業界のカタスミで細々と~涙のサンダーロード

家庭とゴルフと福岡を愛する団塊世代の日記です。福岡市出身。世田谷区桜丘在。職業は自称、音楽コンサルタント。屋号はTHUNDER ROAD。いまだ誰も相談に来たことありません。音楽業界44年目。特にレコード会社現場時代は洋楽黄金の80年代。業界の片隅で今だ細々と粘っているオッサンの、ボケ防止を兼ねた音楽業界人生の整理と復習です。想い出は美しく記憶は嘘つき、です。基本テーマは仕事で関わった洋楽昔話ネタとたまにゴルフ話。好きなものは幕末と明治維新。特にジョン万次郎と坂本龍馬。忠臣蔵。秀吉信長の時代。スターウォーズとキャプテンアメリカ&その仲間たち。特にブラック・ウィドウに惚れてます。そしてやっぱり最後はこの人、ブルース・スプリングスティーン。大好きです。    

unnamed (17) 先日スプリングスティーンのオフ会に参加させてもらいました。その時に代表のMすださんが見せてくれた、フォトパネルが左の写真。商品購入者特典のものです。いやぁ、大事に持っていてくれている事に感謝感激です。別添で店頭手渡しする解説書・写真集に加え、このパネルも初回プレゼント。お店の方、ご迷惑おかけしました。

この写真、日本でモノクロに着色した"かしこまり風ポートレイト"ですが、制作サイドではプロモ用DJコピーのジャケットとしても使用しています。ちなみに、この二種の写真使用許諾に関してはマネージメント事務所にもCBSにも相談ナシです。許諾求めると高い確率でNOと言われます。来日公演中の会場即売特典でのパネルも見つかってやめさせられてます。まして、その時私は直接バーバラ・カーに叱られていますので、"あんた何度言ったら分かるの?ダメって言ってるでしょ"って、あきられるか激怒されるか、に決まってます。

懲りないCBSソニーです。"これぐらい日本の判断にまかせてくれるでしょ。ばれたら、謝るだけ。やっちまえ"という、乱暴な逞しさで突き進んでいます。ごめんねジョン&バーバラ。

unnamed (16) 7500円の高額商品ですので通常のように、商品と同じものを宣伝用サンプル盤として使うわけにはいきません。
放送用音源としては、アルバムから代表曲を1枚にまとめたこのDJコピーをサプライしています。いまでも熱狂的なファンをもつスプリングスティーンですが、当時は異常ともいえるほど世界中で彼のプレミアム・アイテムがもてはやされてました。非売品のDJコピーや宣伝販促物は大人気です。特に日本製は正規の商品すら丁寧なつくりで海外では高い評価。結構な金額で取引されていました。

unnamed (5) 営業出身洋楽マンのKりはらさんはDJコピーマニア。ミュージック・マガジンは創刊号から全刊保管しているほどの収集癖満載の人です。この左の写真、彼がどうしても発売前の盛り上げとして、店頭演奏用のDJコピーを作りたいという事で制作したものです。

我々の制作物が、高額で取引されるとなると、微妙な気持ちになってしまいます。よって社内で制作する場合は、格好いいものを作りたい、と言う気持ちを封印して、ダサダサな事務的な仕上がり感を心がけていました。でもね、名前入れてギターの写真をこういう風にデザインするって、吹っ切れてないですね。意図的なひどいデザインって、こちらもよほど気合いれないとできないものかも知れません。

LP5枚組。CD3枚組。CA3本組。この時代まだLPが主力商品です。でね、大特急で商品を作っていくのですが、なにせ緊急同時発売は大変かつ面倒でした。(手元に残っていた資料で分かりましたが、LPとCDが11月9日同時発売。CAは11月21日発売でした)海外からのパーツを入手する外国部、制作進行部や生産管理部も頑張りましたが、最後はフィニッシュト・プロダクツに仕上げる工場が一番大変だったはずです。LPはご存知のように箱もの。CDはマルチのジュエルケース。カセットは厚紙で3本束ねるようなものだった記憶あります。
ダウンロード (7)静岡工場でのパートのおばちゃん達大活躍です。LPや帯などバラバラに納品されたパーツをひとつづつ箱にセットしてビニール袋にいれます。それを段ボール箱に箱詰めします。全て手作業です。
どうでもいい話で恐縮です。工場の人事部はパートタイマーの時間管理が大変でした。仕事量も多くて働いてもらいたいのに彼らの年間のパート所得がある金額を上回ると、税金の問題も勃発します。配偶者控除を受けれなくなったら大変です。当時、右肩あがりの製造業では、このパートタイマーの労働時間の問題は結構シリアスに取りざたされてました。って全く本筋に関係ない話ですみません。

images (17) ついでにどうでもいい話を連発。私自身もLPとCDはいまでも大事にライブラリィにありますが、さすがにカセットは見当たりません。これがどういうパッケージだったのか調べてみようと、思わず”カセット3本組”でググってみましたら、こんなんでてきました。でね、笑っちゃいました、ってだけです。(閑話休題おしまい)

