試合感想の更新です。今回はU21ユーロ予選、U21アイルランド代表とU21イタリア代表の試合をピックアップ。 U21イタリア代表にはベルナルデスキ、ルガーニが招集されていましたが、A代表の合宿中にバルザーリ、ヴェラッティが離脱し、ベルナルデスキ、ルガーニがA代表へ合流。U21イタリア代表は、レギュラーメンバーだった二名を欠いての試合となりました。

スタメン
U21アイルランド対U21イタリア スタメン

前半
 イタリアは前からのプレスやボール保持を重視する姿勢。アイルランドは後退しMFのところで相手を捕まえる姿勢だった。また、アイルランドの攻撃はFWをサイドへ走らせてから、MFがフォローしていく形が多い。

 前半はアイルランドが前から追い回さないため、イタリアのDFラインは余裕のある状態でボール保持ができていた。ただイタリアのCHにはプレスにくる。そのためCBが自らドリブルで運んだり、CHが動きながら受けてサイドへ大きく振っていく。その際にイタリアのSHはサイドに開いてポジショニングしていた。流れの中でSBが高い位置をとればSHは中、ライン間へ入っていく。ただ、細かいパスワークからの中央攻撃は機能していたとは言えない。それよりもサイドからクロスへ持ち込む攻撃やDFラインの裏へタッチダウンパスを狙う攻撃が目立った。

 アイルランドは4-1-4-1で耐えてから、1トップの選手にボールをダイレクトに収めさせて、そこへ後ろの選手も出て行く形が多い。ボール保持よりは全体で後退し、守備から試合に入り、一撃を狙うのがゲームプランのようだ。まずは負けないことを意識していたのだろう。

 前半はイタリアも様子を見ながら、アイルランドのDFライン裏を狙う形が多い。押し込むための布石。一方のアイルランドはMFゾーンでボールを奪ってから、9番の選手をサイド、裏へ走りこませ、そこへボールを入れてキープしてもらう。とくに前半はイタリアの右サイドを狙った形が多かった。ルガーニ不在を狙ってのことなのかもしれない。

 前半12分にアイルランドは速攻から左サイド(イタリアの右サイド)で起点を作り、そのまま左コーナーフラッグ付近でファールを貰う。そのフリーキックがイタリアのオウンゴールを誘い、アイルランドが先制する。また、アイルランドは左サイドのロングスローから、シュートチャンスを作るなど、セットプレーからの空中戦でチャンスを得ていた。

 先制されたイタリアはボール保持を大切にしていく。DFラインでボールを保持することはできるので、サイドや中央からボールを進めていく。また、トランジションでもしっかりとプレスをかける。

 イタリアのボールの動かし方は、サイドを幅広くつかい、サイドバックが高い位置に上がれば、サイドハーフは中のライン間へポジショニングしていく。クサビを受けるのは2トップのどちらかという形だった。

 イタリアはライン間からの中央攻撃の威力は低いが、SBとSHの2on2からクロスと、2on2の三人目にFW、CHが絡んでくる形でのサイド攻撃は機能していた。

 特にイタリアで目立っていたのは右サイドのベラルディからボールが大きく動いていたところ。さらにカタルディの逆サイドへのサイドチェンジや、左サイドのバッレーカ、ベナッシのコンビネーションからのクロスなどだ。サイドのベラルディを起点に大きくボールを動かすのは2015年からやっているプレーだ。

 前半27分。アイルランドのゴールキックを回収したイタリアは、右サイドでボールを受けたモナケッロがDFラインの裏へクロスを入れ、逆サイドから斜めに入ってきたベナッシがボレーで決めた。保持してからの攻撃というよりはトランジションからの速攻でDFライン裏を狙う攻撃だった。これで同点となったイタリアはさらに攻勢を強めていく。

 アイルランドも同点に追いつかれたこともあってか、左サイドからボールを進めていく場面が増えた。アイルランドはFWの9番が左サイドに顔を出し、左SB、3番と左SH、11番がショートパスやドリブルでボールを進めていく。

 しかし、前半35分にはイタリアが追加点。アイルランドからイタリアがボールを奪い、カタルディがDFラインの裏を狙ったモナケッロへフィード。そして、モナケッロがドリブルでボールを運び、右サイドからクロスを入れ、ロッセッティがヘッドで合わせてゴール。

 速攻がゲームプランだったであろうアイルランドが、イタリアに速攻から得点を許してしまう皮肉な展開となった。

 前半はそのまま1-2で終了。

後半
 後半からはアイルランドも前へチームの重心を上げていく。長いボールを9番に当ててから、セカンドボールを確保してボールを進めていくのが狙い。

 後半立ち上がり、イタリアがアイルランドのプレスをいなしながら、前半同様にボール保持から前進することもできていた。MFのカタルディが左右へボールを振って、ベラルディがサイドで起点、ロッセッティ、モナケッロがポスト、裏抜けの役割をそれぞれこなしていた。

