アースクラス(地球型)
…の略字でウー・アー・ラ・ラ・イー。ウォ〜ル・イ〜(Wall・E)。
R2D2がアートゥ・ディートゥ(実はReel 2:Dialogue 2…巻2:台詞2の略…こんなの
ファン豆知識ですが笑)であるならば、『ウォーリー』(←めんどいので以下これで)
の主役2体のロボットもまた、そういう意味で名前を受け取るべきであって、
いくら略すとイーヴという女性名詞になるからって「彼女」呼ばわりしていい事には
ならんし、してはいかん、と思うのです。
だってロボットですから、性別なんてないでしょ。
いくら「心」らしきものがウォールEのほうに芽生えてるからって、
性別までつけなくていいと思うんですよ。
イーヴがいくら手を口(口ないけど←しつこい笑)にあてて笑っても、
それで女性、にしなくていい。
いくら流線型のエレガントなルックスでも、女性にしなくていい。
ついでに言うならウォールEだって名前が男性っぽいからって男性扱いしなくていい。
そうですよ、もしそんなにごり押しするってんなら、ウォールEは女性で、
イーヴは男性って仮定だってできるはずなんですよ。
2体とも女性、でもいいし、男性、でもいいわけですよ。
だからいらないのよ。性別は。この素晴らしい映画において、性別を決めてしまったら
素晴らしさが激減してしまうと思えてならないのね。
そういう評がとりあえず英国映画誌でも読めなかった欲求不満が動機で、
この日誌を書き散らしています。
___
手を口に当てて笑うのは女性的な仕草ではないだろうか…という議論は、
既に『BPP特別号No.4』(1998年刊)の映画『ライアー』小特集ページで語ったことが
ありまして、あのテムっつーかウェイランド君はカマっぽいのかどーなのか。
とさんざん動揺(笑)して話題にしたものです。
たまたまビリージョエルが『プレッシャー』というプロモヴィデオの中で
同じように拳骨を手にあてて、「え〜っ?」という驚きを演じていた場面が
あったこともあり、男でも口に手をあてて笑うってのはありなんじゃ…?と
ずいぶん考え込んでいた私です。
その後、生テムのインタビュー映像を見られる時代になって、やたらテム子が
お手手を顔にあてる男であることがよーーーく理解できてしまったので、
いまでは慣れてしまったし、他にも手を口にあてて笑う男性はやはりちょくちょく
見受けられたこともあって(今、実例をあげるほどには覚えていませんが)
やっぱ『あり』だなと、考えるようになってしまっただけに…
イーヴが「ウフフフフフ」と口に手をあてて笑ったって、女性っぽい仕草かも
しれないけど男性だと考えうるし、それは『あり』だと胸張って言えるっちゅう…。
ある意味、ハイソな…貴族的な…お上品な…仕草というのは、えてして女性的である、
そういう解釈がある、と。
必ずしも日本独特の作法ではなく、口に手をあてる仕草はあるんだ、と。
そういった「隠す」動作が一切無い、ということでウォールEはイーヴよりも
野良であり粗雑である。メカとしてシンプルである。その強調としてイーヴに
「美」とか「品」が備わっている。(ゆえにイーヴはシンプルでなく複雑で高機能
である…2体はロボットであること以外に共通点がない)
あまりに違っているからこそ、ウォールEはイーヴに「魅了され」「恋をする」。
まさに恋愛の王道といいますか…自分にないものを持つ対象にこそ憧れを持つものと
言うじゃありませんか。
___
男女である必要はどこにもない。
たしかにゲイ…ゲイカップルなんだ、というのは本当は語弊があるんですけれども、
ウォールEとイーヴの2体には、ゲイと同じく生殖活動がない。種の保存をしない。
できないし、する必要がない。なぜなら2体はどうやら半永久的にエネルギーを
みずから補充し、故障すればみずから修理して機能維持をしていけるらしいから。
機能停止がないのであれば、機能活動を委託するための『種の保存』もいらない。
だから、「ウォーリー」で描かれるのは、純粋に「愛」なんです。
そこがいいのです。
生殖活動がなく、性的肉欲もなく、ただひたすら「他者を求める心」だけ。
私ごときが「愛」っちゅーものを知ったかぶりで語るのもおこがましいのですが、
愛ってなんなの。と考えると「その対象と一緒にいたい」「その対象を喜ばせたい」
「その対象を幸せにしたい」「その対象を独り占めしたい」…