ま、なにはともあれ、関係部門皆さんの頑張りで発売日を翌日に迎えました。まさに商品の店着日です。ギリギリの製造ラインなので、本社の制作部門に届く商品サンプルも、店着日と同じタイミングでした。そしてこの日の朝、先輩のOかだRょうさんが血相変えて飛んできました。

images (26) 彼は3代目のスプリングスティーン担当です。闇吠えやリバーを担当しています。ちなみに2代目がボブ・ディランで有名なSがのヘッケルさん。彼は明日暴を発売しています。Oかださん、ジョン・レノン的な外見をもつ、穏やかな人なので"急ぎ足で飛んでくる"タイプではありません。そのOかださんが走りこんで来て、力強い声で"おい、キクノ大変だぞ!" この時の先輩の顔の表情も、言われた言葉も正しく覚えています。

ついに大事件勃発です。(もったいぶって、ここまで引っ張ってきました)





images (22)この年、7月にはTOPGUN プロジェクト始まっていますし8月にはBILLYJOEL/THE BRIDGE発売しています。9月ぐらいまでが、少人数のチーム制で編成&宣伝やっていた ダウンロード (8) 頃です。Tいちさん、Uださん、Hゆるさん,Aかがわさんとか一緒だった記憶あります。Oにし部長最後の年で、何がどうしたのか半年単位で社内シフト変更されまくりまくりすてぃ状態でした。

調べて見ると、このライブアルバムは11月9日発売。8月10日のブログにも書きましたが、私、直前の10月15日から21日まで海外出張しています。会社をあげて緊急発売体制とってる時にですよ。それも無邪気にBILLY JOELのNYマジソン・スクエア・ガーデン公演の取材です。タイアップでANAさんに無料航空券提供してもらって、WASHINGTON DC経由でのNY行きです。週刊プレイボーイ企画でした。

images (31) WHY、なぜ?ヤザワですよ。こんなややこしい時期に、担当者がよくぞ海外出張に行けたな、と驚くばかりです。自分でも不思議で仕方ありません。ブログ書きながら振返ってました。帰国してからの突貫作業としても、さすがに11月9日の発売は不可能です。という事は、全ての入稿作業が終わり制作の手を離れて"製造ラインに乗せた"、だから"NYへ行けた"という事でしかありませんね。この頃、きっと制作進行状況次第では代わりに誰がNYへ行くか、てな話がされていたはずですね。

最終的に、LP5枚組。カセット3本組。CD3枚組。収録曲数は全40曲。タイトルは、BRUCE SPRINGSTEEN & THE E STREET BAND LIVE/1975-1985 価格は3アイテム 全て7500円に決定。結構な高額商品です。当時の輸入盤価格は覚えていませんが、1000円以上の差はあったはずです。ユーザーを装ってタワーレコードに電話して、入荷日を探ったり価格を調べたり、SPY活動やってました。懐かしい思い出です。

images (11)これでも邦題と呼べるのか?ですが、しっかりと付けさせて頂きました。カタカナではありません。THE "LIVE" です。ちなみにBORN IN THE USAは最初から邦題つけず英語表記のままだったのよ、知ってました?ボーン、じゃ字面が格好悪いからね。
これは彼らの10年間の激闘の記録です。我々ファンにしてみても同じ10年分のディープな愛情と想い入れがあります。そして前年の来日公演のお礼などをたっぷりに注入して、なぜだか定冠詞の THE を付けたくなりました。

日本人のカタカナ英語的なレベルですが、そんじょそこらのライブと一緒にしないでね。これが本当のライブアルバムというものですよ、と奉っているからこそのTHEです。もう神の領域に近く、宝刀・鏡などの神器と同じ位置づけです。 

