2011年11月04日

住宅設計--塗装工事のピンキリを見抜く方法はあるのだが?

RIMG0019 塗装工事屋のおやじSさんが 大工の棟梁Aさんと一緒に打合せに事務所に来た


 もう30年もの付き合いのおやじさん 多分 S塗装社長 という呼び名なのだろうが 己れにはオヤジさんだ
 己れの若い頃から塗装の奥義をいろいろ勉強させてもらったオヤジさんである


 今日も 工事中のK住宅の 造作材の塗色の話で Sさんとああでもない こうでもない と 色定めをした後 棟梁Aさんを含めて楽しい雑談になる


 Sさんがある時手がけた住宅の塗装工事で 下塗 中塗 上塗を それぞれ 異なった色で塗るように要求する しかも 中塗の色は そして上塗の色も 塗る日の直前までそれぞれの色番号を提示しないという 住宅設計事務所建築家 がいたというお話


 その住宅設計事務所建築家は 全部の下塗が終わったところでその塗装現場確認をし その上で 下塗と異なる色の中塗の色番号を提示し 中塗の確認が終わったところで やっと上塗の仕上色の色番号を提示したのだそうだ


 中塗の一部を そしてもちろん全部も省略すれば その下の下塗の異なる塗色が見えているわけだから 一目みれば たちどころに工程省略の不良工事が明らかになるという理由なのであろう

 確かに これも 設計事務所建築家の工事監理の一つの方法には違いないのだが



 塗装工事は その工事費の内訳では 工賃の占める割合が多く 塗料価格の ピン キリ もさることながら その工程の手間を一部省く事は 当然 塗装工事費の低減につながる

 それは 確かに工事費の低減にはなるのだが その代償として 塗装の耐久性に大きな差が生じるという 性能の大幅ダウンにも繋がることになるのだ
 それは建築主の不利益にも繋がるのである


 安かろう悪かろうになってしまうのだ


 一方で この建築家の指示のように3段階の色がそれぞれ異なると 塗られた色の上に塗る塗料は その下の色を隠すためにどうしても厚く塗ることになる
 塗装面の耐久性を求めるのであれば 同じ色の塗料を 出来る限り薄く塗り重ねること が重要である という塗装の原則に反するのだ


 Sさんも 「しっかりと塗り重ねたが 剥がれやすいのではないか 耐久性が心配なんです」 と云うが 「監理者の指示なので それ以上はどうにも出来ませんでした」 とも云った



 住宅一軒分の塗装工事の 下塗 中塗 上塗 の工程の全てを 住宅設計事務所建築家が現場につきっきりで確認することは 残念ながら現実的な話ではない

 これは工務店の現場監督の役目とも云えるが 殆どの場合 これもおこなわれるのは稀なのが現状なのではないか


 では 定められた仕様通りの塗装がなされていることは期待できないこととして工事監理を行わなければならないのか



 たまたまこの話題は塗装工事の話ではあるが 昨今では 建築設計者建築家を含めて 建築に携わる人間は性悪な人間である という前提で 建築基準法の運用基準が定められているように思えてくるのは 自らの職能に常に責任をもって臨んでいる建築に携わるほとんどの者にとってはまことに残念なことである



 人類最古の記録された法律 「ハンムラビ法典」(紀元前18世紀) に 「建築家が己れの職能を怠り建てた家が倒壊し建築主が死んだときは 建築家は死刑に処される」 とあるのだそうだ

 

 そうであっても仕方がないと思えるほど近頃の住宅建築工事には今回のようなたぐいの話を多々聞く 
 それだけ自らの職能に責任を持って臨まない人も存在するということなのだろう

 己れとしては死刑になる建築家にはなりたくないので 工事監理には 性悪説 に従って臨まなければならないのだろうが だからといって 仕事の相手を 信頼出来ない 信用出来ない ことを前提とした工事監理をしなければならないとしたら残念なことである

 信頼されていないと感じる相手も 自らの職能に情熱を傾ける意欲がそがれてしまうのではないか


 住宅工事監理での己れの役目は 各職能者達の施工技術と人格に信頼をおいて 設計図と仕様書のとおりに住宅が造られてゆくのを 己れの習得する技術的な理論の裏付けを持った目で 見守り そして 確認すること ではないか と 思う

 そしてまた 住宅設計事務所建築家の責任として その建築主にとっての 住まいに抱く夢 を その予算の範囲の中で最大限に実現させ その適正な対価―工事費―を査定して その結果に建築主及び工事施工者の納得が得られたうえで 建築主と工事施工者との間で建築工事請負契約が結ばれること に向かって全力を挙げなければならない と思うのである


 適正でない工事費で工事を施工者に押しつけることがあるとすれば それは施工者の 苦し紛れの手抜き工事等につながり それをさせまいとする建築家との泥沼の戦いとなって 結果は 建築主の満足につながることとは正反対になってしまいかねない



 「人を幸福にするのは お金ではなく フェアで公正な社会である」

と云った学者がいたが

 自らの職能に責任をもった忠実な仕事 それに対する対価の正しい評価 は いかに重要なことであるかを思う






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skimura16jp at 22:31コメント(0)トラックバック(0) 

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