関西国際空港発のLH741便でフランクフルト国際空港に到着した私は、約3時間の待ち時間でウィーン国際空港行きのLH1240便に乗り継ぐことになっていました。
この待ち時間のことは、語れば長くなるわけですが、今日はまずフランクフルト国際空港の乗り継ぎ客税関検査場での顛末について報告させていただきます。

先日の日記でも書かせていただきましたが、ドイツの法律には「一人当たり総額430ユーロを超える(15歳未満の場合は総額175ユーロ以上)値段の品物をシェンゲン区域(注)外からドイツ国内に持ちこむときは必ず税関でその旨を申告すること。申告しなかった者には該当物品の没収や高額な追徴金の徴収といった罰則を科す場合あり。」という趣旨の規定があります。ドイツの国際空港、特にフランクフルト国際空港とミュンヘン国際空港の税関では、この規定に基づいた取り締まりが厳格に行われているとのこと。
とりわけ日本からのフライトの乗客に対する検査は群を抜いて厳しいというもっぱらの噂で、ドイツ在住の日本人若手バイオリニストが高額なバイオリンを差し押さえられる、地元の強豪サッカーチームであるアイントラハト・フランクフルトでプレーするMF・FWの乾貴士選手が家族から頂いた大切な腕時計を差し押さえられるといった事案が発生、新聞の三面記事に取り上げられたのは記憶に新しいところです。

このようなドイツ税関の悪評を、マスコミ報道や某掲示板の書き込みなどで散々吹き込まれていたにもかかわらず、私はルフトハンザドイツ航空のボーイングB747-400とエアバスA380の乗り比べをしたいというだけの理由で、ドイツで出入国手続きを行う必要がある航空券を買ってしまいました。
身銭を切って航空券を買ってしまった以上は、万全の自衛策を取ってフランクフルト国際空港の税関検査場を突破する以外に選択肢はありません。
それでは具体的にどのような対策を取ればいいのかと思い、事前に在日ドイツ大使館のホームページに掲載された税関検査に関する項目を一通り読んでみました。
在日ドイツ大使館はホームページで、シェンゲン区域外からドイツ国内に規制対象となる高額の物品を持ち込む際には必ず税関にて書面での申告を行うこと、税関の規制対象となる物品を持っているかどうか自分では判断が付きかねる場合は、税関検査の際に要申告者用の赤色のゲートを通ることを勧めていました。
この2点を抜かりなく実行すれば買ったばかりのスマートフォンも、推しメンとの思い出が詰まったPSPも、祖父の形見の時計も没収されないで済むだろうし、多額の追徴金を払うこともないだろう・・・そう信じた私は、自宅のパソコンで機内に持ち込む手荷物のうち、1点あたりの価格が100ユーロを超える品のリストを英語で作成、万一の時にすぐ取り出せるようパスポート入れの中に忍ばせておきました。
そして迎えた旅立ちの日、LH741便での10時間を超えるロングフライトを終えた私は、対決の準備はすでに整っていると言わんばかりの涼しい顔で、フランクフルト国際空港のZコンコースに降り立ちました。
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Zコンコースを歩く途中に撮影したエアバスA380とエアバスA340-300。
エアバスA380はおそらく、成田国際空港からのLH711便でしょう。
今思うと、この時点の私には悪名高き税関検査のことを忘れて旅客機の撮影に興じるだけの心の余裕があったのかなと思います。正直なところ、俺はドイツ大使館のホームページで調べた通りのことをやっているのだから、所持品を没収されることもないし、高い追徴金を科されることはまずあり得ないだろうと自信満々でした。
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乗り継ぎ検査場手前の逆行防止ゲートの脇に、乗り継ぎ便の出発案内が掲示されていました。
これから私が乗り継ぐLH1240便ウィーン行きは、Aコンコースからの出発とのこと。
ただしまだゲートは決まっていないようです。
出発案内板にはウィーン行きの他、ロンドン(ヒースロー)行き、ローマ行き、プラハ行き、ブダペスト行き、チューリヒ行き、クラクフ行きなどの表示が出ていました。夕方のフランクフルト国際空港からは、東京や大阪などアジアの大都市からの長距離便の接続を受け、ヨーロッパのありとあらゆる都市への短距離便が次々に出発していきます。
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逆行防止用のゲートを通過した先に、大きな吹き抜けがありました。
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吹き抜けの中には、ルフトハンザドイツ航空の鶴のマークと、エアバスA380、エアバスA330などの模型が飾られていました。
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この先に、Aコンコースに通じる手荷物検査場がありました。
ここでの検査は、日本の空港では考えられないレベルの厳重なものでした。
ありとあらゆる手荷物をベルトコンベアに委ね、金属探知機を通過しようとするとすかさず左手首にはめていた腕時計が反応。衆人環視の中男性の係官から、着衣のままではありますが身体検査を受けました。
手荷物検査で引っ掛かったのだから、きっとこの先の税関でもうるさく言われるに違いない。さっきまで自信満々の表情だった私も、さすがにこの瞬間はビクっときました。
そして、階段を下りて乗り継ぎ客用の入国審査場へ。昨年暮れのオランダ旅行の際のスキポール国際空港での一件が記憶に新しく、今回も短期滞在のアジア人と言うことで入国管理官に不審がられたりしないだろうかと不安だった私ですが、意外にすんなり入国の許可が降りました。
さあ、残すところあとは税関のみです。
私は覚悟を決めて赤色の要申告者用ゲートを通過し、窓口にいた女性係官に、以下の内容が書かれた書面を提示しました。

