先日、シンガポールの航空会社が相次いで日本の地方空港への乗り入れを果たした話題をお届けしましたが、今夜はベトナムのLCC2社による日本進出の動きについてお話しようと思います。

ベトナムには2017年現在、2社のLCCが存在します。
このうち、ジェットスター・パシフィックは1991年創業のパシフィック航空が前身で、2008年にカンタス航空が買収して以来、同社傘下のLCC・ジェットスターとの提携のもとジェットスター・パシフィックにリブランドして営業しているキャリアです。
パシフィック航空時代の主力機材で、ジェットスター・パシフィックへの社名変更後もしばらく運用されていたボーイングB737-400。
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同社はこのほど、9月よりハノイ~大阪(関西)線とダナン~大阪(関西)線を開設、ベトナムのLCC(注)としては初めて日越路線への参入を果たしました。
(注)日本のLCCも含めれば、2016年より(東京(成田)~)台北(桃園)~ホーチミン線を開設したバニラ・エアに次いで2社目となります。

ダイヤは以下の通りとなっています。
【ハノイ~大阪(関西)線】
ハノイ0145→(BL620便)→0815大阪(関西)(9月2日(土)~、月・火・木・土曜運航)
大阪(関西)2215→(BL621便)→0040(翌日)ハノイ(9月1日(金)~、月・水・金・日曜運航)
【ダナン~大阪(関西)線】
ダナン1430→(BL164便)→2115大阪(関西) (9月1日(金)~、月・水・金・日曜運航)
大阪(関西)915→(BL165便)→1200ダナン(9月2日(土)~、月・火・木・土曜運航)
使用機材・・・エアバスA320-200

写真はジェットスター・アジア所属のエアバスA320-200
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首都ハノイへのフライトは往復とも夜行便となりましたが、到着直後から滞在時間を有効活用できるという意味では日本側からもベトナム側からも利用価値は高いのではと思われます。
一方のダナンですが、ベトナム中部最大の都市であり、近年は古都フエ、華僑が築いた古い町並みで知られるホイアンといった観光地が近いことから、韓国や中国、台湾、香港、シンガポールといった近隣諸国からの直行便就航が相次いでいました。特にダナン~ソウル(仁川)線は、韓越合わせて9社の航空会社が競合する激戦区となっています。
その割に、日本とを結ぶ定期便はベトナム航空のダナン~東京(成田)線週5往復しかなく、東京線の増便や大阪、名古屋、福岡への直行便開設が待たれていました。
今回、ジェットスター・パシフィックがダナン~大阪(関西)線を開設したことにより、より多くの日本人観光客がダナンを訪れ、ひいてはこれがダナン~日本間の航空路線のさらなる新規参入や増便に繋がればと願ってやまないものです。

さて、ベトナムのLCCといえば、もう1社忘れてはいけない会社があります。
2011年に国内線で初就航を果たし、CAさんのビキニファッションショーやグラビアなどが話題になったベトジェットエア。
近年は近隣諸国への国際線開拓に熱心で、韓国や台湾、中国、香港への路線に進出、そのうち日越路線にも進出するのではと噂されている同社ですが、その前段階として去る7月25日(火)に日本のフラッグキャリアであるJALとの提携を発表しました。
まずは2018年より、JALが運航する日越路線、日本国内線、ベトジェットエアの国内線、国際線で相互コードシェアを実施するとのこと。マイレージ(注)やラウンジの相互利用については追って協議する方向とのことです。
(注)2017年11月現在、ベトジェットエアにはマイレージプログラムは存在しません。

今回、JALがベトジェットエアとの提携に踏み切った最大の理由としては、同社が日越路線に進出した1990年代半ば以来20年近くに渡り相互にコードシェアを実施してきたベトナムのフラッグキャリア・ベトナム航空が、2016年に日本での提携相手をライバル・ANAに切り替えたことが挙げられます。

日越路線・ベトナム国内線での貴重な提携パートナーを失ったJALとしては、一刻も早くその代替手段を見つける必要性に迫られました。
すでに提携している同じ航空連合「ワンワールド」加盟のキャセイパシフィック航空・マレーシア航空とのコードシェア関係を強化するのも一つの手でしたが、これだけだとベトナム航空が有していたインドシナ半島諸国へのきめ細かなネットワークを回復することは到底無理なわけで、ベトナムの航空会社でないとカバーできない路線網を得るため、ベトジェットエアと手を結ぶことになったというわけです。

さらに、まだ正式な発表はありませんが、ベトジェットエアは早ければ来年から関西国際空港への乗り入れを実施したいとの意向を示しており、もしこのフライトでJALとのコードシェアが実現すれば、ベトナム航空との提携解消以来途絶えていたJALの大阪~ベトナム路線が2年ぶりに復活することになります。
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長くなりましたが、韓国や台湾といった近隣諸国に遅れを取ったものの、ようやくベトナムの新興航空会社が日本市場への進出を果たす日が訪れました。
JAL、ANA、バニラ・エア、ベトナム航空といった先発各社に加え、ベトナムの新興航空会社が加わり、2018年以降さらなる競争の激化が予想される日越路線。この競合を呼び水に、ベトナムからの日本渡航者、日本からのベトナム渡航者がさらに増えることを願って、今夜は締めくくらせていただきます。