成果報告会で上映したユネスコMIL専門官アルトン・グリズィール氏のビデオメッセージの全文訳です。

第1回 福島ESDコンソーシアム (2016.2.20)
                 郡山中央図書館
     アルトン・グリズィール
       (ユネスコ・メディア情報リテラシー専門官)
     翻訳 坂本 旬

 会場にお集まりの皆さん。私は、この重要な会議に参加されている若い人たちを特に歓迎し、お話をしたいと思います。この会議は第1回福島ESDコンソーシアム成果発表会です。ずいぶんと長い名前の会議ですが、重要だと思います。ユネスコは、いろいろな関係者や大学の先生にまじって若い人たちがこの場に参加していることを大変うれしく思います。 というのもユネスコはこのような会議をよく開くのですが、私たちが若い人の話をしてもその場にはいないことが多いからです。

 さて、私はユネスコの代表として皆様にぜひお話したいと思います。最初に、皆さんの心のとどめておいてほしいことは、ユネスコは「表現の自由」の立場に立つということです。ユネスコは「表現の自由」を強く支持しています。皆さんは、この会議の中で「表現の自由」と「持続可能な開発のための教育」は何の関係があるのかと思うかもしれません。しかし、実際は「表現の自由」と「持続可能な開発のための教育」は直接的な関係があります。なぜならば、「持続可能な開発のための教育」は自由に考えるための自由だからです。そしてそれは、社会発展の課題解決のための教育の自由であり、情報にもとづいて行動する自由であり、その情報はさまざまな社会的課題と関係しています。すなわちそれは、政治、文化、文化的対話、環境問題、クリーンウォーターの課題であり、開発課題ならばどんな課題も関係していると思います。そして、それは証拠に基づき、あらゆる人々がアクセスする情報に基づいて行動する自由です。

 表現の自由という考え方は重要です。表現の自由という概念または現象は、持続可能な開発のための教育を可能にする重要なものです。自由に情報にアクセスできけなければ、この教育は不可能です。私たちは表現の自由、学問研究の自由、そして地球上のありとあらゆる開発課題を報道するメディアの自由がなければ、持続可能な開発のための教育を実現することはできません。この二つの要素の組み合わせは重要ですが、表現の自由や情報へのアクセスの自由だけでは、持続可能な開発のための教育にとっては十分ではありません。なぜならば、市民が新しい情報アクセスを活用するためには新しい21世紀のコンピテンシー(知識やスキル、態度を含む全体的な能力)が必要になるからです。私たちは地球を覆う技術爆発に直面しており、あらゆる年齢の、あらゆる社会的背景を持った多くの人々が情報にアクセスするようになりました。

 しかし、こうした情報へのアクセスは行動へと、すなわち私たち個々人が求めている地球へ関わっていくことにはまったく繋がっていないのです。私たちは、個々人やグループ、コミュニティは、それぞれの行動がローカルという文脈に留まっており、グローバル・シチズンシップのレベルに達しているとはまだいえません。個人の行動も国というコミュニティの行動は、他国や他の個々人、そして地球全体に影響をもたらします。メディア情報リテラシーは、人々に基礎的なコンピテンシーをもたらし、それによって人々は自らの情報環境を分析することができるようになります。持続可能な開発のための教育は、単なる学校教育制度や教育環境のためのものではありません。重要なのは、これは持続可能な開発のための教育の土台であり、質の高い教育を意味するということです。それはまた、私たちが日々接する情報環境でもあります。

 皆さんは何らかのメディアや図書館、アーカイブが、学校教育とともに情報環境を作り上げていることをご存知でしょう。それによって、持続可能な開発のための教育へのはっりきとした見通しを持つことができます。しかし、すでに話したように、このような教育情報環境だけではなく、私たちは基本的な21世紀コンピテンシーを必要としています。すべての市民が、情報環境を分析し、情報環境の中で交わされるメッセージを分析し、情報環境の中で共有される研究調査を分析するための知識やスキル、態度を発達させることが求められています。たとえば、気候変動についての研究調査を取り上げるならば、気候変動についてはさまざまな見方があり、地球上で起こっている変動の現実の影響を理解するためには、ただ教育を受けているというだけでは不十分なのです。私たちは情報環境、この環境にアクセスして得ようとしている情報を分析しなければなりません。そして個々人がこの情報について批判的であり、気候変動のような深刻な問題に関して、個々人が情報に基づいた理解力を発揮しなければなりません。

 福島でこの会議が開催されたことはきわめて重要であり、象徴的なことだと思います。全世界の人々が数年前福島の原子力発電所で起こった出来事を知っています。そして私たちもそのことを理解しています。それは福島だけのことではなく、日本全体のことであり、地球全体に関わる問題なのです。求められるのはマルチステークホルダー・アプローチ、つまり多くの機関や関係者が関わる手法です。私たちはそれゆえに、法政大学が、このような持続可能な開発のための教育に関する重要な会議を開催し、メディア情報リテラシーと持続可能な開発のための教育の融合への試みを進めていることを賞賛したいと思います。

