海外レーベルとのコミュニケイションは、日本の洋楽チームにとってはある種のライフラインです。何がいつ発売されるのか、その製造パーツはいつ出荷されるのか、などの基本形からプロモーションに関わる、ライブ情報から取材の依頼など、日本で何かするする時は全てが、このレーベルを通じて行われるのです。
我々CBSソニー洋楽のほとんどはアメリカCBSからサプライされるプロダクツでした。つまり全通信はCBSインターナショナルという、CBSレコーズ内に”アメリカ産の音楽をアメリカ以外の国で売る為”の組織が相手でした。直接アーティスト側とのやり取りは、当然ご法度でしたし、来日を通じてマネージャーと親しくなっても、取材のリクエストは、この組織を経て彼等に伝わり、同じルートで戻ってくるので時間がかかるのです。
彼等は本国での大メジャー・レコード会社の国際部という感じの部門ですが、ま、簡単に言うと、直接ヒットをつくるという事を生業にしておらず、ある種の情報サービス機関です。
ヒットをつくる事に汗かいているこちらからしてみれば、例えば音楽誌の取材で”何日までにインタビューを終えないと発売のタイミングに間に合わないから絶対なんとかしてくれ”と頼んだら、”マネージメントがつかまらないから連絡とれない”とか、”やりたくないと言ってる”とか、右から左への子供の使いみたいな返事を寄こしやがったりするのです。
連絡つかない、と言ったって、生きて地球のどこかにいるだろう、って事ですし、”もうちょっと粘ってくれよ”、とか、”説得してくれよ”的なストレスも多く、”おめーらはそれでも当事者なの?”と憮然とする場面が多々あったのです。
どれだけ緊急の案件で連絡入れてても、夕方17時には仕事辞めて帰っちゃって、また明日ね、という感じのスタッフも多かったです。ホント、仕事しないよ。自分の評価が上がる事のみ一生懸命やってるやつの顔思い出しました。思い出して怒りがでてきました。
で、メタリカはアメリカでの発売はエレクトラ・レコーズですが、日本のCBSソニーはマネージメント事務所であり音楽制作会社であるQプライムとの直接の契約です。よって、全ての交渉事は彼等と直接にできます。先方は自分たちのアーティストが日本で売れるように当然の事ですが、一生懸命ですし、我々のリクエストや質問に対するレスポンスも素早いものありました。
こちらのプランニングに対してもこまかいところまでつっこんでくるような面倒な事もありますが、トップのピーター・メンチ以下現場スタッフまで非常に優秀で一生懸命やってくれました。身内のCBSとのコミュニケイションより100億倍スムーズでした。
また日本のプラン二ング・アイデアやマーケティング力を信頼してくれている事もあり、彼等とは日常的にかなり頻度高く連絡とりあっていました。そして、新譜”メタル・ジャスティス”のアメリカでの発売日が発表されると、その数か月前から、色々と準備のために、彼等とのやりとりも頻繁になってきます。
メタリカに限る事ではありませんが、担当者Mすみのアイデアを国際渉外のTまみさんがQプライムにぶつけ、ああでもないこうでもないとか、だったらこれはどお?となどの密にコミュニケイションをとってやりたい事(目的)に近づけていくのです。
前回の内憂外患の続き。円高の背景をうけ安い!早い!の輸入盤は、いずれ地方の中都市にも多数出店しましたが、まだこの時点では大都市限定のもの。とは言え、例えば当時のスーパーセールス系のビリー・ジョエル・クラスの場合、輸入盤で国内盤売り上げ枚数の20%前後にあたる15万枚くらいは売れていました。仮に全員がビリーの国内盤を買ってくれていたとすると、売上ベースで3億円ほど上乗せになるのです。