そしてできればこれら全部の感情を「同じくらい、同じように、その対象にも抱いてもらいたい。自分に向けて」
そうしたらどんなに満たされることでしょう…
…そういう感情なんじゃないのか。
そう理解するのはあまりにおぼこいですかね。ラヴソングの歌詞じゃないだろって
批判されちゃいますかね(笑)。
いいんです私にはこれがせーいっぱいなんです(コドモなんです…!←恥)
___
ウォールEになぜ「心」が生まれたのか、あんなシンプルでメモリ容量の少なそうな
メカにそんな余地があったのかどうかという問題は、映画「ウォーリー」では
あえて突っ込まれていません(笑)
『ティムくん』という本で私が少し引用したように、人間の心でさえ、
どこにあるのか、どういう形をしているのか、そもそも形があるのか、
どのように働いているのか、何から出来ているのか、そもそも物質であるのかどうか、
…まったく判っていない。未知の研究領域。科学的に確信を置ける答は出ていない。
だから、ウォールEという『ゴミサイコロ製造運搬積載機』に、なにがどーなって
どういうわけで、いつ、「心」が生まれたのかは、闇の中。
それでもいいことになってしまう。
もしかすると「心」は動的個体の周囲に『見えず触れず離れない』デヴァイス
(=外部装置)として浮かんでいるようなものってことだってある。
それならどんなにシンプルで容量少ない機械にだって、「心」を持つことができる。
高機能で大容量っぽいイーヴなら、もっと「心」を持ちやすいのでは…。
ウォールE以外の、他の単純作業ロボにだってその可能性は強い…
地球から持ち帰ったはずの植物がなくなっていて、『故障』とみなされたイーヴが
運び込まれる「ロボット診療所」にずらりと並ぶ、隔離・拘束された「狂った」ロボ
たち…。正確には、「機能不全=故障した」ロボットなのですが、これらのロボたち
が明らかに「心」を持ってしまっている。
イーヴ一筋が災いして、診療所を壊す結果を引き起こしたウォールEのお陰で、
自由を得た「狂った」ロボたちは、真っ先にウォールEを英雄扱い=胴上げして
称えるっちゅー行動を起こす場面が、それなんです。
ただの機能不全じゃなくなってしまっている。彼らは拘束された我が身を嫌い、
不満に思っていた…「思って」いた!自由になって「喜び」「称えている」!
むちゃくちゃ人間っぽいわけですね。
指令一点張りのイーヴよりも、もう自我が強いのね。狂ったロボたちのほうが。
___
よくよく考えてみると…イーヴもまんざら、「心」無しのロボじゃないですね…
地球を探査していた時から、イライラしていたし、喜んだり怒ったりしていた。
そもそもなんだってイーヴには「人間っぽい喜怒哀楽の表情」ができるように
初めから作られているんでしょう?
植物探査ロボに表情なんて必要ないのに!
C-3POのような「通訳ドロイド」でさえ表情を作れない仕様だったのに…。
イーヴを作った技師に、遊び心があったのかも…ってくらいの解釈しか
しようがありませんよね(笑)。
子供の遊び相手用ロボットを改良(改造)したものなのかな?あ、それかな。
あの外宇宙航海用の大宇宙船には、子供の数がずいぶん少ないように見えた。
先ほどの『種の保存』的な概念でいけば、安全で健康管理され(←それにしては
肥満症ばかりだけども)病気や怪我を治せる医療技術が発達しつくして、長寿が
確信されているほどであれば、やはり、生殖活動は激減するのかもしれません。
台詞にもヴァーチャルな恋愛をしている…「ホログラムデートは最悪」ってなことを
言う場面がありました。目の前の画面だけを見て生活をしていることを匂わしてます。
…だから出生率は下がっているのかもしれない。
…子供が少ないから、本来子供の遊び相手用に作られたロボに余剰が出て、
それを利用してイーヴ型を作り出した、と考えることもできそうです。
元から表情がある、という点では他の「狂った」ロボよりも先んじて「人間的」な
イーヴですが、指令優先型なところはお堅いし、あくまで指令の範囲内で行動を
しようとする。…でもそれは実は、イーヴの「性格」(!)が単にお堅いだけで、
じつじつ実は、イーヴはとっくに「心」を持っていたのかもしれない。
ただ他のロボットたちのように「機能不全」になってから「自我」を持つのではなく、
「機能万全」のままでイーヴは「指令完遂」のためだけでない行動を起こすように
