インターネットトラブルの実例からタンスの中身減らしとテレビ番組三昧

2011年05月20日

『ブラック・スワン』を見た勢いで

昨日『スコット・ピルグリムVS邪悪な元カレ軍団』と『ブラック・スワン』をはしごして見た。(模型のバレエポーズ写真多々)///

前者は主人公の同居人のキーラン・カルキンのかわゆさとセクシーっぷりによろめいた。なにこのこ…いつのまにこんなに素敵に育ってるの!とゆう感じだ(←おばちゃん)。どっかで見たようなデコと黒髪…と佇まい。誰だ。ナポさん?(ロバート・ヴォーン)『ピーターズ・フレンズ』のスティーヴン・フライ?『ツインピークス』のカイル・マクラクレン?

マグネティック(磁力)な魅力の色男がまたひとり…めでたい、めでたい(^^)

キーランを見ているだけでも満足できる映画ですが、期待通りのマンガな青春映画としても楽しめました。でもエドガー・ライト監督ってどの映画でもそうなんだけど、どことなしに『節度』が残ってて、狂いきってない。そこが彼の個性だしその慎ましさを好きな人もいるでしょーが…私としてはもっとアナーキーで狂騒的なほどに行き着いたノリ、もはや誰もついてこれませんってくらいのグルーヴがあるほうが好きなので、ちょっと食い足らない気も。

とは言え、そんじょそこらの凡作よりは、よっぽど好感持てます。それにエドガー・ライトはアクション場面のセンスがいいですからね!!『元彼』の第1号がインド映画風(歌って踊る。笑)に襲撃するのが良かったなぁ…。
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さて後者の『ブラック・スワン』。バレエ界の『あるある』(笑)を描いた一種の恐怖映画。ちょっと同じダーレン・アロノフスキー監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』というドン暗い映画を思い出しました。

ナタリー・ポートマンはこれで今年のアカデミー主演女優賞ってことで…少なくともどシロウトからあそこまでクラシックバレエを踊りこなしてる女優根性だけでも偉いっす。便所から母に携帯電話で「主役を獲った」と報告して感極まる演技も、すごかった。超リアル。薄気味悪いくらい、リアルで…感心するぜナタリー!よくぞここまで…おめえさんもガキの頃から見てきたけど、本当に立派になって…(←おじちゃん)。

映画のBGMはこれでもかというほどチャイコフスキー作曲の『白鳥の湖』のあらゆる場面の曲をアレンジしてまして、感心しきり。さすがにナイトクラブではオリジナル曲を使っていましたが…。

ヴァンサン・カッセル扮する演出家も嘘っぽくないし、バーバラ・ハーシー扮する主人公のママも、底辺に流れる狂気がうすら寒いほど。この母にしてこの子、を体現。(クレジットをちゃんと見切れなかったんだけど、母には『クイーン(女王)』、引退させられる中年ダンサーには『ダイイング・スワン(瀕死の白鳥)』ってサブネームがつけられていて興味深かったっす)

なんでもあけすけに言う新人ダンサー役のミラ・クニスも魅力いっぱい。あの背中の羽のイレズミ…ありゃあCGかな?あんなイレズミしてるプロのダンサーはおらんと思いますが(笑…テムじゃあるまいし。女は背中丸出しみたいな衣裳が多い業界なんですから)。

演出家に酔っ払ってからむ中年ダンサー役の女性、美人だよねーどっかで見た記憶が…って思ってたら『あの人』でした。なるほど!(ここでは伏せておきます笑)チャーリー・シーンもそうだけど、いろいろ私生活がもめても、なんとかいい仕事続けてってほしいもんです。
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さて、こっからは…「バレエな姉」を持ち、小学校1〜2年にはその姉と共にバレエを『なんちゃって』程度にかじった人間として、『ブラック・スワン』談もはさみつつ『知られざる?バレエの世界』をウェブカメラ写真を使って語ってみましょう。

トウシューズ手入り『ブラック・スワン』で何度もアップになっていた、トウシューズを履いて『トウ』(toe.爪先)で立つ足先。

ここでは俺のかっこ悪い手が入ってますけど、世間のバレエ未体験な方々は、この靴の中がどうなっているのか御存知ありませんよね…?
その謎にお答えしましょう!

