sumita-mさんのエントリーにて、以下の『スポーツニッポン』2007年8月24日付の記事
を知った。
ビデ倫:「修整審査不十分」と警視庁が捜索

 アダルトDVDの画像修整審査が不十分だったとして警視庁保安課は23日、わいせつ物頒布ほう助の疑いで東京・中央区の「日本ビデオ倫理協会」(ビデ倫)などを家宅捜索した。ビデ倫が同容疑で強制捜査を受けるのは初。過激化する一方のAV作品に対する厳しい“ダメ出し”といえそうだ。

 過激なAV画像を取り締まる立場にあるビデ倫に、厳しい“お灸(きゅう)”がすえられた。

 警視庁保安課はわいせつ物頒布ほう助の疑いでビデ倫を、わいせつ物頒布の疑いで同協会会員の都内のDVD制作会社数社を、それぞれ家宅捜索した。同課は今後、関係者を事情聴取するとともに押収した資料を分析し、審査方法や基準などを詳しく調べる。

 AV業界関係者によると、アダルトDVDは編集の際、メーカー側がわいせつな部分にモザイクをかけるなど画像処理を行い、同協会など、それぞれの審査機関が定める基準に従って審査を行う。わいせつ性が低いと判断された作品には、審査済みのシールが張られ市場に出回る仕組み。複数ある審査機関の中でも、ビデ倫は「最も厳しい基準を設けていた」という。

 しかし、ここ数年、より過激な作品を求めるファンが増えたため、ビデ倫以外の審査機関に属する「インディーズ系」メーカーが台頭、ビデ倫系メーカーの売り上げは頭打ち状態となっていた。このため、同協会は昨秋に“規制緩和”を実施。これまでモザイクが必要だった「ヘア」や、モザイク消しの範囲を狭めるなど、新たな基準を導入するなどしていた。

 あるAV業界の関係者は「最も影響力のある審査機関を取り締まることで、過激さに走る業界にストップをかける狙いがあるのでは」と分析。メーカー社員からは「ファンの要望は増す一方。これからどんな作品にすればいいのか…」と戸惑いの声も聞かれた。

スポーツニッポン 2007年8月24日
http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/geinou/news/20070824spn00m200010000c.html

ワタシもsumitaさんと同じように、「何が猥褻なのかを定義する権限は警察が有しているのだということを改めて示した」という感想をまず持った。だけどその『定義』についてはまったく言及されないし、それを言及することはこれまでもなかったし、これからもないだろう。
おそらく「家宅捜査」されたビデオ倫理協会も、「どうしてウチだけが捜査され、他のメーカーや自主規制の団体は捜査されないんだ」って怒っているように思うが、そんなことはいえないんだろうなぁ。さらに勝手な空想だけど、実際のところ、捜査する側の警察だって、何を持って「猥雑」なのか?について問われたら、明確な基準を示せるかどうかはわからないだろうと思う。むしろ捜査する側の趣味嗜好が反映されていないだろうか。だって、上記の記事に依れば、これから事情聴取や押収した資料の分析を進めるんでしょ?

ちょっと話を変える。ビデ倫の設立と審査基準について。
ヘアの解禁などは憶えている範囲だと、90年代の半ばにはビデ倫に加入していないメーカーが始めたのではなかったか。むしろ「インディーズ系」と呼ばれるメーカーは、ビデ倫の審査基準の硬直性へのアンチテーゼとして始まり、監督たちが規制に縛られずに作品を創ろうとした結果のことだったように思う。もちろんその独自の作風があったからこそ、コアなAVファンは必ずしも「性的欲望の解消」という目的でAVを観なくなったのではなかったか。

またFAプロのヘンリー塚本監督のインタビューには、1980年代(たしか1983年だったかな?)ビデ倫の設立当初の審査基準についてのエピソードがあったように憶えている。
たしか、そのインタビュー記事の中で、ビデ倫の審査をクリアするためには、男女が裸体になる理由、さらにはセックスする理由として作品そのものにストーリー性が必要なのに、ヘンリー塚本監督の作品にはそれがないために問屋が卸せないというエピソードがあった。つまりただ単に「セックスしている映像」ではダメだという審査基準があったはずだ。その背景に「映画」のようなメジャーな媒体へのあこがれみたいなものがあったのかな?
アダルトビデオジェネレーション


さて「“規制緩和”を実施」したビデオ倫理協会についてだが、加入しているメーカーの作品でも、去年あたりから「新基準採用」のシールが貼られていたのを思い出す。現在はその基準がスタンダードになっているためシールすらない。最近では、新たなモザイク加工の技術が開発されているだとか、モザイクの範囲を細かく指定できる技術の開発を謳うシールがある。そのことについては『R25』2007年7月5日付の記事を思い出す。以下引用;
1分の映像処理に約12時間かかる!?
「モザイク」の技術進化と各社こだわりの秘密とは?
久しぶりのAV観賞中、ある重大な事実に気が付いた。昔と比べてモザイクがスゴくなっている! カタチに沿って、無駄なく隠されたあの部分…。そういえば、最近はパッケージに「スーパーデジタルモザイク」や「デジエモン」など、モザイク技術の名前をよく見かける。う〜ん、アダルト業界におけるモザイク技術が、かなり変わってきた?

「日本ではどんなに需要があっても、局部をさらすと違法になります。ですから、我々はユーザーに少しでも満足していただくために、範囲を極力小さくしたモザイク作りに励んできました。最近は“MOE”という、局部のみをすりガラス状にぼかす新技術も開発。多少手間がかかってでも、より見やすい映像にする努力を心掛けています」(桃太郎映像出版・平鍋氏)
映像は1秒につき約30コマの画像から成り立っていて、モザイクはこれらすべてに入れる必要がある。作業はパソコンによる手動。1人の作業員が1分の映像を完成させるために、およそ12時間が費やされるという。桃太郎映像出版では、この莫大な作業に人海戦術で対応しているそうだ。

一方、モザイクがけを半ば自動化することで、効率アップに成功した企業も。
「カツラのモンタージュソフトに組み込まれた人の目鼻を自動識別する機能を応用して、特定のターゲットを追跡するソフトを開発しました。これにより、局部だけを延々と追う“デジエモン”が完成。法律がかかわるため最終チェックは人の手ですが、これで作業時間が約10分の1になりました」(SODアートワークス 吉澤氏)

なおSODのモザイクは、「いかに目立たせないか」がポイント。局部のみを覆ったモザイクをさらに加工することで、画面上によくなじむ、ある種の柔らかさを生み出しているのだという。
モザイクの裏側に存在する様々な企業努力。アソコばかりに夢中にならず、こうした隠れた要素にも、男子として、熱い視線を送りたいものだ。
(西原史顕/KyoPro)

とあるように、今回の家宅捜索はメーカーの企業努力を無駄にする可能性もあるし、そもそも技術進歩によって達成されたことを元に戻せというに等しいかもしれない。
さらにいえばどうして、こういうときに見せしめとして「ビデ倫」が選ばれたかもわからない。インターネットで無料・有料を問わず局部をまったく隠していない映像なんてごろごろ転がっているし。
またどこかで言及したかと思うが、最近AVをレンタルDVDやセルDVDで購入もしくは借りなくても、コンビニや書店で安価に購入できる。つまり雑誌社がDVD制作に取り組み、DVDがメインで雑誌がサブという構図もあるのに、そこは取り締まらないという業界内の差別的な対応もある。
この点については
エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあること (NT2X)

を参照のこと。そういえばだいぶ前に読了したが、そのことを書いていなかったなぁ。