今回も親善試合の感想更新です。この試合はイタリアがホームで開催された試合。
 イタリアとしては、ベルギーに3-1で敗戦した直後なので、負けたくない試合といった位置の試合。
 一方のルーマニアはユーロ本大会出場を決めている。グループFを2位で通過し、10試合を無敗、2失点の好成績。この試合もユーロ本大会へ向けた数少ない強化試合なので気合を入れてくるはず。

スタメン
ルーマニア戦、スタメン

 イタリアは442の布陣。ルーマニアは4231の布陣。ルーマニアも2016ユーロ本大会への出場が決まっているため、親善試合とはいえ、キッチリとした試合になる予感。

前半
 立ち上がりにルーマニアは高い位置での守備。ここから先制点が生まれる。ルーマニアはセンターバックとセンターハーフのパスラインを前線の選手が管理しつつ、ラインは下げすぎないようにというのが狙い。そのため、イタリアはセンターバックから長いボールをペッレへ当てて、そこを起点に攻撃していく意図を見せていた。しかし、前半の7分にイタリアのロングボールをルーマニアのセンターバックが跳ね返し、そのセカンドボールをルーマニアが拾ってショートカウンター。そして、DFラインの裏へのボールの処理をダルミアンが誤ってルーマニアがゴール。

 早い時間に先制したルーマニアは後退して守るわけではなく、イタリアのセンターバックに迷いが見られればプレッシャーをかけてボールを捨てさせるような守備を見せていた。それに対してイタリアはいろいろなボールの進め方を試みる。

 イタリアはセンターバックから一列飛ばしたクサビでFWへダイレクトに入れるパターンやサイドバックからサイドハーフ→FWへ素早くパスを回して中へ起点を作ってから逆サイドへ大きく振るパターンなどが見られた。さらにフロレンツィがライン間へ入り込んでクサビをセンターハーフへ落として、そこからサイドへ振ったり、DFラインの裏へタッチダウンパスを狙うパターンも見られた。

 そしてイタリアのMFで特徴的だったのは、センターハーフの役割とサイドハーフの役割が左右で異なったことだ。マルキージオはアンカーのようなポジションへ移動し、長いボールを左右、DFラインの裏などへ供給することが多い。一方のソリアーノは高い位置をとってFWのセカンドボールやクサビの落としに備えたり、サイドに張ったエル・シャラウィのフォローをしていた。ただ、これはどちらかというと選手の特性からそうなったという側面が強く、そういう選手の起用によるものだったと考えている。

 イタリアのフィニッシュということに関しては、サイドチェンジや中からのサイドへ出たボールを、サイドに張ったポジショニングのエル・シャラウィ、フロレンツィが受けることから始まる。そしてサイドからサイドハーフがドリブルでしかけてクロスだったり、サイドバック、センターハーフと連携し、コンビネーションからクロスといった形が多かった。とにかくサイドからクロスを入れてペッレ、エデルと逆サイドのサイドハーフの3枚に合わせるのが狙いだった。

 また、前半終盤、ルーマニアのサイドハーフの後退が遅れてきたこともあり、サイドバックの裏のスペースへエデル、ペッレが飛び出してボールを進める場面があった。これはイタリア代表ではあまり見られなかった形だったので驚きだった。特にエデルは所属するサンプドリアではウイングとして起用されることもある選手なので、サイドへ飛び出してボールを受けてからドリブルでしかけるプレーも可能だ。

 一方のルーマニアは先制してから、基本的にイタリアがボール保持する場面が多かったこともあって、なかなか攻撃がフィニッシュまでたどり着く場面は少なかった。ただ、攻撃の形はしっかりしていた。サイドバックからサイドへ張ったサイドハーフが縦のパスラインを作って、外から外、外から中と2パターンのパスラインを作る。そして、センターハーフ、サイドバックなどが細かくボールをワンタッチで出し入れしながら、ライン間を攻略し中央突破を狙うプレーが多かった。前線の選手のポジションチェンジもあったが、前の選手のうち一人はサイドへ張って、サイドにもパスラインを確保しつつ、ライン間へ入り込んでいくのが狙いだったのだろう。特に19番のスタンク選手が左サイドに張ってからというパターンが多かった。
 
 また、イタリアとルーマニアでは選手のタイプの違いもあるだろうが、細かいパスワーク、繋ぎなどの点では、ルーマニアのほうがイタリアよりも質が高く見えた。イタリア代表ファンとしては切ないところだ。

 前半をまとめてみよう。イタリアは、保持してからサイドからのクロスを入れるというミッションは達成できていた。しかし、それがゴールへ結びつかない展開。ただ、セカンドボールを拾ってミドルシュートなど、シュート数などはイタリアのほうが多かったように感じた。また、エデルがドリブルでしかけてファールを奪ったり、ラインの裏へ飛び出してチャンスになりかける場面も作れていた。失点シーンはダルミアンとバルザーリの連係ミスだったが、ある意味でビルドアップの不確実性がもたらしたミスだともとれる。コンテのイタリア代表はトランジションからの速攻に弱いのが特徴と言えるかもしれない。

 ルーマニアとしては先制した後はイタリアにペースを譲った。ただ、ルーマニアの速攻もなかなか機能せず、イタリアが前からのプレッシャーを強めていたこともあって劣勢。しかし、イタリアのサイドからのクロスを跳ね返せているので失点はなし。どこかでペースを取り戻したいルーマニアという感じだろうか。

後半
 後半からルーマニアは選手交代による配置の入れ替えはあったが戦術変更はなし。ルーマニアはイタリアが相手でもある程度DFラインを高く保って、センターバックが配球に迷うようならプレスをかけていく。