トウシューズ手で足先表現じゃじゃーん。

手で表現しているのでちょっと分かりづらいと思いますが、このように、トウシューズの内部の足先は曲がっていないのが正解です。多少は第1関節までが微妙に曲がる人もいるかもしれませんが(5本の指の長さが不均衡ってこともありますので)、基本はこの形です。やる気のない教室に運悪く入ってしまうと、この基本形さえ教えてもらえず、子供達は自分らでテキトーに履いて立ってしまいます。

トウシューズこの足先は間違いこれが間違った靴内部の足の状態。

小児の俺は、誰も教えてくれないのでこういう爪先で1年ほど履いて、すっかりトウがキライになりました。トウを履けば痛いのは正式形でも間違い形でも同じだし、絶対にマメはできます。本気のダンサーはマメの上にマメを作って、指先を強引に頑丈にして耐えぬくのです。

その昔、日本の代表的プリマの森下洋子さんは足先の痛さを緩和するために生肉を入れていたっつーエピソードを聞いたこともあります(ホントかいな)。贅沢ですがそれくらい痛いので、小児の俺だって、そうさせてもらえるならやったと思います(笑)。当時はせいぜい姉がデンセンさせたストッキングを丸めてぶっこむくらいだったんだよ…。今じゃ専用のプクプクとかがバレエ用品店で売ってて羨ましい。

マイケル・ジャクソンも爪先立ちしてましたが、彼は膝を曲げ、しかも一瞬だけ。バレエダンサーがトウで立つ時、膝は曲げないのが基本です。

日本の『お習い事』バレエの発表会なんぞでは、地獄のような光景が繰り広げられています…つまり、膝の曲がったままの、トウでまともに立つ事もできない、ましてやターンアウト(足の外転)もできてない未熟なダンサー達が、ヨレヨレ無理矢理トウで踊る、醜いダンスが延々と繰り広げられるのです。

仕方ないのです、先生が教えてくれないのだから。生徒の全責任じゃありません。先生のほうも、教室を続けるのがいっぱいいっぱいで、本当に教室経営で食っていこうなんて思ったら、テキトーに教えてテキトーにチャラい衣装着せて舞台でチャラく踊らせて、『もうじき受験なのでもうやめさせます』って母親が言ってくるまでテキトーにつきあうくらいなのです。

そんなだらしない授業なのに月謝をあんなにとるのか、と親御さんが怒るのはごもっともですが、そもそも子供が『真剣にバレエを学びたいと思っているのか』という大前提が怪しく、『単にアコガレだけで…「やってみたい」程度』なのが大多数です。地味で毎日の努力が不可欠な、バレエダンサーになるための身体改造に取り組もう、という意欲がある人はなかなかおりません。

山岸涼子先生のバレエ漫画の傑作『テレプシコーラ(舞姫)』でも描かれていましたが、ロシア・英国・フランスといった一流バレエ学校と国立バレエ団を有する諸外国では、プロのバレエダンサーになりたいという候補の子供達をまず、肉体的にチェックして、その時点で『足が外転しにくい・柔軟性がない・足が短い・頭でっかち・肥満の遺伝子(←今じゃどうか知りませんが、その昔ロシアでは三世代先までデブがいる家系かどうか調べたもんです)の有無』といった不安要素のある子供ははねてしまう。それくらい『選ばれた者だけがプロのダンサーになる』という常識がある。

選別ではねられても、『遊びで』市井のバレエ教室で学べば、踊ることはできる。ただ、日本と違ってあくまでも『正等なバレエ教育』を受け持つ公立専門機関があるので、市井の教室の授業レベルも上がる。だから、日本の『なんちゃって』教室とは比べ物になりません。バレエ姉がよく言うんですが「医者と税理士とバレエの先生はよく考えて選べ」(笑)…ってくらい、良し悪しに差があります。これから学ぼうという方々は、ちゃんとしてる所、ちゃんとした人を選ばれますように…。