なる…。
そのきっかけは、イーヴが自分の「スリープ状態」の間の外部映像記録を見たこと
だったろうと思います。ウォールEが本来与えられてない仕事(イーヴの世話。
…しなくていい世話なんですけど笑)をしているのを見て、感銘を受けた。
他のロボットの「仕事」を、指令も受けずに「助けよう」とするロボットなんてものに
イーヴは驚いてしまった。おそらくこの瞬間に、イーヴには「自我(心)」が
確立してしまったんじゃないでしょうか。
映画では、船長さんのどたばたの背後で地味にそっけなくこの瞬間は通り過ぎてって
ますが、これは演出の妙といえましょう。既に観客はウォールEの(無駄な)献身ぶり
は見てますので、イーヴがそれを「知る」って判るだけで十分なんですね。
しかしこの瞬間は、イーヴそのもののロボとしての「革新」として重要なひととき
なんだと思います。
このときイーヴはウォールEと同レベルに「自我」が目覚め、それはつまり
「与えられた指令以上の動きをする狂ったロボット」…人間のために働く機械では
なく、「己の意思で他のロボットのために働くことを決意し、実行する」
…そういう機械に変わってしまう。
だからこそ、クライマックスの大乱闘で、指令完遂よりも、潰れていくウォールEの
「身を案ずる」イーヴの必死さが胸を打つようになるんっすよね…
___
なんだか延々と書いてしまいました。
とにかく『ブレラン』(ブレードランナー)の世界のさらに未来のような、
ゴミタメの地球と、ロボットが「心」を持つようになるというプロットでも
やはり『ブレラン』に繋がってしまう、私にはツボツボな映画だったと…
R2D2が好きな私にはそもそもツボツボだったと…
卵型で白い肌で、口に手をあてて笑うくせに「抜き身の刃」みたいな物騒なとこが
あって、しかも仕事熱心なかわいこちゃん…
…誰かに似ている(笑 ミエミエ)
若いかわいこちゃんがある指令を受けて、ある所へ来たけれども、そこで知り合った
大先輩…つうか歳寄り…の「情」をとことん受けてほだされて、指令は全うする
ものの、その歳寄りの情をないがしろには出来なくなってしまう…
…そんな映画がありますねぇ(犬がタイトルにつく…笑)
犬がタイトルにつく映画では悲劇に終わりますが、「ウォーリー」はハッピーエンド。
やっぱりツボツボ…(悲劇もツボツボだけど 笑)
ああ、また『永遠に見ていたい映画』が増えてしまった…。嬉しいです。
「ウォーリー」にはまだ語りたいことがあるので、また次にでも。
そろそろ終わってしまうので駆け足で。
水曜日はJグレイ監督の新作と、『悪夢探偵2』の2本。
木曜日はSFはしご見、という感じで『地球が静止する日』と『WALL・E』の2本。
「地球が〜」のほう、チケット買うときに何をトチ狂ったか私ったら
「『世界が燃えつきる日』1枚!」などと言ってしまいました(笑)
もちろんチケ売りのお姉さんは平然と「はい、『地球が静止する日』ですね」
って言って売ってくださいましたけどね…笑
よく分かってくれましたね…(ぶるぶる笑)
もー我ながら、何考えてんだろ…どっかネジが外れてる?!って気分でした。
恥ずかしいを通り越して、自分に疑問が出たっす(笑)
『世界が燃えつきる日』っていう映画もあるんですよ…いちおうね。
『地球の静止する日』(←今回の映画のリメイク元の白黒映画。未見)よりは
新しい、カラー映画で…。ジャンマイケルビンセントがバイクに乗ってる映画じゃ
なかったっけか。
まあそれはいいとして、本題はWall・Eです。
___
もとから、この正月映画の本命は『Wall・E』でした。
12月は原稿に集中するため、見るのをオアズケしていたのです。
1月に入る頃には「字幕版」の上映回数が少なくなってしまってて…
それに合わせるために四苦八苦しすぎてこんなにギリギリに見まして。
見る前から分かっていたこと。
1:見たら絶対泣く
2:あの白いロボに惚れるかも
3:なにはともあれ期待を裏切らない名作になってるという確信(前評判良すぎ)
1と3は当たってました。いや、2も大当たりだから全部当たりです。
白いあのロボ…口もないのに口のある所とおぼしき場所に手をあてて笑ってる表情を
作ってるあのこ…
デザインで既に、がきょーん。
見たらいよいよ、ばびょーん。
ばびーん。
どぎゃーん。
ばぎゅーーーん!
