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僕はホリエモンが嫌いだった - 堀江貴文氏の新著「ゼロ」書評 ~ブロガーミーティングを終えて~

堀江貴文「ゼロ」ゲラ2
(↑書籍「ゼロ」のゲラ(=原稿のこと))


ついに、堀江貴文氏の新著「ゼロ」が世に公開された。これまでも堀江氏はさんざん多くの書籍を出版しているので、特に意外感は無い。ただ、この本は少なくともこれまでの氏のどの著書よりも売れるであろうし、今後も多くのホリエモン信者或いはアンチによって、様々な賛否の声がAmazonのレビューを埋めるのであろう。

さて、僕は幸運にも、堀江貴文氏主宰のブロガーミーティングというイベントの参加者として選ばれた。つまり、この本が出版される以前より本書のゲラを手渡され、出版される今日より遥かに前もって、この将来のベストセラーを読む事が出来たという訳だ。そこで、本書にいち早く触れたものとして、「ゼロ」という書籍が一体どのような書籍なのか、少しだけ綴りたい。



実は、僕はホリエモンが嫌いだった。僕のような無名で何も大きな事を成し遂げていないただの一介の財閥系総合商社内定者が日本の若者にとってのカリスマ経営者に対して物を申すのは何ともオコガマシイことだと重々承知しているが、それでも言わせて貰う。

彼は日本社会からとても大切なものを奪い取っていった。だから僕は彼が嫌いだった。

彼は、自ら誤解される事を好む、いけ好かない男である。
本当はプログラマとしてガリガリコードを書く能力があるのに、そのことについては一切触れない。陰で人並み以上の努力を重ねているにも関わらず、彼がこれまで執筆した書籍には「努力」という言葉が一切出てこない。未来のLINE株式会社を創る程の潜在能力を秘め、内部に優秀なIT技術者を多数抱えているにも関わらず、「ライブドアはITの会社ではない」「マネーゲームだ」「虚業だ」と言われても何の反論もしない。

その代わりに彼は、世間が望む「ホリエモン像」を徹底的に演じた。時には近鉄球団の買収に名乗りをあげ、既得権益と抗う若者のヒーローとして振舞い、時にはニッポン放送買収をしかけ、参議院選に立候補し、「金・権力の亡者」という役柄をものの見事に演じ切った。その結果かどうかは分からないけれど、彼は拘留され、約2年もの間、牢獄にブチ込まれることとなった。一時期は若者のヒーローとして、日本を代表する経営者として国中で絶賛されていたのが嘘であるかのように、人々は手の平を返し、「犯罪者」「日本の球団数を12に保った事以外何も成し遂げていない虚業の男」という烙印が押された。

2004年には9000億円以上の時価総額を有していたライブドア(元有限会社 オン・ザ・エッヂ)という会社も、最終的にはピーク時の価格の0.7%である63億500万円でNHN Japanに譲渡された。この一連の騒動を受け、日経平均は6%もの下落を見せた。全財産を奪われてしまったような人も数千人単位で存在するだろう。彼はライブドアショックという事件を通じて、日本という国から様々なものを奪い、肉体的、精神的に多くの人間に苦痛を与えただけでなく、法的にも罪を犯した。だが、彼が犯した最大の罪は、日経平均に6%ものショックを与えた事でも、数千人単位の人間を路頭に迷わせてしまった事でも無い。

日本に芽生えつつあった若者のベンチャーマインドを奪ってしまった事だ。

彼が逮捕される以前と以後で、明らかに意識の高い若者を取り囲む空気が変わった。
ライブドア事件が起こる前、特に2005年なんかはまさに「起業>就職」という図式が成り立っていたし、史上最年少で東証1部上場を果たしたリブセンスの村上太一氏が大学生になったのもこの年だ。就職活動におけるグループ面接の場でも「学生時代に起業していました」みたいな、いけ好かないヤツが大挙していた(らしい)し、僕の周りを見渡しても(成功しているかどうかは別として)、学生起業になんの珍しさも感じなかった。起業とまではいかないまでも、「これからは大手じゃなくてベンチャーだよね」といった考えを持っている大学生は多数存在していた。

ところが、2006年1月を境に、この空気感が根底からひっくり返った。
起業なんてしても失敗してしまう。出過ぎた杭は叩かれる。そういった閉鎖的な空気感が、梅雨の時期に分厚い雲が空を覆うように、徐々に日本という国を覆っていった。実際、この空気感は、日本の若者の行動を大きく変え、ベンチャーマインドに満ち溢れていた優秀な若者達-たとえば僕-を三菱商事といった総合商社への内定獲得へと駆り立てた。

ライブドア事件後のいつぞやかに実施された「息子に入社させたい企業」ランキングでは
1位 三菱商事
2位 地方公務員
3位 トヨタ自動車
と、安定した大企業・公務員が名を連ね、それまで人気就職企業にランクインしていたベンチャー企業は忽然と姿を消した(この閉鎖的な空気感は留まることを知らず、日本経済新聞社が2014年春卒業予定の全国の大学生を対象に調査した就職希望企業ランキングでは、就職人気ランキングのベスト10が全て金融機関になってしまった)。