トウシューズの話に戻ります。拷問具みたいな履物ですがこれ履けずしてバレエダンスを極めることはできないので、本気のダンサーは筋トレで体を引き上げ、薄氷を踏むがごとくトウで立ちます。そして体重も増やしません。重くなったらツライのは自分、自分の爪先だけ(笑)。160センチくらいの身長でトウを履くなら、体重は40キロ台が理想、のようです。だからガリンチョばっかりになるというわけ。

第1ポジションこれがバレエの基本の基になる姿勢。『第1ポジション』といいます。

ターンアウト=足の外転、とはこのように両方の踵(かかと)がくっつけられる状態のこと。むろん、足全体が外に回っているのであり、足先だけを外転させたら、すぐ膝を傷め、大変危険です。両膝の裏同士がくっつき、太腿も外転してこそ理想形。

立ってるだけでも体の中心線が『宇宙に向かって伸びている』(漫画『テレプシコーラ』より笑)のを意識して立つのが正解で、つまり、バレエダンサーには『止まっている(動いていない)』瞬間なんて片時もないのであります。

第1ポジション、両手上でアンオー『第1ポジション』の両手を動かし(これを『ポール・ド・ブラ』=手の動き、と呼びます)て頭上へ持っていった状態。

世間ではバレエというとこの手、もしくは『白鳥の湖』または『瀕死の白鳥』で印象的な『鳥が羽をはばたかせているような』両手を外へ向かって波打たせる動きをイメージなさるようです。

ちなみにこうして頭上に両手を上げても、両肩を下げたままで動かさないのが正解。これができるようになるだけでも大変。だから『ブラック・スワン』のポートマンはこの一見単純そうでいて、実はボロが出やすいポーズはやってなかったと思います。ボディダブル(体の吹き替えさん=つまり代役さん)なら、やるだろうしやれなきゃ代役の意味ないっす。

白鳥のパドブレ(膝ゆるんでるけど)『第1ポジション』の両手頭上でアンオー(←と呼ぶ)で、ルルベ(←『爪先立ち』のこと。ルルベはトウシューズの時には言わない。バレエシューズの時のみ。足を第1関節まで曲げ、立つ。…普通にやったら即、足がつる笑)の状態。

残念ながらこの模型では突っかい棒が邪魔をして、正確な姿勢を作れませんでした。足先もこんなのだから第1関節もなにもあったもんじゃないし(笑)。それに足を『5番』でルルベにしたかったので膝のところが緩んでしまう。本当は膝は緩んでない、と思って下さい。本来はもっと足先がちゃんと重なってこそ正式な『5番』ルルベなんですが、『ブラック・スワン』でもよく見られた『パ・ド・ブレ(ブーレ)』(この状態で小刻みに足を動かし、移動すること)を再現しようと、ちょっと移動中状態っぽく足先を広げました。

ダンサーはこんな風に両脚を重ねたまま、膝を左右に離さずに足先だけを動かして舞台を横切ります。ほとんど曲芸です。バレエの動きはすべて『なにくそ根性』がなくては出来ません(笑)。だから実は、プロになるようなダンサーは皆、強靱な神経の持ち主です。『泣くなら教室を出て行け』と怒鳴られて育つ世界ですから。『やる気がない奴に教えたくない。仏頂面すんな』とまで言う先生も。まあ、どんなに苦しくても努力してるとか耐えてるって外に見せず、簡単にやってるように見せ、しかも笑顔でいなければ、観客を楽しませるなんてことはできないんですから、その指示も当然。『演技』の第一歩ともいえるかも(ああ恐ろしい。笑)…見た目と、内面を切り離すのがダンサーです。

達人になっちゃえば、内面の苦労が当たり前になって、自然体で過ごせるんでしょうが…自然体で苦しんでるって…マゾになるってことよね(笑)。マゾでなきゃやれない、芸術の世界。