擬音語は偉大なり…(笑)。
恋に落ちた瞬間は、たぶんあのこが音速の壁を越えたあのときです。笑
___
さて、珍しくそういうわけでパンフを買ったんですが、嫌な予感が当たって、
どーしてもWall・Eは「彼」と表現されてしまっているし、
あの白いのは「彼女」と呼ばれちゃってるんです。
ゲイ大国(と私が勝手に思っている)英国の映画誌2種を引っ張り出して読んでみても、
やはり「彼」と「彼女」呼ばわりされてしまっている。
なんだよ、いくら子供向けでもそれはないだろ…
確かに名前もいけない。EVEという名前。実はWall・Eもそうですが
2体とも略字であって、E.V.E.とW.A.L.L.・E.なんですな。
エクストラ・テレストリアル(地球外)
ヴェジテイション(植物)
イヴァリュエイター(判定機)
…の略字でイー・ヴィー・イー。イーヴ(EVE)。
片や、
ウェイスト(ゴミ)
アラケイション(配置)
ロード(積載)
リフター(運搬機)
・
アースクラス(地球型)
…の略字でウー・アー・ラ・ラ・イー。ウォ〜ル・イ〜(Wall・E)。
R2D2がアートゥ・ディートゥ(実はReel 2:Dialogue 2…巻2:台詞2の略…こんなの
ファン豆知識ですが笑)であるならば、『ウォーリー』(←めんどいので以下これで)
の主役2体のロボットもまた、そういう意味で名前を受け取るべきであって、
いくら略すとイーヴという女性名詞になるからって「彼女」呼ばわりしていい事には
ならんし、してはいかん、と思うのです。
だってロボットですから、性別なんてないでしょ。
いくら「心」らしきものがウォールEのほうに芽生えてるからって、
性別までつけなくていいと思うんですよ。
イーヴがいくら手を口(口ないけど←しつこい笑)にあてて笑っても、
それで女性、にしなくていい。
いくら流線型のエレガントなルックスでも、女性にしなくていい。
ついでに言うならウォールEだって名前が男性っぽいからって男性扱いしなくていい。
そうですよ、もしそんなにごり押しするってんなら、ウォールEは女性で、
イーヴは男性って仮定だってできるはずなんですよ。
2体とも女性、でもいいし、男性、でもいいわけですよ。
だからいらないのよ。性別は。この素晴らしい映画において、性別を決めてしまったら
素晴らしさが激減してしまうと思えてならないのね。
そういう評がとりあえず英国映画誌でも読めなかった欲求不満が動機で、
この日誌を書き散らしています。
___
手を口に当てて笑うのは女性的な仕草ではないだろうか…という議論は、
既に『BPP特別号No.4』(1998年刊)の映画『ライアー』小特集ページで語ったことが
ありまして、あのテムっつーかウェイランド君はカマっぽいのかどーなのか。
とさんざん動揺(笑)して話題にしたものです。
たまたまビリージョエルが『プレッシャー』というプロモヴィデオの中で
同じように拳骨を手にあてて、「え〜っ?」という驚きを演じていた場面が
あったこともあり、男でも口に手をあてて笑うってのはありなんじゃ…?と
ずいぶん考え込んでいた私です。
その後、生テムのインタビュー映像を見られる時代になって、やたらテム子が
お手手を顔にあてる男であることがよーーーく理解できてしまったので、
いまでは慣れてしまったし、他にも手を口にあてて笑う男性はやはりちょくちょく
見受けられたこともあって(今、実例をあげるほどには覚えていませんが)
やっぱ『あり』だなと、考えるようになってしまっただけに…
イーヴが「ウフフフフフ」と口に手をあてて笑ったって、女性っぽい仕草かも
しれないけど男性だと考えうるし、それは『あり』だと胸張って言えるっちゅう…。
ある意味、ハイソな…貴族的な…お上品な…仕草というのは、えてして女性的である、
そういう解釈がある、と。
必ずしも日本独特の作法ではなく、口に手をあてる仕草はあるんだ、と。
そういった「隠す」動作が一切無い、ということでウォールEはイーヴよりも
野良であり粗雑である。メカとしてシンプルである。その強調としてイーヴに