商品表面でこちらで工夫できるものは帯だけです。帯はPOP。気合込めて輸入盤との差別化をはかります。豪華感と特別感の演出で赤と金色をフィーチャー。ますます神社仏閣の世界ですが、印刷上、金色は金のインクでしかできません。こういう特別な色使う場合、当時は社内決済が必要でした。この数年前までは、帯をカラー4色にする事すら社長決裁マターでした。製造原価意識が猛烈に高い会社でした。社長えらい。社員面倒くさい。会社儲かる。 

images (55) 上のLP箱の商品写真これ初回分です。この帯ね、普通だったら左端にセットされますが、ご本人が左に立っているので右にとりつけています。右の写真はある事件(これ今回の大事なネタね)があって、少し後から発売になったCDですが、帯のサイズも狭く本人の姿を邪魔しない、というところで通常の左セット。これは調子にのって全面的に金色ですね。

本人になりきって収録候補曲の準備していましたが、該当したのは60%ぐらい。それでも作業は軽減されるものです。制作ADにYねちゃんがいてくれたので非常に助かりました。外出中でも作業は止まらないし、校正も一つの目で見るより二つの目です。スプリングスティーン的に言うと、TWO HEARTSの歌詞の世界です。

久しぶりにこの5枚組LPを引っ張り出して帯をじっと眺めてました。帯裏に発見です。"この商品の解説書・写真集は別添のため、お買い上げの当店にてお渡し致します。"ですと。 解説書も含めて別添ということは、箱の中はレコードだけ。スカスカやないかい!です。 色々と当時の事が思い出されます。(写真集って、USオリジナルで全商品についてる歌詞ブックレットです。ちょっとゲサオーな表現です。不当表示とちゃうのかいな?)

つまりは5枚組のBOXですから最終工程は全てが手作業。LPだけで10万セットに近い初回数字だったはず。そりゃ時間かかりますよね。制作工程での封入作業をかっ飛ばして、別添の店頭渡しにしてスピードを最優先しています。お店とユーザーの方、面倒かけてすんません。当然、初回生産分だけだと思いますが(美しく言うと)一日も早く皆さんに届けたい。(本音は当然)輸入盤じゃなく、こっち買ってね、です。

sim ネットで発見。セカンドランなのか再発分なのか不明ですがアマゾンで売られてました。LP5枚組の帯に注目。初回分は赤色地に金文字でしたが、これはCD同様に金色地で文字が赤や墨。なんて細かいこと書いてると、マニアックなコレクターみたいですね。ビートルズものならもっと盛り上がるのでしょうか?  

ちなみに、国内盤の付加価値のひとつとしては、これは自分自身がファンなので本能の赴くままですが、解説書の中の文字情報に気合込めてます。まずは前年日本公演の全セットリスト。それと日本公演時のブルースの行動。そして大阪公演最終日に遭遇した、少年二人にブルース自身が使ったピックやハーモニカなど渡していた、という感動的な話。自分は二人にとっての大事な場面の目撃者でしたので、彼らのための証拠として残してあげたいと思ってました。 

11月9日の発売日に向けて商品は工場のラインに乗ってます。
事件発覚まで、あと少し。ドキドキです。




images (59) スプリングスティーンのBORN IN THE USA  TOURは1984年6月29日から1985年10月2日まで、4ブロックに分かれ計156回のライブが行われています。1ST LEG が85年1月27日までのUS TOUR。2ND LEG が85年3月21日から4月23日までの日本含むパシフィック・ツアー。

そして3RD LEGは85年6月1日から7月7日までのヨーロッパツアー。4TH LEGがUSスタジアムツアーで8月5日から10月2日まで。16か月です。本人のコンディショニング管理がどれだけ大事かですね。ツアーに向け、アルバム終わって週3日ジムに通って鍛えていた、という事もうなづけますし、クルー達はアパートを解約してツアーに臨むって状況が理解できます。

images (3) 当時の金額でBOX OFFICE的には$90ミリオン。(当時は1ドル、約250円。よって225億円(円に換算しても意味ありませんが、いわゆる座席販売だけの金額です)。グッズなどいれると同じくらいの金額が動いているはずです。ま、興行全般で450億円規模の大成功です。
もちろん、ここには1000万枚売れたアルバムからの原盤印税や作家印税など、は含まれていません。純粋ライブ・ビジネスだけでございます。大雑把な概算で恐縮ですが、この1年間、JON LANDAU MANAGEMENTは年商600億円くらいの会社であったということですね。みんなお金持ちです。これはホントです。
images (1) てなツアーでしたが、ライブ・アルバムが発売されるのでは、という情報は86年を迎えた頃から、CBS内部で取り沙汰されていました。US出張の度に、噂の精度を確認するのですが、もちろん答えは"スプリングスティーンのみが知っている"でした。誰もコントロールできません。ジョン・ランドウすらそこはデリケートに接しています。本人が音源を聴いて出したいと思えば、出るだろうし、出したくないと思えば永久に発売されないものです。