 後半12分。バッレーカがドリブルで持ち上がり、そのまま倒されてセットプレーをゲット。セットプレーでカタルディからトリックでバッレーカ。そのままバッレーカが左サイドから入れたクロスを、ロマニョーリが流し込んで追加点。後半19分にはベラルディが下がり、ガッリターノが投入される。

 さらに追加点を許したアイルランドもセットプレーに活路を見出すべく、サイドからドリブル突破を狙うプレーが増える。特に後半はアイルランドの右サイドでの攻撃が多かった。イタリアのプレスに対してはロングボール。そのままセカンドボールボールを回収すれば、サイドからドリブルなどで進めていく。敵陣でセットプレーをゲットすると、アイルランドの10番がエリア内へ良質なボールを放り込む。アイルランドがダイレクトなプレーで、後半の中盤からペースを握っていた。

 イタリアはアイルランドのサイドからのドリブルに手を焼き、フリーキックやコーナーキックから何度かチャンスを与えてしまっていた。またイタリアのサイドを広くつかう攻撃もベラルディがいなくなったためか、おとなしくなっていく。攻守にうまくいかないイタリアだが、最後の最後にはドンナルンマを含めた守備陣が耐え抜いていた。

 後半26分にアイルランドは7番、8番を下げて、15番、13番を投入。CBだった4番がCHへ入り、13番がCBへ配置された。

 これを見たイタリアは32分にカタルディとマッジテッリを交代させる。マッジテッリは事前情報がなかった選手。プレーを見ると、デロッシ、モッタのような体格のいいレジスタといった印象だった。単純な守備交代というよりは、選手のテストを含めた交代だったのだろう。

 試合は時間の経過とともに運動量が落ちてくる。そのためイタリアはボールを保持して時間を削り、アイルランドが前からプレスにくればDF裏やDFとMFの間のクサビなどを入れてボールを進めていった。運動量が落ちたため全体的にアイルランドが間延びしていたため、そこを狙った攻撃が増えていく。

 後半36分にはイタリアが右サイドでのセットプレーからアイルランドのオウンゴールで追加点。アイルランドの狙いだったであろうセットプレーで追加点を挙げるイタリア。非常に皮肉な結果になった。

 終盤になりアイルランドは10番を下げて14番をFWに入れて2トップでのパワープレーを挑むがイタリアが守りきって勝利。


感想
 イタリアは新戦力といえるロッセッティ、カルダラ、ドンナルンマを加えての試合だったが、アウェーで勝ち点3をとることができた。特にFWのロッセッティは初見だったのだけど、非常に好印象。状況判断が速く、ポストプレーも悪くなかった。カルダラは試合の前半序盤はアイルランドに狙われていたようだった。もちろんルガーニなどと比較すると、いろいろと差がありそうだが、もう少し観てみないとわからない。ドンナルンマは、セリエAに常時スタメン出場する17歳というプロフィール通り、いい選手。たまに、飛び出した時の判断ミスが目立つが、この若さなので将来が楽しみ。

 試合を通してイタリアを見てみると、保持した局面からのサイド攻撃、速攻でモナケッロ経由での攻撃、セットプレー、などが武器になっていた。また、後半に中央でワンタッチパスを繋ぎながらフィニッシュまで持っていった場面もあった。スタメン次第で中央突破の威力が上がってくるかもしれない。守備に関してはDFラインの裏を破られる場面は少なかったが、セットプレーで相手にチャンスを作らせてしまっていた。

 一方のアイルランドはCB陣が攻守に活躍できていなかった。MFやFWのクオリティは低くないだけに、DFラインからのボール保持、前進の仕組みがあれば強くなりそうなチームだった。なかなか後ろから繋いで攻撃を見せることはできていなかったが、ロングボールやサイドからのドリブルなどからチャンスを作れていたので、ここに何かプラスできると強くなりそうだ。選手で印象に残ったのは10番。10番の選手はウィルクシャーなどを想わせる小柄なチャンスメーカーで、キックの質が高く、ドリブルでのキープ力もある。この試合ではセットプレーのキッカーとして優秀だった。さらに7番、11番などのサイドの選手のドリブル突破力や、最後まで走っていた9番も長身と運動量を兼ね備えた選手で印象的だった。

 イタリアは現在U21ユーロ予選では全勝でグループ首位をキープ。現在グループ2位はスロベニアとなっているので、イタリアには自力でグループ首位通過の可能性がある。ただ、U21ユーロ予選の厳しいところは、グループリーグを首位で通過しても、H&A方式のプレーオフを勝ち抜かなければいけないところにある。そのためイタリアとしては残り試合も、戦術の確認やメンバーのテストなどを含めて、しっかりと戦う必要があるだろう。

 最後に、管理人は語学が苦手なのでイタリア語の読みがわからず、選手名などをテキトウにカタカナにあてていたりします。なので、そこは許してください。このほうがカタカナ表記として自然だとか、このほうがしっくりくるというような意見はコメントください。