「美」とか「品」が備わっている。(ゆえにイーヴはシンプルでなく複雑で高機能
である…2体はロボットであること以外に共通点がない)
あまりに違っているからこそ、ウォールEはイーヴに「魅了され」「恋をする」。
まさに恋愛の王道といいますか…自分にないものを持つ対象にこそ憧れを持つものと
言うじゃありませんか。
___
男女である必要はどこにもない。
たしかにゲイ…ゲイカップルなんだ、というのは本当は語弊があるんですけれども、
ウォールEとイーヴの2体には、ゲイと同じく生殖活動がない。種の保存をしない。
できないし、する必要がない。なぜなら2体はどうやら半永久的にエネルギーを
みずから補充し、故障すればみずから修理して機能維持をしていけるらしいから。
機能停止がないのであれば、機能活動を委託するための『種の保存』もいらない。
だから、「ウォーリー」で描かれるのは、純粋に「愛」なんです。
そこがいいのです。
生殖活動がなく、性的肉欲もなく、ただひたすら「他者を求める心」だけ。
私ごときが「愛」っちゅーものを知ったかぶりで語るのもおこがましいのですが、
愛ってなんなの。と考えると「その対象と一緒にいたい」「その対象を喜ばせたい」
「その対象を幸せにしたい」「その対象を独り占めしたい」…
そしてできればこれら全部の感情を「同じくらい、同じように、その対象にも抱いてもらいたい。自分に向けて」
そうしたらどんなに満たされることでしょう…
…そういう感情なんじゃないのか。
そう理解するのはあまりにおぼこいですかね。ラヴソングの歌詞じゃないだろって
批判されちゃいますかね(笑)。
いいんです私にはこれがせーいっぱいなんです(コドモなんです…!←恥)
___
ウォールEになぜ「心」が生まれたのか、あんなシンプルでメモリ容量の少なそうな
メカにそんな余地があったのかどうかという問題は、映画「ウォーリー」では
あえて突っ込まれていません(笑)
『ティムくん』という本で私が少し引用したように、人間の心でさえ、
どこにあるのか、どういう形をしているのか、そもそも形があるのか、
どのように働いているのか、何から出来ているのか、そもそも物質であるのかどうか、
…まったく判っていない。未知の研究領域。科学的に確信を置ける答は出ていない。
だから、ウォールEという『ゴミサイコロ製造運搬積載機』に、なにがどーなって
どういうわけで、いつ、「心」が生まれたのかは、闇の中。
それでもいいことになってしまう。
もしかすると「心」は動的個体の周囲に『見えず触れず離れない』デヴァイス
(=外部装置)として浮かんでいるようなものってことだってある。
それならどんなにシンプルで容量少ない機械にだって、「心」を持つことができる。
高機能で大容量っぽいイーヴなら、もっと「心」を持ちやすいのでは…。
ウォールE以外の、他の単純作業ロボにだってその可能性は強い…
地球から持ち帰ったはずの植物がなくなっていて、『故障』とみなされたイーヴが
運び込まれる「ロボット診療所」にずらりと並ぶ、隔離・拘束された「狂った」ロボ
たち…。正確には、「機能不全=故障した」ロボットなのですが、これらのロボたち
が明らかに「心」を持ってしまっている。
イーヴ一筋が災いして、診療所を壊す結果を引き起こしたウォールEのお陰で、
自由を得た「狂った」ロボたちは、真っ先にウォールEを英雄扱い=胴上げして
称えるっちゅー行動を起こす場面が、それなんです。
ただの機能不全じゃなくなってしまっている。彼らは拘束された我が身を嫌い、
不満に思っていた…「思って」いた!自由になって「喜び」「称えている」!
むちゃくちゃ人間っぽいわけですね。
指令一点張りのイーヴよりも、もう自我が強いのね。狂ったロボたちのほうが。
___
よくよく考えてみると…イーヴもまんざら、「心」無しのロボじゃないですね…
地球を探査していた時から、イライラしていたし、喜んだり怒ったりしていた。
そもそもなんだってイーヴには「人間っぽい喜怒哀楽の表情」ができるように
初めから作られているんでしょう?