ダウンロード (2)洋楽ディレクターの仕事として、ヒットに向けての戦略(マーケティング&プロモーション)を練り上げる前に、パッケージ(商品)を作るという、制作そもそもの業務があります。ま、パターンは決まっているので作ればいいってものですが、当時は輸入盤がライバルです。スピードが勝負でした。洋楽を有する国内盤メーカーにとってみれば、当時のタワーレコードは天敵のような存在でした。

洋楽メーカーはいずれも商品を世に送り出すスピード体制をつくっていました。商品事故を起こさず最大のスピードで走るわけです。ま、100キロぐらいのスピードで、狭い路地を突き抜けるってものですね。これが、ポイントね。今回のネタはここだから。

スピードアップに関してはアメリカCBSの協力と社内体制が前提です。US盤の製造タイムラインとほぼ同じ時間軸で日本でも工場を動かせればスピードにおいては輸入盤に対抗できます。アートワークのフィルムとマスターテープを千葉で受け取り、その日のうちにフィルムは社内の制作進行部門から印刷所へ。MTはスタジオへ直行して音のチェック終了後東名高速飛ばして静岡工場へ即納です。国内添付物(ライナーや歌詞カード類)の制作が足引っ張ると本末転倒です。

そして、なにより価格の競争もありました。円高傾向になってくると、どうやっても輸入盤との価格差が広がります。この差を埋めるためのアイデアを考えなければいけません。どのような付加価値がつけば、国内盤を選んでもらえるか、当時はいつもこれが鍵でした。もちろん、輸入盤指向のユーザーは想定外です。彼らは輸入盤専門店で購入します。国内盤を発売する以上は、数百円も安い輸入盤が併売されている店頭で、我々の商品を選んでもらいたい、と思うのが切なる願いでした。歌詞カード、対訳。解説書は必須です。ステッカーやポスターも定番です。そもそもレコードは高額商品ですから、メーカーとしては購入者が手に取って満足感を抱いてもらう事を心がげていました。 

いよいよライブアルバム発売は噂から現実的になってきました。とはいえ、正確な発売日と商品形態の詳細は依然不明です。ライブものですから、推定でアルバムは2枚組とか3枚組かな、と勝手に思ってました。全くスプリングスティーンの事分かってなかったですね。凡人です、私。この段階では、もちろん5枚組(カセット3本組、CD3枚組)なんて思いもよらない時期ですね。なにはともあれ、BOSSの気合入ったライブ商品ですので、じっくり余裕を持って制作にあたりたいと思っても、それは許されません。商品形態の詳細は不明。収録曲目数も不明。何も分からず状態でした。でも何か準備しておきたいですよね。 

ダウンロード (5) ジャケットなどのアートワークなどはUSからの到着を待つしかありませんが、ライナーや歌詞カード、帯原稿他情報系はこちらで準備します。せめて収録曲目でも分かれば、そのタイトルや対訳の文字を先行して写植の準備もできるのですが、それも出来ません。

歌詞に関してはオリジナルで表記されてくる可能性が高いのでパーツ到着を待つのみです。仮に3枚組で30曲ぐらいとしても、写植文字を打つ、そして文字校正するだけでも1日はかかるわけですね。半日でもセーブしたいと思ってました。

images (8) 何ができるか。制作進行担当のSくまさんにも理解を求めて、無駄になることは覚悟の上で、収録楽曲を予想して写植発注させてもらいました。収録楽曲を多めに40曲ぐらいを選びます。これとて全て原稿が必要です。これがちょっと面倒くさいのですね。過去作品ライナーから対訳をコピーしては切り貼りで40曲分の原稿作成いたしました。いずれやらねばならない作業です。大半は該当する自信はありましたし、時間も随分セーブできると言うものです。

TOURでスプリングスティーンがプレイしたセットリストを眺めつつ、私がBOSSになりきります。俺ならこれを収録するぜ、という降臨状態で収録楽曲を選んでいます。そして写植の乱れ打ち状態。詳細な商品情報を待ちます。

↑このページのトップヘ