
ここまでブレイクすると、レコード会社の収益とアーティスト側との違いが顕著になります。ロンドン交渉エピソード前に、そのあたりを少々、業界外の方への基礎知識講座です。
まず前提として、この時代はまだレコード会社が音楽業界の主役であり、レコードの売り上げが産業の規模を表していました。メーカーですから商品売上がどういうカタチで業界内に分配されていたか、という事です。アーティスト側(事務所)の視点です。

そしてほとんどのアーティストはアルバム発売と同時にこの新譜のプロモーションを兼ねたツアーにでます。80年代以降はライブとラジオとMTVがヒットをつくっていました。新人で仮に興行的に採算がとれなくても、新譜の宣伝活動は必要ですし、レコード会社も”費用も援助(ツアーサポート)するからツアーに出なさい”とアーティストをプッシュします。と言いつつ、このお金ももらいっぱなしではすみません。これもアドバンスに振替られるのです。

こういうケースもあります。MV費用として仮に5万ドルの予算を宣伝費として用意してくれたものの、アーティスト側からどうしてもこうして欲しいと要望があり、エクストラで3万ドル必要となると、交渉ですが、このオーバー分の3万ドルをアドバンス対象にするとか,米英の業界では大体が、アドバンスとして処理される場合が普通でした。今は知らんけど。
というわけで、アドバンスの合計次第ですが、実は100万枚セールスのプラチナディスクを獲得したところで、アーティストは、それほどレコード印税で儲かるものではありません。もちろん自作自演系なら作家として別の著作権収入があるので実入りは違います。
それでも、いつ印税が入って来るの?です。リードシングルがヒットし、アルバムも大売れし速攻でアドバンスのリクープ枚数を越えたとしても、レコード会社からの印税が入ってくるのは、随分と先の事です。そもそも一般的な印税計算のシメが3か月に一回で支払いはさらにそれから3か月後となると、初回分で大成功してリクープ枚数クリアしたとしても、発生した印税が振り込まれるのは早くて半年先。へたする1年先かもしれません。




キャッシュフロー的にはツアーさえ出れば、アーティスト&マネージメント事務所は、なんとかなるってものでした。ブレイクした時のグッズの売り上げ含めて一日のビジネスを体験すると、レコードのプロモ―ションの為(印税)に時間を割くのは後回しになっても当然かもしれません。