植物探査ロボに表情なんて必要ないのに!
C-3POのような「通訳ドロイド」でさえ表情を作れない仕様だったのに…。
イーヴを作った技師に、遊び心があったのかも…ってくらいの解釈しか
しようがありませんよね(笑)。
子供の遊び相手用ロボットを改良(改造)したものなのかな?あ、それかな。
あの外宇宙航海用の大宇宙船には、子供の数がずいぶん少ないように見えた。
先ほどの『種の保存』的な概念でいけば、安全で健康管理され(←それにしては
肥満症ばかりだけども)病気や怪我を治せる医療技術が発達しつくして、長寿が
確信されているほどであれば、やはり、生殖活動は激減するのかもしれません。
台詞にもヴァーチャルな恋愛をしている…「ホログラムデートは最悪」ってなことを
言う場面がありました。目の前の画面だけを見て生活をしていることを匂わしてます。
…だから出生率は下がっているのかもしれない。
…子供が少ないから、本来子供の遊び相手用に作られたロボに余剰が出て、
それを利用してイーヴ型を作り出した、と考えることもできそうです。
元から表情がある、という点では他の「狂った」ロボよりも先んじて「人間的」な
イーヴですが、指令優先型なところはお堅いし、あくまで指令の範囲内で行動を
しようとする。…でもそれは実は、イーヴの「性格」(!)が単にお堅いだけで、
じつじつ実は、イーヴはとっくに「心」を持っていたのかもしれない。
ただ他のロボットたちのように「機能不全」になってから「自我」を持つのではなく、
「機能万全」のままでイーヴは「指令完遂」のためだけでない行動を起こすように
なる…。
そのきっかけは、イーヴが自分の「スリープ状態」の間の外部映像記録を見たこと
だったろうと思います。ウォールEが本来与えられてない仕事(イーヴの世話。
…しなくていい世話なんですけど笑)をしているのを見て、感銘を受けた。
他のロボットの「仕事」を、指令も受けずに「助けよう」とするロボットなんてものに
イーヴは驚いてしまった。おそらくこの瞬間に、イーヴには「自我(心)」が
確立してしまったんじゃないでしょうか。
映画では、船長さんのどたばたの背後で地味にそっけなくこの瞬間は通り過ぎてって
ますが、これは演出の妙といえましょう。既に観客はウォールEの(無駄な)献身ぶり
は見てますので、イーヴがそれを「知る」って判るだけで十分なんですね。
しかしこの瞬間は、イーヴそのもののロボとしての「革新」として重要なひととき
なんだと思います。
このときイーヴはウォールEと同レベルに「自我」が目覚め、それはつまり
「与えられた指令以上の動きをする狂ったロボット」…人間のために働く機械では
なく、「己の意思で他のロボットのために働くことを決意し、実行する」
…そういう機械に変わってしまう。
だからこそ、クライマックスの大乱闘で、指令完遂よりも、潰れていくウォールEの
「身を案ずる」イーヴの必死さが胸を打つようになるんっすよね…
___
なんだか延々と書いてしまいました。
とにかく『ブレラン』(ブレードランナー)の世界のさらに未来のような、
ゴミタメの地球と、ロボットが「心」を持つようになるというプロットでも
やはり『ブレラン』に繋がってしまう、私にはツボツボな映画だったと…
R2D2が好きな私にはそもそもツボツボだったと…
卵型で白い肌で、口に手をあてて笑うくせに「抜き身の刃」みたいな物騒なとこが
あって、しかも仕事熱心なかわいこちゃん…
…誰かに似ている(笑 ミエミエ)
若いかわいこちゃんがある指令を受けて、ある所へ来たけれども、そこで知り合った
大先輩…つうか歳寄り…の「情」をとことん受けてほだされて、指令は全うする
ものの、その歳寄りの情をないがしろには出来なくなってしまう…
…そんな映画がありますねぇ(犬がタイトルにつく…笑)
犬がタイトルにつく映画では悲劇に終わりますが、「ウォーリー」はハッピーエンド。
やっぱりツボツボ…(悲劇もツボツボだけど 笑)
ああ、また『永遠に見ていたい映画』が増えてしまった…。嬉しいです。
「ウォーリー」にはまだ語りたいことがあるので、また次にでも。
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