模型でアチチュードこのポーズを『アチチュード』(この場合、『左足後ろアチチュード』)と呼びます。

英語にもattitude(アティテュード=「態度・考え方」「姿勢」の意)があるので、映画『ホワイト・ナイツ』ではタップダンサーのグレゴリー・ハインズが、バレエダンサーのバリシニコフに「態度(アティテュード)を改めたほうがいいぞ」と言って「アチチュードだって?君は奴ら(当時のソ連官僚)のゲームに本気でつきあうつもりなんだな」と嫌味を返される場面がありました。(このネタいつも書いててスイマセン)…字幕がどうなってたか覚えがない…。(←LDで確認しようとは思わない)

アチチュード、プロなら足はここまで上げるこの模型はミニなので股関節がいじれない。だからちょっと手がオジャマしますけど、プロならここまで足を上げてほしいところ、ってのをお見せしたくて(笑)。

上がれば上がるほど曲芸度は高まり、すげー!ってことになりますが…上がりゃいいだけでなく、本当ならばすべての動作、足や腕、手、体が移動するときの空間描線が綺麗であってこそのバレエです(踊りはみんなそうですね)。

お気づきかもしれませんが、『アチチュード』にしても、クラシックバレエではポーズ1つ1つに厳密に『足がここなら腕はここ』的な決まりごとがあります。手先爪先に至るまで。知っててあえて外す、っていう動きのときもありますが、あくまでも基本は基本。

手先足先が少し狂うと…手先と足先をちょっと狂わせてみました。

なんだか気持ち悪いでしょう?(そう思うのは完璧形を知る者だけかもですが…;)『生け花』(華道)にも似て、三次元空間のどの位置から見ても(…地面の下からだけは抜き)、美しく見える姿を造形しているのがバレエです。

普通の人の足先はこっちに向く普通の人がこんなようなポーズをすると、軸足の足先は前を向きます。

バレエダンサーのように足を外転する訓練を積んでないのだからそれでいいのです。なぜバレエダンサーにはターンアウトが必要なのか。このポーズを俯瞰で見ると分かりやすいのですが、足が外転すると、この写真のように足先が前を向いている時よりも安定度が高まるのです。カチっと足先でロックをかけたような強さが、外転によって得られる。だからバレエのポーズには外転が不可欠となるわけです。

時計回りに(背中向き)『アチチュード』を時計回りに回転させてみましょう。

実際にバレエダンサーはこうして同じ姿勢で回転する技術も身につけます。踵を軸に、足先を床につけたまま少しずつずらして向きを変えるのです。トウで立っていれば、床との接点がより少なく摩擦が減るので、回転自体は楽。でも、トウで立っての回転…特にこのようなアチチュードの姿勢を保つのは、大変です。まずはバレエシューズで床にペッタリ足裏がついたままで回転する訓練を積みましょう。(←って誰がやるの?笑)

時計回りに(舞台右奥向き)背中からのアングル、綺麗でしたね。もう少し時計回りした状態。

背後に上げた左足に対して、前に出した左腕がバランスをとっており(←これ左右の腕が逆パターンもありますが)、軸足に対して上に伸ばした右腕が全体を上へと引き上げ、さらにはややウエストのあたりで体をねじることで、背後に上げている左足が落ちるのを防ぎ、そして『実は重たい頭部』を臀部(尾てい骨)の上空で保持して、全体がぶれないようにします。

時計回りに(舞台右向き)はい、最初とは左右逆向きの『アチチュード』。こっち側から見ても、美しい空間分割でしょう?

