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最近、日本国内、いや世界中の空港で、細長い胴体とT字型の尾翼を持つ飛行機を見かける機会がめっきり減ったように思います。
飛行機ファンの方々からは、「T字型尾翼と言えば、ボンバルディアCRJ100とかCRJ200があるじゃないか」という突っ込みが飛んでくるかもしれませんが、今回私が話題にしたいのは、T字型尾翼はT字型尾翼でも、アメリカのマグドネル・ダグラス社のベストセラー機、MD-80・90シリーズです。

思えばつい数年ほど前まで、日本の空港でMD-80・90シリーズを見かける機会は割合多かったように思います。
今は亡きJASこと日本エアシステムと、その合併先となったJALでは、MD-81、MD-87、MD-90というMD-80・90シリーズ3姉妹が国内ローカル路線の主力として活躍していました。海の向こうの大韓航空はMD-82とMD-83、中国北方航空とその合併先である中国南方航空はMD-82とMD-90を日本路線に就航させていました。

しかし、この10年で極東アジアの航空会社ではMD-80・90シリーズの退役が急速に進み、気が付けば日本近辺で残っているMD80・90シリーズはJALと台湾のエバー航空、立栄航空のMD-90、台湾の遠東航空のMD-83、タイ・オリエントタイ航空のMD-81ぐらいになっていました。

このなかで、現在日本で見られるのはJALとエバー航空のMD-90のみ。近年は同サイズのボーイングB737-800や小型のエンブラエルE170といった機体への置き換えが進み、ある意味貴重な存在となっていたJALのMD-90ですが、このほど来春での完全引退が決定しました。

1996年にJASのDC-9、MD-80・90シリーズの末っ子として登場したこのMD-90は、JASの前身・東亜国内航空時代に導入された名機DC-9-41の流れを汲んだフォルムに巨匠・黒澤明監督デザインのカラーリングを身にまとい、最新鋭のコクピットやエンジンを装備しており、航空ファンたちの注目を集めました。黒澤監督が「虹」をモチーフにデザインした7タイプのカラーリングの機体は、羽田や伊丹といった主要空港から地方の空港まで、日本中の空港に彩りを与える存在になりました。

その後、2002年のJAL・JASの経営統合に伴い、MD-90も他のJAL・JASの機体と同様に、クリーム地に赤い太陽と銀色の虹という新生JALのカラーリングに順次塗り替えられました。黒澤監督の手による秀逸なデザインがわずか数年で見られなくなったのは航空ファンとして残念でしたが、赤とクリームが基調の新生JALのカラーリングもそれはそれでMD-90にはよく似合っていたと思います。

私が最初で最後にJALのMD-90に搭乗したのは、2010年の1月末。大阪(伊丹)~青森線でのことでした。
冬晴れの大阪を飛び立ち、左に京都市街地や琵琶湖を望みながら飛行した後、雪化粧した北アルプスを飛び越え雲の中へ。最終の着陸態勢に入り、雲間を抜けると一面の銀世界と化した青森市の市街地が視界に飛び込み思わず圧倒されたものです。同年末の開業が予定されていた東北新幹線の新青森駅と、新青森駅から東京方面に伸びる高架橋も機内からばっちり観察することができました。
ちなみに2012年11月現在、大阪(伊丹)~青森線にはMD-90に代わり、より小型のエンブラエルE170とボンバルディアCRJ200が投入されています。

現在、JALに残るMD-90は僅か3機。うち1機は鶴のマークの新塗装に塗り替えられ、引退までの間黙々と日本国内の空港を結ぶ運用をこなしています。11月現在では東京(羽田)と女満別、釧路、三沢、広島、高知、熊本、宮崎、奄美大島の各空港への路線に投入されているそうです。関西在住者としてはあまり利用しやすい路線がないですが、引退までにもう1度搭乗する機会があればと思います。

それにしても、MD-80・90シリーズは世界的に見ても急速に数を減らしている印象です。JALのMD-90に先立ち、10月27日にはアリタリア航空のMD-82がローマ~カターニャ線とミラノ(リナーテ)~カターニャ線を最後に引退しました。アリタリア航空のMD-82はローマとミラノを拠点にヨーロッパ中を飛んでいた飛行機で、私も1996年にはロンドン(ヒースロー)~ミラノ(リナーテ)線とローマ~パリ(シャルルドゴール)線で搭乗する機会がありましたが、寄る年波には勝てずエアバスA320とA321に置き換えられ、ついに引退の日を迎えました。

最後になりましたが、JALで、いや世界中の航空会社で現役で働いているMD-80・90シリーズが、引退の日まで安全にお客さんを運んで活躍できますように。