 一方のイタリアはセンターバックのボヌッチ、バルザーリの配置が入れ替わっていた。おそらくは守備面を考慮しての配置替えだったのだと思う。失点シーンが原因かもしれない。イタリアはボールを保持した局面から、センターバック、サイドバック、センターハーフのところを経由しボールを進める。これは前半と同じ方法が多い。そして、中へ納めてからサイドへ大きく振ってからクロスや、ルーマニアの守備ブロックの外からDFライン裏やクサビを入れてからフィニッシュを狙う。ビハインドということもあってか、前からのプレッシャーも激しく寄せていく。

 すると後半の8分にマルキージオからのフィードを受けたペッレが頭で落とし、それを受けたエデルがエリア内で倒されてPKを獲得。それをマルキージオが決めて、イタリアが同点に追いつく。マルキージオ、ソリアーノのセンターハーフがワンタッチでFWへクサビを入れたり、DFラインの裏へフィードを入れる場面は、この試合を通して多かったので、それが一つ実った形だった。

 その後、イタリアは選手交代でFWを代える。ペッレ、エデルからガッビアディーニ、オカカの2トップになった。そして前半の終盤に見せていたFWがサイドバックの裏を狙う動きをオカカ、ガッビアディーニも見せていた。

 基本的にイタリアが同点に追いついた後も、保持しながらイタリアが攻める展開が続いた。攻撃の形は前半と同じように、センターバック、たまにセンターハーフ、サイドバックなどからクサビを2トップへ入れて、2トップがサイドへ大きく振ってから、外のサイドハーフがドリブルからクロスを入れていく形が多かった。

 後半の20分には、サイドバックからサイドハーフ→FWという形で外外中へ素早くボールを動かしてクサビを入れてから、裏へ走ったサイドハーフがワンツーの形でリターンを受けてサイドを突破し、そのままクロス。このクロスのセカンドを拾ったマルキージオがゴール前へ折り返して、それをガッビアディーニが頭でゴール。イタリアがなんとか勝ち越した。

 その後もイタリアはボールを保持できる展開が続き、ルーマニアが保持してから攻撃してもなかなかシュートまで至らない。

 ルーマニアは後半頭から途中交代で入った17番サンマルテアンを中心に、ボールがよく動くようになった。おそらくサンマルテアンはセンターハーフが本職の選手。配置としてはトップ下に入り、イタリアのセンターハーフを見るのが守備での仕事になっていた。そして、サンマルテアンは攻撃時、トップ下のポジションに拘らず幅広く動いて、ボール循環を助ける動きが目立った。ボールは細かく動いているルーマニア。しかし、攻撃の形が中央やライン間を細かいパスで突破する形に偏りすぎて、フィニッシュにいくまでにイタリアの守備に引っかかる場面が多かった。これはルーマニアの悪い意味での特徴なのかもしれない。ただ、GKやセンターバック含めて、チーム全体が繋げるチームだった。なんとなく欧州のトレンドを感じさせる。

 そして、イタリアも選手を交代させて、モントリーヴォ、パローロがピッチへ入るが、途中でブッフォンも交代した。おそらくブッフォンは負傷の疑いで交代。ブッフォンとの交代で入ったのはシリグ。

 さらに後半38分にガッビアディーニが負傷。しかし、交代枠が残っていないイタリア。そのため後半の終盤に一人少ない状態での試合になってしまう。

 こうなるとルーマニアがボールを保持する展開になっていく。そして、後半41分にセットプレーからルーマニアが同点に追いつく。セットプレーからエリア内へ放り込み、ルーマニアの選手のヘディングシュートをシリグがキャッチするか、しないかの判断を誤って、こぼしてしまったところを決められた形だった。

 その後、ルーマニアはテンションを落として、イタリアが一人少ないながらもボールを進めようとするが後の祭りで試合終了。ルーマニアからすると敵地で引き分けたので、大成功の親善試合だった。

感想
 イタリアは不運な結果で内容はそこそこだったと思う。コンテの目指している攻撃ができているという意味でそこそこ。ただ、ミスからの二失点というのは親善試合とはいっても、イタリアらしくない。また、コンテの目指している攻撃ができていても、なかなか得点力は上がってこないという現実も見えてきている。選手のコンディション、タレントなどが問題なのだろう。ただ、格下相手に4-4-2で複数得点できるというのは、ある程度証明された気がする。今後は4-4-2をどのような相手に採用するかが、ユーロへ向けた親善試合での焦点になりそうだ。ただ、コンテ監督になってからミスからの失点は止まっていない。ここは、はっきりとした課題なので、どうにか克服して欲しい。

 一方のルーマニアは結果は引き分けだったが、シュートの少なさを考えれば、イタリア相手に攻撃が通用したとは言いがたい。それでもワンタッチで速く、細かくボールを動かしていくスキルフルなサッカーは魅力的だった。チームとしての問題は攻撃が中央突破へ偏りすぎることで、そこを解消できれば、おもしろいチームになりそうだ。とくに19番のスタンク、後半から交代で入った17番サンマルテアンが記憶に残っている。ルーマニアは試合を見る前に、無敗、2失点でユーロ予選を通過しているデータから、後退してからの守備が得意なチームなのかなと予想していた。しかし、蓋を開けてみると果敢にボールを繋いでくるチームだった。ボール保持が得意だからこそ、失点が少ないという時代なのだろうか。

追記
 最近画像を使っていなかったので、なんとなく画像を一ついれてみる。コンテ監督がやりたかった、FWへのクサビのパスライン形成法。 
ルーマニア戦のクサビ
 
 そんなに上手くいっていなかったことも報告。原因はソリアーノ、フロレンツィが隙間、ライン間でボールを受けても怖さがなかったためかもしれない。