この模型では、『赤い花だ、綺麗だなワーイ』というランラン気分を演出するために、ちょっと頭部を反り気味にしてあります。バレエのポーズは常に重力との拮抗(=きっこう:互いに同じくらいの力で張り合っていること)で、計算され尽くしています。だから慣れると、上半身の動きを見ただけで下半身がなにをやってるか、どの位置にあるかだいたい分かるようになってきます。

時計回りに(正面向き)本番の舞台ではあまり見られない、正面からの『アチチュード』。

正面向きが本番であまりないのは、ポーズや動きが、斜めか、横から見ての美を追求しているものだから。『白鳥の湖』(『ブラック・スワン』でも見られましたが)で、王子ジークフリートが白鳥に真の愛を誓う時などは、真正面向きで片腕上に、片手を胸にあてるというポーズをしますが、女性ダンサーにはなかなか正面ポーズはありません。このアチチュードでも、他の位置からの見た目よりはイマイチ…でしょ?(それでも綺麗ですけどね…)

時計回りに(舞台左手前7時の方向)ね、ちょっとでも斜めになったほうがぐっと良くなるっしょ?

正面からだと『赤い花だ綺麗だなワーイ』っていうより、なんか掲げた花に呪われそうなムードが…(照明の当て方がイカンという説も…笑)

『ブラック・スワン』でトウシューズをカスタマイズする場面がありましたが、あれは『あるある』です。トウシューズの先はガチガチに固いので、ドアに挟んだり金槌でぶん殴ったりして、自分に最適の柔らかさを追求(←一歩間違えば靴がパーに。笑)。裏を釘などでガリガリ削るのは、滑り止め。踵部分の中敷を切り取ってしまうのは、トウで立つからには踵を床につけて立つなどという靴本来の機能は度外視で、切り取った部分(土踏まず)の位置に足の裏の感覚を集中させるのにも役立つかと思われます。ポートマンが靴を縫ってましたが、リボン(靴紐にあたる)を縫い付けるのもダンサーの仕事です。(ちなみに小児の俺はカスタマイズしていいなんて知らなかったので、やってません。教えてくれよまったく…)

時計回りに(舞台左手前8時の方向)もっと回って…もっといい感じ。ポーズの立体感こそバレエの醍醐味っすね。

『ブラック・スワン』の後半、ドレスリハーサル(衣装を着た通し稽古)を本番の舞台でやってる時に、オーケストラのバイオリン独奏者が舞台の端に立って演奏してますが…あれは『ないない』(笑)です。あれはないだろ〜。どうしても聞きたいってスターダンサーがいれば…それでもやるかなぁ?やらんでしょう。邪魔だし。本番であんなとこに立つはずないし。

ところで『白鳥の湖』には上手なバイオリン・ソリストが必需品です。第1幕の白鳥の時の王子との『パ・ド・ドゥ』(二人の踊り)でもそれは美しいアダージョ曲があるし、第2幕の黒鳥の王子とのパドドゥでも、同じように甘美なアダージョ曲が。どちらもバイオリンのむせぶような高音のトレモロが、見る者の琴線を揺さぶってなりません。バイオリンが下手っぴぃだったら、ダンサーもずっこけちゃうよ(笑)。

時計回りに(舞台左手前ほぼ9時の方向)ほぼ元の位置まで戻ってきた『アチチュード』。見る位置によってイメージや含みが違って見えるのも、こうして360度回してお分かり頂けたかもしれませんね。

『ブラック・スワン』の中でポートマンが黒鳥のパドドゥのアダージョの部分を何度も練習させられる場面がありましたが、あれは、原典とはだいぶ異なる振り付けでした。劇中でもカッセル扮する演出家の『新演出バージョン』って設定になってますんで、それでいいんですけど…ただ、その後のほうの場面で、リリーちゃんが同じ黒鳥のアダージョを練習してるとこが映るんですが、なぜかそこでは原典版の踊りをしてるのよね(笑)。ポートマンの場面ではボディダブルが演ずることができない(顔が見えてる)から、簡単振り付けバージョンになっていたんでしょうが…。ちょっと解せないな。うっかりミス?(^^)

時計回り終(元通り)はい、時計回り終わり〜。元の場所に戻りました。

この位置に来た時に、上げてる足の太腿(と膝こぞう)がちゃんとこっち向きでないと、そのダンサーはターンアウトが苦手だってのがばれてしまいます。

『ブラック・スワン』はイントロ(プロローグ)もちゃんと『白鳥の湖』のイントロ曲と同じで、『白鳥湖』を見る事に慣れている観客(俺のことだ笑)をかなり盛り上げます。『おーきたきたー』っていう…(笑)