My own belongings

 

smart mobile phonemy own 539 euro    buy in Japan 2013

ipod nano            my own 76euro    buy in Japan 2012

PlayStation Portable  my own 119euro   buy in Japan 2012

Handwatch           my own            buy in Japan 2006

Handwatch           my own            buy in Japan 1970’s

Digital camera         my own           buy in Japan 2007


緊張の一瞬です。
女性係官に睨みつけられ、厳しい口調で「Show your smartphone」と言われ、そこから容赦ない尋問が始まるものと覚悟していました。
しかし、彼女は私が拙い英語で書き記した書面にさっと目を通したかと思うと、次の瞬間、優しいお母さんのような眼差しで「OK」と穏やかな口調で答えました。
かくして私は、鬼のフランクフルト税関を無事に通過したわけです。あまりにあっさりした女性係官の対応に、川栄李奈さんではありませんが「嘘だろうが」という気持ちでした。
どうも、ドイツの税関はルールを守って正直に申告した外国人には特に何も言わず、逆に善意悪意問わず申告をしそびれた人間には容赦ないということなのかもしれません。
税関検査場の先にある免税店街を抜けると、先ほど乗り継ぎ客向けの手荷物検査場に入る直前に通過した吹き抜け部分のちょうど真下にたどり着きました。ZコンコースからAコンコースに移動する乗り継ぎ客向けの手荷物検査場が4階に、入国審査場と税関検査場、出発フロアが2階にそれぞれ位置するようです。
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今回のことを踏まえ、今後ドイツに行かれる読者の皆様向けに、「ドイツ税関の安全な通過方法」を3点ご紹介します。

1 ドイツに入国する前に「1点辺りの購入価額・時価が430ユーロ(4万円)を越える携行品」のリストを英文で作成し、フランクフルト国際空港・ミュンヘン国際空港の税関の赤いゲートで提出すること。(特にスマートフォン、ノートパソコン、高級な時計、高級な楽器、取引先に持参する商品サンプルを携行している場合は必ずこの措置を取ること。)
なお、最終目的地がフランクフルト国際空港、ミュンヘン国際空港の場合は入国審査場を出た先と、手荷物受取場を出た先、計2か所の税関検査場を通過する場合があるため、同様の書面を2枚用意しておくことが望ましいと思います。

2 そもそも「1点辺りの購入価額・時価が430ユーロ(4万円)を越える携行品」をドイツに行く際に携行しないこと。

3 高額な楽器などの職業道具や商品サンプルを持ち込む際は、日本出発前に「ATAカルネ」を発行してもらうこと。

以上の方法を取っていただければ、ドイツの国際空港の税関で所持品を没収されたり、高額な追徴金を科されたりして、折角の楽しい旅行や大事な出張がフイになるというトラブルはあらかた防ぐことができるかと思います。
僭越ではありますが、この記録が微力ながらでも皆様のお役に立ちますように。

(注)シェンゲン区域・・・ヨーロッパ域内で、パスポートの提示なしで相互に行き来できる国の総称。イギリス、アイルランド、ブルガリア、ルーマニア、キプロス、クロアチア以外のEU加盟国とノルウェー、アイスランド、スイス、モナコが該当します。