昨年2019年3月16日のJRグループダイヤ改正では、全国各地で車輌や列車の新旧交代が見られたわけですが、これに合わせる形でJR西日本の和歌山・奈良エリアのローカル列車にも久々の新型車輌がお目見えしました。
JR西日本は和歌山線・桜井線及び紀勢本線和歌山市~紀伊田辺間で使用している国鉄型車輌を置き換えるため、広島エリアで運用している227系に改良を加えた227系1000番台を吹田総合車両所日根野支所新在家派出所に配置し、2019年3月16日ダイヤ改正より運用を開始しました。
和歌山線橋本駅にて
広島エリアの227系0番台が転換クロスシートを装備しているのに対し、和歌山・奈良エリアの227系1000番台は前任の吹田総合車両所日根野支所新在家派出所所属105系と同じオールロングシートを採用しています。
関西エリアの利用者には323系、225系5100番台、同100番台でもお馴染みのアイテムです。
乗降用ドアは、半自動機能付きとなっています。
写真は和歌山駅にて撮影
高田駅にて
ちなみに現在、和歌山線の和歌山~五条間ではICカードの利用が不可となっていますが、2020年3月14日からは同区間においても車載端末を介してのICカードの利用が解禁されることになっており、227系1000番台のドア横にはカバーを掛けられた状態の車載端末が準備されていました。
この227系1000番台の導入に伴い、和歌山線・紀勢本線(和歌山~紀伊田辺間)で運用されていた日根野電車区所属の117系、和歌山線・紀勢本線(和歌山~紀伊田辺間)・桜井線で運用されていた105系4扉車は順次置き換えられることとなり、まずは117系が2019年3月15日限りで引退、残る105系4扉車についても2019年9月29日までに順次運用から退くことになりました。
2019年3月16日ダイヤ改正から同年9月29日まで目にすることのできた、227系1000番台と105系4扉車の並び。
粉河駅にて
この105系4扉車ですが、もともとは1984年の奈良線・和歌山線五条~和歌山間・紀勢本線和歌山市~和歌山間電化に合わせて、それまで首都圏の常磐緩行線で使用されていた営団地下鉄(現東京メトロ)千代田線乗り入れ用の103系0番台・1000番台(製造初年1970年)を改造のうえ105系に編入した車輌でした。
代々木上原駅停車中の103系1000番台
(1980年代に私の義父が撮影)
改造当初の105系ですが、古社寺の多い沿線に因んでかクリーム色に赤帯の塗装で登場、「春日色」の電車として20数年にわたり親しまれることになりました。
もともと新車として製造され、1981年に宇部・小野田・福塩線に投入された105系0番台とは側面扉の枚数や前面形状に大きな差異がありました。
【側面扉】
105系0番台・・・片側3ヶ所、103系からの編入車・・・片側4ヶ所
【前面形状】
105系0番台・・・同時期に製造された103系1000番台(福岡市営地下鉄直通用)と共通
103系からの編入車・・・103系1000番台そのままの先頭車と、0番台に準じた形状の運転台を設置した中間車からの改造先頭車が存在。
写真は種車である103系1000番台そのままの前面形状で活躍していた編成。
2019年の引退まで、「地下鉄顔」の愛称で親しまれました。
こちらは紀伊田辺駅で撮影した、中間車改造の先頭車を繋いだ編成。
2001~2004年頃は、当時まだトイレの設備がなかった105系4扉車が紀勢本線紀伊田辺~新宮間の長距離普通列車の運用で活躍していました。トイレなしオールロングシートの元地下鉄直通用電車で行く紀伊半島の鈍行旅行も、今となっては良い思い出です。
この間、運用線区並びに区間の変更、さらには2009~2016年にかけて実施された塗色変更(「春日色」→和歌山地区地域統一色(青緑色))など幾多の変化がありましたが、4扉の105系は通勤通学の足として、青春18きっぷ利用の鈍行旅行者の足として、幅広く活躍を続けてきました。
「地下鉄顔」のクハ105-3を先頭にしたSW013編成。
橋本駅にて
105系の4扉車には、種車である103系から引き継いだ戸袋窓を存置した編成が多かったのですが、こちらのSW003編成のように延命工事で戸袋窓を塞いだ車輌も少数ながらありました。
和歌山駅での紀勢本線、橋本駅での南海高野線との並びも良い絵になっていたと思います。
105系4扉車の妻面には、国鉄103系として製造された証である製造会社・製造年入りの銘板、そして103系から105系に改造された証である改造工場・改造年入りの銘板が貼り付けられており、波乱万丈の履歴を現代に語り継いでいました。
クモハ105-510(旧モハ103-1024)
言うまでもないことですが、この工事が竣工する頃には同線から105系の姿は消えている予定です。
今回の和歌山線・桜井線の車輌置き換えにより、JR西日本の和歌山エリアから105系は完全に消えたと思いきや、実はそうではありません。
紀勢本線の紀伊田辺~新宮間では、岡山電車区から転属した105系3扉車が運用されています。
こちらは製造初年1981年と、105系4扉車よりは比較的新しく、なおかつ大規模なリニューアル工事を受けているためしばらくは安泰と思われます。
また、この3扉車が検査入りしている時は、105系4扉車のうち稼動状態で残された集中冷房装置搭載編成が代走することになっており、運が良ければ和歌山県南部で名車103系1000番台の生き残り・105系4扉車を目にすることができるはずです。
奈良線・和歌山線五条~和歌山間・紀勢本線和歌山市~和歌山間の電化から35年間地道に走り続け、2019年10月26日のさよなら運転を最後に和歌山線・桜井線から完全撤退した105系4扉車。
その活躍は決して派手ではありませんでしたが、デビューから10数年間首都圏の通勤路線で活躍、残りの35年間近畿地方のローカル線で地域の生活を支えた仕事ぶりは永遠に記憶されてしかるべきかと思います。長くなりましたが、105系4扉車、長きに渡る首都圏と関西での活躍お疲れ様でした。
さて、105系4扉車に続き、2020年3月14日のダイヤ改正では阪和線・紀勢本線の日根野~紀伊田辺間で余生を送る吹田総合車両所日根野支所の113系も227系1000番台に置き換えられることが決定しています。
こちらについても後日記事を起こそうと思いますので、しばしお待ちのほどよろしくお願いします。