ちなみに悪魔ロットバルトは、演出の違いで解釈もさまざまですが、1960年代〜80年代くらいまでは『フクロウ』の姿をしている、というパターンが多く、衣装や腕には黒い羽がつけられていました。『ブラック・スワン』のロットバルトはその路線を踏襲していたように思います。

前アチチュードバレエの型にはすべて『前後』『左右』逆バージョンがあります。例としてこれは『左足前のアチチュード』。

今までの『左足後ろのアチチュード』との前後逆バージョンです。後ろアチチュードから前に変える時の動かし方はさまざまですが、最も定番なのはいったん足を『パッセ』(足先を軸足の膝裏辺りにつけ、4の字を作るようなポーズ)にし、そのまま前に持っていく…というパターンです。

この模型では『パッセ』を作れなくて、お見せできずスイマセン。

前アチチュード(本当はここまで上げたいよね)後ろアチチュードの時と同じで…ここまで足上げたいよね、の図(笑)。

これくらい上げたほうが、ダンサーも楽なんですよ…。足の重さが体の軸線へ流れるようになりますのでね…。もっと上げればもっと楽なのだ。さっきのように、ほぼ床から90度の角度のほうが、重力の負担が大きくて保持が苦しいのです。

フィギュアスケート女子シングルのマオ・アサダさんがすぱーんとばかりに『スパイラル』ポーズで、バレエで言うところの『後ろアラベスク』ですい〜〜〜っと氷上を滑っていきますが、あれくらい高く…180度に近く上げれば上げたほうが、重さが軸足へとまとまりますんで、いいんです。昔のスケーターはあそこまで長い足も、柔軟性も持ってなかったので、やろうにもやれなかったのです。

グランジュッテ(舞台左向き)ポートマンが『ブラック・スワン』でやらなかったもの、『グランジュッテ』(大きい跳躍)。

これも『アチチュード』と同じく、素人にはごまかしがきかない派手な動きだってのもありますが…『白鳥湖』には白鳥がグランジュッテする場面がそれほどないって事実も(笑)。

漫画『テレプシコーラ』で「スパーン」という擬音つきで描かれてましたが、まさに「すぱーん」以外のなにものでもない(笑)このジャンプ。

グランジュッテ(舞台右向き)反対向きでも御覧下さい、「スパーン」(笑)。

『ブラック・スワン』で描かれているのはぶっちゃけて言えば『ダンサーのナーヴァス・ブレイクダウン(神経衰弱)』。拒食症、うつ病、麻薬逃避、アルコール中毒、自殺…残念ながらすべて『あるある』です。

ABT(アメリカン・バレエ・シアター)でプリマを務めていたゲルシー・カークランドが当時の自分を書き下ろした回顧録『ダンシング・オン・マイ・グレイヴ』(我が墓上にて踊る)って本で、「どれだけ多くの才能ある若いダンサーが麻薬やプレッシャーで身を滅ぼしたことか」(うろ覚え!)といった事を語っているほど、悲しい事実です。(邦訳本は原題のカタカナ題で出版されてました。図書館にならあるかもしれませんので、興味のある方はどうぞ。)

グランジュッテ(背中向き)滅多に見られない、『グランジュッテ』の背中からの光景。

『ブラック・スワン』はNYCB(ニューヨーク・シティ・バレエ)の話、ってことになってるようですが(チラシによると)…で、劇場の外って場面で使われていたロケ地もNYCBの御用達である『リンカーン・センター』(セントラル・パーク最南端の西端と道路挟んで向かい側あたり)だったんですが…、舞台の場面に出てくる舞台、なんかリンカーン・センター・オペラ・ハウスにしては小さすぎるような…。観客席のほうはそれっぽいんだけど。(←合成かも?)