こんな風に、若者の志向は2006年1月を境として、
「起業・ベンチャー」から「大企業・安定」へと変わってしまったのである。ライブドア事件が起こってしまったことにより、若者の「働く」ことに対する空気がガラっと変わってしまったのだ。

堀江氏(ライブドア)が行った事はそもそも罪に問われるべきものだったのか。仮に有罪だとしても、強制捜査する程の罪だったのか。仮にそうだったとしても、日経平均株価に大きな影響を与える可能性のある月曜日に捜査が行われるべきだったのか。某社はライブドア及びライブドアの子会社の株式の信用担保能力の評価をゼロとするべきだったのか。これら一連の騒動は全て堀江氏(ライブドア)の責任なのか。という事は散々議論されてきていることなので、ここで改めて触れるつもりはない。ただ、確実に言えることは、最高裁判所での判決により有罪と認定された事、そして、彼が逮捕されてしまった事で、日本の空気感が変わってしまった事だ。そういった意味で、堀江貴文氏はこの閉鎖的な空気感を作った主犯なのである。

さて、僕は彼が逮捕されて以来、この空気感を作った戦犯(たとえ、そのように仕立て上げられてしまったのだとしても)である彼が、この腐臭の漂う日本の閉鎖的な空気感に対して何を思っているのか、気になって仕方が無かった。そして、「ゼロ」という書籍(プロジェクト)にはこの長年の疑問に対する答えがあるのではないかと思い、ブロガーミーティングに参加した。

そんな経緯で、本書を読むに至った訳であるが、実は、この本を読んだ時、実にツマラナイと思った。何故ならば、この本は、これまで氏が出版した凡そ47冊の書籍の単なる焼き直しでしか無かったからだ。実際、ページを捲ってみても、「オヤジにはなるな(思考停止するな)」「お金ではなく信用に価値がある」「貯金では無く自分に投資しろ」といった、どこかで見た事ある言葉ばかりが字面を飾っていた。ただし、ある1点において、この書籍は従前の書籍とは大きく異なる。これまでの書籍とは明らかに一線を画する描写が存在するのである。

「挑戦と成功の間をつなぐ架け橋は、努力しかない。」

あの自ら誤解される事を好む男が、努力の片鱗など見せなかった男が、「努力」という言葉を使っているのだ。実は、よくよく読んでみると、ツマラナイと思っていたこの本が、実は非常に面白い書籍である事が分かった。「麻雀に明け暮れていたクズ学生」であり「女の子にモテなかったダサ男」が、どうやってたった10年でスターダムにのし上がる事が出来たのか、これまで語られてこなかった(いや、正確にはこれまでも語られてきたのであるが、理解されてこなかった)、本当の理由が分かるのである。

ところで、この書籍には以下の記述がある。
「当時の僕は、若者のベンチャーマインドや起業家マインドを奮い立たせるのに、微力ながらも貢献できている実感があった。ベンチャーをめざす学生、起業家をめざす若者は増えていったし、学生ベンチャーでさえ珍しくなくなった。いまでも、セミナーなどで「堀江さんの本を読んで企業を決意しました」と言ってくれる若者に出会う機会は多い。非常にありがたいことだ。しかし同時に、せっかく踏み出そうとした若者たちを委縮させる結果になってしまったのかもしれないと思うこともある。」

彼自身の言動が若者のベンチャーマインド育成に影響を与えている事を、彼自身は認識していた訳である。そして、自身が逮捕・拘留されたことにより若者のベンチャーマインドを委縮させてしまった事も。そうだとしたら、彼(というより彼を巻き込んだ一連の事件)が摘み取った若者のベンチャーマインドを、今後どう育成する、あるいはしないつもりなのだろうか。その答えは書籍にはっきりと記載されているが、ここでは記述することはしない。ただし、答えを引用する代わりに、彼のブロガーミーティングでの発言を引用したい。

「出所後にどうしようかと刑務所の中で考えた時、2つのプランが浮かんだ。一つはのんびりと静かに宇宙事業に取り組むというプラン。そしてもう一つは兎に角忙しくして、あらゆることに全力で取り組むプランだ。」

彼の仮出所以降の行動を見ていれば、どちらのプランを選んだかは言うまでもないだろう。そして僕は、彼が後者のプランを選んで本当に良かったと思っている。何故ならば、その選択がいずれ、若者のベンチャーマインドを再び育み、日本の腐った空気感を少しずつ変えていってくれるだろうと期待してやまないからだ。世間が創り上げた「ホリエモン」像を演じる役者としてではなく、一人の堀江貴文という人間として、どのような役柄を演じ切ってくれるのか、今後が非常に楽しみである。

堀江貴文さん、仮出所おめでとう。正式に釈放された後も、ガンガン働いて下さい。僕も、今日もあくせくと働きます。




書籍「ゼロ」はこちら

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