これはついでのオマケ話ですが、ちなみに80年代末になると、本国との交渉(出荷制限や印税分配率etc)を経て輸入盤もそれぞれの発売元のレコード会社が取り扱う事になり、洋楽メジャー各社営業部に国内盤と輸入盤の二種類を取り扱う部門ができました。
それまで”輸入盤専門店”として超宿敵の位置づけにあったタワー・レコードは後に全国に出店攻勢をかけ、我々の輸入盤を仕入れてくれるし、しかも国内盤の取り扱いも始めたので、取引額もトップクラスとなり一気に大事なお得意様になりました。
タワーだけでなくHMVや丸井と組んだヴァ―ジン・メガストアなど大型外資も上陸し、正規輸入盤を取り扱う日本のレコード産業の重要な一員になったのです。蛇足ながら、国内盤の方がはるかに利益率は高いので、こちらが主力であることは変わりません。
さてそういうわけで、前作の来日とEPのヒットで上昇気流に乗っている事がクリアになりました。この新譜で一気に数段上の位置づけに持ち上げたいと思ったメタリカですので、特に輸入盤に食われて売り逃し、なんて悲惨な事絶対したくありません。
Mすみ、TまみさんからQプライムに対しては、日本のマーケット事情を十分に理解させ、日本盤の発売日をアメリカ発売に一日でも近づけれるように最大の努力をします。日本側のプレスや印刷工場のタイムラインを伝え、彼等からは本国で動いているレコーディンの進捗やアルバム印刷物の進行状況を日々情報共有していました。最終的にはマスターテープは、何日何時発の貨物便に乗せる、というところまで追い込み、この情報を元に工場でのプレス・ラインを確保しておくのです。
これはこれで輸入盤対策として緊急発売体制の中で動いているのですが、担当者Mすみの仕事としては、輸入盤に対する国内盤の魅力をアピールし、そしてレンタル対策としては借りずに買いたくなるような商品企画を考えなければいけません。
メタリカのセールスは欧米に比して売り上げ的に後れをとっていた日本国です。担当ディレクターとしては、ここが踏ん張りどころです。なんとか追いつく為に、より話題を大きくしてロック・ファン全体にアピールしていくことを模索してました。
それが従来のファンに喜んでもらえ、新しいファンの獲得につながるものならば上出来ですし、しかも話題としてこのことがメディアに取り上げてもらえるような企画ならば最上級の仕事です。Mすみは知恵絞りあげてました。

彼等は本国での大メジャー・レコード会社の国際部という感じの部門ですが、ま、簡単に言うと、直接ヒットをつくるという事を生業にしておらず、ある種の情報サービス機関です。
ヒットをつくる事に汗かいているこちらからしてみれば、例えば音楽誌の取材で”何日までにインタビューを終えないと発売のタイミングに間に合わないから絶対なんとかしてくれ”と頼んだら、”マネージメントがつかまらないから連絡とれない”とか、”やりたくないと言ってる”とか、右から左への子供の使いみたいな返事を寄こしやがったりするのです。

どれだけ緊急の案件で連絡入れてても、夕方17時には仕事辞めて帰っちゃって、また明日ね、という感じのスタッフも多かったです。ホント、仕事しないよ。自分の評価が上がる事のみ一生懸命やってるやつの顔思い出しました。思い出して怒りがでてきました。
で、メタリカはアメリカでの発売はエレクトラ・レコーズですが、日本のCBSソニーはマネージメント事務所であり音楽制作会社であるQプライムとの直接の契約です。よって、全ての交渉事は彼等と直接にできます。先方は自分たちのアーティストが日本で売れるように当然の事ですが、一生懸命ですし、我々のリクエストや質問に対するレスポンスも素早いものありました。
こちらのプランニングに対してもこまかいところまでつっこんでくるような面倒な事もありますが、トップのピーター・メンチ以下現場スタッフまで非常に優秀で一生懸命やってくれました。身内のCBSとのコミュニケイションより100億倍スムーズでした。

メタリカに限る事ではありませんが、担当者Mすみのアイデアを国際渉外のTまみさんがQプライムにぶつけ、ああでもないこうでもないとか、だったらこれはどお?となどの密にコミュニケイションをとってやりたい事(目的)に近づけていくのです。
前回の内憂外患の続き。円高の背景をうけ安い!早い!の輸入盤は、いずれ地方の中都市にも多数出店しましたが、まだこの時点では大都市限定のもの。とは言え、例えば当時のスーパーセールス系のビリー・ジョエル・クラスの場合、輸入盤で国内盤売り上げ枚数の20%前後にあたる15万枚くらいは売れていました。仮に全員がビリーの国内盤を買ってくれていたとすると、売上ベースで3億円ほど上乗せになるのです。


それまで”輸入盤専門店”として超宿敵の位置づけにあったタワー・レコードは後に全国に出店攻勢をかけ、我々の輸入盤を仕入れてくれるし、しかも国内盤の取り扱いも始めたので、取引額もトップクラスとなり一気に大事なお得意様になりました。
タワーだけでなくHMVや丸井と組んだヴァ―ジン・メガストアなど大型外資も上陸し、正規輸入盤を取り扱う日本のレコード産業の重要な一員になったのです。蛇足ながら、国内盤の方がはるかに利益率は高いので、こちらが主力であることは変わりません。
さてそういうわけで、前作の来日とEPのヒットで上昇気流に乗っている事がクリアになりました。この新譜で一気に数段上の位置づけに持ち上げたいと思ったメタリカですので、特に輸入盤に食われて売り逃し、なんて悲惨な事絶対したくありません。


メタリカのセールスは欧米に比して売り上げ的に後れをとっていた日本国です。担当ディレクターとしては、ここが踏ん張りどころです。なんとか追いつく為に、より話題を大きくしてロック・ファン全体にアピールしていくことを模索してました。
それが従来のファンに喜んでもらえ、新しいファンの獲得につながるものならば上出来ですし、しかも話題としてこのことがメディアに取り上げてもらえるような企画ならば最上級の仕事です。Mすみは知恵絞りあげてました。