『摩天楼はバラ色に』や『ゴースト・バスターズ』にもこの『リンカーン・センター』は出てきます。後者では噴水の前でビル・マーレイがぴょんぴょん跳ねてました(笑)。前者は映画のラストでオペラハウスが登場します。この裏に、ダドリー・ムーアも学んだ有名な音楽学校(…名前ど忘れ)があったはず。

グランジュッテ(正面向き)これも滅多に見られない、正面からの『グランジュッテ』。

せっかくなので撮影しておきました。漫画『テレプシコーラ』第1部で六花(ゆき)ちゃんが舞台の上を飛んで横切ってくる時のアングルですね(笑)。


グランジュッテ(俯瞰)天井桟敷ってくらいヒドイ席からでないとこんなのは見られない、『グランジュッテの俯瞰』です。

天井桟敷からでも無理か(笑)。舞台の上から雪降らす裏方さんか照明さんくらいでないとこんな姿は見られません。

前後に伸ばした足の上に乗っているように御覧になってたかもしれませんが、実は両腕はこのように少し輪を描くような形で伸ばされています。『アチチュード』と同じく、背後の足と同じ左側の腕が前に出て、前に伸びている右足や後ろの左足とバランスをとっています。左の手の平は腕で作った輪の内側(=胸の前)に向いていますが、やや上に伸ばした右腕の手の平は床向きです。

この上げた右手は(この模型の手では指がないので表現できないのですが笑)、オカマさんがシナを作る時のような指配置になってまして(←こんな解説で分かりますか?笑。気を悪くしたオカマさんが読んでらしたらゴメンナサイ)、このグランジュッテの高さと高揚精神を象徴し、お客さんの目を集める部分として働きます。

グランジュッテ(舞台右奥へ)最後の「スパーン」(笑)。

『テレプシコーラ』の六花ちゃんはこうして舞台袖のソリに辿り着いたのであります。

このように、飛んでいる時も後ろ足の裏が内側に向いているのが正解。足全体が外転していることのなによりの証です。

最初のアチチュードを斜め上から最後の一枚。最初の『アチチュード』のポーズを二階席(劇場左右のボックス席かも…)から双眼鏡で見れば、こう見える…ってアングルで。

『赤い花だ綺麗だなワーイ』が伝わりますでしょうか?(^^)。バレエは、無言劇ですので、ポーズと動きで精神を伝えねばなりません。言葉を封じられていることで、『言語』がときに狭めてしまう、深く陰影や色合いに富む精神性を、多様な解釈の幅を残しつつ観客に伝達できる可能性を備えています。200年続く舞台芸術のひとつでもありますので、できたら一度、お楽しみ頂けたらな〜と願っております。

(『赤い花だ綺麗だなワーイ』に続けるにしてはずいぶん御大層なシメを書いてしまった。笑)
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『ブラック・スワン』の2日前に、『ワールド・クラシック・シネマ@2011』のボリショイ劇場『白鳥の湖』を見たんです。きっとまともな『白鳥湖』が見たくなるだろうなーと思って(スケジュール的に前になっちゃいましたが)。

リンク先の『予告ムービー』で『白鳥湖』の一場面(白も黒も)が見られますが…このプリマさんが、珍しく太くてねぇ…(笑)。恰幅がいいっつーか貫禄がすごいっつーか。8頭身のガリンチョプリマばかり見てきたここ数十年では画期的なプリマさん。これ去年9月のボリショイ劇場ライヴ映像だそうなんですが…なんかあったのかボリショイ(笑)と、帰路でバレエな姉と盛り上がってしまいました。

ロットバルトもジークフリートも持ち上げてしまいそうな白鳥ってのを初めて見たぜ…(笑。もちろんそんな場面はありません)。予告ムービーで凛々しい太腿が拝めます。肩の筋肉も隆々でね…なんかあったんかボリショイ!?(しつこい笑)太めでも技術は高く、見ごたえのある舞台でした。名前が分からないのですが道化役の男性ダンサーがみごとで…超絶技巧連発。飛び込み前転(しかもスローに)まで!体操選手からの転身組だろうか…。