 一年前、ユネスコは法政大学に招かれ、シンポジウムに参加しました。それは毎年開催される「メディア情報リテラシーと異文化間対話ウィーク」(MILID WEEK)です。このMILID WEEKには他の大学が開催するシンポジウムもありました。法政大学が開催したシンポジウムでは、田中優子総長や社会学部長、増田正人理事、坂本旬先生、村上郷子先生とも意見を交わしました。

 私たちはメディア情報リテラシーを促進するための大事な仕事をしています。そして一つのビジョンが共有されています。それは環境開発の促進にメディア情報リテラシーを用いるというビジョンです。私たちは二人の仲介者、村上先生と坂本先生を通して法政大学に出会えたことを喜ばしく思います。そしてこのビジョンのもとに、持続可能な開発のための教育とメディア情報リテラシーの統合に向けて、マルチステークホルダー・アプローチを推進していくことを期待しています。また、この企画に重要なパートナーが参加されていることを喜ばしく思います。日本ユネスコ国内委員会・文科省、教育委員会、協力していただいた福島大学、市民団体からの参加者やすでにお話したようにここに参加されている若い人たちもパートナーです。

 マルチステークホルダー・アプローチはとても大切です。それが持続可能な開発のために求められる変化をもたらすからです。私はここに参加している若い人たちに、あまりいわれることがないような、ある特別なものの見方を少し示したいと思います。あまり言われることはないかもしれませんが、皆さんは「明日」という名の未来です。しかし、私は若い人たちにいいたいのです。よく聞いてください。皆さんは単なる「明日」という未来ではないのです。皆さんは「明日」であると同時に「今日」なのです。皆さんは持続可能な開発に「今日」参加することかできるののです。単に「明日」ではないのです。「今日」も、なのです。皆さんは若者として政策の議論に関わらなけれはなりません。皆さんはよりよい方策を作ることに関わらなけれはなりません。持続可能な開発の計画、デザイン、実行のあらゆるレベルに関わらなければなりません。福島だけではありません。日本だけでもありません。全世界です。そのチャンスをつかまなければなりません。機会を求めなければなりません。私がこのプレゼンの最初に話したように、持続可能な開発に若者として参加するのは皆さんの権利であり、自由なのです。

 第二に、私がこの会議に参加している若い人たちに言いたいのは、皆さんが学校で将来のキャリアをめざすものとして、選択科目が政治、科学、技術、環境保護、ジャーナリズムやメディアであろうと、学校の中で追い求めるものを選択するという文化の中では、自分の未来を決定し、自己実現を果たすためには不十分だということです。このことはぜひ覚えておいてください。皆さんは私がすでに話したように、批判的に分析し、評価し、情報環境へと参加するための新しい態度や知識、スキルを身につけるには、学校だけでは不十分なのです。

 なぜかというと、情報環境は、それが公的なものであろうと、NPOのような市民組織であろうと、民間組織であろうと、あるいはメディア、ラジオ、テレビ、インターネット、図書館、アーカイブ、本や雑誌、ゲームといった、ありとあらゆるメディア情報供給源として描くことができます。この情報環境は同時に皆さんが望んでいる未来に影響を与えます。この未来とは、皆さんが大人になって皆さんの子どもたちが生きる未来であり、それまで皆さんは情報環境を分析できるコンピテンシーを発達させる必要があります。

 私がお話してきた、この情報環境はメディア情報リテラシーというコンピテンシーを必要としています。もし、皆さんが学校でメディア情報リテラシーという新しいコンピテンシーを身につければ、皆さんはより強い個人に、より強いグループに、より強いコミュニティとなり、それを前に進めていくことができるでしょう。私が保証します。皆さんの福島、そして日本というコミュニティを前に進めてください。そして実際に全世界の発展に貢献してください。

 メディア情報リテラシーに関して、最後に若者としての一言、皆さんに言いたいことは、メディア情報リテラシーとは何かということです。一般的に言えば、自分たちの情報環境に対して批判的であること、そして自分たちの情報環境に参加するということです。しかし、メディア情報リテラシーは、広い意味で、コンピテンシーを習得することです。コンピテンシーとは知識、スキル、態度のことです。それによって、皆さんは情報の必要性を分析し、理解します。そして、国としての、地球としての個々人のコミュニティとして、情報供給源の重要性を理解できるようになり、この情報供給源の目的を批判的に分析できるようになるのです。

 そして、コンピテンシーはメッセージやそのメッセージがメディアやあらゆる形態の情報と情報源によって広められていることを批判的に分析できるよう、効果的に働きます。そして、自分自身の個人的、政治的、社会的な必要のためにメディア情報源を用い、あらゆる形態のメディアを用いて、持続可能な開発やより良い政治、表現の自由、ジェンダー平等、そしてあらゆる形態の自由を促進します。皆さん、ぜひユネスコのウェブサイトに行き、メディア情報リテラシーの活動を探してください。それを読めば、何らかの行動をすることができます。そしてさらにより多くの行動することができます。そして皆さんは、メディア情報リテラシーはどのようなものであり、いかにしてそれが皆さんの人生、あらゆる生活の側面に影響をもたらすか、理解できることを確かめてください。