この『ワールド・クラシック・シネマ』は前売りが3千円、当日が3,500円。4枚綴り券が1万円。3人で行ったのでこの4枚券を当日買って、そのまま使おう…って計画でしたが、見る前には『当日使用はダメ、とか複数の人で使うのはダメ』だったら入場料高いな〜と心配したものの、オールOK!残った1枚は来月『ジゼル&クラスコンサート』(またバレエ)を見るのに使うからこれもOK。2,500円で見れました。よかった…。

お友達や家族とご一緒に二人で二演目見れば、当日でも2,500円で鑑賞できますので、オススメです。…これも『午前十時の映画祭』同様、『10時からの1回上映のみ&一週間上映のみ』ってネックがありますけどね…。

『白鳥湖』では1幕と2幕の間に悪魔役のニコライさんへの舞台裏インタビュー&さらに7分休憩があったのですが…ニコライの野郎、いい奴なんだろうけど…ラストのネタバレしおって!困ったやつだ!(笑)『白鳥湖』は悲劇ラストかハッピーエンドかという両極端な結末を、『どっちかな〜』とか予想しつつ見るのもそれなりに面白いのに〜。ネタバレを断固避けたい方は、ニコライのインタビューの最後『あともう一言…』の部分でトイレに走って下さい。(^^)ゝ

sith_ko2 at 21:50│Comments(4) 外国映画 

この記事へのコメント

1. Posted by Jono   2011年05月22日 13:20
トゥシューズの中ってそんななってるんですか!
こ、こわい……よく立てるものだ……
“アチチュード”、私ずっと“アティテュード”と勘違いしてました。
なんかもう今回の館主日誌はためになりまくり!すごくおもしろかったです!ありがとうございました!
2. Posted by じょのさんへシス子   2011年05月23日 14:27
>Jonoさんへ 『アチチュード』は『アティテュード』でも正解ですから、勘違いじゃないですよーーー!!ほら、『ハリソン・フォード』なのか『ハリスン・フォード』なのかとか、『ケヴィン・コスナー』なのか『ケビン・コストナー』なのか…とか、その手の『外来語の読み仮名表記の食い違い』ってだけですから!英語発音なら『アティテュード』って言いますもん。そのままでいいですのでお気になさらず。

ダラダラ長文を思うがまま書き散らかしてしまったので、読むの大変かな〜と思っていたんですが…そんな嬉しいお言葉を頂けるなんてビックリです。こちらこそ御愛読に感謝です…!
\(^▽^)/
3. Posted by むなびれ   2011年05月25日 23:34
5 >まあ、どんなに苦しくても努力してるとか耐えてるって外に見せず、簡単にやってるように見せ、しかも笑顔でいなければ、観客を楽しませるなんてことはできないんですから

これ、歌舞伎界でも踊りの名手として名高い坂東三津五郎さんが似たようなことをおっしゃっていましたね。役者が楽をしていたのではお客様には美しく見えない。腰を落とす所作一つにしても、足腰が辛いところまで深くしないと、みっともないだけだ、みたいな。洋の東西を問わず、舞台芸術ってそういうものなんでしょうか。

芸術に関して、わたしが薄っすらわかるというか興味を持てるのが唯一絵画だけでして、オペラもバレエも食わず嫌い(クラシック音楽が明確に苦手なので仕方がないのです)なので、バレエのイロハを解説していただいて非常に興味深かったです。
4. Posted by むなびれさんへシス子   2011年05月31日 11:20
>むなびれさんへ 坂東三津五郎さん!しぶい…。お名前は聞いていますが踊りの名手、だとは知りませんでした。(脳内メモしました笑)

『洋の東西を問わず』…そういうものだろうと思います。芸術の中でも舞台芸術は、「観客」(受け手)の目を特に意識したジャンルだと思うので…。

バレエのイロハ…そう受け取って頂き光栄です!こんな長い記事(笑)を読んで下さるだけでもありがたいので、『興味深かった』とコメントまで頂いて、嬉しいです。
(^^)ありがとうございました〜。

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