 私は、メディア情報リテラシーの一部として、一つの行動を起こすことについて話しました。いわば、専門的に言えば「アクション・リテラシー」と呼ぶことができるものです。そして共感を込めていうならば、アクション・リテラシーとは、情報に関する決定を行い、行動し、得られた適切な証拠や質の高い情報にもとづき、質の高い情報を検索し、質の高い情報にアクセスすることです。いったん、皆さんがそれを探し、アクセスすれば、それを理解しているか確かめます。アクション・リテラシーとはその情報に基づいて行動を起こすために皆さんにとって必要なものです。もし、皆さんがグローバル市民になろうと思うのなら、単に何らかの情報を得るだけならばもはや正しいとはいえません。また、情報は事実に基づき、真実であるべきで、倫理的ではない情報を得てはいけません。

 アクション・リテラシーは質の高い事実と真実にもとづく情報に基づいて行動を起こすものです。皆さんがこの会議から帰るまでに、私は皆さんが行動を起こせるよう、励ましたいと思います。そして若い人々のための活動に参加するよう、自分自身の、皆さんの家族の、友人の、コミュニティの、そして全世界のために、メディア情報リテラシーを促進する活動にぜひ参加してほしいと思います。そして、皆さんが持続可能な開発のための教育を促進するこの会議を通して得たメディア情報リテラシーをぜひ活用してほしいと思います。私の話はこれで終わりにしたいと思いますが、皆さんの役に立つことを祈っています。

 私は、メディア情報リテラシーは持続可能な開発のための教育を積極的に広報することができると思います。ここで皆さんにユネスコと文明の同盟、情報コミュニケーション研究センターのノルディコムが支援して出版された本を紹介したいと思います。それはユネスコと文明の同盟、法政大学も参加しているメディア情報リテラシー大学ネットワークの年報です。昨年、持続可能な開発目標がグローバルな開発コミュニティで採択されました。この本のテーマは「持続可能な開発目標のためのメディア情報リテラシー」です。この本は、この福島ESDコンソーシアムの会議と強い関係があると思います。皆さんがこの会議で話しあい、議論している内容はおそらくこの本でカバーされていることでしょう。大学の先生や政治家、開発に関わる国際組織のパートナーや代表者、この会議に参加している若い人々はユネスコのウェブサイトに行き、この年報にアクセスしてください。この本は大学ネットワークとすべての大学を含む国内ー国際的なネットワークによって作られています。皆さんも大学とそのリーダーショップやパートナーシップを代表し、そのプロセスに関わることができます。

 この本は5つの重要な内容を含んでいます。一つ目は、メディア情報リテラシーをどのように教え、学ぶかということです。またこの本では、言語多様性や私たちの情報や環境、コミュニケーションやエコロジーにおける多様性を重視し、メディア情報リテラシーによって、個々人が異文化間対話を促進し、他の文化に関するメッセージを評価し、異文化を理解できるようになると書かれています。また、文化に対するある種のドグマや個人が持っている宗教における挑戦についても書かれています。このドグマは時にラジカル主義や過激主義につながる種を導くことになる信条です。この本がカバーする4つ目の分野はジェンダー平等と障がい者やあらゆるマイノリティ集団の情報へのアクセスの促進の重要性についてです。私はメディア情報リテラシーはそれを可能にすると思います。そして、最後の5つ目の分野ですが、それがこのESDコンソーシアムの会議と関係するものです。いかにしてメディア情報リテラシーによって、私たちは環境リテラシーや健康リテラシー、農業リテラシー、それ以外のさまざまな社会的リテラシーを促進できるかというものです。私たちはメディア情報リテラシーを環境や農業に関わるあらゆる種類の社会的リテラシーとコンピテンシーに活用できると考えています。ぜひ、この本をダウンロードして活用してください。

 ユネスコを招待していただくとともに、お話をさせていただく機会を与えてくださり、ありがとうございました。私たちは皆さん全員がこの会議で成果を挙げられることを希望いたします。私たちは、この会議がここで終わるのではなく、 新たな行動へとつながるよう期待しています。この会議の最後には、メディア情報リテラシーを介した持続可能な開発のための教育が福島で、日本全国で、そして全世界で実践するための明確な行動が合意されなくてはなりません。ユネスコは皆さんを励まします。この会議が終わってもこのことは忘れないでください。皆さんはこの会議が重要な変化の始まりだったことに気がつくことになるでしょう。それは課題を用いて新しいパラダイムを生み出すものです。それはメディア情報リテラシーとグローバル・シチズンシップを介した持続可能な開発のための教育の新しいパラダイムなのです。ご静聴ありがとうございました。またお会いしましょう。

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